ストーリーテキスト/徒導く訓示燈

ページ名:ストーリーテキスト/徒導く訓示燈

目次

徒導く訓示燈[]

徒導く訓示燈 -序-

日向国のある城が兜の襲撃を受けているとの報あり。
絶望的な劣勢に追い込まれながらも必死に守勢を
保つ彼女らを救うため、城娘たちと共に出陣せよ!

前半
――某所。

桃形兜
報告デス!

島津義弘
…………。

桃形兜
先日、日向国ニテ複数ノ城娘タチガ集イ、
会合ラシキモノヲ開イテイル、トノ情報ヲ掴ミマシタ!

島津義弘
日向国にて会合ジャと……?

桃形兜
場所ハ高鍋城……集ッタ城娘ハ、
唐津城、飫肥城……その他ニモ複数イルトノコトデス。

島津義弘
飫肥城……飫肥城か。
以前も戦っトルガその名、ナゼか引っかかる……。

桃形兜
飫肥城トイエバ、義弘様ガカツテ入城シテイタ城デモアリマス。

島津義弘
なんダト? イヤ……そうジャ、思イ出したド。

島津義弘
……儂ガ留守にしとった間に落城して、
ソッカラも伊東家と取り合いば続けた城ジャ……。

島津義弘
なして儂はそげな事件バ忘れとった……?
いや、むしろなして今思い出した……?

島津義弘
マァいい……しかし日向国の飫肥城か。
なるホド、そうか……コレハ面白くなりそうだド……ふ、フフ……。

――――数日後。

千狐
殿! 先程所領宛に、お手紙が届きましたわ!

やくも
手紙だに? 宴会の招待状がや?

千狐
宴会なんてやらなくても、やくもは毎晩宴会みたいに騒いでるじゃない……。

やくも
ひどいだに!?

千狐
それでは読み上げますね……なになに。

千狐
コンッ!? これは……!

千狐
日向国にて危機にさらされている御城がある、とのことです……。

柳川城
またしても、兜の軍勢が城娘を……!

千狐
襲われている場所は……高鍋城、とあります。
差出人は……『唐津城』という名の城娘……。

柳川城
唐津城?
唐津城さんからのお手紙だったのですか?

千狐
はい……。柳川城さん、お知り合いなのですか?

柳川城
……以前から、私のことを『お姉ちゃん』と呼んで慕ってくれている城娘です。

柳川城
それに高鍋城さんも、面識はありませんが……。
私、柳川城からそう遠くない場所にある御城です。

殿
…………。

柳川城
……そうですね、殿。
ただちに救援に向かうことにいたしましょう。

千狐
では準備が整い次第、手紙を媒介に高鍋城さんの御城に転移いたします!

――――。

兜軍団
城娘……殲滅セヨ……。
……城娘……殲滅セヨ……。
…………城娘……殲滅セヨ……。

高鍋城
兜の数が一向に減らない……。

唐津城
流石にこれ以上は……アタシもちょっと厳しいかも……。

高鍋城
はあ……はあ……。

高鍋城
私も、このままでは……くぅっ……!?

唐津城
高鍋城ちゃんっ……!?

高鍋城
はぁ……はぁ……はぁ……。

高鍋城
もう……城娘の姿を保つことすら……!

高鍋城
こうなってしまっては、もはや……犠牲を避けることはできません……。

高鍋城
唐津城ちゃん……。
ここは私が食い止めますから、一人で逃げてください。

唐津城
なに言ってるの高鍋城ちゃん、そんなことできるわけないよ!
アタシがなんのためにここに残ったと思ってるの?

高鍋城
この状況では、すべてを守り抜くことはできません。
どれかを切り捨てる……その決断を下す時がきたんです。

高鍋城
ですから、唐津城ちゃんだけでも逃げて……!

唐津城
そんな、高鍋城ちゃんを見殺しにするなんて……。

高鍋城
それができなければ、二人共に討ち倒されてしまいます!
私も長くは持ちません、退路を塞がれてしまう前に早く――!

高鍋城
――きゃっ! この光は?

唐津城
眩しいっ……けど、なんだか温かい感じもするよ?
もしかして……。

千狐
到着しました! 転移成功です!

柳川城
あちらに見えるのは兜の軍勢……?
どうやら、合戦の真っ只中に降り立ったようですね。

唐津城
やっぱり柳川城お姉ちゃんだー! 助けにきてくれたんだね!

柳川城
唐津城さん……良かった、無事だったんですね……。

唐津城
兜がいっぱい攻め込んできたんだけどね、
高鍋城ちゃんと二人で何とか頑張ってたの!

柳川城
ええ、よく持ちこたえてくれました!
……では、そちらにいらっしゃるのが高鍋城さんなのですね?

高鍋城
はじめまして……殿、皆様。

柳川城
高鍋城さん……かなり傷を負ってしまっているようですね……。
ここは一旦さがって、安全な場所に避難していてください。

高鍋城
柳川城さん……。
助けてくださるのですか?

柳川城
もちろんです。私たちはそのために此地へ来たんです。
この御城は私たちの力で、なんとしても守り通してみせます。

殿
…………!

高鍋城
ありがとうございます、皆さん……。

柳川城
それでは殿、ご下知をお願いいたします!

後半
柳川城

これで最後です!

やくも
やっただに!
これでひとまず、視界に映る限りの兜はみんな倒したがや!

