ストーリーテキスト/操られし鬼玄蕃

ページ名:ストーリーテキスト/操られし鬼玄蕃

目次

操られし鬼玄蕃[]

操られし鬼玄蕃 -序-

城娘と兜――水と油の如き二者が共謀し、
人々を襲っているという報せを受けた殿は
実態を探る為、仲間と共にいま出陣する。

前半
――加賀国、某所。

兜軍団
火ノ構エニテ、
敵ヲ、斬レ、斬レ、斬レェェェェッ!!

一方的な侵害であった。
兜の容赦ない襲撃にあった村落の無惨たるや筆舌に尽くし難いものであった。

――だが、奇妙だった。

???
鬼夜叉ノ長槍デ、ひと突きニしてアゲル……。

無慈悲な兜の軍勢の中に、異質な者の姿があったのだ。

???
私ノ歌デ、皆ヲ無間地獄ニ連れて行ッテあげるネ……ふふ。

童女の虚ろな声音と形相は、
兜の群と闇夜に静かに溶けていった。

――明朝、加賀国近傍。

千狐
殿、もうすぐで目的地である加賀に着きますわ。

千狐
巷説によれば、城娘と兜が共謀して人々を襲っているとのことです。

やくも
城娘と兜さんが一緒になって人を襲ってる……未だに信じられんね……。

やくも
もしそげな噂が事実だったとしたら大事やけん、
一刻も早く、現地に行って――。

???
届けッ!
この歌声デ皆ヲ無間地獄ニ連レテ行ッちゃうヨォ~!

やくも
な、なな、なんやぁぁーっ!?
荒くれ者だにぃー、殿さん、助けてほしいだにぃー!!

???
――ぶへッ!?

千狐
やくもの振り回した腕が見事に敵の顔に直撃しましたわ……!?

やくも
え?

やくも
……ど、どうやー!?
うちだってやるときやーかんね!
殿さん、ちーたぁうちを見直したかや?

千狐
喜んでる場合じゃないわ、やくも……。
倒れている人をよく見て……襲ってきたのは兜じゃないわ。

???
……うぅ。
いたた……って、あれ? 
ここはいったい? 私いままで何をしていたんだっけ……? 

千狐
様子がおかしいですね……記憶が混濁しているようですが……。

兜軍団
皆ノ者、出会エ、出会エェェッ!!
敵ヲ、斬レ、斬レ、斬レェェェェッ!!

やくも
殿さん、千狐!!
あっちから兜さんがえっぱい現れよったに!

千狐
兜だけじゃないわ!
あそこにいるのは……いったい誰なの……?

???
ヨウヤク人間達ノお出ましネ……。
それじゃ、一暴れするとしますカ!

???
鬼玄蕃(おにげんば)と恐れられた我が至高の槍術で以て、
片っ端から突き殺シテあげル!

千狐
あれは……人間?
いや、うっすらと感じる気から察するに、どうやら城娘のようですわ!?

やくも
……なして城娘が兜さんと一緒に?
やっぱり噂は本当だったってことがや……?

千狐
あれこれ考えている場合ではないわ、やくも。
殿、今はとにかく目の前の敵を一掃しましょう!

後半
千狐

兜達を何とか退けることができましたわ。
ですが、兜と一緒にいた城娘さんにも逃げられてしまいましたね……。

???
そんな……佐久間金沢城ちゃんが……。

やくも
さっきの城娘と知り合いなんかや?
何が起きてるのかうちにはさっぱりやけん、ちゃんと説明してほしいだに!

千狐
やくも、そんなに急かせては駄目よ!
ちゃんと落ち着いてからじゃないと……。

???
心配してくれてありがとう。
でも、もう大丈夫だよ!
ちゃんと私から説明をさせてほしいな。

尾山御坊
コホン……えーっと、まずは自己紹介だね? 
私の名前は尾山御坊だよ! 地元加賀でローカルアイドルやってます!
で、さっき兜たちと逃げていった城娘は同郷の佐久間金沢城ちゃんだよ。

尾山御坊
今まで私と佐久間金沢城ちゃんは、
加賀国周辺で悪さをしていた兜たちといっぱい戦ってきたの。

尾山御坊
つい先日だって、佐久間金沢城ちゃんと一緒に、
兜の軍勢を相手に戦いに臨んでいたんだ。

尾山御坊
でも、その戦いの最中、突然あたりに妙な瘴気が漂い始めて、
意識がもうろうとして……それからの記憶が全くないの……。

尾山御坊
で、気がついたら殿たちが目の前にいたんだけど、
どうしてだかほっぺたが凄く痛むの……何でだろう……不思議だなぁ。

やくも
こ、細かいことは気にしたら駄目だに!
今は無事だったことを喜んだ方がいいね。

尾山御坊
うん! やくもちゃんの言うとおりだね!
助けてくれて本当にありがとう!

