ストーリーテキスト/炎天賑わす祭囃子

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目次

炎天賑わす祭囃子[]

炎天賑わす祭囃子 -序-

千賀地氏城での花火大会を楽しんだ一行は、千狐の
力により、三原城の御城へと転移していた。だが、
到着して早々、波乱に巻き込まれることに……。

前半
――千賀地氏城での花火大会から、数日後。

三原城の手紙に宿った霊気を頼りに、
一行は彼女の御城に転移を果たしたのだった――

千狐
コンッ! 三原城さんの御城に到着しました!

千賀地氏城
おおお~! 海だよ、海!
綺麗な景色だねぇ!

ペテルゴフ宮殿
ここで夏祭りが行われるわけね!
ふふっ、楽しみだわー♪

ノイシュヴァンシュタイン城
あちらに見えるのが、三原城さんの御城ですか。
海に面した場所に建っているのですね……なんと美しい……。

千賀地氏城
満潮の時には、海の上に浮かんでいるようにも見えるから、
『浮城』の名でも知られているんだよー! それから――

???
――む、そこに居るのは……殿ではないか?

殿
…………?

白帝城
そうか……そなたも此地に招かれたのだな。
また会えたこと、心より嬉しく思うぞ。

殿
…………!

柳川城
貴方は……白帝城さん!

やくも
三原城は異国からもお客さんを呼んどったんやね!

白帝城
ああ……先日のバレンタイン騒ぎ以降、
日の本の城娘とは何かと仲良くさせてもらっていてな。

白帝城
三原城からの招待に応えて、
普段と違う特別な夏を過ごすことにしたんだ。

千狐
なんと、中国からはるばる……お身体の方は大丈夫なのですか?

白帝城
ああ、今は大丈夫だ。心遣い感謝する。
……とはいえ、日差しが強いな……この季節の日の本は。
傘で陽よけをしなければ、あっという間に疲弊してしまいそうだ。

ノイシュヴァンシュタイン城
白帝城さんの他にも、
城娘はいらっしゃっているのですか?

白帝城
ああ、私以外だと招かれた城娘は二人……。
今は確か、あちらで肥前名護屋城が踊りの練習をしていたな。

白帝城
三原城に教えられた『やっさ踊り』を完璧に演じきる、
と息巻いているようだ……。

殿
…………。

柳川城
そうですね。まずは三原城さんに、
到着を知らせることも兼ねて、ご挨拶をしたいところですが――

三原城
ええと……こっちはよし、あれもよし……と。
残った確認は……。

やくも
お、噂をすれば!
あそこに三原城の姿が見えるがや!

千賀地氏城
お~い、三原城ちゃ~ん!

千賀地氏城
ちがちーが来たよ~!
三原城ちゃんの招待にお応えして、見参したよ~♪

三原城
ん……?

三原城
おお、千賀地氏城さん……!
随分お早い到着ですね!
その周りには、んん――?

三原城
殿……?
そちらに居るのは、殿ではありませんか?

殿
…………!

三原城
わ、どうしましょう……本当に殿がいらっしゃいます……!

三原城
千賀地氏城さんっ! 殿が来るなんて、
三原は伺っておりませんでしたよ!?

千賀地氏城
にひひっ♪ そりゃそーだよ。
三原城ちゃんをびっくりさせたげようと思ってたんだもん。

三原城
も、もちろんびっくりはしましたけど……。
これは大変なことになってしまいました……殿がいらっしゃるなんて!
緊張してしまいます……!

殿
…………!

柳川城
ふふ……そうですね。
そんなに肩肘を張る必要はないのですよ。
私たちも何かあれば、力添えいたしますから。

三原城
そ、そうですね……はい、ありがとうございます……!

三原城
祭りの開催まではもう間もなく……。
準備は整い、後は最後の確認を残すのみです。

三原城
日が落ち次第、祭りの開始を宣言しますので……、
それまではしばし、
他の招待客とご歓談でも楽しんでいただければと思います♪

ペテルゴフ宮殿
他の招待客……この機会にぜひとも、
色んな城娘と仲を深めたいところね♪

白帝城
ここに居ないのは、あと……雑賀城とエゲル城か。
エゲル城の方は、あちらこちらへウロウロして、
所在が掴めないことも多いのだが……。

???
ギャアアアァァァァ……!

エゲル城
あはははぁ~、待~てぇ~♪

三原城
ふふ……今はあちらで、
追いかけっこを楽しんでいるようですよ。

ノイシュヴァンシュタイン城
本当です……飛沫を散らしながら、
波打ち際を駆ける姿が……なんとも素敵な光景ですね。


ギャアアアァァァ!!
助ケテエェェェ~~~!

柳川城
ええ、鞭を振り回しながら……兜を追いかけて――

殿
…………!?

千狐
――ち、ちょっと待ってください! 追いかけっこ、って……!
エゲル城さんの先にいるあれは……兜ですよね!?

殿
…………!

三原城
は、はいっ! 三原たちも後を追いましょう!
被害が生じてしまう前に!

後半
三原城

はぁはぁ……はぁ、はぁ……。

白帝城
まったく、エゲル城……。
兜が居たんなら、先に知らせてほしいのだが……。

エゲル城
あはは、ごめんごめん。鞭で打ってあげたら、
すっごくいい声で鳴いてくれてね、
それでつい夢中になっちゃって……。

やくも
相変わらず、危ない趣向の持ち主だに……。

殿
…………。

白帝城
ひとまず、これで兜騒ぎは落ち着いた。
……そう考えて良いのだろうか。

三原城
いえ、この場は乗り切りましたが……安心はできません。
念の為、会場の周囲を巡って安全を確認しておきたいところです……。

殿
…………!

やくも
だに! うちらも一緒に行くがや!
三原城をぱとろーるするだに!

炎天賑わす祭囃子 -破-

御城の周辺を巡りつつ、城娘たちと挨拶を交わす
一行。だがその時、突如姿を現した雑賀城が
此地に危機が迫っていることを一行に報せる――!

前半
千狐

あれからしばらく、御城の周囲を巡りましたが……。
兜の気配は掴めないままですね。

やくも
ふひぃ……今日の日差しは地獄みたいな暑さだに……。
こんなに綺麗で気持ちよさそーな海が広がっとるのに、
それを横目に歩き回らなきゃいかんなんて……。

ノイシュヴァンシュタイン城
……ん、あそこに人影が見えますね。……城娘でしょうか。

肥前名護屋城
――右手はこうして、左足はこうやって……。

肥前名護屋城
何だかしっくりこないわね……。
もっとメリハリをつけてキレ良く……こう。いや、こうかしら……。

エゲル城
肥前名護屋城ちゃーん、何してるのー?

