ストーリーテキスト/抜刀珠と兜の夜明け

ページ名:ストーリーテキスト/抜刀珠と兜の夜明け

目次

抜刀珠と兜の夜明け[]

VS椎形兜

勝ち取った平穏を享受し、眠りの中で安らかな
時を過ごす殿。しかしそこに駆け込んできた
柳川城が息を切らしつつ、変事の訪れを告げる。

前半

――所領。

――関ヶ原における決戦を乗り越え、
しばらく経った日の……深夜。

殿
(すぴー、すぴー)

静寂の中、穏やかな寝息だけが響く。

しかし……その平穏は――

どた……どたどたどたっ!!

柳川城
た……たた、大変! 大変ですー!

殿
…………。

殿
(すぴー……すぴー……)

柳川城
殿……起きてください、殿~!!

ガラガラッ!!

柳川城
――殿っ!

殿
(すぴー……すぴー……)

柳川城
と、殿……。

殿
(すぴー……すぴー……)

柳川城
……ふふ、安らかな寝顔。ちょっと可愛いです。

柳川城
…………。(きょろきょろ)

柳川城
(少しくらいなら……そ、添い寝とか……)

柳川城
(そぉ~)

???
――ったく。度胸があるんだか、ないんだか。

柳川城
――ひっ!?

立花山城
どちらにせよ、詰めが甘いわね。
そういうことをするなら、
絶対に邪魔の入らない状況でやらなきゃ。

柳川城
た、立花山城さん! ……どうしてここに?

立花山城
どうしてって……。
あれだけ大きな声を出されたら、目も覚めるわよ。

柳川城
そ、そうでしたね……すみません。

立花山城
……それで? 殿を起こすんじゃなかったの?

柳川城
……はっ、そうでした!
すぐに起こさなければ……!

殿
(すぴー……すぴー……)

柳川城
殿……殿っ。
起きてください、起きてください……。

殿
…………。

殿
(すぴー……すぴー……)

立花山城
…………。

立花山城
…………はぁ。

柳川城
な、なんです? そのため息は……?

立花山城
柳川城……貴方ね、
そんな甘ったれたことやってると……。

立花山城
誰かが――いえ。
私がかっさらっちゃうわよ?

柳川城
――っ!?
な、何を言い出すのですか、突然!

立花山城
もっとしゃんとなさいって言ってるの。
……さっきの慌てぶりを見るに、兜絡みでしょう?

柳川城
……は、はい。その通りです。

立花山城
そんな状況で、もしこの人が起きていたら、
少しでも早く現地に向かおうとするはず……そうよね?

柳川城
はい……だと思います。

立花山城
だったら、優しく肩を叩いてる場合じゃないわ。
頬をつねって、布団から引きずり出すくらいのことはやらなきゃ。

柳川城
ほ、頬を……。

立花山城
……というより。

立花山城
そもそも、
ここまでやられて目を覚まさない人はね……、
こうされても、文句は言えないのよっ!!

ぱちぃーんっ!!

――――

殿
…………。

柳川城
と、殿……ほっぺた、大丈夫ですか?
真っ赤になっていますが……。

殿
…………。

立花山城
…………。

立花山城
(ちょっと力を入れ過ぎたわね……)

立花山城
そ……それで?
兜を見たって報告があったのは、この辺りなのよね?

柳川城
はい。久留米城ちゃんたちから報告があって、
それで私、大急ぎで殿の許に……。

柳川城
あ、その前に……こんな真夜中にも関わらず、
足を運んでいただき、ありがとうございます。

殿
…………!

殿
…………?

柳川城
あ、はい……。
千狐さんや、やくもさんたちにも
お声掛けしたのですが――

――――

やくも
もう食えん……食えん、がやぁ……。

千狐
すぅ、すぅ……なのぉ……。

殿
…………。

立花山城
大丈夫よ……私と柳川城でどうにかできるわ。

立花山城
確かに……霊気の集約を補助する千狐の力は、心強いわ。
……けれど、あの子に頼ってばかりはいられない。

立花山城
それに幸い、これ以上の修羅場は、
嫌って言うほど味わってきてる……。
だから大丈夫……そうよね、柳川城?

柳川城
……は、はいっ。
よろしくお願いします、立花山城さん……!

立花山城
貴方はよろしくされる方だって言ってるんだけど……。

立花山城
まぁいいわ。……とりあえず、
足元に気を付けながら進みましょう。

立花山城
いくら私たちでも、
独りでに転ぶ人を守ることはできないからね?
……分かった、殿?

殿
…………!(こくり)

殿
…………♪(すたすた)

殿
――……!?(ずるっ)

殿
…………っ!?(ずこー)

柳川城
――と、殿っ! 大丈夫ですかっ!?

立花山城
言ってる傍から……。
本当に、期待を裏切らないわね……貴方たちは。

殿
……、……!!

柳川城
躓いた……足下の小石に、ですか?
そうですか……お怪我が無くて安心しました。

殿
…………!

立花山城
……で、これがその石だ、と……?
そんなことを言われても、
暗くてよく見えな――

立花山城
――いえ、意外と見えるわね?
こんなに明るかったかしら。

柳川城
わ……きれいです……♪
丸くて、黄色く輝いて……自然の石とは思えません。

立花山城
石というより『珠』というべきかしら。
よく転がりそうな形をしてる……。
殿の見事な転びっぷりにも、頷けるわ。

殿
…………。

柳川城
…………ん?

柳川城
……あの、お二人とも。
今、ふと気がついたのですが……。

柳川城
何やら、殿の身体が……仄かな光を帯びているような……?

立花山城
……え?

殿
…………?

殿
…………!?

柳川城
――ええ、勘違いではありません!
やはり殿の全身から、光が――!!

立花山城
……驚いた。
明るくなっているように感じたのは、
そのせいだったのね……。

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
……刀? 刀がどうかしたのですか?

おもむろに伸びる……殿の手。
それが柄を握りしめ、一息に刀を引き抜くと――

殿
――――!!

柳川城
きゃっ、まぶしっ――!?
珠や殿と同じ輝きが……刀身にまで……!

立花山城
…………。

立花山城
……ねぇ殿。
試しにその刀で……何か、斬ってみてくれない?

殿
…………?

立花山城
そう……試し斬り。
枝でも、葉でも……何でも良いわ。
その刀からは何か、強い力を感じるの。

殿
…………!(こくり)

殿
…………。(ぐっ)

殿
…………!(ぶぉん)

すぱぁんっ!
ズズ、ズシィィィィン――

柳川城
――……っ!?
軽い一振りで、巨木が幹から……!

立花山城
あの珠が漂わせているのは、
悪しき力じゃない……むしろ、清らかなものを感じる。

立花山城
とはいえ、扱いには慎重を期した方が良さそうね。
……貴方はどう思う? 柳川城――

柳川城
と、殿……!

柳川城
(ど、どうしましょう。
 殿が更に素敵になってしまいました……!)

殿
…………。(どやぁ)

殿
…………?

柳川城
……え、ええ! もう一度、お願いします!
先ほどの見事な一振りを、もう一度!

殿
…………!

立花山城
…………。

立花山城
…………はぁ。

――――

殿
…………!(すぱーん)

柳川城
今度は大きな岩が、いとも簡単に!
まるでお豆腐みたい……!

――――

立花山城
あの……今更なんだけど。
その珠の力は、有事に備えて取っておいた方が――

殿
…………!!(すっぱーん)

柳川城
凄いっ! お見事! お見事です~!

立花山城
…………。

――――

殿
…………!(すぱぱーん)

殿
…………♪(どやぁ)

柳川城
と、殿……♪(もはや言葉も出ない)

立花山城
ふわぁ……ねむ。

そして――

――

――――

殿
…………。

殿
…………?

柳川城
あ……あれ?
東の空が仄かに明るく……?

立花山城
何を今更……。

殿
…………。

立花山城
まぁ良いわ……遊び目当てとはいえ、
殿と柳川城が駆け回った範囲は広大だわ……。
兜が身を潜められそうな場所は、自ずと限られる。それなら――

――ぴしっ。

殿
――……?

ぴし、ぴしぴし……ぴしぃっ!

柳川城
あ……あああ……。
黄色い珠に、ヒビが……!

ぴしぴし……ぱりぃーんっ!

殿
…………!?

柳川城
そ、そんな。
殿に力をもたらした珠が、砕けて……!

立花山城
やっぱり、限りのある力だったのね。
だから言ったじゃない……。
有事の際に備えて、取っておくべきじゃないか、って。

殿
…………。

立花山城
……なんて。こんなことを言っても後の祭りね。

立花山城
でも、私……少し安心してるわ。
貴方を前線に立たせる必要が無くなって……。

立花山城
だって……貴方に守られてばかりいたら、
私たちの立場がないじゃない……。

立花山城
……忘れないでよね。
貴方を守るのは柳川城、そしてこの私なの。

立花山城
だから……貴方の刀は、
その鞘に収まったままでいるべきよ。

立花山城
貴方がこれから下す判断に、文句を言うつもりはないけど……。
私がそう思っていたってことくらいは、覚えておいてちょうだい。

殿
…………。(こくり)

柳川城
か、輝く殿が……素敵な殿が……。

立花山城
い、いつまで落ち込んでるのよ。貴方は……。

立花山城
……さておき。
問題は、まだ何の手がかりも掴めていないことよね……。

立花山城
日が昇りきれば視界も開ける。
それまで一度、休息を取るべきか――

――ズシーン……ズシーン。

殿
…………!! …………!?

柳川城
た、立花山城さん……立花山城さん!!

立花山城
……もう、うるさいわね。
おふざけはいい加減にしときなさいって。
というより貴方たち、そんな調子でよく生き延びて――

柳川城
違います……違うんです、立花山城さん!

柳川城
兜が現れたんです!
それも、これまで見たことのないような――!

ズシーンッ……ズシーンッ……!!

立花山城
――……っ!?
あ……あれはっ……!

合戦中

柳川城
あれは……。
な、なんて大きさなのでしょう……!

立花山城
見慣れた雑兵兜に見えるけれど、違うわね。
大きさ、霊気……何もかもが。

柳川城
さしずめ、[オヤダマ]兜とでも称するべきでしょうか……。

[オヤダマ]椎形兜
殿……城娘、発見……。
命令……役目、使命。
願イ……己ノ、ナスベキ……コト……。

[オヤダマ]椎形兜
ナン、ダッケ……思イ出セナイ……。
願イ……己ノ、ナスベキ……コト……?

柳川城
何か、独り言を呟いているようですが――はっ!
オヤダマを取り巻くようにして、兜が集まってきました……!

立花山城
余計なことを考えるのはやめなさい。
私たちにできることは、一つしかないわ。
……相手が兜である以上はね。

立花山城
出陣しましょう……殿。
あのオヤダマの漂わせる力、嫌な感じがするわ。

殿
…………!

[オヤダマ]椎形兜
分カラナイ……思イ、出セナイ……。

[オヤダマ]椎形兜
デモ……コレデヨウヤク、終ワレル。
解放、サレル……ンダ。

[オヤダマ]椎形兜
…………。

立花山城
……皆、無事?

柳川城
手強かったですが……どうにか乗り切れましたね。

殿
…………。

立花山城
(……ん?
 今、あそこで何か光ったような……?)

立花山城
二人共、ちょっと付いてきてくれる?
……確認したいことがあるの。

後半

柳川城
どうしたのですか、立花山城さん。
確認したいこと、とは……?