千狐
お話を聞く限りでは、尾山御坊さん達が兜と戦っていた時に漂っていたという
その奇妙な瘴気により心身を操られていたと考えるのが妥当かと思いますが……。

尾山御坊
そうだね、私もそれで間違いないと思う……。

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃんもきっと操られているに違いないよ……。
……だから、お願い。
殿の力で佐久間金沢城ちゃんを助けてほしいの……。

やくも
任せるね!
殿さんがいれば絶対に上手くいくだに!
それに兜さんの悪巧みを放っておくなんてできんけんね!

尾山御坊
ありがとう、殿~!
私も協力は惜しまないからね!!

千狐
殿、まだ兜と佐久間金沢城さんはそれほど遠くに逃げてはいないはずです。
急ぎ、兜たちを追いかけましょう!

操られし鬼玄蕃 -破-

撤退する兜たちの追撃を試みた先で、
殿たちは再び佐久間金沢城と対峙する。
だがその姿には、妙な違和感が在った……。

前半
やくも

うまく追撃しようと思ったのに、兜さんたちには逃げられてしまったけん、
結局また元の場所に戻ってくる羽目になっただにぃ……。
こんなことなら、最初からここで休憩しておけばよかったがや……。

尾山御坊
無駄足っていうことはないと思うよ、やくもちゃん?
私たちが後を追ってるっていう精神的な重圧を相手は
少なからず感じているはずだもん。

尾山御坊
それに同郷のよしみだからかな?、
佐久間金沢城ちゃんは多分近くにいる……。
なんとなく彼女の存在を感じるの……。

千狐
そうですね、私もうっすらとですが、城娘特有の気を感じます。
殿も、警戒を怠らないようお願い致しますわ。

やくも
うぅ……二人ともずるいにぃ……。
うちはなーんにも感じられんけん、
殿さんの役に立つことが出来ないだにぃ……。

やくも
もぉーっ!
兜さん、近くにいるんだったらさっさと出てくるだにぃっ!!


――ガサッ!

やくも
ひぃぁっ!!
ほ、本当に出てきよっただにぃ!

兜軍団
――ガサッ、ガサッ、ガサッ!!

千狐
囲まれてしまいましたわ……。
どうやら待ち伏せしていたようですわね。

佐久間金沢城
――ガサッ!

やくも
……な、なんや……?
気のせいか、前に見たときよりも一回りごーぎな見た目になっちょらんか?

千狐
わ、私もそう見えるわ……気迫とか雰囲気だけじゃない。
身体自体が大きくなっているような気が……。

佐久間金沢城
先刻は不覚を取ったケド、今回はソウはいかないわよ?
鬼玄蕃ノ槍、今こそソノ身に刻メ!

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん!
しっかりして! 私だよ、尾山御坊だよ!

佐久間金沢城
……………………。

佐久間金沢城
何処のどいつダカ知らないけど、御託ハ要らナイわッ!
語りたいナラ、貴方ノ武で以て語りなさい!

尾山御坊
そんな……私の声が全然とどいていないなんて……。
佐久間金沢城ちゃん……どうして……。

千狐
戦いは避けられないようですね……。
殿……心苦しいかもしれませんが、今は戦うしかありません!

後半
佐久間金沢城

っつぅ……なかなかドウシテやるじゃない……。

佐久間金沢城
命あっての物種か……無理は禁物ネ。
そういう訳ダカラ、みんな早々ニ撤退しなさい!

尾山御坊
待って、佐久間金沢城ちゃん!
兜と一緒に行くなんて、絶対ゆるさないんだから!

兜軍団
……退路ヲ確保……!
……追ッ手ヲ牽制シ……撤退セヨ……撤退セヨ……!

