ストーリーテキスト/桃山は淑気に満ちて

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目次

桃山は淑気に満ちて[]

桃山は淑気に満ちて -前-

備中松山城の提案により、山城国へと転移した
一行。その先では、働き者で知られる徳川伏見城が
珍しく、暇を持て余しゴロゴロとしていたが……。

前半

舞台は変わり……山城国。

静まり返った此地にて、ぼんやりと空を眺める城娘たちが居た――

徳川伏見城
……はぁ。

徳川伏見城
退屈だねぇ、一乗谷城ちゃん。

一乗谷城
……ふふ。新年早々、元気がありませんわね?

一乗谷城
この退屈を味わうのもお正月の楽しみ方の一つ……。
日頃忙しくされているのですから、
お正月くらいはのんびりしてくださいな。

徳川伏見城
うん……そうだね。
こんなにのんびりすることなんて、めったに無いもん。

徳川伏見城
ただ……なんだか落ち着かなくて……。

一乗谷城
ふふ……徳川伏見城さんには、
身近な場所に良い手本がいらっしゃるじゃありませんか。

一乗谷城
ここはお姉様を見習って、
思う存分ゴロゴロしてみてはいかがでしょう?

徳川伏見城
指月姉様を見習って……かぁ。

徳川伏見城
確かに、ゴロゴロすることに掛けては、
姉様の右に出る城娘はそうそう居ないだろうけど……。

徳川伏見城
……はぁ。なーんか元気が湧いてこないんだよねぇ……なんでだろ。

一乗谷城
…………。

一乗谷城
(それはやはり、
 お姉様たちとの別行動が増えたからでは……)

一乗谷城
(と言いたいところですが……そう尋ねたところで、き
 っと徳川伏見城さんは認めないでしょう)

一乗谷城
(聞くところによれば……先日、
 山城国で起きた妖怪騒動の後、お姉様との関係に進展があったとか)

一乗谷城
(あんなに世話を焼いていたお姉様がたと、距離を置いてみたり……、
 徳川伏見城さんの中でも、思う所があるのかもしれませんわね)

一乗谷城
私にも、何か力になれることがあれば良いのですが、さて――

一乗谷城
――あら。何でしょうか、あの光は……?

徳川伏見城
光……? あ、ほんとだ。
不思議だね……それに、段々明るくなって――

千狐
――コンッ!! 転移成功なのっ!

殿
…………!

やくも
おせち、お餅、お雑煮っ!
宴はどこだに、どこだにぃ~!!

徳川伏見城
殿や千狐ちゃん、やくもちゃん……!
それから城娘が……ひぃ、ふぅ、みぃ――

徳川伏見城
――い、一乗谷城ちゃん。これは……。

一乗谷城
……はい。どうやら、
しばらく退屈せずに済みそうですわね。

――――

徳川伏見城
それで、この騒ぎはいったい……?

虎臥城
松山っち! ささ、あのお手紙を!

備中松山城
は、はいっ……。

備中松山城
不躾に申し訳ありません、徳川伏見城さん。
実は先日、指月伏見城さんよりこのお手紙を頂きまして……。

徳川伏見城
ん……お手紙? 姉様から……? ええっと――

指月伏見城
ひまならこい。
それなりにもてなす。
              指月伏見城

徳川伏見城
…………。

一乗谷城
これは……。

徳川伏見城
なるほど。そういうことだったんだ……。

宇和島城
ですが、妙ですね。
主催にあたる指月伏見城ちゃんの姿が見えませんが……?

錦城
木幡山伏見城ちゃんの姿も見えないわね。
久しぶりに会えると思ったんだけど……。

七飯台場
うん……辺りはしぃーんって静まり返ってるでしょ。

一乗谷城
実は……指月伏見城さんは今、出掛けているのですわ。

殿
…………!

大宝寺城
お出掛け……ってことは、留守なの!?

徳川伏見城
年越しの瞬間はね、ここで盛大に祝ったんだ。
そこまでは、いつも通りだったんだけど……。

徳川伏見城
……招待客の中に、
異国に詳しい子が何人か居てね。
姉様の好きな甘味の話で盛り上がったの。

備中松山城
甘味の話……。

虎臥城
なんだか……その後の展開が読めるような……。

一乗谷城
そうしたら……指月伏見城さんが、
妙なやる気を見せ始めて――

――――

指月伏見城
年明けを祝して、甘味食い倒れ行脚を催すのじゃ!!
日本全国……いや!
必要とあらば海の向こうであろうと津々浦々じゃ!