唐津城
アタシがあんなに苦戦してたのに……!
やっぱり柳川城お姉ちゃんはすごいよ~!

高鍋城
感謝いたします……。
今度ばかりは本当に一巻の終わりかと覚悟したところでした……!

高鍋城
そうです、改めて自己紹介を……。

高鍋城
私、高鍋城と申します。
この御城に城娘を集めて、教師の真似事をやっております。

やくも
教師? 勉強を教えてるだに?

高鍋城
はい。この御城の近辺には幼い城娘が何人かおりまして……。
その子らの成長の助けになればと思い、始めた次第です。

唐津城
アタシも高鍋城ちゃんの生徒なんだよー!

唐津城
あとはね、飫肥城ちゃんとか……、
佐土原城ちゃんとか、延岡城ちゃんに、丸山城ちゃんも!

柳川城
そんなに沢山……大変ではありませんか?

高鍋城
大変ですが、やりがいもあります。
明倫堂の教えを皆に広げることが、私の喜びなんです。

千狐
明倫堂? それはいったい……?

高鍋城
私、高鍋城の三の丸に設立された学び舎のことです。

高鍋城
秋月種茂様が建てたことを始まりとし、身分を問わず生徒を受け入れました。
『教育の藩』として知られる高鍋藩の礎を築いたんです。

やくも
驚きがや……自分から進んで勉強をする人がいるなんて……。

千狐
やくもは日頃から怠け癖が目立つから、
高鍋城さんに鍛えてもらうといいんじゃない?

やくも
うぇー、適度な息抜きが大事なんだにぃ~……。

唐津城
半端な気持ちでお願いすると泣きを見ることになるよ!
高鍋城ちゃん、怒ると怖いんだから!

高鍋城
教師たるもの、優しさと同時に厳しさも併せ持たねばなりませんからね。

高鍋城
……と、雑談はさておき。まずは、私の城にご案内します。

高鍋城
皆さん、まずは戦の疲れを癒やすことにいたしましょう。

唐津城
高鍋城ちゃんが誰よりも疲れきってると思うけど……。

千狐
ええ。高鍋城さんの力が大きく削がれていることがわかります……。
しばらくは戦線に復帰することは難しいかと……。

柳川城
それほどまでに過酷な戦いだったということですね……。
間に合って良かったです。

唐津城
兜がいっぱいで大変だったのは間違いないんだけどね、
それだけじゃないんだよ……。

唐津城
高鍋城ちゃんがアタシよりも前に立って、
なんでもかんでも引き受けようとしちゃうの……。

やくも
兜をみんな高鍋城一人で倒そうとしてただに?
そりゃ消耗しても仕方のないことがや……。

唐津城
そーだよぉ。高鍋城ちゃんが無理して戦おうとするから……。
前に立つならアタシが、って言ってるのに……。

高鍋城
いいんです……。
子供たちを守るのが教師の務めなんですから。

唐津城
むー、アタシそんなに弱くないよ?
高鍋城ちゃんの学び舎で勉強して立派な城娘になったんだもん!

柳川城
お二人とも、
さしあたっての危機は乗り越えたのですから落ち着いて……。

高鍋城
柳川城さん……。

柳川城
何も不安になることはありません。
兜の脅威が去るまでは私たちが滞在して、高鍋城さんに協力いたしますから。

殿
…………!

高鍋城
殿、柳川城さん……。
改めてお礼を言わせてください。ありがとうございます。

唐津城
ございまーす♪

高鍋城
……しかし、今後も兜が攻めてくるのなら、
消耗した力を少しでも早く、取り戻さなければなりませんね……。

千狐
そうですね……高鍋城さんに縁の深い品などがあれば、
それを介して力を取り戻すことができるかと思うのですが……。

高鍋城
私に縁深いもの……でしたら、蝋燭が適しているかと思います。

柳川城
蝋燭ですか?

高鍋城
先程お話しした、明倫堂の設立に携わった秋月種茂様が、
藩の財政を保つために蝋燭を生産していらっしゃったというお話がございます。

高鍋城
それに、勉学や読書とも関わる品ですから、
私個人としても、思い入れがあります。

柳川城
それでは、高鍋城さんの力を取り戻すため、
蝋燭を集めることといたしましょう!

徒導く訓示燈 -破-

日向国到着から数日後。高鍋城の力を取り戻す
ため、蝋燭を集める最中、彼女は自らが守りたいと
願うものについて、語り始める。

前半
殿一行が到着してから、数日後――。

やくも
こっちにあっただにー!

千狐
千狐も見つけましたわ!

高鍋城
蝋燭がこんなに沢山……!
お二人とも、ありがとうございます!

千狐
お安い御用です。まだまだ集めますからね!

柳川城
霊力の方はいかがですか?
力を取り戻している感覚はありますか?