肥前名護屋城
――えっ? な、何よ急にっ!?

肥前名護屋城
ち、違うわよ!? あたしは別に、
踊りの練習なんかしてないからね!?

肥前名護屋城
そもそも、あたしみたいな今をときめくトップアイドルには、
大抵の踊りなんてお茶の子さいさいだし!

やくも
こっちが驚くくらいの戸惑いっぷりだに……。

三原城
ふふ……肥前名護屋城さんったら、
三原のやっさ踊りは節に乗ってさえいれば自由に踊ってもいい、
と申し上げましたのに……。

肥前名護屋城
うぐ……。そ、そうは言っても……あたしはアイドル城娘よ。
しかも次世代のてっぺんを担う予定のね!

肥前名護屋城
そんなあたしが、踊りと名の付くものを、
適当にこなすわけにはいかないじゃない……!

エゲル城
へぇ~。真面目なとこもあるんだねぇ、
肥前名護屋城ちゃんは。

肥前名護屋城
あんたの場合はちょっといい加減すぎ……いや、
独創的すぎると思うけど……。
本番前に、もう少し練習しといた方がいいんじゃないの?

エゲル城
えぇー、いいよぉ。
あたしのやっさ踊りはもう完成してるもん。
王様に見られたって恥ずかしくないくらいの出来だよ。

肥前名護屋城
『王様に見られたって』って……王様?
それってもしかして――

殿
…………。

殿
…………!

肥前名護屋城
ああ、貴方が……。
こうしてちゃんとお話しするのは初めてだったかしら。

殿
…………!

肥前名護屋城
あたしの名前は肥前名護屋城!
日の本に名高き大坂城の威名も今は昔……これからの時代を作るのは、あたしよ!
アイドル城娘のニューウェーブ、その最前線ってわけ!

肥前名護屋城
今度ライブをする時には、所領にチケットを送るわ!
特等席を用意しておくから、必ず足を運びなさいよね!

殿
…………!

エゲル城
そうそう。肥前名護屋城ちゃんは、
踊りとお歌が得意な城娘なんだよね~。

肥前名護屋城
その表現だと語弊があるような気がするけど……。
何だかちっちゃな子供のお遊戯会みたいじゃない……。

ペテルゴフ宮殿
それにしても……随分沢山の城娘が揃ったものね……。
これで招待客全員とのご挨拶は済んだかしら。

三原城
そうですね――いえ、まだ一人居ました。
雑賀城さんがこちらにいらっしゃっていないようです……。

白帝城
また、何処かへ逃げてしまったのではないか?
肥前名護屋城が現れると、すぐに姿を消してしまうだろう……?

エゲル城
あぁ、ファンとしてのジフがーとか、
テキセツなキョリカンがなんとかって……。

肥前名護屋城
……あれはきっと、あの子なりの敬意の表し方なのよね。
一応あたしからは『気にすることないわよ』って伝えてはいるんだけど――

雑賀城
――ボクのことをお呼びかな?

千賀地氏城
おお~、雑賀城ちゃん! 居たんだね!

雑賀城
もちろん居たさ。
ただ、ここしばらくは別行動を取っていたんだ。
……不穏な気配を感じ取ったものでね。

雑賀城
結果、無事に収穫を得たから……、
それを皆に報告しにきた、というわけだ。

ノイシュヴァンシュタイン城
不穏な気配、収穫……?

殿
…………。

雑賀城
先程、エゲル城と追いかけっこしていた兜や、それに連なる軍勢……。
あの他にも、此地を脅かす兜が居るのではないか、と懸念してね。
周囲の索敵に当たっていたんだ。

ペテルゴフ宮殿
それで……収穫を得た、ということは、
その読みが当たってしまった、というわけね……?

雑賀城
その通りだ、残念なことにね。

雑賀城
この付近にて兜たちが集っているのを見つけた……。
進軍の準備を進めているようだ。
ここに多数の城娘が居ることに、目を付けたんだろう。

雑賀城
放置すればただでは済まない……。
殿たちが到着した後なのが、せめてもの救いと言えるか。

殿
…………。

三原城
なるほど、そうですか……。

三原城
……ありがとうございます、雑賀城さん。
貴方のお陰で、祭りへの被害は最小限に抑えることができます。

白帝城
……兜たちの軍勢を、こちらから叩くつもりか?

三原城
その通りです。
三原の御城が戦地になることを避けつつ、兜たちを余さず討つ。
祭りを成功に導く手はもはや、これ以外にありません!

雑賀城
承知した。……それじゃ、ボクも力を貸そう。
ボクを招いてくれたキミに、恩返しをしないとね。

肥前名護屋城
あたしも一緒に行くわよ!
ようやく祭りの開催にこぎつけたんだもの。
誰にも邪魔はさせないわ!

肥前名護屋城
あなたたちも一緒に来てくれるでしょ、もちろん?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
ええ、そうですね。
私たちも力をお貸ししましょう!
三原城さんの御城を守り抜くために!

千狐
それでは殿!
どうか聡明なるご下知をお願いいたします!

後半
肥前名護屋城

はぁ、はぁ……はぁ……。
見なさい、みーんな片付けてやったわ。
これが次世代アイドルの、底力よ……。

三原城
……いかがですか、雑賀城さん。
まだ周辺に、兜の力は感じられますか?

雑賀城
…………。

雑賀城
ああ、兜たちの力はまだ衰えていない。
……油断はできないようだ。


――ザザッ!

兜軍団
――ザザッ! ザザザッ!!

千狐
コンッ……!? いえ、これはむしろ――!

兜軍団
城娘……殲滅セヨ……。
   城娘……殲滅セヨ……。
      城娘……殲滅セヨ……。

千狐
――むしろ敵の本領はここからのようです……!

三原城
そ、そんな……まだ、
これほどの軍勢が控えていたというのですか……!?

殿
…………!

炎天賑わす祭囃子 -急-

勢いを緩めることなく、なおも侵攻を続ける
兜たち。三原城の祭りを成功に導くために、
城娘たちと共に出陣し、敵を殲滅せよ!

