ストーリーテキスト/武神降臨！藤堂高虎

武神降臨!藤堂高虎

伊予国に巨大兜が出現したとの報あり。
武神降臨の儀を経て絶大な力を得た
強敵を討伐せんがため、いざ出陣せよ。

前半
――情けない。 ただうつらうつらと日々を生きるだけなど、家畜でもできる。 自分が生きた証を残さんとするなら、己の信条を――。 藤堂高虎 ……。 ？？？ ようやっと、目がサメたか。 藤堂高虎 …………。 藤堂高虎 ……他の者より伺っておりましたが、 やはり貴方様が見送ってくださるのですね。 ？？？ ……まぁ、ナ。 ？？？ 聞いた話じゃ、あの大戦においちゃお前は敵方についてたラシイし、 実際のトコロ俺にいられたってイイ心地はしねぇダロウが……。 ？？？ マ、これもある種ノ儀式ってコトで、 ガマンしてくれや。 藤堂高虎 …………。 ？？？ …………。 藤堂高虎 …………。 ？？？ ……ま、お互いこんな在様なんだ。 イマサラ何をイウでもねぇよな。 藤堂高虎 ……ですが、あの時の忠節に偽りはあり申さぬ。 藤堂高虎 ただ、今はその忠心の矛先が異なるということ……。 どうか、ご容赦願いたく候。 ？？？ 言われずトモ解っているサ。 ？？？ ソレに……、 ？？？ そうしたお前ノ言動も、あの御方の望みに適うモノだろうしな。 藤堂高虎 …………。 ？？？ ホレ、行ってこい。 ？？？ せっかくの晴レ舞台なんダ……思う存分戦ってキな。 藤堂高虎 ……承知。 藤堂高虎 ……では、者ども。 死地へと、参ろうぞ。 兜 ――御意ッ！ 兜軍団 死ヘト向カハバ、生トナサン！ 死ヘト向カハバ、生トナサン！ 死ヘト向カハバ、生トナサン！ 数日後、所領――。 鶴島城 お初にお目にかかります、殿。 伊予国が城娘、鶴島城と申します。 殿 …………。 鶴島城 此度は、お願いがあって参りました。 鶴島城 伊予国に、武神化した巨大兜が出現したため、 ご助力をお願いしたく参った次第です。 殿 …………！？ やくも ……あれ？　今ここに鶴島城がおるんやったら、 今は誰が巨大兜と戦ってるがや？ 鶴島城 現在は、母と姉が迎撃しております。 二人の名代として、私が選ばれました。 千狐 伊予国の親子……というと、 もしかして、あなたは？ 鶴島城 はい、お察しいただいた通り、 母は板島丸串城、姉は宇和島城にございます。 やくも えぇっ……あの一家かや……。 やくも ……なぁ、千狐。 うち、いまいち鶴島城が信じられんのやけど……。 千狐 こ、こら！ 本人の目の前でそういうことを言うんじゃないの！ 鶴島城 いえ、いいんです。 二人を知っているなら、そういった反応も当然でしょうから。 鶴島城 ですが、私は二人の背を見て育ちましたゆえ、 嘘を使うべき場と、そうでない場を弁えているつもりです。 鶴島城 それでも信じられないというのでしたら、 信じていただけるために何でもいたしましょう。 柳川城 （何て真っすぐな眼差し……） 柳川城 ……殿、私には彼女が嘘をついているようには思えません。 殿 …………！ 鶴島城 ……信じていただき、ありがとうございます、殿。 柳川城 そういえば、まだ伺っておりませんでしたが、 巨大兜の冠する名は……？ 鶴島城 はい。 藤堂高虎、と。 鶴島城 築城の名手にして、己の実力一つで生き抜いてきた剛の者……。 鶴島城 おそらく以前、母や姉と共に殿は戦ったことがございましょうが、 あの時とは違う、と二人が申しておりました。 鶴島城 どうぞ、油断なきよう。 殿 …………！ 千狐 それでは、皆さんの準備が整い次第、 すぐにでも出立と参りましょう！ ――伊予国。 板島丸串城 宇和島城！　どんどん撃ちなさい！ 宇和島城 もちろんですよぉ！　お母さん！ 藤堂高虎 ……板島丸串城に、宇和島城。 藤堂高虎 城娘として顕現せし我が城たち……。 