指月伏見城
ついでに出会った兜を討ち倒せば、文句もなかろう!
さぁ出陣! 出陣じゃー!

木幡山伏見城
おぉーー!

徳川伏見城
――っていう調子で、
木幡山姉様を引き連れて出発しちゃったの……。

一乗谷城
ですから、大変申し訳ないのですが、
しばらくは帰ってこないのではないかと……。

やくも
なんと行きあたりばったりな……。
これにはさすがのうちもびっくりだに。

千狐
ある意味、期待を裏切らないというか……。
いつでも予想の斜め上を行く方なの。

柳川城
つまり、備中松山城さんに手紙を出したことは……?

徳川伏見城
多分、忘れちゃってると思う……ごめんね。

備中松山城
……いえ、悪いのは私の方です!

備中松山城
年が明けてしばらくが経った今頃に赴くとは、
指月伏見城さんも予期していなかったでしょう……。

備中松山城
そもそも、指月伏見城さんからのご招待を、
幾度も無視してきたのは私の方ですから……。

一乗谷城
備中松山城さん……。

殿
…………。

柳川城
はい。何にせよ……、
これ以上お手数を掛けるわけにはいきませんね。

虎臥城
だね……この続きは、場所を移してやることにしよっか。

備中松山城
本当に……申し訳ありませんでした、徳川伏見城さん。
すぐに失礼しますので――!

徳川伏見城
――待って待って!
そんなに急いで帰ることないじゃない!
あたし、みんなを追い返すつもりなんてないよ!

備中松山城
ですが、徳川伏見城さんに、
これ以上ご迷惑を掛けるわけには……!

徳川伏見城
ちょっと驚いちゃっただけだよ! 迷惑だなんて全然!

一乗谷城
ええ。むしろ私たち……、
することがなくて苦しんでいたくらいですもの。
賑やかになるのは大歓迎ですわ。

殿
…………?

徳川伏見城
うん、ほんとだよ!
お正月休みもまだ残ってるんだよね!
だったら少しの間だけでも、一緒に過ごせたら嬉しいな♪

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
そうですね。
それではお二人のお言葉に甘えて、
しばらくお邪魔させていただきましょうか。

やくも
やっただにー!
京の都で正月ぱーてぃーだにぃ~!

備中松山城
ありがとうございます、徳川伏見城さん。
貴方にとっては、突然のことなのに……。

徳川伏見城
言ったでしょ、あたしたちにとっても賑やかなのは大歓迎だって!
それに、予期しない事態には慣れっこなの。姉様たちのお陰でね。

備中松山城
徳川伏見城さん……!

徳川伏見城
ということで、今日は思う存分楽しんでいって!
盛大なおもてなし……とはいかないけど、
一緒に良い思い出が作れると嬉しいな♪

徳川伏見城
改めて……みんな。明けましておめでとう♪

殿
…………♪

一乗谷城
では、広間へご案内しますわ……さ、こちらへどうぞ♪

後半

やくも
もぐもぐもぐ……もぐもぐ……。

やくも
…………。

やくも
…………ごくん。

やくも
もぐもぐ……もぐもぐもぐ……。

宇和島城
す、凄い勢いですね……やくもちゃん。

千狐
相変わらずやくもは、
食べ物が絡むと遠慮が無いんだから……。

――――

徳川伏見城
――追加の料理の手配はこれでよし、と。
後は、空いた器を下げて――

一乗谷城
ふふ。静まり返っていた城内が、
一瞬で賑やかになりましたわ……。

一乗谷城
楽しそうですわね、徳川伏見城さん……。
先程よりもずっと、生き生きしているように見えます。

徳川伏見城
うん……。やっぱりあたしには、
こっちの方が性に合ってるみたい。

徳川伏見城
まぁ、そのきっかけが、
姉様の送った招待状っていうのは……ちょっと複雑だけど。

一乗谷城
お姉様がたがお帰りの際には……、
また、ひと騒動ありそうですわね。

徳川伏見城
うん……姉様が帰ってきたら、こっぴどく叱ってあげなきゃ。

徳川伏見城
――と、そうだ!
器の片付けをするんだった!

