ストーリーテキスト/異界門とお菓子の魔女

異界門とお菓子の魔女[]

-前-[]

前半
――某日某所。 九尾 くふふ……ついに完成じゃな。 桃形兜 九尾様、コノ地面ニ描カレタ印ハ何デスカ？ 九尾 これは……此世と異世を繋ぐ為の『門』を形成する媒じゃ。 桃形兜 門……？ 九尾 ふっ……まあ、見ておれ。 今に汝らも理解できるじゃろうて。 九尾 さあ、来るがよい異世の者よ！ 其の姿を我が前に示せ――！ 地に描かれた印に向かって高らかに叫ぶ九尾。 すると印は毒々しい輝きを放ち、空間に亀裂を生じさせた。 兜軍団 ウワァァァァ！！！　何ダ何ダーー！？ 九尾 ………………。 静かに空間の割れ目を見つめる九尾。 そして、その隙間から『ソレ』は姿を現した。 ？？？ …………。 九尾 ほう、これはこれは……。 また随分と可愛らしいモノが現れたものじゃ。 ？？？ …………。 九尾 ふむ……真意は掴めぬが、此の気色ならば、 城娘に対向させるに充分な相手となろう……。 九尾 フフ……さて、どうなるか……今から愉しみじゃ……。 ――翌日。 千狐 殿、間違いありませんわ！ 禍々しい気をこの辺りから感じます！ やくも でも、周りを見回しても、な～～～んにも無いだに。 本当に此処に敵さんが居るんがや？ 柳川城 一先ず周囲を探索してみましょう。 もしかしたら、何か手掛かりが見つかるかもしれません！ 殿 …………。 千狐 そうですね、殿。 では周囲の捜索にあたるとしましょう！ ――半刻後。 やくも …………あれ？ 柳川城 こ、この光景はいったい……？ 千狐 おかしいですわ……。 さっきまで森の中を歩いていたはずなのに！ 柳川城 殿、気を付けてください！　これは敵の罠かもしれません！ 殿 …………。 やくも ――だにっ！？ やくも おぉ～っ！　よく見ると、お菓子がい～っぱいだに～♪ 千狐 もうっ、柳川城さんの話を聞いてなかったの！？ これは敵の罠かもしれない―― ？？？ ……………………。 千狐 ――って、や、やくもぉ！？ やくも ん～？　ふぉうふぃふぁふぁや？　ふぇんふぉ。 （ん～？　どうしたがや？　千狐） 柳川城 や、やくもさん！　うしろ！　うしろです！ やくも へ？　 ？？？ ……………………。 やくも だにぃぃぃ！！！！！？　見たことない化物がいるがやー！！ 千狐 なっ、ななっ、何ですの、あの大きいのは！？ 柳川城 正体は分かりませんが……、 我等に害を為さんとしていることは間違いありません！ 柳川城 ここは私が何とかします！ その隙に殿は千狐さんたちと共にお下がりください！
後半
柳川城 はぁ……はぁ……。 柳川城 （この異形、動きが全く読めない……） ？？？ ………………！！！ 柳川城 し、しまった！　このままでは――！ やくも だにぃーっ！？ こっちに来るがやー！ 千狐 殿ぉ――っ！？ 大口を開けた異形が凄まじい速度で殿へと迫る。 殿 …………！ 避ける間も、術もなく、死を覚悟する殿――。 だが、次の瞬間――。 ？？？ お願い……当たって！ ？？？ ～～～～～！！！！！！ 彼方より飛来した一本の矢が突き刺さり、 異形は一目散に闇の中へと消えていった。 殿 …………！？ ？？？ 良かった。 何とか間に合ったみたいですね！ 柳川城 あ、貴方は……？ ？？？ わたし？ 鹿目まどか わたしは鹿目まどかって言います。

-後-[]