立花山城
……これを見てちょうだい。

殿
…………!

柳川城
そ、それは……先ほどの黄色い珠!

立花山城
さっきの兜が崩れ落ちる時、
地面の上を転がっていくのが見えたの。

立花山城
加えて……あの異様な兜が漂わせていた、力。
貴方も気付いたでしょう……柳川城?

柳川城
……はい。先の戦い……、
あの大きな兜が、帯びていた輝きは正しく、
この珠と同じもの……!

立花山城
ただの残党退治と思っていたら、
痛い目を見ることになりそうだわ。
気を引き締めていきましょうね……殿。

殿
…………!

VS古桃形兜

変容した兜からこぼれ落ちた、輝きを放つ珠。
兜が遺した、最期の言葉。深く刻まれた光景が、
柳川城の脳裏で幾度も繰り返し、再生される。

前半

柳川城
…………。

[オヤダマ]椎形兜
分カラナイ……思イ、出セナイ……。

[オヤダマ]椎形兜
デモ……コレデヨウヤク、終ワレル。
解放、サレル……ンダ。

柳川城
…………。

立花山城
――何か考え事かしら、柳川城?

柳川城
……あ、いえ。
少々、ぼーっとしてしまって……寝不足でしょうか。

立花山城
ごまかしてもだめ。正直に答えなさい。

立花山城
さっきの兜について……考えていたのでしょう?

柳川城
…………。

立花山城
……私がさっき言ったこと、覚えてるわね?

柳川城
『余計なことを考えるのはやめなさい。
 私たちにできることは、一つしかないわ。』……。

立花山城
……そういうこと。それ以上も以下もないわ。

柳川城
立花山城さんはもう……気付いているのですね?
先の兜に、何があったのかを……。

立花山城
まだ推測の段階よ。ただ、まぁ……。
貴方と考えていることは一緒でしょうね、多分。

柳川城
…………。

立花山城
ほら、行きましょ?
早くしないと殿に置いてかれてしまうわ。

柳川城
……はい。

――――

[オヤダマ]古桃形兜
…………。

柳川城
い……居ました!
兜の姿を、ようやく……!

[オヤダマ]古桃形兜
(ウロウロ……ウロウロ)

[オヤダマ]古桃形兜
城娘……殿。城娘……殿。
居所ハ、イズコ……見ツケテ……勝利シ、葬る。
ソレガ我ガ使命。

[オヤダマ]古桃形兜
使命……使命?
ソレハ誰ノ……命デアッタカ……?

[オヤダマ]古桃形兜
ダガシカシ……俺ハ、俺ハ……。

柳川城
また独り言を……先ほどの兜と同じ……。

殿
…………。

立花山城
そうね……大きさは私たちの良く知るものと同じだわ。

殿
…………?

立花山城
……あの独り言が、気になるの?

立花山城
…………。

立花山城
以前から、気になっていたのよね。

立花山城
巨大兜に従ってばかりの雑兵兜たちが、主を失って……、
どこへ向かうのだろう……って。

殿
…………?

立花山城
そうね……。
人を討ち……世を滅ぼす。そこに収束することでしょう。
その目的の下で生み出されたのが兜なんだから。

立花山城
その目的は……。
あらゆる兜の心奥に刻まれた、使命とも言うべきもの。
それに逆らうことはできない……。

柳川城
ですが……その主はもう、どこにも居ません。
雑兵と言えど、それを理解することくらいはできるはず。

立花山城
主は居ない……勝ち目は薄い。
なら……勝ってどうする? 何のために戦う?
兜たちは、そんな風に考えるのでしょうね。

殿
…………。

柳川城
……なのに、その心奥には使命が刻まれている。

柳川城
抗えない使命。
それでも考えずにはいられない……戦いの目的。
その狭間で……悩んで、悩んで――

立花山城
――悩み続ける。
そうよ、兜としての存在が続く限り、いつまでも。

柳川城
その葛藤、想いが……、
此度の変容に影響を及ぼしているのでしょうか。

殿
…………。

立花山城
……何にせよ。
私たちが成すべきことに、変わりはないわ。
殿、貴方なら分かるわよね?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
……承知しました。
引き続き気配を殺しつつ、後を追いましょう。

合戦中

[オヤダマ]古桃形兜
ウ……ウウゥ……アアァア……。

柳川城
……見つけました。
やはり、大きさはもちろん、
有する霊気も本来のものとは、比べ物になりません……!

立花山城
空虚で歪な……オヤダマ。
あいつの下に、また兜たちが集ってきたわ……!

殿
…………!

柳川城
……それでは、出陣いたします!

柳川城
兜が動きを停止しました!
力も、失われていきます……!

立花山城
――見て、二人共。
崩れ落ちていく兜と一緒に、黄色い珠が……!

殿
…………!

柳川城
ええ、こうしてはいられません。
……慎重に迅速に、回収へ向かいましょう!

後半

柳川城
……見つけました。
輝く珠……先の物と同じです。

立花山城
今度の珠は壊さないよう、慎重に取り扱わなきゃね……。

殿
…………!

柳川城
……さぁ、殿。歩みを進めましょう。
先の者と同じ境遇に置かれた兜が、
他にも居るかもしれませんから……。

VS桃形兜

気まずい沈黙が満ち、三人の足音だけが辺りに
響く。その空気をどうにか打破すべく、声を
潜めて言葉を交わす柳川城、立花山城だが……。

前半

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ――

立花山城
…………。

柳川城
…………。

殿
…………。

ざっ、ざっ、ざっ、ざっ――

立花山城
…………。

立花山城
(ち、ちょっと柳川城……。
 この空気、どうにかしなさいよ……!)

柳川城
(む、無茶を言わないでください……!
 どうにかしてほしいのは、私の方です……)

立花山城
(どこが無茶なもんですか!
 貴方これまで、ずっと殿と一緒に旅してきたんでしょ?)

立花山城
(……だったら、こういう重たい場面くらい、
 何度も遭遇してるはずでしょ……?)

柳川城
(こういう場面……こういう場面……ええと)

柳川城
(こういう時は決まって、
 やくもさんと千狐さんが面白おかしい騒動を起こすんです。
 だにー、とか……なのー、とか……)

柳川城
(…………はっ!?)

立花山城
(な、何か思いついた……?)

柳川城
(つまり、私も語尾を変えれば……あるいは?)

立花山城
(どうしてそうなるの!?
 絶対に違うと思うわ、それだけは!)

柳川城
(で……ですが、他にそれらしい手立ても――)

???
――ナクチャ……急ガ、ナクチャ……。

???
イ、急ガ……急ガ、ナクチャ……急イデ、急……ガ……。

殿
…………?

柳川城
この声は……?

立花山城
――っ!

立花山城
見て……あそこよ。

桃形兜
早ク……早、ク……急……。

柳川城
……桃形兜。
地べたに横たわって……這いずって……。
いったい、何があったのでしょう。

立花山城
どうだっていいわ。
どこかが壊れたか、寿命が訪れたか。
そもそも、兜に寿命というものがあるかは知らないけど……。

立花山城
いずれにせよ、長くはないでしょうね。
放っておいても大した脅威にはならないわ。

立花山城
さ、兜の影を追いましょう。
他の兜が近くに居るかもしれない……。

柳川城
…………。

柳川城
……私、声を掛けてみようと思います。
あの桃形兜に……。

殿
…………!

立花山城
はぁ……急に何を言い出すの?
やめなさいって。弱っているとはいえ、相手は兜よ?

柳川城
大丈夫です……あの子は危険じゃありません。

立花山城
何を根拠に、そんなこと……!

柳川城
根拠はありませんが……分かるんです。

柳川城
そして、立花山城さんの言う通り……あの兜はもう、長くない。
だとしたら、私があの子の話を聞く意味は、あると思いませんか?

柳川城
お願いします、立花山城さん。
私のこと……信じてください。

立花山城
……柳川城。

殿
…………。

立花山城
……分かったわよ。
そこまで言うなら……好きにすれば?

――――

桃形兜
急ガナクチャ……急ガナクチャ……。
早クシナイト、早クシナイト……。
手遅レニナル前ニ……。

柳川城
すみません……すみません。
私の声が……聞こえますか?

桃形兜
……ン?
誰、オ姉チャン……。

桃形兜
オ姉チャンハ……何シテル人?
良イ人、悪イ人?

柳川城
何してる人……ですか。
ええと、お姉ちゃんは……城――

柳川城
――……。

柳川城
お姉ちゃんは……皆の願いを守る人ですよ。

桃形兜
皆ノ願イヲ、守ル……。
……僕ノ願イモ?

柳川城
聞かせてくれますか? ……貴方の願いを。

桃形兜
…………。

桃形兜
……急イデタンダ。
守ラナクチャイケナカッタカラ。
手遅レニナル前ニ、早クシナキャッテ……。

柳川城
守る……それは、誰のことを?

桃形兜
誰ダッタカナァ……誰ダッタンダロウ。
凄ク、凄ク大切ナ何カ、ダッタヨウナ……気ガスル。

桃形兜
ナノニ、忘レチャッタ。
僕ハモウ……ソレヲ思イ出スコトハ、ナインダロウナァ……。

桃形兜
アァ……ドウシテ忘レチャッタノカナァ……。

桃形兜
チャント覚エテタラ、僕ノ願イモ……、
守ッテ、モラエタノ……カナァ……。

柳川城
…………。

柳川城
――っ!? いけません!
その手に持っているのはっ!

桃形兜
ワァ……凄イヤ。
チカラガ溢レテクルノヲ……感ジルゾ。

桃形兜
コノチカラガアレバ……モット、モット……。

桃形兜
ア、アアァ……アアアァァァァ――!

立花山城
……そういうからくりだったのね。
さぁ殿……準備はいい?

合戦中

[オヤダマ]桃形兜
ウウ……グウ、ウオォォォ……!

柳川城
桃形兜が、見る見るうちに大きくなって……。

立花山城
今度のオヤダマは、桃形兜……というわけね。

殿
…………!

柳川城
承知しました……殿。
どうか……聡明な下知をお願いします!

立花山城
兜が……力を失い、崩れ落ちていく……。

柳川城
『救い』などと呼べるものではありませんが、
彼らのために私たちができることは、これくらいのものです……。

立花山城
そんなことないわ。
きっと感謝してるはずよ……あの子も。

立花山城
そう思わなきゃ……やってられないじゃない。

後半

柳川城
受け取ってください。
此度の兜からこぼれ落ちた……珠です。

殿
…………!

立花山城
結局、なんだったのかしらね。
兜を変容させたこの珠の正体は……。

柳川城
私たち城娘には干渉せず、殿や一部の兜に強大な力を与える……。

柳川城
不明な点ばかりですが、
兜の手に渡ることは避けねばなりません。
今後も見つけ次第、集めていくべきでしょう。

殿
…………!

――――

――――

立花山城
やっと着いた……長い一日だったわね。

柳川城
日も昇り、すっかり朝になってしまいましたね。
早く布団に入って休息を――

殿
…………。(すこー)

立花山城
――って。この人、
すでに眠ってしまってるんだけど……。

立花山城
……まぁ、仕方ないわね。
うんうん……状況が状況だもの。

立花山城
それじゃ、お隣を失礼して……ごろーんっと。

柳川城
た、立花山城さんっ!?
殿が眠っているのを良いことに、そのようなっ!