徳川伏見城
話の続きはまた後で!
手伝わせちゃったお詫びも必ずするから……それじゃっ!

一乗谷城
…………。

一乗谷城
……ふふ。
元気を取り戻した貴方のお顔が見れただけで、
私は何よりですわ。

――――

七飯台場
(ちら)

七飯台場
(あれが徳川伏見城ちゃん……!)

七飯台場
…………。

桃山は淑気に満ちて -後-

一行の到着により急遽開催が決定した新年会。
皆の腹が膨れ、やっと人心地ついた徳川伏見城だが
突如、彼女の前に七飯台場が姿を現し――?

前半

徳川伏見城が一同を受け入れ、
新年の宴が開かれてから……しばらくが経った。

皆……次々と並べられる料理に舌鼓を打ちつつ、
それぞれに宴を楽しんでいた……。

やくも
うぅ……ぷ……どうして……どうしてだにぃ……。

大宝寺城
ど、どうしたの……やくもちゃん?

やくも
おせちは、まだまだこんなに残っとるのに、箸が進まんだに。
うちの胃袋はいったい、何をやっとるがや……!

千狐
お腹がいっぱいになったのなら、
無理して全部食べなくていいのよ……やくも。

殿
…………。

――

徳川伏見城
やっとやくもちゃんが満腹に……。
ふぅ、これで少しは楽になるかな。

徳川伏見城
一乗谷城ちゃんにも休んでもらって、しばらくはまったりと――

七飯台場
――見つけたでしょ、徳川伏見城ちゃん!

徳川伏見城
――きゃっ、なに!?

徳川伏見城
えっと、貴方は……七飯台場ちゃん、だったっけ。
何か困り事かな?

七飯台場
徳川伏見城ちゃんの活躍、さっきからずーっと見てたでしょ!
邪魔しちゃわないように、物陰からこっそりと!

七飯台場
宴の様子を見ながら、お料理と片付け……配膳!
お陰でみんな大満足♪ 突然の来訪にも関わらず、
完璧なおもてなしだったでしょ!

徳川伏見城
えへへ、どうもありがとう。
喜んでもらえたみたいで嬉しいな。

七飯台場
うんうん! 徳川伏見城ちゃんの凄さに、
わたしは打ちのめされちゃったでしょ!

七飯台場
そこでわたしは……徳川伏見城ちゃんに一つ、
お願いしたいことがあるでしょ!

徳川伏見城
お願い……あたしに?

七飯台場
これは……。
徳川伏見城ちゃんにしかできないお願いでしょ。

七飯台場
今日の宴を成功に導いた……、
細やかな気配りや、テキパキした仕事ぶり!
その極意をぜひ、わたしにも伝授してほしいでしょ!

徳川伏見城
ご、極意……? ……伝授?

七飯台場
わたしね……昔っから戦うことには自信があったの。

七飯台場
どんなことだって、拳で全部解決!
難しいことは分からなくても……それでどうにかなってたでしょ。

七飯台場
だけど……時には、拳だけじゃ解決できないこともあるでしょ。
だからわたしも……成長したいの。

七飯台場
お姉ちゃんたちが困ってる時とか、
悲しんでる時……涙を流すようなことになる前に!
支えになってあげたいでしょ!

徳川伏見城
(お姉ちゃん……)

徳川伏見城
そっか……七飯台場ちゃんにも姉様がいるのね?

七飯台場
うん! 四稜郭ちゃん、五稜郭ちゃん、亀姉……。
蝦夷地で一緒に生きてきた、掛け替えのない同志でしょ!

七飯台場
さっき、みんなが話してるのを聞いて知ったでしょ。
徳川伏見城ちゃんには、二人のお姉ちゃんが居て……、
妹とは思えないくらいしっかり、お姉ちゃんたちを支えてるって!

徳川伏見城
そ、それは……まぁ、あたしがしっかりしてるのか、
上の二人の方に問題があるのかは分からないんだけど……。

七飯台場
それを聞いて思ったでしょ!
徳川伏見城ちゃんからは、いっぱい見習うことがあるって!

徳川伏見城
(そっか……この子の目にあたしは、そんな風に映るんだ……)

七飯台場
だから手始めに、えーっと~――そうだ!
お手伝い! 徳川伏見城ちゃんのお手伝いをするでしょ!