前半
鹿目まどか わたしは鹿目まどかって言います。 鹿目まどか そして、こちらが私のお友達の―― 暁美ほむら 暁美ほむらよ……。 美樹さやか あたしは、美樹さやか！ いやぁ、みんな無事で良かったよ～。 巴マミ 巴マミよ。ふふっ、よろしくね。 佐倉杏子 佐倉杏子だ。 それにしても、ほんと運が良かったな。あんたら。 佐倉杏子 魔法少女でもないってのに、よく生き残れたもんだよ。 柳川城 まほう……しょうじょ？ 鹿目まどか あ、そっか……。 鹿目まどか えっと、魔法少女は魔女を倒すための存在なんです。 美樹さやか そうそう。でね、あなた達を襲ってきたのが魔女で、 ついさっきまであたし達もそいつらと戦ってたんだ。 鹿目まどか でも……あと一歩ってところで逃げられてしまって……。 巴マミ それで、魔女の気配を辿っていったら、 空間の裂け目……ゲートとでもいうのかしら？　それを見つけちゃって……。 佐倉杏子 んで、覚悟決めて飛び込んでみたら、 この結界の近くに出たってわけさ。 暁美ほむら ……貴方達の様相を見る限り、 どうやら此処は私たちの知る時空間とは異なる地点のようね。 殿 …………。 千狐 ……そう、ですね。 感じられる気からして此の世界の住人ではないようです。 巴マミ それで、えっと……あなた達は？ 千狐 あっ、申し遅れました。 千狐と申します。そしてこちらが主の殿にございますわ。 殿 …………！ やくも うちはやくもだに♪ 柳川城 私は柳川城と申します。 先程は危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました。 鹿目まどか あ、いえいえ！　そんな……。 鹿目まどか 魔女に襲われてる人を助けるのも、 魔法少女としての大事な務めですから―― お菓子の魔女 ――――！ やくも だにぃっ！？ あいつ、またこっちに向かってきただに！ 佐倉杏子 チッ……どうやらおしゃべりはここまでのようだな。 美樹さやか それじゃあ、いっちょ派手にやっちゃいますかー！ 巴マミ ええ。一気に片付けるわよ！ 暁美ほむら まどか……いけそう？ 鹿目まどか うん、私なら大丈夫だよ。ほむらちゃん。 皆で魔女をやっつけよう！ 柳川城 皆で……ということは、 一緒に戦ってくれるのですか？ 鹿目まどか もちろんです！　たとえ違う世界であっても、 魔女のせいで悲しむ人達を見たくはありませんから！ 殿 …………！ 鹿目まどか えへへ……。 鹿目まどか よぉし、それじゃあ、皆！　いくよーっ！
後半
巴マミ これで決めるわ！ お菓子の魔女 ～～～～～！！ 殿 …………！？ 美樹さやか 結界が解けた……？ 佐倉杏子 ってことは、やったのか！？ 暁美ほむら いいえ……どうやら仕留め損なったみたいね。 美樹さやか ちょっ、なんで分かるのさ？ 暁美ほむら 私達が出てきた場所を見てみなさい。 千狐 ………………！？ 千狐 （あれは……まさか……！） 鹿目まどか あれ？　ゲートが……大きくなってる？ 佐倉杏子 成程な。奴はゲートを無理矢理通って 元居た場所に逃げやがったってわけか。 美樹さやか なら、早く追いかけないと！ 巴マミ 美樹さんの言うとおりね。 皆、急ぎましょう！ 柳川城 そんな……もう行ってしまうのですか？ やくも うちら、まだ助けてもらったお礼もしてないだに……。 鹿目まどか ごめんなさい……。 本当は、もっとお話ししたかったんですけど……。 暁美ほむら けど、あの魔女をこのまま野放しにはしておけない……。 やくも だにぃ～……。 千狐 でも、気に病むことはありませんわ。 だってこうして縁が結ばれたんですもの。 千狐 私の術と皆さんの力を合わせれば、 きっとまた、会うことができるはずですわ！ 鹿目まどか えっ！？　本当ですか！？ 美樹さやか だったら、その時はこのさやかちゃんが、 いの一番に駆け付けて殿達の力になってあげるよ♪ やくも おおーっ！　そげんことなら、いつ来ても歓迎できるように、 しっかり準備して待っちょるけん、期待しててほしいがや♪ 鹿目まどか はい！　またお会いできる日を楽しみにしていますね。 暁美ほむら ……貴方達の戦い方、悪くなかったわ。 巴マミ 今度は一緒にお茶ができるといいわね。 佐倉杏子 あたしがこっちに来る事があれば、 その時は美味い食いもんを用意してくれよなっ！ 美樹さやか それじゃあ、まったねー！ 柳川城 …………。 柳川城 ……行ってしまわれましたね。 やくも なんだか嵐のような一時だっただにぃ。 柳川城 でも、素敵な方々とお会いすることができましたし、 決して悪い出来事だけではありませんでしたね。 殿 …………！ 千狐 …………。 千狐 （それにしても、どうして異世界に通じる『門』が開いたのかしら……） 千狐 （……ううん。千狐、本当はもう気づいているのでしょう？） 千狐 （こんなことができるのは、アイツしか――九尾しかいないってことを） 殿 …………？ 千狐 あ……す、すみません。 考え事をしてしまって……。 殿 …………？ 千狐 そうですね。此度の異事に関しては、 我々神娘の方でも調査をしておきます。 殿 …………。 千狐 はいっ！　それでは、所領へと帰還しましょうか。 千狐 殿、此度の遠征も本当にお疲れ様でした。 こうして、殿たちを襲った謎の脅威は、 異世界の魔法少女たちによって退けられた。 ――しかし。 九尾 ふむ……。 九尾 魔女に、魔法少女……か。 九尾 まさか異世において、あれほどの力を 有する存在がいるとは面白きことよ……。 九尾 これならば……まだまだ愉しめそうじゃな。 九尾 フフ……城娘たちよ。 九尾 これで終わりと思うでないぞ……？ 九尾 ……吾には吾の役割を。 九尾 汝らには汝らの役割を……。 九尾 此世において、共に果たすべきなのじゃからな……。 九尾 くふっ、フハハ……フハハハハハハハハハっ！！ 宴は始まったばかり……。 愉悦と奸邪がない交ぜる、その不気味な哄笑は、 虚空の夜闇へ不気味に木霊するのであった――。

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