やくも
こらー! 逃げーなやっ!
もう追いかけっこはお終いにするだにぃっ!!

千狐
殿、ここで逃げられては元も子もありません!
何としても追撃しましょう!

殿達は沼地から続く、うっそうとした森へと兜を追いかけていくが、
奥へと進むほどに不穏な気配が強まるのをその身に感じるのであった。

千狐
随分と森の深いところまで来ましたね……。
地形からして、この先にはもう退路はないと思いますが……。

やくも
殿さん、あっちを見るだに!
兜さんたちと……佐久間金沢城の姿もあるに!

佐久間金沢城
……ったくもぉ、何でアソコで負けちゃうカナぁ~。
アアもう、悔しいヨぉ!

兜軍団
大イナルチカラ……御身覚醒……、
城娘……顕現セヨ……転身セヨッ!

佐久間金沢城
分かっテルわよ……。
今こそ鬼玄蕃の異名をもつ私の真の姿を見せてアゲル!

佐久間金沢城
はぁぁアアッ――――!?

千狐
きょ、巨大化した……!?
先刻の戦いの前に感じた違和感はあれが起因していたのね……。

尾山御坊
十分な気力も無しに無理矢理な巨大化なんかして……。
あれじゃ身体にかかる負担が大きすぎる……。
このままじゃ佐久間金沢城ちゃんの身体がもたないよ。

尾山御坊
待ってて、佐久間金沢城ちゃん!
今、私が兜たちから助けてあげるんだから!

やくも
何しちょーがや!!
あげな大勢の兜さんに単身で突っ込んでどうする気ねっ!
少しは落ち着くだにぃっ!!

尾山御坊
はなしてよ、やくもちゃん!
私が助けるんだからっ!
佐久間金沢城ちゃんは、私が……私がぁっ……うぅ……。

千狐
尾山御坊さん……口惜しいですが、
いったん先ほどの沼地まで戻りましょう。

千狐
尾山御坊さんだけでなく、私達も一度冷静になる必要がありそうです。
そこできちんと作戦を立て……必ずや佐久間金沢城さんを助け出しましょう。

操られし鬼玄蕃 -急-

佐久間金沢城を救う光明を見出した殿たち。
だが、喜んだのも束の間、既に脅威は
眼前にまで迫っていたのであった……。

前半
やくも

兜さんの潜む森からこーして撤退したは良いものの、
また振り出しに戻っただに……。
これからいったいどうしたらいいがや?

千狐
このまま佐久間金沢城さんや兜と戦っていてもきりが無いわ。
打開策としては、操られている佐久間金沢城さんを
元に戻す方法を模索するべきだと思うわ。

やくも
元に戻すって簡単に言いよーけど、
尾山御坊にしたみたいに顔を殴ったとしても
上手くいくとは限らんけん、別の方法を探らないといかんだに。

尾山御坊
(え!? 私そんなことされてたの……?)

千狐
尾山御坊さん、今一度、兜に操られる前の状況を
詳細に教えていただけませんか?
もしかしたら何か手がかりになるようなことがあるかもしれません。

尾山御坊
そ、そうねぇ……何かあったかなぁ……。

尾山御坊
――あっ!?
そういえば、妙な瘴気が戦場に溢れ出した時、
遠くの方でとっても大きな兜の姿を見たような気が……。

やくも
大きな兜さん……?
なあ千狐、それってもしかして……。

千狐
ええ、巨大兜が意図的に放出していた瘴気だとすれば色々と辻褄が合うわ。

千狐
巨大兜がこの事態を引き起こした元凶だとすれば、
巨大兜を討伐することで佐久間金沢城さんを元に戻すことができるはずです!

尾山御坊
よーし、そうと決まればちっちゃな兜を相手してる場合じゃないね!
一刻も早くおっきな兜を見つけてやっつけなきゃ――

兜軍団
――ガサッ!!

佐久間金沢城
奇襲作戦大成功ネ!
二度ノ敗北は、いま此処ニテ雪がせてモラウわよ!
……夜叉玄蕃の本当ノチカラヲ思い知るがいいわ! 覚悟セヨッ!

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん……!?
そんな……また戦わなくちゃいけないの……?

やくも
弱音を吐いてる場合じゃないね!
このままやられる訳にゃーいかんけん、
迎え撃つしかないだに!