前半
兜軍団

城娘、討伐セヨ……。
   城娘、討伐セヨ……。
      城娘、討伐セヨ……。

ペテルゴフ宮殿
兜たちの加勢も続々と……皆、まだ戦う力は残ってる?

千賀地氏城
とーぜん! たとえ残ってなくたって、
最後の最後まで力を絞りつくす所存だよっ!

エゲル城
ちがちーちゃんに同意!
三原城ちゃんの祭りを、
悲しい思い出で終わらせるわけにはいかないもん!

殿
…………!

柳川城
もうしばらくの辛抱です……皆さん!
あと少しだけ、力を貸してください!

後半
ペテルゴフ宮殿

見える限りの兜は、すべて打ち倒したけど……?

肥前名護屋城
疲れた……もー限界だわ、ほんとに……。

エゲル城
もう休んでもいい……いいよねぇ、雑賀城ちゃん……?

雑賀城
…………。

雑賀城
ああ……もう兜の存在は感じられない。
安心しても大丈夫……そうだろう、千狐?

千狐
はい、兜は撃破しました……討伐完了です。
皆さん、本当にお疲れ様でした……!

三原城
ありがとう、ございます……お陰様で、
三原の御城も平穏を取り戻しました。

ノイシュヴァンシュタイン城
これで無事に、祭りを開催することができますね……。

三原城
ええ!
ひとまずは戦の疲れを充分に癒やし……その後、
祭りを楽しむことにいたしましょう……!

――――

こうして、兜を討ち平穏を取り戻した一向は無事、
祭りの開催に至ったのだった――!

エゲル城
肥前名護屋城ちゃん!
次はあっちの屋台行こ~、あっち!

肥前名護屋城
わ、分かった分かった!
そんなに強く引っ張ったら転んじゃうってばー!

ペテルゴフ宮殿
ちがちーさん、ノイシュさん!
用意しておいた花火が火を吹く時が来たわよ!

千賀地氏城
りょーかい! アタシたちの花火で、
皆を驚かせてあげちゃお!

ノイシュヴァンシュタイン城
きっと、三原城さんたちも喜んでくれるに違いありませんね!

やくも
やっさ、やっさ、やっさもっさ……そっちゃせー……。

千狐
違うわ、やくも!
もっと手足のキレを……びしっ、びしぃっ! なの!

柳川城
あのぉ、殿……よろしければ一緒に、
屋台を回ったりなど……!

殿
…………。

――――

白帝城
…………ふぅ。

三原城
休憩ですか……白帝城さん。
それともまさか、体調でも……?

白帝城
ああ……いや、大丈夫だ。心配ない。

白帝城
ただ……こうした夏の過ごし方は、初めてだったのでな。
少々感傷的な気分になってしまっていた。

三原城
……白帝城さんの御城は、
山の中に建っていたんでしたよね?

白帝城
ああ、そうだ。風や虫の声に耳を傾けながら……詩を読む。
夏は専ら、そんなことをして過ごしていた。

三原城
なるほど……それは逆に、
私にとっては新鮮な夏の過ごし方と言えますね。

白帝城
異国の文化に触れることは、
旅行の醍醐味……次の機会があれば、
私の御城に招いて共に夏を楽しみたいところだ。

三原城
次の機会、ですか……。

三原城
ふふ……白帝城さんはもっと、
欲深くなっても良いのではありませんか?

白帝城
……もっと欲深く?

三原城
そうです。三原の御城に来てからというもの、
白帝城さんは共に夏を楽しみながらも、どこか……、
一歩退いたところから、皆を眺めているようなところがありました。

白帝城
…………。

三原城
今だって『次の機会』なんて言わず、
思い切って……この夏にやりたい、
と宣言してしまっても良いのではありませんか?

白帝城
……確かに、そうだな。

白帝城
虚弱な身体を持った、この生まれのためだろうか。

白帝城
余力を残すことが癖になって……今を全力で楽しむことを、
最初から諦めている部分があったと思う。

白帝城
いかに楽しかろうと……いつ突然に、
理不尽に……取り上げられてしまうか分からないのだから、と……。

三原城
…………。

三原城
三原は……夏が好きです。

三原城
三原にとって、特別な季節ですから。
幾度年が明けても三原は、
それが自分にとってたった一度きりの夏だと思って過ごします。

白帝城
…………。

三原城
そして、夏のやっさ祭りは、三原にとって特別な日です。

三原城
三原が此世に生まれた時、
築城してくださったかつての主……小早川隆景様は、
完成を大いに喜び……盛大な祭りを催してくださいました。

三原城
その際に生まれたのがやっさ踊り……。
ひいてはこの、やっさ祭りでした。

三原城
夏という季節、そして祭りは……、
隆景様を始めとする皆さんとの大事な、大事な絆なのです。

白帝城
……三原城がここまで祭りに力を注ぐことには、
そのような背景があったのだな。

三原城
はい!
ですから……こうして皆で夏を過ごせたことを、
三原は本当に嬉しく思います。

三原城
良き友に恵まれ……良き時間を過ごせた。
三原は、本当に幸せな城娘です。

三原城
そして何より、三原は……一人でも多くの人に、
この季節を愛してほしい。そのように考えているのです。

三原城
ですから、白帝城さんにも!
悔いを残すことのないよう、この夏を心ゆくまで楽しんでいただきたいのです!
そのためなら、三原は力を惜しみません!

白帝城
……悔いを残すことの無いように、か。

白帝城
……いつ身体を壊してしまうかも分からない。
そんな私が、自身の願いを素直に口に出して良いというのなら……。

白帝城
私ももっと、この季節を楽しみたい……。

三原城
…………!

白帝城
三原城が言ったように、私の御城で、
山中での夏を堪能したい。風情もへったくれもない、詩を読む暇もない……。
そんな、賑やかで楽しい夏を過ごしたい。

白帝城
……それが私の願いだ。

三原城
……では実現させましょう!
祭りの後片付けが終わったら……皆を誘い、
白帝城さんの御城へ向かうのです! 三原も協力しますよ!

白帝城
き、急だな……。
その申し出は嬉しいが……果たして皆は、
その誘いに乗ってくれるだろうか。

三原城
そんな悩みは、次に考えれば良いこと!
まずは皆が白帝城さんの御城に行きたくなるように、
勧誘することに全力を注ぐのです!