暫時の刻を経てなお、この程度か。 藤堂高虎 ――笑止千万！ 宇和島城 ぐっ……！ 板島丸串城 ……！ 宇和島城！　大丈夫！？ 宇和島城 うぅっ、……大分キツいかも……。 宇和島城 と見せかけてっ……砲撃ッ！ 藤堂高虎 甘い。 藤堂高虎 はぁぁぁぁっ！ 宇和島城 きゃああっ！ 板島丸串城 宇和島城っ！ 板島丸串城 このぉっ！ 藤堂高虎 当たらぬ。 藤堂高虎 ふんっ！！ 板島丸串城 くぅっ……！ 藤堂高虎 他愛もない……。 藤堂高虎 常にありとあらゆる事態を想定し、負ける覚悟をしておく。 さすれば如何なる事態にも狼狽えず、己を高めることもできよう。 藤堂高虎 貴様たちは某が造った城の名を持つ存在だ。 その程度のこと、肝に銘じていないわけではなかろう？ 板島丸串城 くっ、父親のようなことを言ってぇ……！ 兜を父に持った覚えはないわ……！ 宇和島城 そうですよ！　お母さんのお父さんってことは、 兜が私のおじいちゃんってことになっちゃいますからね……！ 藤堂高虎 ……まだ童のように親子ごっこをしていたか。 藤堂高虎 嘘をついて軽佻浮薄に振る舞い、互いに気に入られようとする姿のなんと浅ましき……。 我が城ながら、呆れのため息しか出ぬわ。 宇和島城 ……親不孝は人じゃないって、本物の高虎様は嘆いてたよ。 宇和島城 だから、私たちをそう評してる時点で、 あんたも高虎様なんかじゃないんだから！ 藤堂高虎 親不孝は人に非ず……然り。 藤堂高虎 だが、貴様らは人ではない。 擬きに過ぎぬ。 宇和島城 それでも……それでも、私たちは……！ 藤堂高虎 戯言はもうよいか？ 藤堂高虎 ……さぁ、板島丸串城、まずは貴様だ。 あの時改修されて兜のものとなっていれば良かったと、後悔させてくれようぞ。 板島丸串城 上等よ。やれるもんならやってみなさい。 あんたの顔面に風穴開けてやる……。 藤堂高虎 この期に及んで虚勢を張るとはな、 その威勢だけは評価してやっても良かろう。 宇和島城 お母さん……！ 藤堂高虎 まだ此奴を母と呼ぶか……。 藤堂高虎 それなら、母と慕う相手の散りざま、よく目に焼き付けておけ。 宇和島城 させませんよぉ……っ！ お母さんには、これ以上手は出させませんっ……！ 板島丸串城 馬鹿っ！　前に出るんじゃっ……！ 藤堂高虎 愚昧な城娘ども……我が手によって廃されるがいい！ 宇和島城 …………っ！ 板島丸串城 （これは……あたしもこの子も、どちらが食らっても耐えられない、かな） 板島丸串城 （なら、せめてこの子だけでも――） 藤堂高虎 …………っ！ 宇和島城 あ……ああっ……！ 藤堂高虎 …………。 藤堂高虎 ……そうか、まだ、貴様がいたか。 我が一撃、防がれるとはな。 鶴島城 間一髪、でしたけどね……。 宇和島城 つーちゃん！！ 鶴島城 母さん、姉さん！ 増援を呼んで参りましたよ！ 殿 …………！ 板島丸串城 殿……！ 柳川城 板島丸串城さん、宇和島城さん！ お待たせしました！ 宇和島城 柳川城ちゃんたちも、来てくれたんだね……！ 宇和島城 よーし！　これぞ牛鬼に金棒って奴ですよぉ！ 宇和島城 家族三人集まったことですし、どどんと行っちゃいましょー！ 板島丸串城 ……全く。この子はすぐ調子に乗るんだから。 宇和島城 おせっきょーは後で、ですよー！ 鶴島城 姉さん、援護します！ 板島丸串城 ……あーもう、この子たちは！ 板島丸串城 絶対に無理だけはするんじゃないのよ！ 藤堂高虎 ……片腹痛い茶番だな。 千狐 ……これは！？ 巨大兜の霊力が、増幅していく――！？ 藤堂高虎 それぞれに得たるところがあるというのは、 裏を返せば必ず弱みがあるということに他ならぬ。 藤堂高虎 嘘で己を飾り立てるしかできない貴様らは、 逆を申さば正攻法に弱いということ。 藤堂高虎 ……良かろう、正面から堂々と、貴様らを打ち破ってやろう！ 板島丸串城 だったら見破ってみなさい。 宇和島城 私たちの、 鶴島城 嘘を！ 藤堂高虎 後悔させてやろう、素直に散っていれば良かったと！