徳川伏見城
お手伝いって……宴のお手伝いのこと?

七飯台場
うんっ♪ 真似るは学ぶ!
成長の第一歩はお手本に見習うところから、でしょ!

七飯台場
迷惑じゃなかったらお手伝いすることを許してほしいの……。
わたしのお願い、聞いてもらえる……でしょ?

徳川伏見城
七飯台場ちゃん……。

徳川伏見城
……うん。分かった!
それじゃ、どしどしお願いしちゃおうかな。

七飯台場
やったぁ~♪ どうもありがとうでしょ!

徳川伏見城
二人で協力すれば、
この宴ももっと楽しいものになるはずだよ♪

七飯台場
はい喜んで~、でしょ!

七飯台場
――ということで、これから宴が終わるまでの間、
わたしのことは馬車馬だと思ってこき使うでしょ!

徳川伏見城
ば、馬車馬って……それはちょっと……。

七飯台場
遠慮しない、遠慮しない♪

七飯台場
徳川伏見城ちゃんは上座にふんぞり返って、
思いついたことを次々命令していれば万事解決、でしょ~♪

七飯台場
それじゃ早速、準備開始! でしょ♪

後半

七飯台場
――はぁ~。
疲れた……でしょ~……。

徳川伏見城
それじゃ、お茶でも飲みながら少し休憩しよっか。
……はい、どうぞ♪

七飯台場
あ、ありがとでしょ。
んく、んく、んく――ぷはぁ。

七飯台場
こんな大変なお仕事をこなしてたなんて……。
やっぱり徳川伏見城ちゃんは凄い城娘でしょ。

七飯台場
いっぱい勉強させてもらって感謝、でしょ……。

徳川伏見城
お礼を言うのはあたしの方だよ。
慣れないお仕事なのに一生懸命手伝ってくれてありがとね、
七飯台場ちゃん♪(なでなで)

七飯台場
えへへ、お役に立てて光栄でしょ……♪

徳川伏見城
ふふ、なんだか不思議な気分……。
新しい妹ができたみたい。

七飯台場
妹……っ!
わたし、徳川伏見城ちゃんに少しは近づけた?
みんなの力になれた……でしょ?

徳川伏見城
うんうん、初めてにしては充分過ぎるくらいの働きだよ!
姉様たちにも、七飯台場ちゃんのことを見習ってもらいたいくらい!

七飯台場
……?
徳川伏見城ちゃんのお姉ちゃんたちは、
悪い子……でしょ?

徳川伏見城
ん? んー、悪い子じゃないと思うけど……。
ちょっと極端というか……もう少し聞き分けが良かったら、
って思うことはあるかなぁ。時々ね。

七飯台場
ふーん……。

七飯台場
…………。

七飯台場
徳川伏見城ちゃん……お姉ちゃんたちに会いたい?
寂しい……でしょ?

徳川伏見城
……えっ?

七飯台場
なんとなく……徳川伏見城ちゃんが、
そう思ってるような気がしたでしょ。

徳川伏見城
…………。

七飯台場
けど、寂しいのは……悪いことばっかりじゃないでしょ。
離れた時に、初めて気づくこともあるでしょ?

徳川伏見城
離れた時に、初めて気づくこと……。

七飯台場
いつでもべったりなままだと、
寂しいって思いには気づけないでしょ!

七飯台場
でも……取り返しのつかないことになってからじゃ遅いのも、事実でしょ。
大切な子への思いは……少しでも早く伝えた方が、絶対良いでしょ。

徳川伏見城
…………。

七飯台場
だからわたしも、
今……こんなに強く『変わらなきゃ』って思ってるでしょ!

徳川伏見城
そっか……うん、そうだね。
あたしのこの気持ちも……姉様たちと離れなかったら、
気づくことなんかなかったかも。

徳川伏見城
七飯台場ちゃんのお陰で、
大切なことに気づけたよ……ありがとね♪(なでなで)

七飯台場
えへへ♪
徳川伏見城ちゃんの役に立てて、
わたしも嬉しいでしょ♪

七飯台場
よぉし、この喜びを力に換えて……もういっちょ、宴を盛り上げるでしょ♪

徳川伏見城
うん! 一緒にがんばろ♪

七飯台場
それじゃお仕事再開! でしょ~!