三原城
それではすぐに動き出しましょう!
初めに狙うべくは殿! 殿を味方につけて、
白帝城さんの御城に向かうことを確固たるものとするのです!

白帝城
ぜ、善は急げというやつだな……!
承知した、すぐに向かおう!

炎天賑わす祭囃子 -絶壱-

一部の招待客が三原城の許に訪れる、数日前。
一人寂しくバカンスを満喫する肥前名護屋城の
胸中には何故か、鬱屈とした思いが溜まっていた。

前半
――三原城の御城。

殿一行、および異国からの来客、
エゲル城と白帝城が到着する数日前――

肥前名護屋城
…………。

肥前名護屋城
ふわぁ……。

肥前名護屋城
あぁ、なんだか落ち着かないわねぇ……。

肥前名護屋城
海の上にプカプカ浮かんでみたり……。
逆に全力で遠泳に臨んでみたり。海水浴を満喫してみたはいいものの。
なーんか物足りない気がしちゃうのよね。

肥前名護屋城
過密なスケジュールの合間を縫って、
やっとの思いでバカンスを手にしたっていうのに……。
何なのかしら、この気分。

肥前名護屋城
せめて、話し相手の一人でも居てくれれば、
変わるのかもしれないけど……。

肥前名護屋城
……確か、
あたしよりも先に雑賀城が到着していたわよね。
探しにいってみようかしら。

雑賀城
ボ……。

雑賀城
ボクの名を、呼びま……呼んだかな……?

肥前名護屋城
雑賀城……居たの!?

肥前名護屋城
――っていうか、
今も姿は見えてないんだけど……何処に居るわけ?

雑賀城
少々離れた場所に控えている。
万が一キミに呼び出されても、
すぐに応えられるように……。

肥前名護屋城
……どうしてそんなとこに?

雑賀城
いや、それは……色々悩んだ結果、なんだけど。
節度ある距離感はこのくらいかな、と思って……。

雑賀城
キミもあいどるの前線を進む城娘の一人だ。
ボクの推しは御坊ちゃんだけど……あいどる城娘を応援する立場として、
気安く接することは許されない。そうだろう?

肥前名護屋城
だろう、って言われても……あたしはよくわかんないけど……。

肥前名護屋城
……あら、そういえば、
さっきから三原城の姿が見えないわね。
どこに行っちゃったのかしら……?

三原城
ええと、次は……次は~……!

三原城
千賀地氏城さんたちが到着すれば、
いよいよ祭りも本番。急いで準備を進めなければ……!

肥前名護屋城
あら……?

肥前名護屋城
三原城、何してるのー?
忙しいようならあたしも手伝うわよー?

三原城
あ、肥前名護屋城さん……!

三原城
いいえ、それには及びません。
祭りの準備も、間もなく整いますので……ととっ!

肥前名護屋城
とか言いながら……足元がふらついてるじゃないの。
ほら、あたしの身体につかまって……!

雑賀城
もしや三原城……連日に渡る祭りの準備で、
あまり休めていないんじゃないか?

三原城
あ、いえ……本当に大丈夫なのです。
そもそも皆さんは、三原の都合で集めたお客様ですし――はっ!?

三原城
い、今、どこからか声が!?
誰ですか? 幻聴ですか?

肥前名護屋城
安心なさい三原城……幻聴じゃなくて雑賀城よ……。

三原城
ああ、そうでしたか。
流石は雑賀城さん、見事な隠密の腕前……。

三原城
……とにかく、
お二人の力を借りるわけにはいきません。

三原城
特に、肥前名護屋城さんは三原よりもずっと格上の御城です。
あいどる活動の合間のお休みを、
楽しんでいただいていますから……その邪魔をすることは……。

肥前名護屋城
…………。

肥前名護屋城
そう、あなた……そんなことを考えていたのね。

三原城
……え?

肥前名護屋城
あたしは恥じなければならないわね。
今まで……あなたの苦労に、気づかずにいたことを。

肥前名護屋城
そして気づいたことがもう一つ。
やっぱりあたしは、正真正銘……骨の髄までアイドルなのね。

雑賀城
…………。

肥前名護屋城
考えてみれば当然のことだったわ。
だーれも居ない海で一人のびのび、だなんて……。
そんな状況をあたしが楽しめるわけなかったのよ。

肥前名護屋城
誰かを笑顔にすることや……そこに至るための努力。
それらを怠っていたら、物足りなくもなるってもんだわ!

三原城
ええと、肥前名護屋城さん……何を言って……?

肥前名護屋城
つまり! あなた一人が苦しんでたら、
皆が笑顔になったって意味がないってこと!

肥前名護屋城
あたしらで準備を手分けすれば、苦労は三分の一!
おまけに達成の喜びは皆で分かち合える!

肥前名護屋城
……どう? あなた一人で準備を進めるより、
ずっと素敵な祭りになると思わない?

三原城
で、ですが……。

肥前名護屋城
アイドルってのは、皆を笑顔にする存在なのよ。
人も城娘も……別け隔てなくね。

肥前名護屋城
そんなあたしが、
誰かを踏み台にして成り立つ笑顔を受け入れると思う?
いいえ……ありえないわ、絶対に!

肥前名護屋城
以上のことから! あたしが祭りの準備を手伝わない、
という選択肢は消え去る、というわけ!
立場も役割も関係ないわ!

肥前名護屋城
ねぇ……雑賀城、貴方はどう思う?

雑賀城
…………。

雑賀城
そうだね……心から賛同する。

三原城
雑賀城さん……。

雑賀城
その考え……素晴らしいよ、本当に。

雑賀城
キミというあいどるの魅力に……心を奪われてしまいそうだ。

雑賀城
……ボクの推しが御坊ちゃんであることに、変わりはないけど。

肥前名護屋城
ふふ、言ってなさい! じきにその考えもひっくり返るわ!

三原城
肥前名護屋城さん……雑賀城さん……!

肥前名護屋城
さ、そうと決まれば、
ぼさっとしているわけにはいかないわね!
すぐに準備を始めましょ!