尾山御坊
……うん……そうだよね……。
あいつらの裏でほくそ笑んでる巨大兜を討つためにも、
ここは何としても勝たないと駄目なんだよね!

千狐
佐久間金沢城さんを元に戻すためにも、
今は眼前の敵を討ち払うしかありません!
殿、この死地を抜け、何としても諸悪の根源へと辿り着きましょう!

後半
佐久間金沢城

――くぁっ……なんで勝てナイの……?
敗戦の原因を作ったのは、私……?
そんなの……ウソよ……マタ大きくナレバ……きっと……キット……。

千狐
殿、今のうちに佐久間金沢城さんを捕縛し、
巨大兜を討つまで所領に収容しておきましょう。
そうすれば、もう戦う必要もなくなるはずです!

千狐の提案は、
その刹那に訪れた強大な怒声によって
呆気なく瓦解した。

前田利家
――全軍撤退ッ!

前田利家
罷リ通スハ我ガ意向ノミッ!
利無キ形勢ナラバ、後ニ我ガ秘策ヲ放ツ迄……。

前田利家
機ヲ待ツノダ! 
今ヨリ悪気ニテ敵ヲ撹乱セン!
繰リ返ス! 全軍、急ギ撤退セヨ!

兜軍団
……退路ヲ確保……瘴気ハ満チタ!
……追ッ手ヲ牽制シ……撤退セヨ……撤退セヨ……!

やくも
ケホっ、ケホっ……何や、急に辺りの空気が濁って……。

尾山御坊
みんな、気をつけて!
これが私と佐久間金沢城ちゃんを襲った瘴気よ!
くっそぉ……本当にあの巨大兜の仕業だったんだわ!

千狐
ケホっ……だ、駄目ですわ……。
視界すら塞がれて……こんな状況では追撃なんて不可能です……。

尾山御坊
ああ……佐久間金沢城ちゃん……。
また、兜たちと一緒に……行っちゃった……。

千狐
このまま此処にいてはいけませんわ!
巨大兜の存在ははっきりと確認できました。
いったん安全な場所まで後退し、次の手を考えましょう!

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん……。
絶対に……助けてみせるからね……。

操られし鬼玄蕃 -離-

再び姿を現した佐久間金沢城だったが、
引き連れる軍団を目にし、殿は己が眼を疑う。
奇々怪々の敵勢を退ける為、いざ武を奮え!

前半
尾山御坊

ねえ殿、いつまでこんな場所に留まってるつもりなの?
一刻も早く佐久間金沢城ちゃんを追いかけようよ!

千狐
はやる気持ちは分かりますが、
落ち着いてください尾山御坊さん……。

千狐
これまでの兜の動きを考えれば、
奴らはきっとまたここに現れるはずです!

千狐
このまま此の地にて、
敵の襲来を待ち、万全の布陣で迎え討つのが上策かと思われます。

尾山御坊
うぅ……でも……じっとなんかしてられないよぉ……。

尾山御坊
やっぱり私だけでも森の中に行って様子を見てきた方が――。

佐久間金沢城
その必要はナいわッ!

やくも
――うわぁぁッ!?
ほ、ほんとに出てきよったにぃっ!?

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん……また戦いに来たの……?
もうやめようよ……城娘同士が戦うなんて、絶対に間違ってるよ!

佐久間金沢城
相変わラず、ギャアギャアと煩イ輩ネ……。
けど、コレを見ても余裕でいられるカシラ?

千狐
――っ!?
殿、警戒してください!
何か、佐久間金沢城さんの背後に潜んでいるようです。

千狐
……え? 
あれって……うそ、そんなことって……!?

佐久間金沢城
見ナサイっ、この素晴らシイ眺めヲ!
一堂、整列ッ!!

佐久間金沢城?
鬼玄蕃ノ槍、ソノ身ニ刻メ! ソノ身ニ刻メ! ソノ身ニ刻メェェェーーーッッッ!

千狐
……………………………………………………。

やくも
……………………………………………………。

佐久間金沢城
あまりノ絶景に感動シテ声も出ないようネ?
ふふん、コレが私ノ奥の手よッ!!

千狐
……佐久間金沢城さんが……あんなに沢山……!?
これは一体どういうことなのですか?