後半
板島丸串城 今よ！一斉に畳みかけなさい！ 宇和島城 どどどどどーん！ 藤堂高虎 ぐぅぅぅぅぅっ……！ 藤堂高虎 おのれぇっ……！ 板島丸串城 くあぁぁっ！！ 宇和島城 お母さっ……！ 藤堂高虎 去ねぇぇぇぇぇぇぇい！！ 宇和島城 あうぅっ！！ 鶴島城 くぅっ……勢いが、止まらない……！ 藤堂高虎 まだまだぁ……！ 藤堂高虎 石を積み上げるように……、 才を掘り下げるように……！ 藤堂高虎 戦国乱世を生きて来た某が……、 ここで倒れるわけにはいかぬ……！ 宇和島城 てぇぇぇぇぇぇぇぇい！！ 藤堂高虎 名を……才を……！ 藤堂高虎 何もない某には……、 それしか……ないのだ……。 鶴島城 このぉぉぉぉぉぉっ！！ 藤堂高虎 この痛苦は……この不穏は……、 いずこより来るものか……。 藤堂高虎 某は……立派な藤堂家の主に……。 板島丸串城 いい加減っ……倒れなさあぁぁぁぁぁい！ 藤堂高虎 城づくりの腕を磨いたのは……、 いずれ来る我が主のため……。 藤堂高虎 そう……某には……何も非は……。 柳川城 巨大兜が地に落ちました！　今なら……！ 藤堂高虎 地に……落ちた…………？ 藤堂高虎 違う……。 一言半句たりとも、嘘は……。 藤堂高虎 …………いや。 板島丸串城 宇和島城、鶴島城、行くよ！ 最後の力、振り絞りなさい！ 宇和島城 合点！ 鶴島城 承知です！ 藤堂高虎 鈴木重意……。 藤堂高虎 秀長様の命と言えど、嘘は嘘……。 藤堂高虎 武士の生きざまには違いなかろうが……、 某の信条では……。 板島丸串城 ありったけを込めて放つ！ 宇和島城 でっかくどっかーーん！！ 鶴島城 斬り抜けるっ！！ 藤堂高虎 ぐっ…………おぉ…………。 藤堂高虎 う………………。 柳川城 やりましたか！？ 千狐 いえ……まだですわ！ 藤堂高虎 ……それ……がし……の……。 藤堂高虎 いき……ざまは…………。 鶴島城 えっ……？　母さんの方に、這ってきてる……？ 宇和島城 …………！？ 板島丸串城 ……いいよ、大丈夫だから。 宇和島城 お母さん……？ 藤堂高虎 はぁ……はぁ…………。 藤堂高虎 ちちうえ…………それが、し……は…………。 藤堂高虎 あな、たの…………むすこ……として…………。 藤堂高虎 はじない……ように…………ふる、まえ……ました……か……？ 板島丸串城 …………。 藤堂高虎 いたじま…………まる、ぐしじょう、は…………。 藤堂高虎 それ、がしが…………つくりし…………。 藤堂高虎 いほう……となっ、ても…………かならず……かんせいを…………。 藤堂高虎 まな、むすめも、どう…………ぜん……。 板島丸串城 ……虎高様は、貴方を誇りに思うと、仰っていましたよ。 板島丸串城 だから、もう……。 板島丸串城 もう……お休み、与吉。 藤堂高虎 あぁ………………。 藤堂高虎 わが…………しろ、たち………………。 藤堂高虎 ………………………………。 千狐 ……巨大兜の霊気の消滅を確認しましたわ。 柳川城 では、討ち果たしたのですね！ 千狐 はい！　もう藤堂高虎の名を冠した巨大兜の脅威に怯えることもありません！ 殿 …………！ 板島丸串城 ……おっ、と。 鶴島城 母さん、大丈夫？ 板島丸串城 ん……。 板島丸串城 ちょっと、体が辛いかな。 鶴島城 ……母さんのちょっと、はたくさん、ってことですからね。 分かってるんですから。 板島丸串城 はは……。 あんたも本当、しっかり者に育ったねー……。 鶴島城 親の教育のお陰でしょうとも。 宇和島城 おねーちゃんは？ 鶴島城 反面教師ですねぇ。 宇和島城 えー……。 鶴島城 ……ということで殿、母をよろしくお願いいたします。 