雑賀城
承知した……三原城、指示を頼む。

後半
肥前名護屋城

ふぃ~……思っていたよりも大仕事なのね、
祭りの準備ってのは。

雑賀城
そうだね。
こんなものを一手に引き受けようとしてたなんて、
三原城には感服するよ。

肥前名護屋城
形はどうあれ……誰かを楽しませたり、
喜ばせたりするためには、
大変な努力が必要ってことよね……。

三原城
…………。

三原城
お二人とも……本当に、
ありがとうございます。

肥前名護屋城
いいのよ、礼なんて。
あたしらが好きでやってることなんだから。

雑賀城
そうだね。
祭りが成功した暁に、互いを称え合うこと……。
そこを目指せばいいんだ。

三原城
そうですね。
お二人から申し出ていただいたことですから、
お礼は必要なかったのかも……。

三原城
……ですがこれで、
遠慮なくお二人をこき使うことができますよね。
祭りの開催に向けて!

肥前名護屋城
…………!

三原城
さぁ、休憩はここまでです。
準備が完了するまで、
容赦はいたしませんので……どうかお覚悟を!

雑賀城
ふ……分かってきたようじゃないか。

肥前名護屋城
ふふっ♪ それじゃ……、
皆でもう一汗かくとしましょうか!

炎天賑わす祭囃子 -離-

白帝城の誘いにより、彼女の御城へと転移する
こととなった一行。だがその頃、付近の森林にて
不穏な動きを見せる者たちがいた……!

前半
――白帝城付近の森林。

桃形兜
暑ゥ~……全身ガ沸騰シテルミタイダ……。

桃形兜
アァ……海ニ行キタイ……。
全身ズブ濡レニナッテ、泳ギ回リタイヨォ……。

烏帽子革張形兜
馬鹿ナコトヲ言ウナ。
俺タチガ気兼ネナク遊ベル海ガ、
此世ノドコニアルト言ウンダ。

桃形兜
ソ、ソウデスネ。
海ニ遊ビニイッタ兜タチガ、城娘ニ討タレタ、
ソウシタ報告ハ、後ヲタチマセン……。

烏帽子革張形兜
ソモソモ……。
海水浴ヲ楽シモウトイウ考エガ誤リ、浅ハカナノダ。

烏帽子革張形兜
海ニ入リタイカラ……ト、ノコノコ向カエバ、
ドノヨウナ最期ヲ迎エルカハ分カリキッテイル。

烏帽子革張形兜
頭ヲ使エル者ト使エヌ者……。
同ジ兜ノ中デモ、明暗ハソコデ分カタレル。

烏帽子革張形兜
コノ季節、誰モ彼モガ海ヤ浜ニ集マリ、
夏ノ行楽ヲ満喫シテイル。城娘モ例外デハナイ。

烏帽子革張形兜
シカシ、コノ場所……山中ハ、
海トハ対照的ニ手薄ニナルコトダロウ。
此地ヘ針路ヲトッタノモ、ソノ予想ニ基ヅイタモノ。

桃形兜
ナルホド! 山ニ潜メバ、
マッタリ夏ヲ楽シメルッテコトデスネ!

桃形兜
……ケド、今年ノ夏ハ海水浴オ預ケッテコトカァ……。

烏帽子革張形兜
贅沢ヲ言ウンジャナイ……一度ヨク考エテミロ。
海水浴ヲ楽シムコトニ、
命ヲカケルホドノ価値ガアルノカ?

桃形兜
ソレハ……!

烏帽子革張形兜
ソレニ……夏ラシイ遊ビハココデモ楽シメルダロウ!
スイカ割リニ花火! 川ノ水ヲ使エバ、サーフィンダッテ!

烏帽子革張形兜
城娘ガ不在ノ今……我々ノ夏ヲ邪魔スル者ハイナイ!
サァ、皆デ夏ヲ楽シムノダ!

兜軍団
御意ッ!!
  御意ッ!!
    御意ッ!!

白帝城
そうはさせるか……喰らえぇっ!

桃形兜
ウワアアァァァァッ!?

烏帽子革張形兜
ナ、何ダコレハ……水ノ竜巻……!?
マサカ、城娘カッ!?

白帝城
まったく、僅かな留守の間に湧き出すとは……。
油断も隙もないな、此奴らは。

殿
…………!

白帝城
……ああ、そうだな。
此奴らを片付けないことには、何も始まらない……。

白帝城
到着して早々すまないが……力を貸してもらえるか、皆?

後半
柳川城

皆さん、お疲れ様でした。
ひとまず、周辺の兜は全て撃退したようです……!

エゲル城
えぇ~……もうおしまいなの?
まだまだ遊び足りないのに……。

ノイシュヴァンシュタイン城
今は、白帝城さんの御城を守りきれたことを喜びましょう。
残党が残っていることを考えると、まだ油断できませんが……。

千狐
そうですね……千狐は引き続き、
周囲の気の流れに注意を払うことにいたします……!

白帝城
苦労を掛けたな……皆。

白帝城
さて、まずは私の御城に入り、
態勢を整えることにしようか……付いてきてくれ。

殿
…………!

――――

エゲル城
これが白帝城ちゃんの御城かぁ……素敵な場所だね~!

千賀地氏城
立派な木々でいっぱいだね、この山は!
こりゃ、木登り名人ちがちーの本領が発揮されまくっちゃうよぉ♪

三原城
三原はずっと海と共に生きてきたので、
どこもかしこも、新鮮な風景でいっぱいです。

肥前名護屋城
周囲を見下ろす眺めも最高ね!
何だか歌いだしたくなってきちゃうわ♪

ペテルゴフ宮殿
木々を吹き抜ける風に、虫の声……!
水が無いのは残念だけど、こういう夏の楽しみ方も悪くないわね♪

雑賀城
山を下れば、川も流れているようだ……。
往復の労はあるものの、水遊びで暑さを紛らわすこともできそうだね。

ペテルゴフ宮殿
まぁ! ということは、
水着も充分活躍するってことね♪
楽しみだわ!

殿
…………。

白帝城
待て、待て待て……!

白帝城
まだ兜の懸念は、完全に払われたわけではないんだぞ?
あまり遊ぶことに気をとられていては……!

千賀地氏城
堅いこと言わないでよ、白帝城ちゃん。
兜がいつ来るかなんて分からないんだし、
皆でずーっと気を張ってたら疲れちゃうっしょ。

雑賀城
そうだね……その意見に概ね同意だ。

雑賀城
……一部、羽目を外し過ぎている者もいるけど。

やくも
うおぉ! うおおおおぉぉぉぉぉ~~~~!

やくも
カブトにクワガタ、アブラゼミにツクツクボウシ!
この山はうちの楽園だにぃ~~~!