立花山城
言ったでしょ、仕方ないって。
夜中からずっと駆け回ってたんだもの。
布団まで辿り着けずに眠ってしまっても、無理もないことよ。

柳川城
仕方ない……無理もないこと……。

立花山城
だから……ほら。来なさいって。
大きくて、暖かくて……とっても居心地が良いわよ?

柳川城
…………。

柳川城
(ごくり)

立花山城
(あ、生唾飲み込んだ……)

――――

ちゅんちゅん……ちゅんちゅんちゅん……。

やくも
こぉら~、三人とも!
こんなとこで眠りこけるなんて、行儀が悪いがや!

千狐
んぅ……今日のやくもは朝から元気なの。
いったい何があったの……?

やくも
朝起きて、ここに来てみたら……びっくりだに。
殿さんたちが部屋のど真ん中で、ぐーぐー寝息を立てとったがや。

やくも
大の字になった殿さんと、隣には立花山城、柳川城……。
千狐に怒られたらいかんと思って、声を掛けとったがや!

千狐
――っ!?
殿と柳川城さん、立花山城さんが三人で――っ?

殿
…………。(すこー)

立花山城
本当に……貴方たちは。
世話が……焼けるんだから……。

柳川城
えへへ……殿ぉ……。

千狐
…………。

千狐
……やくも、近くの部屋から掛け布団を持ってきてくれる?
皆さんの眠りを邪魔しないように……静かにね。

――――

ツバサ
はぁ、はぁ……はぁ……。

白泉
おーい、ツバサ? 大丈夫かぁ?
一旦休憩した方が良いんじゃないかー?

ツバサ
ううん! あとちょっとだけ頑張るー!

白泉
……ツバサ。
いいぜ……その意気だ!
そういうことなら、あたしも手加減はしねぇっ!

ツバサ
あ、適度に手加減はしてほしいかもぉ……。

白泉
いくぞぉ……それっ!

びゅおんっ!

ツバサ
わ、凄い速さ――あぁぁっ!?
ああ……あっちに飛んでっちゃった……。

白泉
す、すまねぇ! 力加減を誤っちまった!
取りに行ってくるから、そこで待っててくれ!

白泉
……さて。
ボール、ボールは~、っと――あれ。
おっかしいなぁ……どこにも見当たらないぞ?

白泉
ん~……ま、いっか。
あんだけ輝いてんだ、なんかの拍子に見つかるだろ。
――ツバサ、今日はここで終わりにしよーぜー!

(ガサ、ガサガサ……)

???
チカラ秘メシ、珠……眩キ、輝キ……。

???
此ノ身ノ……向カイシ先ハ、何処……。

VS犬形兜

古河城の招待を受けて、下総国へ訪れた一行。
夜は更けて皆が眠りに落ち、静寂に満たされた中
どこからか犬の遠吠えが高らかに響く……!

前半

――下総国、某所。

殿を招いた此地では、
夜更けまで飲めや歌えの大騒ぎ。

そんな時間もとうに過ぎ去り、
夜闇は静けさで満ちる。
そこに聞こえるのは、一同の穏やかな寝息だけ――

柳川城
すー……すー……。

立花山城
すぅ……すぅ……。

やくも
ふひ、ふひひ……。
もぉ……食えんだにぃ……。

千狐
いい加減にしなさい……なのぉ……。

殿
…………。(すぴー)

???
――わぉ~ん……。

???
――わぉ~~~~~~~~~ん……!

殿
…………?

立花山城
ん、んぅ……?

柳川城
むにゃ……わぉ~ん……?

――ばた、ばたばたっ!

殿さん殿さんっ、殿さぁぁぁぁぁん!

殿
…………。(すぴー)

???
ここから声をあげたって仕方ないでしょう……急ぎなさい!

どた、どたどたどた――!

がらがらっ!

滸我御所
――殿さんっ!

――――

殿
…………。(むにゃ)

立花山城
もう、なんなのよぉ……。
まだ夜も明けてないっていうのに。

柳川城
宴は先程、お開きになったはずですが……?

滸我御所
悪しき者の気配を感じたのですよ、殿さん!
私の相棒、シノちゃんによる報せです……間違いありません!

シノちゃん
…………。

シノちゃん
……わん?

柳川城
滸我御所さんのワンちゃんは、首をかしげていますが……?

滸我御所
あれ……あれぇ?
どうしたんですか、シノちゃん!
頷いてください……さっきのように、ほらっ!

シノちゃん
わ、わ――わんっ!

滸我御所
み、見ましたか皆さん! この通りです!

立花山城
……不安が急激に増したんだけど。

殿
…………。

古河城
……滸我御所の言い分はさておき、
何かが起きていることは間違いないわ。

滸我御所
(……さておき!?)

古河城
私も、はっきり感じたのよ。
得体の知れない……違和感のようなものをね。

古河城
事実はどうあれ、座視できる状況でないことは確かよ。

立花山城
あら、そうだったの。
となれば……放ったまま、
眠りこけてるわけにはいかないわね。

滸我御所
(私が報告した時と、反応が全然違いますっ!?)

柳川城
そうですね……では、
すぐに出発して確認を――

殿
…………。

やくも
すぴー……すぴー……。

千狐
すこー……なのぉ……。

滸我御所
ええと、こちらのお二人はどうすれば……。

立花山城
どうしても目を覚ましてくれないのよね。
声を掛けても、ほっぺを叩いても……。

古河城
寝かしておいても良いんじゃない?
誰が相手であっても、
私たちが片付ければ済む話なのだし。

殿
…………!

柳川城
……承知しました。
それでは、此度の異変は私たちで、
解決まで導きましょう!

シノちゃん
わんっ!

滸我御所
いかがです、シノちゃん……感じますか?

シノちゃん
わん……わん、わんわんっ。

滸我御所
ふむ、ふむふむ……なるほど!

立花山城
……何が分かったの?

滸我御所
あ、いえ……まだ何も分からないそうです……。

殿
…………。

滸我御所
だ、大丈夫です!
私とシノちゃんは鼻が利きますので、すぐに――!

???
――ワンワンッ!!

滸我御所
ほら、早速シノちゃんが手がかりを見つけたようですよ♪

滸我御所
さぁシノちゃん、私たちを案内してください!

シノちゃん
くぅ~ん……。(ふるふるふる)

滸我御所
……え、『違う』? 違うとは、いったい何が――?

犬形兜
ワワンッ!!

殿
…………!

柳川城
あれは……兜!?

犬形兜
ワン、ワンワン……クゥ~ン……。

立花山城
妙ね……敵意を感じないわ……。

柳川城
私たちが追いつくのを、
待っているように見えます……罠でしょうか?

古河城
……滸我御所、どう思う?

滸我御所
切なげな鳴き声、寂しげな背中。
なんというか、なんというか……。
今すぐ駆け寄って、抱きしめてあげたいです……!

古河城
……滸我御所?

滸我御所
わ、私たちに伝えたい事があるように見えますっ!
もちろん、罠である可能性は否定できませんが……。

殿
…………。

殿
…………!

立花山城
……そうね。
あの兜の真意はどうあれ、後を追うべきだわ。
放置すればどうなるか分からないもの。

柳川城
ええ……細心の注意を払いながら進みましょう。

古河城
…………。

古河城
……辛い戦いにならないことを祈るばかりね。

滸我御所
……? 何か言いましたか、古河城ちゃん?

古河城
……なんでもない、独り言よ。

古河城
ほら、急ぐわよ……兜の後を追うんでしょう?

合戦中

[オヤダマ]犬形兜
グルル、グルルルル……!

柳川城
あれは……巨大な犬形兜……!?
霊気を高めた巨大な個体……オヤダマ兜。
それが再び出現したのですね。

滸我御所
なんと凄まじい力……!
シノちゃんがカタカタ震えています……。

古河城
…………。

立花山城
……古河城、浮かない顔だけど大丈夫?
気分が優れないなら、後ろで休んでも良いわよ?

古河城
平気よ……簡単な話だわ。
……あの兜を討てば良いのでしょう?

滸我御所
オヤダマ兜が、力を失って倒れていく……。

古河城
この光景は……いつ見ても気分の良いものじゃないわね……。

シノちゃん
わんっ! わんわん!

滸我御所
――あぁっ! 待ってください!
離れて行動するのは危険ですよ、シノちゃん……!。

滸我御所
――ん? これはいったい……?

殿
…………?

後半

滸我御所
あのぅ……殿さん。
こちらの珠をご覧いただけますか?
今しがた、シノちゃんが拾ってきたんですけど……。

柳川城
……珠、ですか?

滸我御所
はい……この輝き、
ただの石ころとはとても思えなかったので……。

殿
…………!

立花山城
この珠は……!

古河城
……見覚えがあるのね?
詳しい話を聞かせてくれるかしら?

殿
…………。

立花山城
……そうね。まずは先へ進みましょう。
状況の説明は歩きながら……それでいいわね?

VS猿形兜

強き力と輝きを備え姿を変えた、オヤダマ兜。
さらなる波乱の予感を覚えた一行は、
兜の気配を追って奥へと歩を進めていく……。

前半

滸我御所
行く当てを失くした兜の……成れの果て?

立花山城
……私たちは、そう考えているわ。

柳川城
件のオヤダマは、
兜が勢力を弱める契機となった、
あの決戦を境に生じています……。

柳川城
力を強めた兜たちが漂わせる、虚ろで悲しげな空気……。
そして、彼らを討つたびにこぼれ落ちる珠。

柳川城
これらは無関係ではないと、私たちは考えています。

滸我御所
使命と意志の狭間で揺れる……兜の心。
それにこの珠が呼応した……ということでしょうか?

柳川城
確かなことは……まだ。
ですが、一つ間違いないと言えるのは……。

殿
…………。

古河城
…………。

古河城
……『ようやく終われる』『解放される』
以前倒したオヤダマは……確かにそう言っていたのね?

立花山城
ええ……。

古河城
兜の介錯、とでも言うべきかしら……因果なものね。

滸我御所
古河城ちゃん……。

古河城
……事情は理解したわ。
皆が私を心配してくれていることもね。

古河城
でも……行かなきゃ。

古河城
ここで退いたら、絶対に後悔する。
この役目が私に与えられたことには、
きっと……意味があると思うから。

殿
…………。

柳川城
……承知しました。
それでは引き続き、兜の気を探りながら――

滸我御所
――あれを見てくださいっ!

猿形兜
――――

殿
…………!?

柳川城
……兜です!
殿はお下がりください!
城娘たちは出陣の用意を――!

古河城
…………。

古河城
……待って。

猿形兜
…………。

古河城
よく見て……この子は、もう……。

猿形兜
…………。

古河城
……地面を這いずったような跡が残ってる。
力が尽きる直前まで、前へ進もうとしてたみたい。

殿
…………。

滸我御所
方向は……あちらですね。
気配を殺しつつ、慎重に進みましょう。

合戦中

ズシーン……ズシーン……!

[オヤダマ]猿形兜
ウキ、ウギギ……グギィィイイ……!

滸我御所
この地揺れのような音は……兜の足音ですかっ!?

柳川城
やはりここにもオヤダマが……心して掛かりましょう、殿!

[オヤダマ]猿形兜
キ、キキ……ィ……。

柳川城
兜たちが力を失っていきます!
オヤダマ兜、それから他の者たちも皆……!

立花山城
そして……件の黄色く輝く珠が、もう一つ……。
有事に備えて、大事に保管しておきましょう。

後半

古河城
…………。

殿
…………。

古河城
これで、あの子たちは救われたのかしら?