高鍋城
はい、徐々に戻ってはいます。

高鍋城
……ですが、城娘としての力を取り戻すには、
まだ……程遠い状態です。

高鍋城
…………。

柳川城
高鍋城さん……辛いかと思いますが、少しの辛抱です。
引き続き、私たちも蝋燭を集めますから……。

高鍋城
柳川城さん……。

高鍋城
やはり、もどかしいです……。私が普段、皆を助ける立場にあるから、
なおさらそう感じてしまうのかもしれませんね……。

柳川城
高鍋城さん……。

高鍋城
皆さんが集めてくれている、
この蝋燭を眺めては気持ちを落ち着けている……そんな状態です。

柳川城
『個人的にも思い入れがある』……。
そんな風にお話ししていましたね。

高鍋城
はい、そうなんです……。

高鍋城
蝋燭が周囲を照らすように……私も教師という存在として、
生徒たちの歩む先を照らす標になれたら……。そう考えながら日々教鞭をとっています。

高鍋城
ですから……その思いを胸に、
今の私にもできる範囲で、準備を進めたいと思っているんです。

千狐
その書物は……?

高鍋城
こちらは私の授業でよく取り上げていた本になります。
儒学や朱子学といいまして、道徳的な教義などについて説いたものです。

高鍋城
藩を治める人材を育て上げるため、
これらを使用して授業が進められたのです。

高鍋城
蝋燭探しの休憩がてら、戦で役立つものは無いかと思い、
改めて読み返していたのですが、そう簡単にはいかないですね。

柳川城
高鍋城さん……。

柳川城
……そのお話、非常に興味深いです。ぜひ聞かせてください。

高鍋城
……えっ?

千狐
千狐も興味ありますわ! 聞かせてほしいです!

高鍋城
よ、よろしいのですか……?
いつも通りの授業を行うことになってしまいますが……。

柳川城
はい。学び舎にて用いられた書物となれば……戦に限らず、
殿を支えるために役立つ知識が、きっと含まれているはずです。

千狐
では高鍋城さんの授業開始ですね!
ほらやくも、あなたもそこに座って!

やくも
えっ、うちも受けるだに!?

高鍋城
……ありがとうございます!
きっと、皆さんのお役に立つと思います!

――数刻後。

唐津城
ん……?
高鍋城ちゃんだ。それに他のみんなも……?

唐津城
みんなー?
そんなところに集まってなにしてるの?

柳川城
高鍋城さんに本の解説をお願いしていたんですよ。

唐津城
えっ、勉強!? 自分から進んで!?

やくも
(この前のうちと同じこと言ってるがや……)

千狐
唐津城さんもいかがですか、ご一緒に?

唐津城
い、いいよぉ……。
その本なんてもう、何回読んだかわからないもん。

高鍋城
ちゃんと理解していれば何度も読みなさいとは言いませんよ?
勉強に身が入っていない証拠です。

唐津城
仕方ないじゃん!
どうしても面白いって思えないんだもん!

唐津城
アタシの興味が湧くように説明できない高鍋城ちゃんにも責任あるよ!!

高鍋城
お、思わぬ角度から反論が……!

高鍋城
しかし、そうですね……。

高鍋城
私に改善する余地が残っていると。
なるほど、一理あるかもしれません……。

唐津城
べ、勉強の話はともかく!
……ほら高鍋城ちゃん、蝋燭持ってきたよ! どっさり!

高鍋城
まぁ……こんなに沢山……!

唐津城
アタシだけの力じゃないよ。
この子が一緒に蝋燭探しを手伝ってくれたの!

飫肥城
先生、こんにちは!

高鍋城
飫肥城ちゃん! あなたも一緒に蝋燭を集めてくれたのですね!

飫肥城
うん……先生に早く元気になってほしいから……。

高鍋城
ありがとう。先生、とっても嬉しいです。

飫肥城
えへへ……。

飫肥城
あれ、そこに居るのは……殿?

殿
…………!

柳川城
こんにちは、飫肥城さん。お久しぶりですね!

飫肥城
お久しぶりです!
皆さんも高鍋城先生を助けにきてくれたんですね!

柳川城
ええ、唐津城さんからお手紙で助けを求められたんです。

飫肥城
そうだったんですね。
それでは、先生が早く良くなるように一緒にがんばりましょう♪

飫肥城
……先生、まだ体の調子悪いの?
これで元気になりますか?

高鍋城
元気がないわけではないんですよ。
ただ、兜たちとの戦いに備えて力を蓄えておく必要があるんです。

高鍋城
兜たちはいつ襲ってくるかわかりませんから――。


――ザザッ!

兜軍団
ザザッ! ザザザッ!!

千狐
……噂をしていたら!
兜が軍をなして接近してきています!

柳川城
思っていたよりも早かったですね……。

高鍋城
殿、すみません……。
戦いに参加するにはまだ、力が……。

殿
…………。

柳川城
殿の仰る通りです。
気に病むことはありません。今は安全な場所で見守っていてください。

唐津城
……ねぇ高鍋城ちゃん、アタシも戦っていいよね?

飫肥城
先生、私も学び舎や御城を守るために戦いたいです!

高鍋城
唐津城ちゃん、飫肥城ちゃん……。

唐津城
お願いっ!
ただ見てるだけなんてイヤだよ! みんなと一緒に戦いたい!

高鍋城
……わかりました。
皆さんに迷惑は掛けないようにするんですよ?

唐津城
もちろんだよ!
えへへっ、高鍋城ちゃんの御城には、指一本触れさせないんだから!

唐津城
それじゃ殿、命令をお願い!

後半
唐津城

これで最後だぁっ!


ギャァァァァァアアアア!!

唐津城
やりぃっ、お手柄っ♪

柳川城
これですべて片付きましたか……あっ!?


殲滅……殲滅、セヨ……ッッ!