桃山は淑気に満ちて -絶-

姉と距離を置くことで、その存在の大きさを知った
徳川伏見城。同時に胸中で膨らんでいく寂しさを
言葉にした時……その背中に優しく声が掛けられる。

前半

錦城
ずずずー……。

錦城
はぁ……お茶が美味しいわねぇ……。

備中松山城
お腹いっぱいで幸せです。
徳川伏見城さんたちには感謝しなければ……♪

やくも
だにぃ……腹ごなしに、運動でもしたいがや……。

宇和島城
待ぁってましたっ!
それならここに羽子板と羽根と、大量の墨汁が――!

柳川城
……大宝寺城さん、
宇和島城さんのお相手をお願いできますか?

大宝寺城
やった、羽つきー!
私、またやりたいって思ってたんだ~♪

宇和島城
…………!

宇和島城
……ぁ、すみませーん。
今のは聞かなかったことにしといてくださーい。

殿
…………。

――――

一乗谷城
皆さん……満足していただけたようです。
これにて一件落着ですわね。

徳川伏見城
うん、助かったよ……。
重ね重ね……本当にありがとう、
一乗谷城ちゃん、七飯台場ちゃん!

七飯台場
わたしの方こそ、ありがとうでしょ!

七飯台場
誰かをおもてなしするのって、こんなに大変だったんだね。
……ここで働いたお陰で、色んなことを知れたでしょ!

徳川伏見城
もう……ほんっとーに七飯台場ちゃんは良い子だねぇ……。(ぎゅぅぅ)

七飯台場
ぅぐ、徳川伏見城ちゃ……く、苦しいでしょ……。

徳川伏見城
ああっ、ごめんごめん!

一乗谷城
……ですが、残念ですわね。
指月伏見城さんと木幡山伏見城さんがここにいらっしゃったら、
きっと……大いに喜んでいたでしょうに。

徳川伏見城
複雑な気持ちだよ。残念なような、ホッとしたような……。

徳川伏見城
姉様たちが居たら、宴は何倍も盛り上がっていただろうけど、
……その分、苦労が何十倍にも膨れ上がっていただろうから。

七飯台場
な、何十倍……。
徳川伏見城さんのお姉ちゃんって、
どんな城娘でしょ……?

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
まぁ……その分、
無理難題を乗り越えた時の達成感も大きいんだけどね。

一乗谷城
…………!

一乗谷城
……あら。これは驚きですわ。

一乗谷城
徳川伏見城さんが、
お姉様への好意を素直に表すなんて。

徳川伏見城
そ、そんな驚くほどのことじゃないでしょ……?

徳川伏見城
思ったことをそのまま口にしただけ……でしょ。

一乗谷城
ふふ……そうでしょうか。
私には、大きな変化に見えますが……?

虎臥城
――ぉよ? 徳川伏見城ちゃんたち、どしたの?
なんか盛り上がってるみたいだけど……。

七飯台場
あ、虎臥城ちゃん♪ 今はちょうど、
徳川伏見城ちゃんのお姉ちゃんの話で――

七飯台場
――そうだ! 虎臥城ちゃんにもお姉ちゃんが居るでしょ!
ここはみんなで、お姉ちゃん話に花を咲かせるでしょ♪

虎臥城
お姉ちゃんの話? ……あぁ~、
徳川伏見城ちゃんとこは色々大変そうだよね……。

一乗谷城
それを言うなら、
虎臥城さんのところも苦労されていると聞きますが……?

徳川伏見城
うん……あたしも聞いたことあるよ。
ふらふら~っと散歩に出たきり行方不明、
みたいな話は日常茶飯事、とか……。

虎臥城
あはは、まぁね……。
でも、持ちつ持たれつみたいなとこもあるから。
こういうのは。

虎臥城
大好きだから傍に居たいけど……、
傍に居るからこそダメなところが見えちゃう。
そういうものなんじゃないかな。

七飯台場
は~、そうなんだ。
……虎臥城ちゃんは大人でしょ。

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
……その癖、良いところは『当たり前』になって、
気づきにくくなっていっちゃうんだよね。

徳川伏見城
可愛いなぁ、って思えてた短所が、
いつからか鬱陶しく思えたり……。

虎臥城
うんうん。どこも似たようなもんだよね。
持ちつ持たれつっていうのは、そういうこと!