やくも
悪い夢なら覚めてほしいだにぃ……。
それとも、あげなえっぱいの姉妹があの城娘さんにはいーがや?

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃんに、
あそこまで瓜二つな姉妹がいるなんて聞いたことないよ!

尾山御坊
で、でも……こうして目の前にいっぱい佐久間金沢城ちゃんがいるわけだし……、
本当に佐久間金沢城ちゃんの姉妹なのかな……?
うぅ、わからなくなってきたよぉ……。 

佐久間金沢城
馬鹿ね……悩む必要ナンテどこにもないじゃナイ。

佐久間金沢城
だって貴方タチは、
私の凄絶な槍術によって、今此処で塵芥に帰す運命なんダカら!

佐久間金沢城
さあ、覚悟セよ人間ドもッ!!
我ら鬼玄蕃の人海戦術、見切レルかしらッ!?

佐久間金沢城?
覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ!
覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ! 覚悟セヨッ!

尾山御坊
わわわっ!?
佐久間金沢城ちゃん達が、みんな一斉に押し寄せてきたよ!
殿、どうするの!?

千狐
きっと何かカラクリがあるはずです!
佐久間金沢城さんを助ける為にも、このようなところで負けられません!
殿、何とかしてこの猛攻を退けましょう!

後半
千狐

何とか……勝つことができましたね……。
あんなに大勢の佐久間金沢城さんを相手にするのは、
さすがの殿も疲れたご様子ですね……。

尾山御坊
私も、もうくたくただよぉ……。
佐久間金沢城ちゃんは大好きだけど、
あんなにいっぱいこられても困るよぉ……。

やくも
と、殿さん!
あれを見るだに!

兜軍団
……グググ……敗北、惜敗……変化、解除……、
妖術、霧散……撤退セヨ、撤収セヨ……!

尾山御坊
ええっ――!?
佐久間金沢城ちゃんが、兜になっちゃたよ……?
あれ? でも一人だけはずっと佐久間金沢城ちゃんのままだね……どういうこと?

千狐
おそらく、兜が佐久間金沢城さんに化けていたのでしょうね……。

千狐
あれだけ見事な変化の術を兜が使えるだなんて……。
これは恐ろしいことだわ……。

佐久間金沢城
……はぁ、はぁ……これだけしても勝てないナンテ……。
みんなの姿もモトに戻っチャったし……。
これじゃ鬼玄蕃ノ名折れだワ……くそぉ……。

やくも
殿さん、今こそ佐久間金沢城を捕まえるだにぃ!!
もう無益な争いは御免やね!!

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん、ごめんね?
きっと正気に戻してみせるから、今だけは大人しくしてて……。

――その時だった。

耳朶を奮わす轟音が、地響きを引き連れて殿の総身を不気味に奮わせた。

やくも
ひいぅぅっ!!
な、なんやね、このおぞこい音は……?

佐久間金沢城
……ついに始マッタか!?
私モこんなところで敵ニ捕まってる場合じゃないわね……。

佐久間金沢城
ハァァァッ――!!

尾山御坊
――きゃぁっ!?

佐久間金沢城
佐久間金沢城、撤退スル!
いいか? 
貴様らの首級ハ、私が必ずヤ討ち取ってみセルわ……サラばッ!!

尾山御坊
ちょっと、佐久間金沢城ちゃん!
兜のところなんかに戻っちゃ駄目だよー!!

尾山御坊
…………あぁ……また逃げられちゃった……。
この妙な地鳴りのする方に向かっていたようだけど……。
あっちの方角って……。

千狐
ええ、兜達が潜伏している森の方角ですね……。
殿、悪い予感がします。
不測の事態に備え、今のうちに準備を整えておきましょう!

操られし鬼玄蕃 -結-

遂に総力を結集して殿へと進撃する兜軍団。
巨大兜と佐久間金沢城の苛烈な襲撃に
今こそ、全身全霊で以て立ち向かえ!

前半
やくも

殿さ~ん!
あっちの森の方から、もの凄い数の兜さんが攻めてきてるだに!

やくも
さっきから聞こえていた地鳴りの正体はあいつらの足音だったかや……。
あげなえっぱいの兜さん……相手になんかできるわけないだにぃ……。

尾山御坊
もうっ、やくもちゃん! 
手繋いでてあげるから泣かないの!
私も怖いけど……ここで頑張らなくてどうするの!