柳川城
……ッ!?

柳川城
唐津城さん、危ない!

唐津城
えっ!?

唐津城
うわぁぁっ、まだ兜がっ!?

柳川城
伏せてっ!

柳川城
やあああぁぁぁっ!


グ、グギャァァァ…………!!

柳川城
…………。

柳川城
仕留めました。間一髪です……。

唐津城
ありがとう、柳川城お姉ちゃん。助かったよぉー……。

柳川城
大丈夫ですか?

唐津城
大丈夫だけど……びっくりして腰がぬけちゃった……。

柳川城
無理もありません。目前まで迫っていましたから……。

柳川城
ですがこれで……全部片付いたようですね。
……あ、奥へ避難していた高鍋城さんが戻ってきました。

高鍋城
皆さん、無事ですかー!

高鍋城
……唐津城ちゃん?
どうかしたのですか? どこかに怪我でも?

唐津城
大丈夫だよ、高鍋城ちゃん。ただ、びっくりしちゃっただけで……。

やくも
でも、危ないところだったがや……。

高鍋城
間一髪……そうだったんですね……。

高鍋城
(何事もなくて安心しましたが……やはり、唐津城ちゃんたちにはまだ……)

高鍋城
柳川城さんたちも、ありがとうございます。
先日に続いて、私の御城を守るため戦っていただいて……。

柳川城
いえ……高鍋城さんたちもご無事なようで何よりです。

高鍋城
ひとまず、これでひと安心――。

島津義弘
マダ一息付くには早いド? 高鍋城……!

徒導く訓示燈 -急-

遂に姿を現した、島津義弘の名を冠する巨大兜。
学び舎に集う幼き城娘たちを手に掛けんとする
兜の目論みを挫くため、殿一行は出陣する。

前半
島津義弘

マダ一息付くには早いド?高鍋城……!

飫肥城
あれは……島津義弘の名を冠する巨大兜……!

島津義弘
……ソコにおんのは飫肥城ジャな?

島津義弘
よく覚えトルぞ。
前回はお前らに煮え湯ば飲まされたのでな……。

島津義弘
……ジャガ、前に戦った時カラ、変化したコトモある。
儂には、『兆し』が見えトルのじゃ……。

飫肥城
……え?

島津義弘
サテ置き、ここは幼キ城娘が集ウ学び舎!

島津義弘
ドウヤラ、他の城娘は、
奥に姿を隠シテいるようじゃが……飫肥城!

島津義弘
お前のヨウニ、幼く弱い城娘ナラ、
いかに大勢集まったところで恐ルルに足らん!

島津義弘
儂の目論見は正シかったワケじゃ!

飫肥城
弱いなんて……そ、そんなことないもん……。

高鍋城
幼い城娘が大勢、って……! まさか、あなた……!

高鍋城
学び舎に集まった、城娘たちを狙っているの……?

島津義弘
そん通り……。
ここに集マッちょる城娘ば狙ッテ一網打尽にしようと考エタ……。

島津義弘
幼キ城娘は未ダ発展の途上……。判断能力も充分デハなか!

高鍋城
なんてことを……。

高鍋城
子供たちを狙うなんて……私たちの未来を作る宝を……!

島津義弘
非道ハ承知。恨み言も受け止めヨウ。
使える手段は全テ使う。此れが儂の流儀なのデナ……。

高鍋城
許せない。あなたは何としても、この私の手で……!

唐津城
お、落ち着いて高鍋城ちゃん……!
今の高鍋城ちゃんじゃ敵うわけないよ!

高鍋城
く……!

高鍋城
これだけの巨悪を前にしているのに戦うことができないなんて……!

島津義弘
ハッハッハ! 失った力は未だ戻らんようじゃナァ、高鍋城!?

島津義弘
奴らの戦力ば薄くなっとる今コソ好機! これを逃ス手はないぞ!

殿
…………。

島津義弘
フフフ、殿よ……やはりお前も来タカ。
儂ャ、お前と相まみえることを待ちわびトッタゾ……。

島津義弘
先刻の雪辱、今此処で晴らしてくれヨウ!

殿
…………!

島津義弘
さぁ行け! 高鍋城に攻め入るドォォーー!

兜軍団
御意ッ!
  御意ッ!
    御意ッ!

兜軍団
殲滅セヨッ!
  殲滅セヨッ!
    殲滅セヨッ!

やくも
兜の軍勢が迫ってきてるだにっ!

柳川城
殿、合戦の準備を! 相手は島津の名を冠する兜が率いる軍勢……
過酷な戦になることは避けられないと思われます!

殿
…………!

高鍋城
それでは唐津城ちゃん、飫肥城ちゃん。
私と一緒に奥へ避難しましょう。

唐津城
えっ! どうして?
さっきはいいって言ってくれたのに!

高鍋城
……考えが甘かったのだと、思い直したんです。

高鍋城
先程……唐津城ちゃんに迫ったような危機が、
また訪れないとも限らないでしょう?

高鍋城
柳川城さんに助けてもらったから良かったものの……、
一歩間違えればどうなっていたか……。

唐津城
…………。

唐津城
……ごめんね。
高鍋城ちゃんの言うことは聞けないよ。

唐津城
相手は巨大兜。その上、武勇名高い軍勢まで引き連れてる……。
柳川城お姉ちゃん一人で乗り切ることなんて、できるわけないもん。

飫肥城
わ、私も残ります……!