虎臥城
お姉ちゃんがあたしを叱ることは、滅多にないけど……、
あたしの気づかないうちにきっと、
迷惑を掛けたり、許されたりしてるのかなーって思うんだ。多分ね。

虎臥城
……なんて言いつつ、本当に何も考えてないのかもしれないけどね。
うちのお姉ちゃん、いつでもぬぼぼぉ~ってしてるから。あははっ♪

徳川伏見城
ふふっ……結局そこに落ち着くんだね。

虎臥城
ちなみに……、
指月伏見城ちゃんと木幡山伏見城ちゃんは……どうなの?

徳川伏見城
えっ……あ、あたしのところ……?

虎臥城
指月伏見城ちゃんと木幡山伏見城ちゃんと一緒に暮らすなんて、
毎日ドタバタで大変そうじゃん。
どんな日常を送ってるのか、ぜひ聞いてみたいよ♪

一乗谷城
ふふ、そうですわね。
こういう場で盛り上がれる逸話が、幾つもありそうですわ。

徳川伏見城
……姉様たちの話かぁ。

徳川伏見城
笑える話から愚痴まで、数え切れないくらいあるけど。
最初に浮かぶのは、ん~……そうだなぁ――

後半

虎臥城
――あはは、あは……あははははははっ♪

虎臥城
あ~、笑った笑った。お腹がズキズキ言ってるよぉ……♪

一乗谷城
これから毎日、日記を付けてみてはいかがですか、徳川伏見城さん?
きっと、事実を書き残すだけで、波乱万丈な物語ができあがりますわよ。ふふっ。

徳川伏見城
からかわないでよ……もう。

徳川伏見城
……笑っちゃうよね、本当に。
いつもいつも、冗談みたいなことを本気で言うんだから、指月姉様は。
その上……木幡山姉様は、指月姉様の言う事なら何でも信じちゃうし。

七飯台場
……だけど、『持ちつ持たれつ』でしょ!
きっとお姉ちゃんたちも、
妹たちのためにどこかで頑張ってくれてるでしょ♪

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
……うん、そうだね。あたしもそう思う。
姉様たちも、あたしのことを想ってくれてるんだよね……きっと。

虎臥城
……案外、お姉ちゃんたちもこんな風に集まって、
話してるのかもしれないよ?
『妹って世話が焼けるね~』とか言いながらさ♪

一乗谷城
ふふふ、なるほど。それは有り得そうですわね。

徳川伏見城
(……考えもしなかった)

徳川伏見城
(私が一方的に世話を焼いてるんだと思ってたけど、
 私も姉様たちに支えられてたんだなぁ……)

徳川伏見城
……はぁ。

徳川伏見城
…………姉様。

徳川伏見城
今頃、どこに居るのかなぁ。
姉様に……会いたいなぁ……。

???
…………。

???
そうか……。

徳川伏見城
――――っ!?

???
そうかそうか……。

指月伏見城
まったく、泣かせるのう……。
おぬしがそこまで妾のことを想っていたとは。

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
……姉様、どうしてここに?

指月伏見城
えぇと、ん~?
なんじゃったか、もう一度言ってくれんかの?

指月伏見城
『姉様に……』なんじゃったっけ。
聞かせてくれんか、徳川伏見城。
忘れぬように、心に刻んでおきたいのじゃ。

徳川伏見城
…………。

指月伏見城
ほれ、早う……早う早う♪

徳川伏見城
いいから、
あたしの質問に答えろおぉぉぉぉ!!!

指月伏見城
わ、分かった分かった!
ちゃんと話す! じゃから怒るでない!

指月伏見城
い……いやしかし、どうしてと言われてもな。
いざ説明するとなると……『なんとなく』としか言えんのう。

徳川伏見城
な、なんとなく……?

指月伏見城
ほれ……木幡山の顔を見てみよ。

木幡山伏見城
うう……ぐす、うぅぅ……ぅぐ……ぅぅぅぅうう……。

木幡山伏見城
徳川伏見城ぉ……会いたかったよぉ……。

徳川伏見城
こ、木幡山姉様っ!? どうして泣いてるのっ!?