柳川城
やくもさん……。

雑賀城
今は千狐……しばらくしたら、ボク。
他の城娘たちも含め、
交代で周辺の警戒にあたれば問題はないだろう。

ノイシュヴァンシュタイン城
そうですね……私も協力いたしましょう。
白帝城さんと同じく、山地に築城された者として、
お力になれるかと思います。

白帝城
皆……。

エゲル城
そうそう! だから心配は要らないよ、白帝城ちゃん!

白帝城
…………。

白帝城
(其方の場合はむしろ、
 心配の種になりそうな気がするのだが……)

白帝城
だが……うむ、そうだな……。
過度に警戒をしても良いことがないのは事実だ。

白帝城
雑賀城の提案に従い、皆で周辺の警戒に当たることとしよう。

殿
…………!

白帝城
ああ……すまないが、よろしく頼む。

炎天賑わす祭囃子 -結-

さらなる兜の侵略に備えて、警戒を続ける殿一行。
その付近に集った兜の中にはどういうわけか、
不気味な笑みを浮かべる者の姿が……!

前半
――殿一行が兜を撃退してから、数刻後。

白帝城付近の森林――

烏帽子革張形兜
…………。

烏帽子革張形兜
フフ、フフフ……フフ……。

桃形兜
ワ、笑ッテル……。

桃形兜
マサカ、
コノ状況ヲ覆ス秘策デモアルノカナ……?

烏帽子革張形兜
…………。

烏帽子革張形兜
イヤ、モウココマデ一方的ニヤラレルト、
モハヤ笑エテクルナ……ト。

桃形兜
ソレジャ、秘策ハ……?

烏帽子革張形兜
アルワケナイダロ、ソンナノ。

桃形兜
デスヨネー……。

烏帽子革張形兜
ダガ、諦メルニハマダ早イ……!

烏帽子革張形兜
確カニ我々ノ手ハ付キタ……コレハ動カザル事実。

烏帽子革張形兜
シカシ……ソウナレバ自ズト、
ナスベキコトモ、明ラカニナッテクルノデハナイカ?

桃形兜
……ト、言イマスト……?

烏帽子革張形兜
コノ夏、俺タチハ……、
海水浴ヲ諦メテ山中ヘト逃ゲ込ンダ。

烏帽子革張形兜
城娘タチトノ遭遇ヲ避ケルタメニ、
痛ミヲ受ケ入レタノダ。
ダガ、ソノ結果ガコノ有様……。

桃形兜
ソレジャ、モウ逃ゲルシカ……!

烏帽子革張形兜
……逃ゲルダト?
逃ゲテ、逃ゲ続ケテ……辿リツイタコノ場所カラ、
何処ヘ向カウトイウノダ?

桃形兜
ソレハ……!

烏帽子革張形兜
コノ山中ハ、ヨウヤク見ツケタ最後ノ楽園……!
ココカラ逃ゲル選択肢ナド、俺タチニハ残サレテイナイ!

烏帽子革張形兜
城娘ト殿ヲ討チ……我々ノ夏ヲ勝利デ飾ルノダ!
モハヤ、ソレ以外ニ活路ハ無イ!

烏帽子革張形兜
サァ者共、立チ上ガレ!


――ザザッ!

兜軍団
ザザッ! ザザザッ!!

――――

その頃、殿一行は――

千狐
……コンッ!? 殿、この霊気は……!

殿
…………!

オオオォォォ――

ペテルゴフ宮殿
遠くの方から響き渡る声……それから地鳴り……。

殿
…………!

ノイシュヴァンシュタイン城
ええ、兜の軍勢が近づいてきているようです……!

雑賀城
またしても……凝りない奴らだね……。

エゲル城
でも、ここで兜を残さずこらしめてあげれば、
何の不安も無く、白帝城ちゃんの御城で遊べるってことだよね~?

千賀地氏城
だね、これは好機とも言えるわけだ!
メタメタにこらしめちゃおうよっ!

肥前名護屋城
とーぜんよっ!
あたしも力を貸すわ、さっさと片付けちゃいましょ!

三原城
白帝城さんの願いを成就させるためにも……、
ここは勝利しなければなりません! なんとしてでも!

殿
…………!

白帝城
勝手知ったる我が故郷、地の利は此方にある……。

白帝城
先陣は私が切ろう!
皆、私に付いてきてくれ!

後半
柳川城

はぁ、はぁ……。

ペテルゴフ宮殿
兜はこれで、全部かしら……?

千狐
ええ、そのようです。兜の霊気はもう感じられません……!

白帝城
私一人ではこの戦い、
乗り切ることはできなかっただろう。
皆……本当にありがとう。

肥前名護屋城
はぁ~……いい汗かいちゃったわ。
けど、これで思う存分に宴を――んっ?

(がさ、がさがさっ)

肥前名護屋城
……ちょっと待って!
あっちの茂みから気配を感じるわ!

殿
…………!

三原城
なんと……まさか、まだ兜の残党が――!?

雑賀城
こちらに向かってきているようだ……来るよっ!

(がさがさ、がさがさがさっ――)

やくも
…………だに?

柳川城
や、やくもさん……。

やくも
皆、息が上がっとるみたいやけど……どうしたんだに?

やくも
あ、それより――うちの収穫を見てほしいがや!
日の本じゃお目にかかれない虫を、えっぱい捕まえただに!

千狐
や、やくも……姿が見えないと思ったら、
ずっと虫採りに集中してたのね……。

殿
…………。

それから日は落ちて――

兜を撃退し憂いを払った一行は盛大な宴を開き、
思い思いの時間を過ごしていた――!

エゲル城
はーい、あたしの国から持ってきたワインだよ~。
皆、飲んで飲んで~♪

白帝城
む……ワインというものは、
あまり口にしたことが無かったが、悪くないな……。

エゲル城
でしょでしょ♪
お代わりはいっぱいあるから、
遠慮なく飲んじゃって~!

ノイシュヴァンシュタイン城
は、白帝城さん……。
エゲル城さんはああ言っていますが、
あまりグビグビ飲むものではないので、もう少しゆっくりと……。

――――

ペテルゴフ宮殿
ふふ……そろそろ花火の準備を始めましょうか。
ちがちーさん、手伝ってくれる?