飫肥城
島津義弘の名を冠する巨大兜は、私にとっても縁の深い相手……。

飫肥城
その上、高鍋城先生の城を守る戦いと言われたら、
退くわけにはいきません……!

高鍋城
……仕方のない子たちですね。

高鍋城
……わかりました。戦にでることを許します。
私の代わりに、この学び舎を守ってください。

高鍋城
……でも、一つだけ約束して?

高鍋城
何よりも自分の命を優先して、必ず生きて帰ってくること。
たとえ、私の城を落とされることになったとしても、です。

高鍋城
子供たちを失ってまで守るべきものものなんて、
私は持ち合わせていませんから……。

唐津城
わかったよ、高鍋城ちゃん!

飫肥城
許してくれてありがとうございます、先生!

高鍋城
柳川城さん、お殿様……。
申し訳ありませんが、唐津城ちゃんと飫肥城ちゃんをお願いできますか。

高鍋城
この子らなりに、私の許で自らを高めることに時間を費やしてきました。
きっとこの戦でも皆さんの力になってくれると、私は信じます。

柳川城
……ありがとうございます。非常に心強いです。

柳川城
さぁ、もう敵の軍勢は目の前……。
高鍋城さん、ここは私たちに任せてお逃げください!

殿
…………!

高鍋城
承知しました。それでは、ご武運を祈ります……!

柳川城
……お二人とも、準備はいいですね?

飫肥城
……はいっ!

唐津城
もっちろん!

柳川城
では殿、どうか聡明なご下知をお願いいたします!

後半
柳川城

隙有りですっ!

島津義弘
ぐウぅうううぅぅッ!?

島津義弘
不味イ……よもや、ここまで戦が長引くトハ。

島津義弘
高鍋城が仕切っていた時とは様子が違ウ……
流石ハ殿……忌々しくも胸踊る戦いぶりじゃ。

島津義弘
こちらは未ダ余力を残してはいるものの……十全には程遠いカ。
このまま戦ガ続ケバ、もしもと言うことも有り得ル。

島津義弘
……ジャガ、焦ることはない。本陣にはまだ控えの兵ば居ル。

島津義弘
無理を押してせめずとも……機会はまた必ず訪レル。

島津義弘
ここは一度退き、万全を持ッテ再び出陣スルこととシヨウ。

島津義弘
……お前ラ、退却ジャ!
態勢を立て直すゾ!


御意ッ!

兜軍団
撤退ッ!
  撤退ッ!
    撤退ッ!

千狐
…………。

千狐
……兜たちの撤退を確認しました。

柳川城
ふぅ……危ないところでしたが、
なんとか乗り切ることができました……。

高鍋城
皆さん! ご無事ですかっ!?

柳川城
……高鍋城さん。

柳川城
どうにか守り抜くことができました。
巨大兜の討伐までは叶わなったのが残念ですが……。

高鍋城
いえ……再三に渡っての戦い本当にお疲れ様でした。

飫肥城
巨大兜は、またここを攻めてくるんですよね?

唐津城
その時は……アタシたちは避難しなきゃいけないの?

高鍋城
……そうです。心配は要りません。
それまでには私が力を取り戻し、殿のお役に立ちますから。

唐津城
…………。

高鍋城
殿……先の戦いは見事な采配でした。

殿
…………。

高鍋城
でも、巨大兜はまた必ず攻めてくる……その時には、私の手で……!

徒導く訓示燈 -絶壱-

高鍋城が兜に襲われる幾日か前――。授業を
目前に控え、憂鬱な気持ちを抱えて空を見上げる
唐津城の頭に、天啓とでも言うべき閃きが去来する。

前半
それは、高鍋城を兜たちが襲い始めるよりも前のこと――。

唐津城
そろそろ授業かぁ……。

唐津城
外は晴れ模様でお出かけ日和。
一方のアタシは学び舎にこもって勉強……。

唐津城
…………。

唐津城
ふぅー…………。

飫肥城
…………?

飫肥城
急に立ち上がってどうしたの、唐津城ちゃん?

丸山城
もうすぐ先生が来ますよ?

唐津城
勉強……。

飫肥城
…………?

唐津城
勉強……したくない……。

延岡城
何か、用事でも思い出したのですか?

唐津城
んーん、そうじゃなくてね……。

唐津城
今……アタシの中で糸が切れた音がしたの……。

佐土原城
いと?

唐津城
高鍋城ちゃんの言う『立派な城娘』になるための努力……。
それを続けなきゃっていう意志……。

唐津城
その張り詰めた糸が今……ぷつーーん、って……。

唐津城
これを直すには一度……お休みが必要だと思う……。

飫肥城
要するに……、
今日は勉強する気が無くなってしまった、ということですか?

唐津城
そーなの!
みんなもそういう日ってあるでしょ!?

唐津城
お腹すいたし天気は良いし、昨日は夜ふかししちゃったし!

唐津城
こんな日に勉強しても、頭に入るわけないよ!
目一杯遊んで、気分転換する方がいいと思う!

延岡城
……確か、前もそんなことを言って教室から逃げ出して、
痛い目を見てたような……?

唐津城
うっ……それはアタシの見通しが甘かったからだよぉ。

唐津城
あの敗北を糧にして、アタシは大きく成長してるんだから!