立花山城
……何が言いたいの?

古河城
『私たちが救った』なんていうのは、
そう思いたいだけで……ただの願望なんじゃないか、って。
そんな考えが頭をよぎったの。

立花山城
……情けないことを言わないでよ。
進むと決めたのは、他ならぬ貴方でしょう?

古河城
……そうね。……そうだったわ。

シノちゃん
――わんっ!!

滸我御所
……古河城ちゃん。

古河城
……励ましてくれてるのかしら?
ふふ……ありがとね、シノちゃん。(なでなで)

滸我御所
い、一応言っておきますけど、
私も心配してるんですからね……古河城ちゃん?

古河城
はいはい、ちゃんと分かってるわよ。(なでなで)

滸我御所
――ひゃぁっ、くすぐったいですぅ……!

殿
…………。

柳川城
兜の力は弱まりつつあります。
ですが……まだ消え失せてはいません。
先へと歩みを進めましょう……殿。

VS兎形兜

古河城の胸裏をかき乱す、過去の記憶。
この戦は新たな未来への一歩目となるか。
散りゆく定めの兜と相対した彼女の思いは……。

前半

――――

ダカラ、コンナ所ニイチャ……ダメダ……。

アナタハ……在ルベキ、場所……ニ…………。

………………………………………………。

――――

――――ちゃん。

――河城ちゃん、古河城ちゃんっ。

古河城
――――っ。

滸我御所
古河城ちゃん、大丈夫ですか……古河城ちゃんっ?

古河城
ええ、聞こえてるわ。……どうかしたの?

滸我御所
それは私の台詞です!
急に立ち止まったと思ったら、
ぼーっとして、声を掛けても反応しなくなって……!

古河城
なんでもないわ……少し、昔のことを思い出していただけ。

立花山城
……問題は無いのね?

古河城
しつこいわね……なんでもないってば。
ほら、先を急がなきゃ――

???
――ウウゥ……ウウウゥゥ~~……。

???
誰カ……誰カ助ケテ……。
ドウシテコンナコトニ……ナッテシマッタンダ。
ウウ、ウウウゥゥ……。

殿
…………!

柳川城
今の呻きは……兜の声のように思えましたが……?

滸我御所
聞こえてきたのは、あちらの方でしょうか。
何か手がかりだけでも掴めれば――あぁっ!?

兎形兜
――シ、城娘ッ!?

兎形兜
ナンテコッタ……コンナトコロデ出クワスナンテ……!

滸我御所
――逃げていきますよ! すぐに後を追わなければ……!

兎形兜
ヒイイィィッ、ゴメンナサイッ!
ゴメンナサイゴメンナサイィ~~!!

古河城
――待って! 話をしましょうっ!

兎形兜
――エッ?

古河城
貴方、今……『助けて』って言ってたわよね?

古河城
……話を聞かせてほしいの。

古河城
私たちに何ができるかはわからないけど、
それで伝わるものが、あるかもしれないから……。

兎形兜
…………。

――――

立花山城
それで……。
貴方はどうして一人でこんなところに?

兎形兜
コノ辺リニハ、主ヲ失ッタ兜ガ沢山イル……。
戦ウコトヲヤメタモノガ、自然と共に暮ラシテイタ。

兎形兜
ケド……アル日突然、
犬ヤ猿ノ大キイノガ現レテ、暴レダシタンダ……。

殿
…………。

柳川城
……オヤダマのことですね。

滸我御所
その大きい仲間は、どこから現れたのです?

兎形兜
分カラナイ……分カラナイヨ……。
誰カガイキナリ大キクナッタノカ、他所カラヤッテキタノカ……。

兎形兜
トニカクアイツ、荒ッポクテ……チカラモ凄ク強インダ。
言葉モ通ジナイカラ、皆困リ果テテタ……。

兎形兜
シカモ、ソレニ釣ラレルヨウニシテ、
ソレマデ普通ダッタハズノ兜タチマデ暴レダシタンダ……。

兎形兜
今ヤ兜タチハ混乱シテ、誰ガ味方カモ分カラナイ。
俺ダッテ、他ノ奴ラミタイニイツ暴レ始メルカ……。

柳川城
…………。

兎形兜
キット……罰ガ当タッタンダ。

兎形兜
人ヲ傷ツケルタメニ生ミ出サレタ分際デ……。
散々悪サヲシテ、色ンナモノヲ傷ツケタ癖ニ、
平穏ナ暮ラシヲ望ンダリシタカラ……。

古河城
…………。

兎形兜
ナァ、アンタタチニオ願イガアルンダガ……。
ココイラノ兜タチヲ、ヤッツケテクレナイカ?

殿
…………!

兎形兜
俺ニハ分カル……此処ノ奴ラハモウダメダ。

兎形兜
アンタラノ言ウ『オヤダマ』ハモチロン、
他ノ皆モ遅カレ早カレ……兜の業ニ逆ラエズ、暴レ始メルダロウ。
俺モ……今ノ自分ガマトモダトハ、トテモ言エナイ。

兎形兜
ダカラ、手遅レニナル前ニ、
オ前タチノ手デ、幕ヲ……引イ、テ――ゥグッ!

殿
…………?

兎形兜
グ、ゥガ……ギ、ギギギグ、ァ……!?

古河城
兜の力が……! まさか、これは――!

合戦中

[オヤダマ]兎形兜
グゴ……グゴゴゴゴゴ……。

古河城
…………。

古河城
……そう、貴方がオヤダマ兜だったのね。

古河城
殿、頼んだわよ。……どうか、聡明な下知を。

[オヤダマ]兎形兜
ア……アリ、ガ……。

古河城
――――っ!

[オヤダマ]兎形兜
……アリガ、ト……ウ……。

古河城
…………。

古河城
ごめんね……何もしてあげられなくて。
こんなことしかできなくて。

古河城
……次にどこかで会えたら、その時は――

後半

兎形兜
……アァ。
意識ガ……チカラガ……失ワレテイク。

兎形兜
覚悟ハシテイタ……ケド――ナント恐ロシイ。

古河城
…………。

兎形兜
ドウシテソンナ悲シイ顔ヲスルンダ……城娘?

古河城
……ありがとう、だなんて。
そんなこと言われる筋合い……私には……。

兎形兜
オ前ガドウ思オウト構ワナイ……。
ソレハ、俺ガ何ヲ思オウト、
誰ニモ咎メル権利ガナイコトト……同ジ。

兎形兜
ダカラ俺ハ……オ前ニ感謝ヲ告ゲル。

兎形兜
……アリガトウ、優シキ城娘。
願ワクバ……何処カノ、遠イ未来デ……イツカ――

兎形兜
…………。

兎形兜
……………………。

古河城
…………。

滸我御所
古河城ちゃん……大丈夫ですか?

古河城
……滑稽ね。

古河城
もう考えても仕方ないのに。
あの子を救う術は無かったのか……なんて。

滸我御所
…………。

古河城
でも……足を止めてる暇なんか、無いわよね。

古河城
情けない生き方をしていたら、あの子に笑われてしまうもの。

滸我御所
……そうですね。
私たちにできることを考えましょう。
私もお傍で支えますから……ね、シノちゃん?

シノちゃん
わんっ!

殿
…………。

立花山城
周囲からはもう、兜の霊気は感じられない……一件落着ね。

柳川城
オヤダマ化した兜との戦い……解放は、
これからも続いていくのでしょうか。

立花山城
ええ……。
これも含めて私たち城娘の務め……ということね。
太平の実現まで、私たちも気が抜けないわ。

殿
…………!

殿
…………。

殿
…………。(むにゃ)

柳川城
はい……そうですね。
夜更けに目覚めてから、戦いが続いていました。
流石に私も眠気が――

滸我御所
すぴー……。

立花山城
というか……若干一名、
早くも落ちてる子がいるわね……。

柳川城
は、早い……。

古河城
まったく、貴方は……。
私を支えるんじゃなかったの? ……もう。

――――

――それから数刻。

やくも
朝、あさ~! あ~さ~だ~にぃ~!

やくも
早ぉ起きんと怖~い怖~い狐の神娘が、
みんなの布団をひっぺがしにくるがや~!

やくも
朝食の用意も整っとるし、千狐を怒らせんうちに――

(がらがらっ!)

やくも
――お?

殿
…………。(すぴー)

柳川城
すー……すー……。

立花山城
すぅ……すぅ……。

滸我御所
ぐぅ……ぐぅ……。

古河城
くー……。

やくも
あ~、これは……。

やくも
……ん? おお……そうだにっ!

――――

千狐
もぉ……何をやっているのよ、やくもは……。

千狐
殿たちを起こしにいくのに、どれだけ掛かってるの。
朝食が冷めてしまうじゃない……!

千狐
ほら皆さーん、朝ですよ!
こんなに良い日和なのにお寝坊なんて、勿体ない――

(がらがらっ!)

やくも
えへへ、殿さんの身体……あったかいがや~。

殿
…………。(すぴー)

千狐
……や、やくも!?

千狐
そんな羨まし――じゃなくて、何をしているの!?
皆さんを起こしてって言ったでしょう?

やくも
ん~……。
やけど、みんなぐっすり寝とって、
ぜぇんぜん起きそうにないがや。

やくも
これはもう、うちもご相伴に預からせてもらうしか……ぐぅ。

千狐
どういう理屈なの……。

やくも
千狐も文句ばっかり言っとらんで、一緒に寝るがや!

千狐
え……!

やくも
殿さんの身体は寝心地最高! 安眠効果も抜群!
一回味わったら、病みつき間違いなしだに!

千狐
ぁ、ぃゃ……そうかも、しれないけど……。

やくも
千狐も真面目ばっかりじゃ疲れてしまうだに!
たまには、ちょっと寝坊する日があったっていいがや♪

千狐
…………。

千狐
コン……それじゃ。
殿の隣、お邪魔しても良い……かしら?

――この後一同は、日暮れまでぐっすりと熟睡。

欲望に負けたことを千狐が激しく後悔するのは、
もう少々先のことである……。

VS蜻蛉形兜

月見の宴に、鳴海城の元へ集った一行と城娘達。
前夜祭もつつがなく終えた深更、天守で語らう
鳴海城たちが、山影の縁に見たものとは――。

前半

???
ナゼ、ドウシテ…………。

???
ドウシテ、俺ダケ……コンナ惨メナ思イヲ
シナクチャナラナインダ……?

???
悔シイ、悔シイ……。
…………クソッ、畜生ッ!!

???
――――アア……飛ベナイ、我ガ身ガ恨メシイ…………。

――――

――時を同じくして、尾張国、某所。

各地の城娘が集うお月見の宴を明日に控え、
その前夜祭もつつがなく幕を閉じた、静かな夜更け……。

伊勢湾を臨む天守に、三人の城娘の姿があった。

柳川城
あら……鳴海城さん?

立花山城
へえ、まさか、先客が居るなんてね。

鳴海城
おや、珍しいお客さんだね!
こんばんは~♪

鳴海城
こんな時間に、二人してどしたの?
眠れなかったー?

立花山城
私は、火照りを冷ましに来たこの子の付き添い。
隣の布団で何度も寝返りうたれて、煩くて叶わなかったのよ。

柳川城
うぅ、宴会の準備で張り切りすぎてしまって……。
恥ずかしながら、そんなところです。

柳川城
……鳴海城さんも、夜風へ当たりに?

鳴海城
ううん、アタシは、夜の見張り番。
今は必要ないんだろうけど……すっかり習慣になっちゃっててさ!