殿 …………？ 板島丸串城 え？　ど、どういうことよ？ 鶴島城 折角の機会なんですから、 殿の所領で、手当てしてもらうついでに少し療養してきてください。 鶴島城 伊予は、引き続き私と姉さんが見ますから。 鶴島城 …………。（ちらっ） 宇和島城 …………。 宇和島城 そうだよ、お母さん。 あんなに私たちのことちゃっかり庇っててくれたんだから。 宇和島城 お陰で私たちはまだちょっとは動けるけど、 もうお母さんは立ってるのもやっとでしょ？ 板島丸串城 ありゃ、バレちゃってたの……。 まぁ、さすがにあんたたちなら気づくわよね……。 宇和島城 そりゃあ、 鶴島城 娘ですから。 柳川城 ふふっ……。 そういうことでしたら、任されましょう、殿。 殿 …………！ 板島丸串城 ごめん、世話になるよ……。 やくも 気にすることないだにぃ！ 千狐 では、板島丸串城さんの手当てのためにも 急ぎ所領へ帰還するとしましょう！ 千狐 コンッ！　秘技・時空転移術なのぉーーっ！！ …………。 ……………………。 ………………………………。 ――情けない。 ただうつらうつらと日々を生きるだけなど、家畜でもできる。 自分が生きた証を残さんとするなら、己の信条を――。 鶴島城 …………。 鶴島城 ……行きましたね。 宇和島城 うん、もう大丈夫だと思うよ。 宇和島城 ……で、つーちゃん、どうしたの？ 宇和島城 何か話したそうな顔してたから残ったけど……。 話すならお母さんと一緒に行った方が良かったんじゃ……。 鶴島城 ううん、あんなに母さんには無理させちゃったんですから。 それに……。 宇和島城 それに？ 鶴島城 ちょっと……この考えを今の母さんに聞かせるのは、酷かな、って。 宇和島城 酷……？ 藤堂高虎 …………。 鶴島城 …………。 宇和島城 ……え、巨大兜の残骸がどうかしたの？ 鶴島城 なんというか……、 鶴島城 納得、しきれなくて……。 宇和島城 納得……？ 藤堂高虎 …………。 宇和島城 ……綺麗に意思も霊気も消えてるみたいだし、 魂の残滓だってないけど……。 鶴島城 ……そう、残滓すらないんです。 鶴島城 普通、魂が消える時ってこんなに綺麗に消えきるものなんでしょうか？ 宇和島城 それは……あたしにもわかんないけどさ。 宇和島城 でも、あれだけ末期を迎えたような振る舞いをしてたんだし、 完全に霊気を消すにしてもそんな擬態ができるもの？ 宇和島城 いくら真似してる偽物だったといっても、本元は 『一言半句たりとも嘘を言うな』を信条の一つにしている高虎様だよ？ 鶴島城 擬態じゃないと思います……。 霊気を完全に隠しきれるような権能を持ってるとは思えませんし……。 鶴島城 でも……。 宇和島城 ……気にしすぎじゃない？ 鶴島城 うーん…………。 宇和島城 ……ほら、兜たちに荒らされた後片づけしなきゃ。 行こう、つーちゃん。 鶴島城 ん……それもそうですね……。 鶴島城 （何だろう……何が引っかかってるんだろう……） 鶴島城 （高虎様は……合理主義で……築城の名手……） 鶴島城 （それに、堅実で、まめで……） 宇和島城 『武士たるもの、七度主君を変えねば武士とは言えぬ』……か。 鶴島城 え……？ 宇和島城 ん？　あぁ、ほら、高虎様いつだったか言ってたじゃない。 宇和島城 高虎様らしい言い草だなぁって、ふと思い出しちゃって……。 鶴島城 …………。 鶴島城 （兜は……本物の武将たちの真似をする……） 鶴島城 （高虎様の真似をするなら……この巨大兜は……） 宇和島城 つーちゃん……。 鶴島城 あ、はい……。 鶴島城 ごめんなさい。 今行きますね、姉さん。 藤堂高虎 …………。

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