丸山城
大きく成長してやることが教室からの逃走って……。

佐土原城
そんなことやっても怒られるだけだよぉ……?

唐津城
えーちょっとぉ、みんな反対なの!?

唐津城
ねぇ、考えてみて?
最近の高鍋城ちゃんの授業、ちょっと厳しすぎるって思わない?

唐津城
あんなに勉強して、その後は宿題まであって……。
日に日に難しくなってる上に量まで増えてる……。

唐津城
もう少し緩くてもいい……、
時々そんな風に思うこと……あるよね? 飫肥城ちゃん。

飫肥城
わ、私ですか!?

唐津城
ないとは言わせないよ……ときどき漏れる飫肥城ちゃんのため息、
アタシの耳には届いてるんだから……。

飫肥城
なっ……!

飫肥城
そ、それは私だって好みや不得意はありますから……。

唐津城
うんうん。全然悪いことじゃないと思うよ! むしろ自然なことだよ!

唐津城
延岡城ちゃんだってそうでしょ?
もう少し緩かったら……そう思うことはない?

延岡城
…………。

延岡城
無いとは言いませんが……だったらどうするっていうんですか?

唐津城
まずはこの教室から、みんなで飛び出そう!

唐津城
突如発生する、生徒たちの脱走!
きっと高鍋城ちゃんは理解してくれると思うの!

唐津城
『私が皆を締め付けてしまったのが良くなかったんだ……
 もっと優しく教えてあげるべきなんだ……!』

唐津城
……みたいな!

丸山城
なるほど……確かに、
ちょっと頑張り過ぎなところがありますよね、高鍋城先生って。

唐津城
そーなんだよ!
……ねぇ、アタシの考え、佐土原城ちゃんはどう思う?

佐土原城
んー、勉強は疲れるかもしれないけど、
高鍋城せんせを困らせるのはよくないと思うなぁ……。

佐土原城
……そもそも、
せんせから逃げ切ることなんてできるの?

延岡城
そうです。先生に捕まり、大量の宿題を出されてうめき声をあげる。
……そんな唐津城さんの姿しか浮かびません。

唐津城
ふっふっふー……。

唐津城
それは、アタシが立てた作戦を聞いてからでも遅くないんじゃないかな?

延岡城
作戦?

唐津城
それじゃみんな、耳を貸して!
高鍋城ちゃん本人に聞かれたら大変だからね!

唐津城
アタシが立てた計画はね、
まずは高鍋城ちゃんを教室までおびき寄せて……。

唐津城
それから、それから――――。

後半
唐津城

……と、こうすれば高鍋城ちゃんは目を回して行動不能、
アタシたちの逃走は完了するってわけ!

丸山城
ふーん……なるほどね……。

佐土原城
確かにそれならやれるかも……!

唐津城
でしょでしょ?
そうと決まればさっそく高鍋城ちゃんが来る前に――。

高鍋城
来る前に――なんですか?

延岡城
!!

飫肥城
…………。

佐土原城
せんせっ!? いつのまに!

丸山城
気配を絶って接近していたのですか……!?

高鍋城
みんなで盛り上がって楽しそうですね?

唐津城
…………。

高鍋城
以前は一人で脱走したかと思えば、
今日は他の生徒たちを扇動ですか……。

高鍋城
まったく唐津城ちゃんは……。
そういうところばかりに頭が回るようになってしまって……。

唐津城
…………。

唐津城
……た、高鍋城ちゃんに聞かれると不味いから声は落として、って言ったのにぃ……。

飫肥城
……大きかったのは唐津城さんの声だけです。

唐津城
っ!?

佐土原城
そうだよぉ……嬉しそうに話してるうちに、
どんどん声が大きくなって……。

高鍋城
皆さん、今日は予定を変更して、自習といたしましょう。

高鍋城
先生はちょっと、唐津城さんとお話がありますので♪

唐津城
こっ、これは違うの! 出来心というか、! 若気の至りというか!

高鍋城
はーい、弁解は別室でじーっくり聞きますからねぇ~。

高鍋城
今日の宿題の量も、唐津城ちゃんがいつ教室に戻ってこれるのかも、
それをぜーんぶ聞いてから決めますからねぇ~。

唐津城
ご、ごめんなさい~~~~~!

結局、この日は一日自習となり……、
唐津城が教室に戻ってくることはなかったのだった……。

徒導く訓示燈 -離-

巨大兜を退けてから数日が経った。蝋燭の数は
充分な域に達し、高鍋城の力は戻りつつあった。
その時、兜の軍勢が城めがけて進軍を始める。

前半
千狐

よい、しょっと……。

千狐
蝋燭、だいぶ集まってきましたね!

やくも
うちと千狐でえっぱい集めただに!

高鍋城
お二人とも、ありがとうございます……!

高鍋城
お陰様で、力が徐々に高まってきているのを感じます。

高鍋城
これなら、今すぐにでも戦に出ることができると思います。

唐津城
良かったねぇ、高鍋城ちゃん!

高鍋城
唐津城ちゃんもありがとうございます。
飫肥城ちゃんと一緒に蝋燭集めを手伝ってくれたお陰です。

唐津城
えへへ、どういたしまして~!