柳川城
す、凄い……!
最近気が緩みがちな私も、見習わなくては……!

立花山城
はぁ。
気を張り過ぎて、いざという時に疲弊していたら意味ないわよ?

立花山城
それに、鳴海城の場合は意識というより……。
御城として染みついた性、と言った方が正しいんじゃない?

鳴海城
も~、二人して真面目ちゃんなんだからー!
宴のお客さんなんだし、キミたちはもっとくつろぎたまえ!

鳴海城
へへ……でも、立花山城ちゃんの指摘は面白かったな。
自分でも意識なのかサガってやつなのか、正直よくわからないし?

柳川城
鳴海城さん……。

鳴海城
なんてね! シンケンなお話はなしなし!
よぉ~し、折角だし、諸君に昨晩の穴子の感想でも伺――――

鳴海城
……ん…………?

立花山城
……どうしたの?

鳴海城
ね、柳川城ちゃんの後ろの山――。
何か動いたような……すっごく、大きい虫の影みたいなのが……。

鳴海城
ほら、また!

柳川城
ええ!? ほ、本当ですか?

立花山城
暗すぎて、私たちからだとよく見えないわね……。

柳川城
ここからでも観測できる程、大きな影……。

鳴海城
山の稜線に沿って浮遊していたのが、はっきり見えたんだ。
これは……お月見の前に、片付ける必要があるかもね!

――――

やくも・千狐
すや……すや……。

殿
(ぐぅ……すぴー……)

立花山城
相も変わらず、呑気な寝顔ね……。

柳川城
殿ーっ!
有事です、起きて下さい!!

殿
(ぐぅ……ぐぅ……)

柳川城
殿~~~~っ!!

殿
…………!?(がばっ)

柳川城
きゃあ!?
い、いきなり飛び起きられると、それはそれで……!

殿
…………?

鳴海城
ふふ、キミたち面白いね♪ いつもこんな感じなの?

立花山城
まあ……ときおり間が抜けてることに関しては、
否定できないわね……。

鳴海城
あ、殿、おっはよ~~♪

殿
…………??

鳴海城
東の山に異変の予感あり、だよ!
お月見の宴もあるし、手遅れになる前に、直ちに調査解決に向かおう♪

殿
…………!

柳川城
しっかりした方なんですね、鳴海城さん。
快活なだけではないというか……。

立花山城
何であれ、頼りになりそうなのは良いことね。

立花山城
(ところで、鳴海城の見た巨影……。
 貴方、何か心当たりがあるんじゃなくて?)

柳川城
(はい、まだ確証はありませんが……
 それほどの大きさ……私たち城娘と、既に亡き巨大兜を除けば……)

鳴海城
おーい、キミたち!
もう出発するよー?

柳川城
はっ、すみません、今行きます!
……あの、千狐さんたちは……どうしましょう?

立花山城
ぐっすり寝ついているみたいだし、そっとしておいてあげなさいな。

殿
…………。

殿
…………?

育野城
えへへ…………主様……どこ行くの……?

殿
…………!!

柳川城
ひゃあああ!?
お、オバケ……じゃないです、よね??

鳴海城
び、びっくりしたぁ……。
キミ、いつの間に殿の後ろへ……?

育野城
僕、眠れなくて……。真っ暗な御城の中を散歩してたら、
主様の部屋のところ、騒がしかったから……気になっちゃって……。

立花山城
貴方、確か育野城よね。
……殿、この子も連れていく?

殿
…………?

育野城
うん……!
主様と一緒に、夜のお散歩……えへへ、楽しみ……!

柳川城
だ、大丈夫でしょうか……。

鳴海城
大丈夫大丈夫♪
味方は多いに越したことなし……そうよね、殿?

殿
…………!

鳴海城
よ~っし!
気を取り直して……皆の衆、いざ異変調査です!

育野城
にゃ~……!

――――

鳴海城
確か、この辺りのはず……。
――――わっ!

(シュッ)

殿
…………っ!

柳川城
矢がっ……!
鳴海城さん、御無事ですか!

鳴海城
うん、ちょっと油断してたけど……平気!
これくらいなら、かわすのも造作ないよっ。

育野城
あそこの草薮……誰か、いる……?

地を這う尾翼形兜
アァ、外シテシマッタ……絶好ノ機会ヲ……。
俺ハ……俺ハ、弓スラ満足ニ引ケナイノカ……。

地を這う尾翼形兜
アア……我ガ身ガ、恨メシイ…………。

鳴海城
……早々に、引いていっちゃった。
不意打ちにしても、あまりに弱々しい攻撃……何だったんだろう?

鳴海城
それに、あの兜……飛行型のはずなのに、どうして薮から……?

立花山城
後続もなし……一応、部隊の急襲、という訳でもなさそうね。

柳川城
とりあえず、この山に兜が潜んでいることは、確かなようです。

殿
…………。

柳川城
(そして、あの弱々しい様子は……)

育野城
にゃ、にゃ……。

立花山城
どうかしたの?

育野城
皆、聞こえない……?
さっきから、羽音の群れが……近づいてきてる……。

立花山城
なんですって……。

鳴海城
あ、アタシも、聞こえてきたかも!
というか、これ――――

柳川城
羽音がどんどん大きくなっていきます……!
殿、敵襲です!

殿
…………!

蜻蛉形兜
イタゾッ!
 殿ト城娘ダッ!!
  射殺セッ!! 射殺セッ!!

蜻蛉形兜
ブブブ……我ラノ住処カラ、出テイケ…………。
ブブ……出テ、ユカヌナラ…………グォ…………。

[オヤダマ]蜻蛉形兜
――――ウゥ、ウゴァアアアアアア!!!!!

柳川城
……っ!
やはり、この力は……!

鳴海城
……やっぱり!
天守で感じた気配は、勘違いじゃなかったんだ……!

[オヤダマ]蜻蛉形兜
ガァアアアアアッ……!!
グォアア……ッ、出テ、イケェエエ……!

育野城
ね、ねえ…………。
なんか……あの子、苦しそう、だよ……?

立花山城
育野城…………。

立花山城
(そう、貴方も『そういう子』だったのね……。
 なら、連れてきたのは、失敗――――)

鳴海城
育野城ちゃん!

育野城
ふ、ふぇ……?

鳴海城
あの様子……力の制御が出来なくて、暴走しているみたい。
――――だったら、私達で、介錯してあげよう?

鳴海城
これ以上、苦しめないためにも。
それがきっと……アタシたち城娘にできる、唯一の救済だよ。

立花山城
…………!

育野城
う、うん……そう、かも……。
じゃあ……僕も、主様を守るために、頑張る……。

鳴海城
……良い子ね!

合戦中

柳川城
うっ、飛行形兜の群れが、こんなに……!

[オヤダマ]蜻蛉形兜
グォオオォオオオオ……!!!

鳴海城
あのでっかいヤツを射落とさないとね……!
殿、采配は頼んだよっ!

殿
…………!

[オヤダマ]蜻蛉形兜
ンボォオオォォ………アァァァ…………。

育野城
兜さん、ごめんね……。

鳴海城
育野城ちゃん……。
――む、この光は……何だろ?

後半

育野城
あ……崩れた兜さんから……ぴかぴかした珠が……。

鳴海城
この輝き……力を秘めていそうだけど……。
不思議だね、アタシには何も感じられないみたい。

殿
…………。

柳川城
そうですね。この異変の正体が分かった以上……。
お二人にも、説明をしておく必要がありそうです。

立花山城
…………。

VS蝶形兜

オヤダマ兜、そして、力を秘めた謎の珠。事情を
飲み込み、決心を固めた鳴海城と、兜への同情を
寄せる育野城。そこへ、新たな羽音が響き渡る。

前半

鳴海城
……なるほどね。
行き場を失った兜たち、かぁ。

柳川城
どうしても、推測の域は出ないのですが……。
これまでの兜たちの言動からすると、おそらくは。

育野城
みゃぅ……やっぱり、かわいそうな子たちなんだ……。

鳴海城
あとは……この光る珠についても、まだ良く分かっていない、と。

立花山城
殿や兜たちだけに作用する、不思議な力を秘めた存在……。
それ以上のこと……正体や、どこから来たものなのかは、何も。

鳴海城
ふむふむ……委細承知!
二人とも、教えてくれてありがと!

鳴海城
聞いた感じだと、まだ付近に力を得た兜がいてもおかしくないね。
所領の主、宴会の主催としては、見逃せない脅威だ。

殿
…………!

柳川城
はい。
先程の兜が発していた、『我らの住処』という言葉からしても、
この一帯が潜伏先になっている可能性は、高いですね。

鳴海城
りょ~かい!
それじゃ、先に進もうか……この山は、まだまだ深いよ。

育野城
…………。

――――

立花山城
ふぅ……随分進んできたけれど……。

育野城
……あ。
この音…………。

蝶形兜
ブブ……ブブブ……。

鳴海城
あれは……!

育野城
何かを、探してる……?
さっきとは、違う種類の兜さんかな……?

蝶形兜
…………ッ!
城娘ニ、殿!?
先ダッテノ騒ギハ、ヤハリソウイウコトカ……!

蝶形兜
早ク親分ニ、知ラセナクテハッ!

殿
…………!

鳴海城
ありゃ、気づかれちゃったか~。
……うん、丁度開けた場所だし、ここで迎え撃とう!

育野城
…………うっ……。
みゃう……。

柳川城
育野城さん……?
頭が、痛むのですか?

育野城
ううん……また、聴こえてきたの……。
さっきみたいな、群れの羽音と……ひと際、大きな……。

鳴海城
……近いみたいだね、オヤダマ兜が。

殿
…………っ!

[オヤダマ]蝶形兜
ブブ……ブブブ……グオォオオオオオ……!!!

蝶形兜
射殺セッ!!
 侵入者ダッ!!
  殿ト城娘ヲ、射殺セッ!!

[オヤダマ]蝶形兜
グガガ……憎キ主ノ仇……城娘共ガ……ッ!!
出向イテ来ルナラ、是非モナイ……此処デ滅ボシテクレル!!

育野城
憎い……仇……?

鳴海城
育野城ちゃん、しっかり……!

育野城
みゃ、ごめんなさい……力が入らなくて……。

鳴海城
無理しないで……。
そもそも、これはアタシの仕事なんだから……!

[オヤダマ]蝶形兜
グガ……グォオオオォオオオオ!!!! 

立花山城
……っ! 来るわよ、鳴海城!

鳴海城
相分かった!
――――此処で、終わらせるよ!

合戦中

柳川城
くっ……耳が痛くなるような、物凄い羽音です……!

殿
…………っ。

[オヤダマ]蝶形兜
グガガ……勝者ノ驕リ……此処デ挫イテクレルワ……!

鳴海城
その恨み……受け止めて、果たしてみせる……!

育野城
オヤダマ兜が、堕ちて……崩れていきます。

鳴海城
珠も回収、できたね。

殿
…………。

後半

蝶形兜
チク、ショウ……!
撤退……ダ……!

蝶形兜
主ヲ、失ッテ……途方ニ暮レテイタ、我ラニ…………。
ヤット、親分ガ、デキタノニ……。

蝶形兜
マタ……失ッテシマッ……タ………………。

柳川城
……手負いで逃げ延びるほどの力は、残ってなかったようですね。

育野城
…………これで、良かったのかな……。

育野城
あ、ごめんなさい……!
僕、ろくに手伝えなくて、皆に迷惑を掛けたのに……。

鳴海城
ううん、気にしないで。
それに多分……これも一つの救いなんじゃないかなって。

鳴海城
憎しみや、不安に巻かれたまま苦しみ続けるよりは、
戦という、兜の本能の中で散っていった方が…………。

鳴海城
………なんて、勝ち残った者の、手前勝手な考えだけどね?