千賀地氏城
ほーい、承知だよ~♪

雑賀城
ペテルゴフ宮殿たちが作った、この花火……、
見事な出来栄えだね……。

ペテルゴフ宮殿
……あら、雑賀城さん。花火に興味があるの?

雑賀城
ああ……火薬の調合は、
ボクの武器とも関わりが深いからね……。

雑賀城
ペテルゴフ宮殿……花火の準備、
ボクも手伝っていいかな?

ペテルゴフ宮殿
ええ、もちろん!
知りたいことがあったら、何でも聞いてちょうだい♪

――――

肥前名護屋城
いえええぇぇぇぇーい!

肥前名護屋城
今夜の肥前名護屋城は、
ゲリラライブでノンストップにオールナイトよ~~~♪

肥前名護屋城
即興だってなんのその!
聞きたい曲があったら、
なーんでもあたしにリクエストしなさーい!

――――

そして、さらに夜は更けて――

殿
…………。

白帝城
隣……失礼してもいいだろうか。

殿
…………。

殿
…………!

白帝城
感謝する……それでは……。

白帝城
賑やかだな……本当に。
あちらこちらから、絶えず声が聞こえてくる……。

やくも
千狐、千狐……肩に乗っかっとるそれはなんだに……?

千狐
ん……肩って――?

千狐
――きゃああぁっ!? 何なの!
黒光りしたのがモソモソしてるのー!?

柳川城
落ち着いてください、千狐さん。ただのカブトムシです……。

殿
…………。

白帝城
……ふふ。戦いが終わったばかりだというのに……。
皆、疲れを知らず遊び倒しているようだ。

殿
…………?

白帝城
いや、迷惑なことなどまったくないぞ。
むしろ、礼を言いたいと思っていたところだ。

白帝城
…………。

白帝城
山頂という立地もあって、
私の御城は普段……本当に静かなんだ……。

白帝城
来客すら珍しく……私と同じく本を好む城娘や、
成都城などの友人がたまに訪れるのみ。

白帝城
だから今……人が居て、賑やかで……笑顔で溢れている。
それだけのことが、楽しくてたまらないんだ。

殿
…………。

白帝城
それに、今日は誰も……私を病人のように扱わなかった。
皆、疲れ果てるまで遊ぶことが当たり前のように……私と接してくれた。

白帝城
それが新鮮で……何より、嬉しかった。

白帝城
仮にこの後、今晩楽しんだ分の対価として……、
体調を崩すことになったとしても、
私はきっと後悔はしないだろう。

殿
…………。

白帝城
……ああ、望みは叶った。
私の願いを十分以上に越える形で……。

白帝城
背中を押してくれた三原城には、心から感謝したい。

殿
…………!

白帝城
……む。ああ、そうだったな。夏はまだ終わっていない。

白帝城
今宵も……明日も、この時間はまだまだ続く……。
殿も存分に、私の御城での一時を楽しんでいってくれ。

白帝城
そして後に……此地での思い出が、
其方にとって掛け替えのないものになったなら、私は嬉しい。

殿
…………。

殿
…………!

炎天賑わす祭囃子 -絶弐-

白帝城の御城にて盛大な宴が催された夜の
明くる日の朝。妙な物音と笑い声を聞いた
白帝城は、眠りから目覚める……。

前半
――白帝城の御城で盛大な宴が開かれ……、
疲れ切った城娘たちは気を失うように、眠りに落ちた。

そんな夜が明けた、翌朝のこと――

エゲル城
あははっ、冷た~い♪

エゲル城
ほらぁ、全然危なくなんかないでしょ?
ノイシュちゃんもおいで~♪ 

ノイシュヴァンシュタイン城
確かに、危険そうには見えません。ですが……。

白帝城
んぅ……?

白帝城
エゲル城とノイシュヴァンシュタイン城の声……。

白帝城
まだ早朝だと言うのに、
二人とももう起きているのか――痛っ!?

白帝城
うう、頭痛が……。
エゲル城に勧められるままワインを飲んでしまったが、
少々量が過ぎたか……。

白帝城
その上、夜を徹する勢いではしゃいだのだから……無理もない。
たとえ身体が弱くなくとも、寝込んでしまいそうだ。

白帝城
申し訳ないが、もうしばらく休ませてもらおう……。

エゲル城
あはは……ほらノイシュちゃん、とってもきもちいいよー?

ノイシュヴァンシュタイン城
その……エゲル城さん!
私……軽率な行動は控えた方が良いと思うのですが……!

ぱしゃぱしゃ……ぱしゃぱしゃ……。

白帝城
楽しげな声に、水音……。

白帝城
心地の良い音だ。目を瞑って、
耳を傾けていると……自然と眠りに……。

白帝城
……ん? 水音?

白帝城
待て……どうして水音が聞こえるのだ……?

――――

白帝城
こ、これは……!

白帝城
私の御城が、水に沈んでいるのだが……!?

エゲル城
あ、白帝城ちゃん! おはよ~♪

エゲル城
驚いた?
目が覚めたら、こんなことになってたの!
あはは、びっくりだよねぇ~。

ノイシュヴァンシュタイン城
びっくりというか不自然……いや、
もはや異常事態だと思うのですが……。

白帝城
こ、洪水だろうか……となると、長江の水がここまで?

ノイシュヴァンシュタイン城
川までの距離を考えると……、
雨がいくら降っても、これほどの事態になるとは、
とても思えません……。

白帝城
そうだな。この規模……『水たまりができた』というより、
私が建つ白帝山が巨大な水たまりの中に浮かんでいる、
という方が正しい……雨が降った程度では、こうはならないはず……。

ノイシュヴァンシュタイン城
この様は、さながら浮城……。
見れば見るほど、謎は深まるばかりです……。

エゲル城
(ぷかー)

エゲル城
そんなに難しく考えなくていいと思うんだけどなぁ~。
誰も困ったりしてないし、
白帝城ちゃんの御城で海水浴気分が味わえるんだし!

白帝城
むぅ……。

白帝城
確かに、危急の事態ではないのかもしれないが、
放置することはできない……。

白帝城
悪い方向へ転ぶ場合に備えて、
周辺を調査しておきたいな……。

ノイシュヴァンシュタイン城
賛成です。ひとまず、
この辺りを巡りつつ情報を集めてみましょう。
新たな事実が見えてくるかもしれませんから。

白帝城
よし……それでは、出発しよう。

後半
白帝城

…………。

ノイシュヴァンシュタイン城
…………。

エゲル城
(ぷかー)

エゲル城
あ、おっかえり~。情報は掴めた?
こっちは何も変わりなかったけど……。

白帝城
いや……何も分からなかった。

白帝城
単に私の御城が建つ山が、半ば水没している。
……それが確かになっただけだった。

ノイシュヴァンシュタイン城
何かを見落としているような、
不思議な感覚もあるのですが……。

エゲル城
きっとあれだよ、夢オチって奴じゃないかな!