やくも
うぅ……そげなこと言ったって怖いもんは怖いにぃ……。

千狐
……それにしても、なんて数の兜なの?

千狐
あの勢いから察するに、ここで雌雄を決しようというのね。
だとすれば、あの巨大兜もきっと……。

千狐の予感に応じるように、
兜の進軍に塗れた森の樹陰から、
禍々しき魔槍のような姿形を悠然と現した。

前田利家
既ニ策ヲ弄ス意ハ不要ッ!
我ガ最大最強ノ武力を以テ、今コソ敵を殲滅センッ!!

千狐
やはり出てきましたね……。
殿、兜たちは本当に勝負を決めるつもりのようですわ!

やくも
あああーーーっ!?
殿さん、あそこ!
佐久間金沢城の姿も見えるだに!!

佐久間金沢城
流石ハ私たちノ総大将……。
最後はやっぱり純粋な力比べ……分かってるじゃナイ!

佐久間金沢城
鬼玄蕃が槍術の神髄、今こそ照覧あれッ!!
全軍、この佐久間金沢城に続ケぇぇぇええッッッ―――!!!

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃん……。
もう……この戦いで絶対に最後にしようね……。

尾山御坊
そうと決まれば……尾山御坊、全力でいっくよぉーっ!
ローカルアイドルなめんなーーーーーっ!!

千狐
ここが正念場ですわ、殿。
全身全霊でもって、元凶であるあの巨大兜を討ち果たしましょう!

後半
尾山御坊

やったーーーーっ!!
あんなにいっぱいいた兜をぜーんぶやっつけちゃったよぉ!?
殿って本当に強いんだね!

やくも
さっすが殿さんや~っ!
うちはなーんも心配してなかっただにぃ!

尾山御坊
もぉ、やくもちゃんったら~。
あんなに泣きべそかいてたのによく言うよぉ。

やくも
そ、それは言いっこなしだにぃ……。

やくも
――って、それよりも佐久間金沢城の様子はどうなってるかや?

佐久間金沢城
んんぅ…………あ、あれ?
何で私こんなところに――っく、ツぅっ……アイタタタ……。
どうしてこんなに身体中が痛いのよぉ……うぅ……。

尾山御坊
佐久間金沢城ちゃーーーんっ!!

佐久間金沢城
――え、ええっ!?
こ、こら、急に抱きつかないでよ、尾山御坊……いたッ、痛いってばぁ!

尾山御坊
それくらい我慢してよね!
佐久間金沢城ちゃんを助ける為にた~っくさん頑張った私の苦労に比べれば
そんな擦り傷くらいなんてことないって!

佐久間金沢城
私を……助ける……?
ど、どういうことなの?

千狐
兜に操られていた佐久間金沢城さんを救う為に、
尾山御坊さんは私達と共に兜と戦ってくださったのですわ。

佐久間金沢城
私が兜に操られてただって……!?

佐久間金沢城
……だめだ、全然覚えてないわ……。
う~ん、でもそれが本当だとしたら、今の状況も腑に落ちるか……。

佐久間金沢城
――って、あなたたちは一体誰なのよ?

尾山御坊
こっちから順番に、殿に、千狐ちゃんに、やくもちゃんだよ!

尾山御坊
みんな、佐久間金沢城ちゃんを助ける為に、
いっぱいいっぱい頑張ってくれたんだからね!
ちゃんとお礼を言わなきゃ駄目だよ?

佐久間金沢城
そうか……そうだったのね……。

佐久間金沢城
ありがとう……見ず知らずの私の為に、
危険を冒して兜に立ち向かってくれて……本当にありがとう!

尾山御坊
殿、私からもお礼を言わせて!
ほんっとーーーに、ありがとう!

やくも
うんうん、終わりよければ全部良しだにぃ!

千狐
佐久間金沢城さんも無事助けることができて本当に良かったですね、殿!

千狐
ですが、兜の変化の術や城娘を操る能力など、
憂慮すべき点が多く見つかったことも忘れてはいけませんわ……。
兜について、もっともっと知る必要がありますね。

千狐
殿、この度の遠征、本当にお疲れ様でした。
さあ、皆と共に所領へと帰りましょう!



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[花嫁衣装]春日山城

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[花嫁衣装]新田金山城

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