指月伏見城
何やら無性に、
おぬしに会いたくなってしまったらしくての……。

指月伏見城
妾も、木幡山伏見城も……。
お前に頼り切りの状態が長らく続いておった。
そこで考えたのじゃ……妾たちは妹離れが必要なのでは、と。

徳川伏見城
うん……あたしも思ってた。
ちょっと距離を置くべきなのかな、って。

指月伏見城
……うむ。そうした経緯で、
おぬしを此度の留守役に任じたわけじゃが……。
この有様、というわけじゃ。

木幡山伏見城
三人一緒がいいよぉ……。
徳川伏見城も一緒じゃなきゃ、嫌だよぉ……。

徳川伏見城
木幡山姉様……。

指月伏見城
斯く言う妾も……似たようなものじゃ。

徳川伏見城
え……?

指月伏見城
来る日も来る日も、おぬしのことが頭をよぎる。
日を追う事に、その頻度は増していく……。

指月伏見城
お陰様で……。
せっかく見つけた甘味もロクに味わえん始末じゃ。

徳川伏見城
…………。

指月伏見城
此度の旅路で、よーく理解した。妾はぐうたらな怠け者じゃが、
世話をしてくれるなら誰でも構わん、というわけではないのだ……とな。

徳川伏見城
姉様……。

指月伏見城
まぁ、結果……、
甘味食い倒れ行脚を途中で切り上げたのは、
功を奏したわけじゃ。

指月伏見城
なぜなら……、
徳川伏見城が妾たちの帰りを待ちわびて、
むせび泣いておったからのぉ~♪

徳川伏見城
ぐ……む、むせび泣いてなんかいないよ……!

指月伏見城
しっかし、帰った時にちょうど宴が行われているとは好都合!

指月伏見城
多くの城娘に……殿、神娘たち!
これらが一堂に介した今、すべきことは唯一つ!
それは……そう! 新年を祝う、空前絶後の大宴会を――

やくも
雪合戦、雪合戦だにぃーーー!

指月伏見城
――む?

やくも
腹ごなしの運動にはぴったり!
見渡す限りに雪が積もった銀世界に、ご招待だに!
みんな、うちと千狐の後に続くがや~♪

指月伏見城
……雪合戦、とな? ほぅ……なるほど。

指月伏見城
宴を楽しみたいところであったが……ふむ、悪くない。

指月伏見城
そういうことなら妾も参陣しようではないか。
じゃが、手は抜かぬぞ……妾の顔の広さを存分に使ってやる!

指月伏見城
そして、日の本中から城娘を呼び寄せて、
かの決戦と見紛うほどの、大雪合戦を行うのじゃ!

指月伏見城
さぁ、行くぞ!
木幡山伏見城、徳川伏見城~~~!!
妾に続け~!

木幡山伏見城
――あっ、待って! 姉様ぁ~~~!

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
……一乗谷城ちゃん、虎臥城ちゃん、七飯台場ちゃん。

一乗谷城
……はい、なんでしょう?

徳川伏見城
覚悟しててね……今年のお正月は、
まだまだ続くみたいだから。ふふっ♪

――――

指月伏見城
こらー、守れ! 守らんか! 今の妾はおぬしの殿じゃぞ!?
このままでは、蜂の巣になってしまうじゃろうが!

徳川伏見城
姉様みたいなぐうたらを守る家臣なんて、どこにも居ないよーー!

鉄狛
ワワンッ!! クゥ~ン♪

竹田城
……わぉ。
これは、巨大な……狛犬?

虎臥城
ぅおわっ!?
助けて相棒っ、お姉ちゃんが食べられちゃうよぉ~っ!

宇都宮城
これぇ、そこの虎っ!
ワシのテツコマをいじめるでないっ!!

福山城
えへへっ♪ 見てー柳川っち!
今年もコウモリさん、連れてきたんだよ♪
あとね、おもちゃの刀も一緒に持ってきたの♪

柳川城
ふふ……では、今年も一緒に凧揚げが楽しめますね♪

錦城
――っくしゅん。
ねんがじょ……年賀状はー、要りませんか~?

錦城
ちょっとだけ、
刷り過ぎちゃって……余ってるんですぅ。
どなたかぁ……何卒ぉ~……。

宇和島城
あっ、こっちこっち! ありったけお願いします~!
ちょうど薪が切れちゃって、よく燃えそうなもの探してて♪

錦城
あんたは鬼かっ!?

こうして……再び雪原に転移した一行は、
やくもの思いつきと、それに乗っかった徳川伏見城を中心に、
壮絶な雪遊びを繰り広げたのだった――



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