白帝城
ゆ、夢オチ……?

エゲル城
そう! 誰かの願いが、この世界を作ったんだよ、きっと!
あたしはその説に一票!

エゲル城
あたしたち城娘だって人々の願いで生まれたわけだし、
誰かの願いが『世界』っていう形をなしたとしても、
不思議じゃないでしょ?

ノイシュヴァンシュタイン城
願いによって作られた世界、ですか……。

白帝城
例えるなら、海に面する三原城で過ごした一時……。
そこで生まれた憧れが、この世界を作ったのか。

白帝城
それが確かだとしたら……、
私にこの異変の原因を突き止めることは、できないだろうな……。

エゲル城
そう! だからこの事態は、
あたしたちの手でどうしようも無いことなんだよ~! たぶん!

エゲル城
だから白帝城ちゃんも遊ぼうよ~!
あたしと一緒に――えいっ♪

白帝城
――ちょ、エゲル城……きゃあぁっ!?

ざっぱーん!!

ノイシュヴァンシュタイン城
……白帝城さんっ!

エゲル城
白帝城ちゃんは賢すぎるの! 考え過ぎなんだよ!

白帝城
賢すぎる……?

エゲル城
たまには頭を空っぽにして、
やりたいことをやってみようよ! あたしみたいに!

エゲル城
だってほら……今、目の前に、
こんなに素敵な景色が広がってるんだよ?
それを逃しちゃうなんてもったいないよ!

白帝城
…………。

ノイシュヴァンシュタイン城
白帝城さん……。

白帝城
そうだな……確かに、エゲル城の言う通りだ。

白帝城
山頂にそびえる御城、その山を囲う長江の豊かな水。
この素晴らしい景色を楽しむことに……、
今の今まで、気が回っていなかった。

白帝城
……よし、ものは試しだ。エゲル城の言うことに従ってみよう。
一度考えることは止め、
浮城と化したこの状況を楽しむことにしようじゃないか。

白帝城
ノイシュヴァンシュタイン城も……さぁ、一緒に。

ノイシュヴァンシュタイン城
…………。

ノイシュヴァンシュタイン城
ふふ、承知しました……私もお付き合いしましょう。

エゲル城
それじゃーまずは、あの岩場まで競争ね!
よ~い……スタート!

――――

――――

白帝城
んっ……痛っ……!

白帝城
ふ……頭痛の激しさは夢が覚めても変わらず、か……。

千賀地氏城
へいへいへ~い!

千賀地氏城
お寝坊なんてらしくないね、白帝城ちゃん!
朝だよ朝、うぇいくあ~っぷだよー♪

白帝城
ん、千賀地氏城……?
――ぐふっ!?

千賀地氏城
目覚ましちがちーの見参だよ!
起きて起きて、白帝城ちゃん!

白帝城
重……重いぞ、千賀地氏城……。

三原城
千賀地氏城さん……のしかかったままですと、
白帝城さんも身体を起こせませんよ……。

白帝城
なんだ、何事だ……?

千賀地氏城
寝てる場合じゃないんだって、白帝城ちゃん!
出陣の時間だよ!

白帝城
出陣……なんだ、戦か?

千賀地氏城
ん~、まー……そうだね! 戦!
これから始まることは、ある意味では戦と言えるかもっ!

千賀地氏城
この後ね、皆もっかい日の本に転移するの!
お頭の所領の近くにおっきなビーチがあって、
そこで一緒に遊ぶんだって!

千賀地氏城
一番最後に思いっきり賑やかにして、
この夏を楽しく締めくくろうってわけ!

千賀地氏城
アタシたち以外にも、
城娘がいっぱい集まるんだよ……どう?
わくわくするっしょ?

白帝城
再び日の本に、だと……?

三原城
その……もちろん、
無理に白帝城さんを、お誘いするつもりはありません。

三原城
お身体に障りがあるようでしたら……、
白帝城さんはこのまま、お休みいただいても……。

白帝城
…………。

白帝城
ふ……まったく、
どれほど遊べば気が済むのだ、其方らは……。

白帝城
後先考えずに遊び呆けて、
後ほど悔いる羽目になるのは御免だぞ……私は……。

白帝城
…………だが。

白帝城
だが……ここで断ってしまう方が、
よっぽど深い後悔を強いられそうだな……。

千賀地氏城
……おおっ!

白帝城
いいだろう……夏が終わるまで、
私もとことん付き合おうじゃないか……。
日の本に行くというのなら、連れていってくれ。

三原城
白帝城さん……!

千賀地氏城
ノリノリだねぇ、白帝城ちゃん!
そんじゃすぐに出発の準備を始めようよっ!

白帝城
よし、分かった……。
分かったからまず、私の上からどいてくれ……。

――――

千賀地氏城
えぇ、なにこれ!
でっかいナメクジの浮き輪!?

延岡城
ナ、ナメ……!
ちょっと、失礼なこと言わないでください!
この浮き輪は、般若のお面を模していて――

殿
…………。

殿
…………!(ばばーん)

やくも
おおっ、殿さんもお着替え完了!
泳ぐ準備万端だに!

柳川城
殿……その格好は……!?
まま待ってください、突然そんな御姿を見せられたら、私……!

浦添城
柳川城ちゃん……目が血走ってるさー……。

聚楽第
あら……私の麦わら帽子は何処かしら?
どなたかご存知ありませんか……?

甘崎城
おらおら~! 水軍城の大先輩、
甘崎城が満を持して上陸ですよ~!

甘崎城
ここに到着するまでの間に、
暇そうな城娘を片っ端から乗っけてきてやったです!

甘崎城
わたしが来たからには、
この浜辺が日の本のどこよりも、
熱く盛り上がることは確定なのですよ~!

――こうして、一同に介した城娘・神娘たちは、
疲れを忘れたかのように騒ぎ、浮かれ……。

この浜辺は、夏一番の熱気と賑わいに包まれるのだった――



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