千狐
嬉しそうですね、高鍋城さん。

高鍋城
はい……城や学び舎を自分の手で守れず、
もどかしい思いをしていましたから。

高鍋城
でもこれで、ようやく戦うことができます。

高鍋城
もし仮に、島津義弘の名を冠する巨大兜が、
再び攻めてきたとしても――。

数刻後――――。


――ザザッ!

兜軍団
――ザザッ、ザザザッ!!

千狐
皆さん……兜が現れました……!

殿
…………!

高鍋城
早速おいでになりましたか……!

唐津城
…………。

唐津城
高鍋城ちゃん、戦うの?

高鍋城
ええ。子供たちや……、
子供たちの学び舎を守らなくてはいけませんから。

唐津城
高鍋城ちゃん……。

唐津城
アタシはやっぱり……戦わない方がいいの?

高鍋城
……はい。
唐津城ちゃんは御城の奥へ避難していてください。

高鍋城
飫肥城ちゃんは先に行って待っていますから……唐津城ちゃんも、ね?

唐津城
なんでよ……!
危ないのは高鍋城ちゃんだって一緒なのに。ズルだよ~!

高鍋城
ズルって……これは戦なんですよ。懸念を減らし、
万全を期して戦いに臨むのは当然のことです。

唐津城
幼くて、弱い城娘を戦線に立たせないのも、
その懸念の一つ……そういうこと?

高鍋城
……その通りです。

唐津城
アタシ、もう子供じゃないよ! 高鍋城ちゃんと同じように、
御城や学び舎を守りたいって思ってる、その力だってちゃんとある!

高鍋城
…………。

高鍋城
そうかもしれません……。
単に私が怯えすぎてるだけなのかも……ですが……。

唐津城
…………。

唐津城
もういいもん、高鍋城ちゃんのわからずやー!!

高鍋城
か、唐津城ちゃんっ!

高鍋城
行ってしまいました……。

柳川城
城の奥へと走り去っていったようです……。

高鍋城
ならば安心、ですね……。

高鍋城
子供たちを守るにはこれが一番なのです……。
ましてや、今は私が戦場に立てるのですから。

柳川城
高鍋城さん……。

高鍋城
わかってはいるんです。唐津城ちゃんが感情を高ぶらせてしまうのも、
私を大切に思うからこそだということは……。

高鍋城
ですが教師というものは……生徒を先導するのが定め。

高鍋城
いつか力を備えて、立派な城娘になるその日まで……。
私はあの子たちを守り続けたい。そう思うんです。

柳川城
心配なようでしたら、唐津城さんの傍にいてあげても……。

高鍋城
…………。

高鍋城
いえ、問題ありません。

高鍋城
唐津城ちゃんとの仲直りは、平穏を取り戻してから。
この戦いが終わった後に、ゆっくりとお話しします。

高鍋城
……殿。ようやく一緒に戦えますね。

殿
…………!

高鍋城
私の願いはただ一つ!
皆の学び舎を守り抜くためなら、どんな指示にだって従います!

高鍋城
それでは、参りましょう!

後半
柳川城

これでお終いですっっ!


ギャアアアアァァァァァ!?

柳川城
はぁ、はぁ……。ひとまず、兜の殲滅には成功したようです……。

千狐
柳川城さんっ! 高鍋城さんがっ!

柳川城
千狐さん! 高鍋城さんがどうかされたのですかっ?

千狐
とにかくこちらへ!

――――。

高鍋城
はぁ、はぁ……。

柳川城
高鍋城さんっ!?

高鍋城
……柳川城さん。

高鍋城
問題はありません。ただ、力をすべて使い果たしてしまっただけです。

高鍋城
消耗を抑えて戦っていたつもりでしたが……。
まだ力は充分に取り戻せていなかったということですか……。

柳川城
この様子では……また、しばらくは体を休めた方が良さそうですね。

高鍋城
ええ……。次の戦いまでにはまた、力を取り戻して必ず……!

島津義弘
そげな隙、儂が与えット思うか……?

徒導く訓示燈 -結-

再び姿を現した、島津義弘の名を冠する巨大兜。
力を使い果たして戦線から離脱した高鍋城の助太刀に
現れたのは、彼女が予想もしない者たちであった。

前半
島津義弘

そげな隙、儂が与えット思うか……?

高鍋城
……島津義弘の名を冠した巨大兜っ!

島津義弘
オォ……?
何やら疲弊しているヨウじゃナ?

高鍋城
く……!

島津義弘
弱者バカリをかばっとるから、そげな目ニ遭うのジャ……。

島津義弘
威勢ダケで半端ナ実力……そげんガキどもには、身の程を教えてヤルのが正しカ!

島津義弘
高鍋城、お前の努力は徒労に終わるのジャ!

高鍋城
それは……っ!

唐津城
それは違うよ!

高鍋城
貴方たちは……!

佐土原城
どっすこ~い! 佐土原城、参上だよぉ~♪

延岡城
ごめんなさい、高鍋城先生。
……隠れていろと言われたのに、助けにきてしまいました。

丸山城
だけど先生、
放っておくとずーっと私たちのこと子供扱いしちゃいそうですからね。

飫肥城
だから、今日だけは私……先生の言いつけに背きます!

柳川城
あの城娘たちは……?

高鍋城
あの子たちは……私が学び舎で勉強を教えている子供たちです!

高鍋城
どうして……! 安全な場所に身を隠していなさいと言ったのに……!

唐津城
アタシがみんなに声を掛けたんだよ!