立花山城
それは……鳴海城という、一人の城娘、としての向き合い方かしら。

鳴海城
……うん、そうなるかな!

育野城
城娘、としての……。

殿
…………。

殿
…………?

鳴海城
殿……? ……ふふ、キミ、結構鋭いね♪
お気遣いありがとっ、アタシなら平気だよ。

鳴海城
戦には、慣れているつもりだったんだけどね~……。
こういう掃討戦は初めてだから……ちょっと気張っちゃった!

殿
…………。

――――

育野城
…………。
僕……育野城としての、向き合い方…………。

VS尾翼形兜

失意に沈む、生来飛べぬ尾翼形兜。仲間は逃げ、
自分は残されるだろう……。山間にて一行と対峙
する、今際の際。彼は、破滅に至る光を得る。

前半

尾翼形兜の群れ
(ザワザワ……殿ト城娘タチガ、山ニ入ッタラシイゾ……。
 蜻蛉形ト蝶形ハ、モウヤラレチマッタラシイ……!)

地を這う尾翼形兜
…………ソウカ、蝶形タチモ、ヤラレタノカ……。

地を這う尾翼形兜
俺タチニ、親分ハ居ナイ……奴ラハ逃ゲルダロウ……。
マタ……飛ベナイ俺ダケガ、残サレル……ノカ……。

鳴海城
目ぼしいところは、この山間が最後になるかなー……。

地を這う尾翼形兜
………ッ!
モウ、来ヤガッタ……!

育野城
あ……聴こえるよ……。
大きいのはいないけど、近くに、羽音……。

柳川城
またしても、飛行型の兜ですか!

殿
…………!

立花山城
この山一帯が、飛行型残党の隠れ里になっていた、というわけね。

鳴海城
むっ……聴こえずとも、気配が……。
――――そこっ!

(シュビッ!!)

地を這う尾翼形兜
グアァッ!
シマッタ……!

鳴海城
あちゃあ、外したかぁ……って、こいつは!

柳川城
山の入り口で、射かけてきた兜!?

地を這う尾翼形兜
ク……マダ、コンナトコロデッ……。

尾翼形兜の群れ
(オイ見ロヨ、飛ベネエ奴ガ、引キ摺リ出サレテルゾ!
  ナンダ、アイツ……マダ生キテタノカヨ……。
   俺タチハ、サッサトズラカロウゼ……!)

地を這う尾翼形兜
クソッ……アイツラ……嫌ダ……俺ハ、マダ…………!

立花山城
あいつ、また薮の奥へ逃げるつもりよ……!

育野城
あの子は………飛べなくなっちゃった、のかな……?

地を這う尾翼形兜
……………………ア………?

地を這う尾翼形兜
………………。
……飛ベナク……ナッタ……?

育野城
にゃ……?

地を這う尾翼形兜
オマエ、今……飛ベナクナッタト、言ッタカ……!?
コノ、俺ノ、コトヲ……!!!

地を這う尾翼形兜
俺ハ、俺ハ……生マレタトキカラ、コウダッタンダ……!
仲間カラハ蔑マレ、ドノ合戦ニモ呼バレナカッタ…………!!

鳴海城
……っ!
育野城ちゃん、下がって……!

柳川城
光が、兜に集まっています……これは……!

地を這う尾翼形兜
俺ハ、一度モ空カラノ景色ヲ眺メタコトガナイ……!!
ググ……兜トシテノ責ヲ果タシタコトガナイ!!!

地を這う尾翼形兜
グ……ソンナ一生デ……グ、ゴ? コノママ、犬死ニナンテ……。
グゴ、ガッ…………御免ダァアッ!!!!!

地を這う尾翼形兜
――――グ、グォアアァアアアアア!?!!!

鳴海城
そんな……これ本当に、さっきまでと同じ兜!?

立花山城
凄まじい力……あの珠は、強い想いに反応するとでもいうの……!

育野城
あぁ……ごめんね、ごめんね…………っ。
僕、そんなつもりじゃ…………。

[オヤダマ]尾翼形兜
グギガ……体ガ、張リ裂ケソウダ……ッ!
――――グググ、ダガ、今ナラ、飛ベル……!!

[オヤダマ]尾翼形兜
俺ハ、飛ブ……タタ、カエ、ル……ガッ……!!
グガッ、グォオオアアア!!!!

尾翼形兜の群れ
アレハ……親分ダッ!!
 俺タチノ親分ガ、遂ニ此ノ地ニ来タッ!!
  コレナラ、戦エルゾッ!!!

殿
…………っ!

鳴海城
周囲の兜も集まってきた……やるしかない!

育野城
ぅ……。

鳴海城
育野城ちゃん、辛いなら、無理は――――

育野城
ううん……僕、戦うよ……!
だってあの子、苦しんでるもの……!

鳴海城
………!

育野城
城娘としての、向き合い方……僕も、考えてみたの。
……僕は、呪いとか、憎しみに縁の深い御城だから……。
こういう、辛い想いも……沢山見てきたよ。

育野城
呪いや憎しみに呑まれた、哀しい感情は、
もう、誰にも味わってほしくない……。

育野城
だから、苦しんでいる魂を解放してあげられるのなら……。
僕は……その手助けをしたいの……!

鳴海城
育野城ちゃん……。
ふふ、そっか……余計なお節介だったみたいね!

[オヤダマ]尾翼形兜
グガギ、グギギギギ……グォォオオオオオ!!!!

鳴海城
それじゃ……彼の無念を受け止めて、送ってあげようか。
それが戦における、勝者の礼儀――アタシの向き合い方だもの!

育野城
うん……。
兜さん、あなたの苦しみ……もうお仕舞にしよう……!

合戦中

[オヤダマ]尾翼形兜
グググ、グガ、ギ……!
飛ベル、戦エル……射殺スッ……!!!!

殿
…………!

鳴海城
育野城ちゃんは、殿の護衛をお願い!

育野城
任せて……僕が主様を、守り抜いてみせる……!

鳴海城
よし……これで異変調査は完了、かな。

柳川城
終わった……のですよね?

立花山城
ひとまず、今回は、ね。

殿
…………。

後半

[オヤダマ]尾翼形兜
アァ……ア……ガッ…………。

[オヤダマ]尾翼形兜
……苦シク、不甲斐ナイ……一生ダッタ……ガ…………。
兜トシテ……空ニ、散レタノナ、ラ…………………。

[オヤダマ]尾翼形兜
悔イ、ハ…………。

[オヤダマ]尾翼形兜
………………………。

柳川城
巨大兜……崩壊と沈黙を、確認しました。

殿
…………。

育野城
兜さんたちが、苦しみから解き放たれて…………。
どうか、ずっと、安らかでありますように…………。

鳴海城
育野城ちゃんは……優しいんだね。

育野城
にゃ……?

鳴海城
んーん、なんでもない!
優しい子は好きだよって、それだけ~!

育野城
ふにゃぁあ!?
いきなり、抱っこしないでぇ~……!

柳川城
鳴海城さん、育野城さん……。

立花山城
あの二人……良い方向に作用し合えたようで、何よりね。

殿
…………!

立花山城
そうね、それが城娘の強みかもしれないわ……。
ふふ、少しばかり手前味噌が過ぎたかしら?

――――

育野城
ふにゅ……主様……これからは、僕が、守ってあげるね……。

柳川城
ふふ、育野城さん、だいぶお疲れだったみたいですね。

殿
…………。

鳴海城
殿、大丈夫?
おんぶ、アタシが代わろっか?

殿
…………!

鳴海城
ふふ、そっか。
そうだね、育野城ちゃんも、殿の背中の方が嬉しいだろうし!

鳴海城
…………ねえ、殿?

殿
…………?

鳴海城
さっきも少し話したけど……アタシ、こういう戦……。
こんなに哀しくて虚しい戦いは……今回が初めてだったんだ。

殿
…………。

鳴海城
アタシは沢山の戦火を経験してきたけど、どれも熱くて激しくて、
ギラギラしていたから……。どちらが勝っても、
『それも道理』だって、割り切れるところがあったというか。

鳴海城
でもね……勝者である私たちには、信念を果たす義務がある。
―――それはどんな戦でも変わらないと思うんだ。

鳴海城
勝ち取った己の信念にかけて、より良い世にすること……。
キミの元で、それを手伝いたいって、改めて思ったよ。

殿
…………!

鳴海城
ふふ、ありがとね、殿……!

鳴海城
……さあ! 今日はいよいよ、宴会本番だよ!
朝御飯が済んだら……殿たちにも準備、手伝ってもらおっかな♪

殿
…………!

帰路を急ぐ一行の背へ――。
夜明けに霞みゆく中秋の月影が、柔らかい光を注いでいた。

――――

数刻後、早朝の寝室――

やくも
ふぁあ……う~ん、朝っ!
涼しくて、なんとも気持ちの良い朝だにぃ~!

やくも
むふふ……さあて、まだ布団にくるまっとる、
寝坊助さんは居らんがや~?

(ガタッ、スー……ッ)

殿
(ぐぅ……すぴー……)

柳川城
すー……すー……。

立花山城
すぅ……すぅ……。

鳴海城
すや……むにゃ……。

やくも
まーた、全員すやすやだに。
……待つがや……つまり、また『アレ』をする好機だに……!

やくも
えーい!

(がばっ!)

育野城
すや……すや……。

やくも
ひょわぁああ!?
うちの特等席に、ね、猫が丸まっとるがや~~!?

千狐
やくも~!
朝餉の支度ができたわよー!

千狐
皆さんを起こして……って、何してるの?

育野城
すや……みゃあ……くしくし……。

やくも
うう、千狐ぉ……うちの朝寝の場所が……。

千狐
ど、どういう状況なの……。

やくも
こうなったら、もう……致し方ないがや……!

やくも
うちは反対側にお邪魔するだにぃ~♪

千狐
ちょっと、やくもー!?
二度寝してる場合じゃ……皆を起こさなきゃなの!

やくも
あぁ~~~……。
殿さんの身体、程よくあったかくて、落ち着くだにぃ……。

殿
(ぐぅ……? すぴー……)

千狐
うぅ~、ズルい…………じゃなくてっ!
こら~やくも~~っ、殿から離れなさい~~~!!

やくも
むにゃむにゃ…………。

育野城
うみゅ……ん……みゃあ……?

千狐
ひゃっ……!?
あ、あの……おはようございますっ!

育野城
みゃあ……。
ねぇ……あなたも……一緒に、おねんねする……?

千狐
え……?

育野城
(ぐいっ)

千狐
ひゃああ!?

(ばさっ)

殿
(すぴ……!?? ふごっ……!?!?)

千狐
(と、殿の上に乗ってしまったの……!!)

やくも
ぐぅ……むにゃ……。

育野城
みゃぅ……すや……。

千狐
(でも、あったかい……。
 わ、私も、もう少しだけ……)

殿
(ぐぅ……?? ふごごご……!???)

しばらくの間、寝苦しそうに呻く殿。

差し込む朝日と、安らかに眠る城娘たちに囲まれて……。
その寝顔は、満更でもない表情だったそうな。

VS蟹形兜

とある深更、所領にアイリーン・ドナン城が
駆け込んでくる。遠路遥々未確認生物を探しに来た
ものの、友達とはぐれてしまった様子で――

前半

――とっぷりと夜も更けた時分、所領近くの浜辺。
とある小さな城娘が、茂みに隠れて海原を睨んでいる……。

アイリーン・ドナン城
う~ん……。

アイリーン・ドナン城
やっぱり見つからないなぁ……おっきな未確認生物さん……。
この辺りで、確かに見たんだけどなぁ……。

アイリーン・ドナン城
ふぅ……ここまで粘ってダメなら、仕方ないよね。
もう真っ暗だし、今日の調査はここまでにしよっか?

アイリーン・ドナン城
日の本に到着したのに、まだおにい……王様にも挨拶できてないし!

アイリーン・ドナン城
そういえば、アーカート城ちゃんは王様に会うの初めてだっけ……?
…………。

アイリーン・ドナン城
あ、あれれ……?
アーカート城ちゃん……どこ…………?

――半刻後、所領。

柳川城
はぁ……。
海鮮料理というのは、中々奥が深いのですね。

立花山城
いきなり根を詰め過ぎなのよ、貴方は。
全く、こんな時間まで厨房に籠って何をしてるかと思えば……。

柳川城
す、すみません!
せっかく大量の海産物が届いたので、
料理の勉強でもと思ったらすっかり夜中になってしまっていて……。

立花山城
おかげさまで、明日は丸一日主菜に困らなさそうね。

柳川城
はい……つい作り過ぎてしまったのは、反省しています……。

立花山城
ま、上達が見えたのは良いことじゃない?
酒蒸しというより酒煮だった最初よりは、マシになったわよ。

柳川城
うぅ、失敗作たちは責任を取って私が……あら?

立花山城
戸を叩く音ね……夜更けに来客なんて、何かあったのかしら。

――――

殿
…………?

アイリーン・ドナン城
ご、ごめんなさい!
本当はお昼の内に、おに……王様へ挨拶しようと思ってたのに……。

立花山城
(おに……?)

柳川城
いえいえ、お気になさらないでください!
ちょうど殿や私たちも起きていたわけですし……!

立花山城
それより、随分焦っていたみたいだけど……。
何か要件があったんじゃない?

アイリーン・ドナン城
わわ、そうだった!
王様、あのね、大変なの!

アイリーン・ドナン城
実はね……わたし、
一緒に日の本に来たお友達と、近くの海辺ではぐれちゃったの……!

殿
…………!

柳川城
それは……アイリーン・ドナン城さんと同じ、
スコットランドの城娘さん、ということでしょうか?

アイリーン・ドナン城
うん、アーカート城ちゃんっていってね?
よく一緒に未確認生物を探してる、大切な友達なんだぁ。

アイリーン・ドナン城
今回も、日の本へ遠征調査だ~って、二人で旅してきたの。

アイリーン・ドナン城
それで、昨日やっと日の本に着いて、
まず王様にご挨拶しようって言ってたら……。
ちょうど、海の方で大きな未確認生物みたいな姿が見えてね?

柳川城
大きな、未確認生物……ですか。

アイリーン・ドナン城
それでわたしたち、興奮しちゃって……。
海に向かったんだけど、未確認生物はもう見つからなくて……。

立花山城
この時間まで探していたら、
いつの間にか相方とはぐれてしまっていた……というわけね。

殿
…………。

柳川城
そうですね、殿。
アーカート城さんに何かあってからでは遅いですし、
今からでも捜索に向かうべきかと!

立花山城
所領の近辺に巨大な未確認生物……というのも気になるものね。

アイリーン・ドナン城
本当……?
一緒にアーカート城ちゃん、探してくれるの……?

殿
…………!

アイリーン・ドナン城
わぁ……ありがとう……ありがとう、おにいちゃん……!

立花山城
(あらあら、そういうこと……ふふ……)

柳川城
そうと決まれば、急ぎましょう!
あ、千狐さんたちは……。

立花山城
夜明けも近いし、この件は私たちだけで片付けた方が良さそうね……。
寝ている神娘たちを起こさないように、準備するわよ。

――――

アイリーン・ドナン城
たしか……わたしたちが調査してたのは、この辺りのはずだよ!

殿
…………。

柳川城
アーカート城さんらしき、城娘の姿は見当たりませんね……。

立花山城
ちなみに、その未確認生物は海上に現れたのかしら?

アイリーン・ドナン城
う、うん。
わたしもアーカート城ちゃんも、
はっきりと見えたわけじゃないんだけど……。

アイリーン・ドナン城
こ~~んなに大きな、蟹さんのハサミみたいなのがね~?

柳川城
……っ、待ってくださいっ!
皆さん、沖合から何かが迫ってきます!

蟹形兜
ザパッ……ザパッ……。
 ナンダ……ナンダ……。

蟹形兜
城娘ダト……?
 我ラノ海ニ……。
  何ノ用ダ…………!

殿
…………っ!

立花山城
……蟹は蟹でも、兜の群れのようね!

アイリーン・ドナン城
え……未確認生物じゃなくて、兜だったのぉ……?
そ、そんなぁ……。

アイリーン・ドナン城
で、でも! わたしが見たのはもっと大きくって――

(ザッパアァ――――ン!!)

アイリーン・ドナン城
ひゃああっ!?

柳川城
物凄い水飛沫ですっ……こ、これは……!

[オヤダマ]蟹形兜
ギシ……城娘、ダトォオオ……?
ギギ……ギシシ……怨敵、ココデ切リ刻ンデクレルゥウウワァア!!!

立花山城
オヤダマ兜……!

アイリーン・ドナン城
わわわっ……すごい……!
未確認巨大生物だぁ……! おっきな蟹さんだぁ……!!

立花山城
巨大なハサミ……そういうことね、合点がいったわ。

アイリーン・ドナン城
あわわわ……捕獲……採取……?
ちょ、調査しなきゃ……!

立花山城
アイリーン・ドナン城、落ち着きなさい!
こいつは未確認生物なんかじゃなくて、力が暴走した兜よ!

柳川城
ここは私たちで凌ぎましょう、立花山城さん……!
殿、下知をお願いします!

合戦中

[オヤダマ]蟹形兜
ギシシシッ……!
主ノ仇……ココデ討ツゥウウ……!

殿
…………!

立花山城
まさか海にも出るなんてね……一体なんなのかしら、あの珠は……。

[オヤダマ]蟹形兜
ギ……ギギ……。
オ……ノ、レェ…………。

柳川城
この輝き……!
オヤダマ兜の残骸で光っているのは、やはり……。

アイリーン・ドナン城
ど、どういうこと……?
未確認生物じゃなくて……あんなに大きな、兜がいるのぉ……?

後半

――――

アイリーン・ドナン城
――つまり、
そのキラキラした珠が、兜に力を与えてるの……?

柳川城
はい……。
異常な巨大化といい、
この珠が作用していることは間違いなさそうです。

立花山城
貴方が未確認生物だと思ったのも、無理もないわ。
名を背負った一部の巨大兜を除けば、
これまではあんな兜自体、存在しなかったものね。

柳川城
主となる巨大兜の全滅が、何か関係しているのかもしれませんが……。
その先のことは、私たちにもまだ分かっていないのです。

アイリーン・ドナン城
ね、ねえ……なんだか難しい話になっちゃったけど……。
おねえちゃんたちの話が本当なら、近くにはまだおっきな兜たちが――

殿
…………!

柳川城
そうでした、まだアーカート城さんが……!

アイリーン・ドナン城
うん、急がなきゃ……!
次はわたしも頑張るから……アーカート城ちゃん、待ってて!

VS貝形兜

捜索されているともつゆ知らず、調査に没頭し、
海に潜っているアーカート城。貝形兜に囲まれた
巨大な姿を発見し、胸を高鳴らせるが……。

前半

同じ頃、付近の海中では――

貝形兜
ヒソヒソ…………。

貝形兜
ヒソ…………。
 ヒソヒソ…………。
  スン………………。

アーカート城
(…………。
 兜はいっぱいいるけど、襲ってこないみたい……?)

アーカート城
(よぉ~し! だったら、
 あそこまで潜って、あのおっきな貝の調査ができそうね!)

[オヤダマ]貝形兜
……………………。

アーカート城
(あの大きさ……うん、間違いなく新種の未確認生物だ……。
 もっと近づいて、観察を……)

アーカート城
(最近、ドナちゃんに良いとこ見せられてないし……。
 お姉ちゃん役として、カッコイイとこも印象づけなきゃ……)

アーカート城
(大丈夫よ、アーカート城……!
 あなたならできる、はず……今回は失敗しない、はず……!)

[オヤダマ]貝形兜
……………………オイ。

アーカート城
(…………っ!?)

[オヤダマ]貝形兜
…………我ラノ縄張リニ……何用ダ…………。

アーカート城
(ええっ、気づかれた!
 というかちょっと待って、未確認生物が喋ってる……!?
 こ、これは大発見だよドナちゃーん!!)

[オヤダマ]貝形兜
返答ガナイ……ナラバ…………。
排除……スルマデ…………!

貝形兜
敵ヲ、ハイジョ……!

貝形兜
敵ヲ、ハイジョ……!
 侵入者ヲ、ハイジョ……!
  海ノ、藻屑ニシテヤレ……!

アーカート城
(周囲の兜が……ああぁ、もしかしてこれヤバい……!?
 な、何か言わないと――)

アーカート城
がぼがっ……!
がぼがぼ、ガボボォ――――っ!?

[オヤダマ]貝形兜
阿呆メ………………ソノママ沈ムガ良イ……!

――――

アイリーン・ドナン城
アーカート城ちゃ~ん、どこにいるのぉ~!
無事なら、返事してぇ~~!

柳川城
やはり、この近辺にはもう……。

殿
…………?

立花山城
何か……向こうからバシャバシャ聴こえるわね。

アーカート城
げ……げほげほっ……!
た、た~す~け~て~!

殿
…………っ!

柳川城
あの方はもしや……!

アイリーン・ドナン城
わあ、アーカート城ちゃん!
良かったぁ、無事――――

貝形兜
逃ガサン……!
 ヒソヒソォ……!
  溺レロ、侵入者メ……!

[オヤダマ]貝形兜
ズズズッ…………逃ガサヌゾォ……!
我ラノ安息ヲ乱シタ……不届キ者ガァア…………!

立花山城
……無事ではなさそうね。

柳川城
わ、私は泳いでいるアーカート城さんを救助しに行きます……!
殿とお二人は――

アイリーン・ドナン城
うん、任せてっ……!
友達のピンチは、わたしが救ってみせるよ!

合戦中

アーカート城
ま、まだ死にたくないよぉー!
兜の群れを率いる未確認生物なんて、大発見なのにぃ~……!

[オヤダマ]貝形兜
ズズズズッ……貴様ノ血肉、肥シニシテヤル……!

アイリーン・ドナン城
こらぁー!
わたしの友達をいじめたら、許さないんだからぁー!

[オヤダマ]貝形兜
ズズッ……ズズ…………ズ………………。

アイリーン・ドナン城
ふぅ、ふぅ……なんとか、倒せたよぉ……!

アーカート城
ありがとう、ドナちゃん……!
ドナちゃんのお友達たちも……お陰様で、助かりましたぁ……。

殿
…………!

後半

――――

アーカート城
改めまして、私はアーカート城です!
ドナちゃんと同郷で、ドナちゃんのお姉さん役なんですよ~♪

アイリーン・ドナン城
ちーがーう! おともだちだよぉ!

アーカート城
あいてて、そうだったゴメンゴメン……!
それで……あなたがドナちゃんの言ってた王様なのね?

殿
…………?

アーカート城
なんだぁ、
てっきり日の本でできた、ドナちゃんの新しい友達かと!

アイリーン・ドナン城
そんなわけないでしょ、もぉおお!
わたし、すっごく心配してたんだからぁ!

アイリーン・ドナン城
深夜に王様のところに頼みにいくときだって、
ひとりで心細くて、泣きそうだったのにぃ……。

アーカート城
ご、ゴメンね……ついつい調査に熱中しちゃってさ……。

アイリーン・ドナン城
それは……わたしも一緒だけどぉ……。

アーカート城
でもさでもさ、ドナちゃん! 兜が巨大化するなんて面白いよね!?

アーカート城
未確認生物じゃなかったのは残念だけど……、
調査対象にはうってつけかもよー?

アイリーン・ドナン城
ねぇ~……アーカート城ちゃん、本当に反省してるのぉ……?

アーカート城
してるしてる、してるってばー!

柳川城
(お二人とも、確かに姉妹感はあるのですが……なんというか……)

立花山城
(どちらかと言うと、アイリーン・ドナン城の方が姉っぽいわね……)

柳川城
と、ともかく……アーカート城さんも無事に合流できたわけですし!

立花山城
珠もしっかり回収済み……。
そうね、一度所領に戻りましょうか。

殿
…………!

――――

海老形兜
キシシシシッ……好機……好機ダッ……!

VS海老形兜

一行は、機を伺っていた海老形兜の群れから
襲撃を受ける。友の危機と、兜たちの切実さの
板挟みに、アーカート城は決断を迫られる。

前半

アイリーン・ドナン城
でねでね、王様!
アーカート城ちゃんったら、わたしと反対方向の湖に行っちゃったの!

アーカート城
えぇ~! あの時はドナちゃんが、
『ぜったい首長竜だよ!』って木の影を見間違えたからじゃーん!

殿
…………。

立花山城
それにしてもあの二人、あれでよく日の本までたどり着けたわね……。

柳川城
ふふっ……でも、仲が良いのは伝わってきますよ。

(ザッ……ザババッ……!)

殿
…………?

海老形兜
ギシャァアーッ!

殿
…………っ!?

アーカート城
わわ、兜!? まだ居たの!?

海老形兜
キシシッ……斥候ノ言ッテイタ通リダゼェ!
目ザワリナ貝形ドモガ消エテ、残ッテンノハ気ノ緩ンダ城娘ダケダァ!

海老形兜
好機ィッ!
 侵攻ォッ!
  縄張拡大ィイッ!

アイリーン・ドナン城
この兜たち、わたしたちの後をつけてたんだ……!

立花山城
(同種の兜だけで徒党を組んで、他の群れとはいがみ合っている……?
 そういえば、これまでも……)

海老形兜
キシシッ!
 キシシシシッ!

柳川城
すごい数ですっ……!
一気に押し寄せられると、不味いかもしれません!

アーカート城
(こ、これはむしろチャンス……?
 私も活躍して、ドナちゃんや王様に、
 頼れる城娘ってとこをアピールしなきゃ!)

アーカート城
よ、よぉーし! 遂に私のバグパイプの力を披露する時がきたようね!
支援なら任せてよっ!

アーカート城
(それに、もしオヤダマ兜がまた出たなら……。
 えへへ、もっと調査できるかも――)

アイリーン・ドナン城
あっ……アーカート城ちゃん、危ない!!

アーカート城
はえ?

(ドドドドッ……ザッパァアアン!!)

[オヤダマ]海老形兜
ギシャァアアアアッ!!
油断大敵ィイ!!

アイリーン・ドナン城
く……うぅ……!

アーカート城
ドナちゃん!!

[オヤダマ]海老形兜
ギシシシシッ!
千載一遇ゥウ! 海域占領ォオ!! 怨敵撃滅ゥウ!!!

アーカート城
こいつ……!
調査対象が、ドナちゃんに手を出すなーっ!!

柳川城
アイリーン・ドナン城さんが……!
殿、私たちも援護を――

海老形兜
キシシッ!
 キシシシシッ!

殿
…………っ!

立花山城
チッ……足止めの数が多すぎるわね……。
ここまで、計算尽くってことかしら。

[オヤダマ]海老形兜
ギシシッ、調査対象ォオ……?
笑止千万……無礼憤激ィイイッ!!

アーカート城
え……?

[オヤダマ]海老形兜
我等生存……其ノ為真剣ッ!!
気儘城娘、言語道断……障害排除ォオオ!!!

海老形兜
キシシシッ!
 城娘排除ォ!
  天敵撃滅ゥウ!!

アーカート城
無礼……気まま……? 私は、そんな……――

アーカート城
(兜から感じる、焦りと怒り……。
 そうか……彼らは『未確認生物』でも『調査対象』でもないんだ……)

アーカート城
(それ以前に……ただ、生き延びようとしている者たちで――)

アイリーン・ドナン城
アーカート城ちゃん……危ないよ……逃げ、て……!

アーカート城
はっ――――!

[オヤダマ]海老形兜
ギシシシシッ、覚悟完了ォ? 介錯即断ッ!!

アーカート城
させないっ!!

[オヤダマ]海老形兜
ギギッ……!?
無粋小人、邪魔ダテ不要ォオオ!!

アーカート城
ぐぅ……くっ……!

アイリーン・ドナン城
アーカート城ちゃん……!

アーカート城
くぅ……たとえ……未確認生物や、調査対象じゃなくても……。
あなた達の……生存が掛かっていたとしても……。

アーカート城
それでもっ……!
私の……大切な友達を奪うことは……絶対に許さないからっ……!

アイリーン・ドナン城
…………!

[オヤダマ]海老形兜
ギシシシシィイッ、問答無用ォオオ!!
城娘必滅!! 全員突撃ィイイ!!!

海老形兜
キシシシッ!
 突撃突撃ィイイイ!!

アーカート城
柳川城さん、立花山城さん……!
お願い、友達を救うために……力を貸してっ!

アーカート城
響け、私の音色……ネス湖に満ちたる、清澄な調べよ――!

[オヤダマ]海老形兜
ギギィ……敵前演奏ォオ……?
無為嘲笑、捨鉢馬鹿ッ……――ムムッ!?

殿
…………!

立花山城
癒しと加護の奏……これが、あの子の城娘としての力……!

柳川城
これなら包囲を突破して、お二人を救出できますっ!
殿、聡明な御下知を――!

合戦中

アーカート城
みんなに、癒しと力を……!

[オヤダマ]海老形兜
ギギギギィ……!
小癪城娘ェエ、我手直討ォオォオッ!!!

立花山城
あら、そうは問屋が卸さないわよ?

[オヤダマ]海老形兜
ギ、ギギ…………臥薪……嘗胆…………。
……結……局…………不実…………。

柳川城
オヤダマ兜の崩壊と、沈黙を確認しました……!

アーカート城
ドナちゃんは無事!? 大丈夫なのっ!?

アイリーン・ドナン城
うん、平気だよ……ありがとぉ、アーカート城ちゃん……!

後半

アーカート城
うぅ……ごめんなさい……。
私が油断していたせいで、ドナちゃんが危険な目に……。

アーカート城
(はぁ……私やっぱり……お姉さん役失格だなぁ……)

アイリーン・ドナン城
気にしないで、アーカート城ちゃん。
……だって、わたし信じてるもん。

アイリーン・ドナン城
もしあの時、アーカート城ちゃんとわたしが入れ替わっても……。
アーカート城ちゃんは絶対、わたしを助けてくれたでしょ?

アーカート城
ドナちゃん……。

アイリーン・ドナン城
えへへ……あの時、『大切な友達』だって、
アーカート城ちゃんが言ってくれたの……。
ドナンは、と~っても嬉しかったんだよ?

アーカート城
(そっか……私も、お姉さんである以前に……――)

アーカート城
そうだよね……。
私たちは親友で……未確認生物調査隊のメンバー、だもんね……!

アイリーン・ドナン城
うん……♪

殿
…………。

柳川城
一時はどうなることかと思いましたが……これで一件落着、でしょうか。

立花山城
オヤダマ兜の討伐と、珠の回収も完了。
相変わらず、正体は分からないけれど……。

立花山城
(気付きを得る部分は……確かにあったはずだわ)

――――

アイリーン・ドナン城
ふぅ……むにゃ……。
おにいちゃん……アーカート城ちゃん……えへへ~……♪

アーカート城
あ~、良いなぁ王様!
ドナちゃんに寝言で『おにいちゃん』なんて呼ばれちゃって~!

殿
…………?

アーカート城
えへへ……なんてね!
今日、良く分かったんだ……別にお姉さん役じゃなくてもさ、

アーカート城
ドナちゃんが友達として信用してくれているなら……。
お互いに頼り合えるのが……何より幸せなことなんだって。

殿
…………。

アーカート城
……私、昔から失敗ばっかりで、自分に自信がないんだ。
だから、早く『頼られるお姉さん』になりたくて焦っていたのかも。

アーカート城
でも……それは本末転倒だったみたい。
まずは一歩ずつでも少しでも、できることを積み重ねていかなきゃ――
おっとっと……!

殿
…………?

アーカート城
疲れてるならおんぶを代わるって……?
ふふ、王様は優しいんだ。

アーカート城
でーも、それはダメ!

アーカート城
大事な友達をお家まで送り届けるのが――
頼れる私の、第一歩になるんだから……♪

――――

――数刻後、早朝の寝室。

やくも
う~ん、今日も元気な朝日が眩しい、だにぃ!

やくも
今日も今日とて、お寝坊な殿さんたちを起こしにいくがや~♪
そして、隙あらば~……ふへへへへ……!

(ガタッ……スーッ……)

殿
(ぐぅ……ぐがっ……)

柳川城・立花山城
すー……すー……。
 すぅ……すぅ……。

やくも
おぉう……今朝は久々の全滅だに……。
全く、夜更かしのし過ぎは――

アーカート城
すー……すぴー……。

アイリーン・ドナン城
スヤァ……♪

やくも
んん~……?
アイリーン・ドナン城と見知らん城娘は、
どっから湧き出でたがや…………?

やくも
たっしかぁ……昨日はおらんかったはず……。

アーカート城
……むにゃ……?

やくも
あ……どちら様か知らんけど、おはよ――

アーカート城
わぁ……どなちゃん……蛇娘……未確認生物だよぉ……!
二足歩行だぁ……捕まえよぉ~……!

やくも
……はえ?

アイリーン・ドナン城
うにゃ……みかくにんせいぶつ、かくほ~!

やくも
だにぃ――――!?

――――

千狐
もう、やくもったら遅ーい!
皆さんを起こすのに、いつまで――

アーカート城
わあ……今度は狐娘だぁ……!

アイリーン・ドナン城
たいりょう……ほかく……うぇへへへ~♪

やくも
千狐……に、逃げるだに……!

千狐
え、ええ……?

千狐
な、何……きゃああ、なんなのぉ~~~~!?

清々しい朝……起き上がった殿がまず目にしたのは、
アーカート城とアイリーン・ドナン城に抱き付かれたまま、
布団で撃沈している神娘たちの姿であった……。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...