高鍋城
そんな……ここがどれだけ危険な場所だと……!

唐津城
言ったでしょ。
高鍋城ちゃんがこんな危ない目に遭ってるのに、放っておけるわけないって!

唐津城
お説教なら後でいくらでも受けるつもりだから、ここは任せて!

高鍋城
ちょっと、あなたたち……!

唐津城
退きなさい、なんて言ってももう聞かないからねー!

唐津城
というか、今の高鍋城ちゃんじゃアタシたちのこと止められないと思うけどねー♪

丸山城
怪我人は黙って下がっててくださいね、先生!

延岡城
皆で力を合わせれば、必ず勝機は見えるはずです!

佐土原城
そーだよ! 戦い方だって先生からいっぱい教わったし!

飫肥城
殿、指示をお願いしますっ!

殿
…………!

唐津城
ここだけは負けられない!
絶対絶対、高鍋城ちゃんを守ってみせるんだから!

後半
島津義弘

グオオオォォォおぉッッ!?

千狐
巨大兜の体勢が崩れました!

唐津城
皆、あとひと押しだよ!

島津義弘
く……このままでは……身体がもたんド……!

島津義弘
ヌゥ……この鬼島津が同じ相手に何度も敗北を喫するナド……!
あってはならん……ナラヌのだ……!

島津義弘
うオオオオオァァァァァァ!

やくも
巨大兜が力を取り戻しただに!?

千狐
いえ、力を取り戻しているどころか……この霊力の上昇……!

柳川城
……まさか、魂との定着が強まっているのですか?

千狐
ここに揃った城娘たちの多くは、島津義弘の魂と浅からぬ縁を持っています。
その状況が、巨大兜に影響を与えてしまったのでしょうか……。

島津義弘
良いド……頭が冴えてキタ。

島津義弘
儂らの目的は……殿の首……!
この劣勢にオイテ、それ以外を考えるのは愚策……。

島津義弘
……全軍前進! 進むのジャ! 

兜軍団
前進セヨ……。
  前進セヨ……。
    前進セヨ……。

高鍋城
兜たちが前進をはじめました!

柳川城
そんな! もう大勢は決しているのに!?

兜軍団
前進セヨ……。
  前進セヨ……。
    前進セヨ……。

高鍋城
兜たちの前進、止まりません!
徐々に巨大兜が、殿の方へと接近しています!

兜軍団
前進セヨ……。
  前進セヨ……。
    前進セヨ……。

島津義弘
恐れは要らヌ……前ジャ、前のみを見据えヨ!!

高鍋城
皆で一丸となって、殿を守りましょう!
でないと、このままでは……!

殿
…………!

佐土原城
くっ、止められない……!

兜軍団
前進セヨ……。
  前進セヨ……。
    前進セヨ……。

高鍋城
死をまるで恐れることなく、進軍してくる……!
これは、巨大兜の変容に関係しているの……?

島津義弘
ハアアァアァーー! 殿はもう目前ッ!
このまま真っ直ぐ、大将の首バ持っていくドオオォォーーーッ!!

柳川城
……殿っ!!

唐津城
させないよ!

島津義弘
ヌぅぅッッ!?

島津義弘
弾かれたジャとっ!?
傷を負ってるとはいえ、この儂がお前などに……!

唐津城
飫肥城ちゃん、お願いっ!

飫肥城
やあああああぁぁぁぁぁっ!!!

島津義弘
ぐ、ウォォォォぉぉっ!?

島津義弘
く……くそ……強大な力ば手ニシタというのに、
最後はガキどもに阻まれるのカ……。

島津義弘
……喧嘩ノ決着はまた次の機会に持チ越シ、カ。

島津義弘
全軍、このまま進め!
自ラの体ば盾に、一人デモ多くの兵を陣に帰すのジャァァ!

島津義弘
殿よ、儂が真の力ば取リ戻ス時ハ遠くないぞ……覚悟しておけ!!

やくも
うちらの陣を越えて……そのまま去っていくだに……。

千狐
…………。

千狐
兜の撤退を確認しました……。

柳川城
以前と同じく、
『島津の退き口』を再現するような格好で逃げられてしまうとは……。

柳川城
それに退却の間際、巨大兜から感じられた凄まじい霊力の高まり……。

柳川城
次、相まみえる時は……更に強大な力を得ていることでしょう。
その際は、覚悟してかかる必要がありそうです……。

千狐
とにかく、殿が無事だったのです。
今はそれだけで良しとしましょう……。

柳川城
そうですね……。
高鍋城さんや、教え子の皆さんのお陰です。

殿
…………!

唐津城
えへへ、ちゃんと活躍できたかなぁ?

柳川城
はい、もちろんです。
島津義弘の名を冠する巨大兜が率いる精鋭が相手だったというのに、
見事な立ち回りでした。

柳川城
目の前の利に捕われず、広い視野をもって立ち回っていたのがわかりました。

柳川城
きっと、日頃の高鍋城さんの教えが活きているのでしょうね。

唐津城
……だってさ、高鍋城ちゃん! アタシたちの戦いぶり、どうだったかな?

高鍋城
皆さん……。

唐津城
……高鍋城ちゃん。

高鍋城
…………。

唐津城
(……や、やっぱ怒ってるかな?)

高鍋城
よくぞ戦い抜きました。……素晴らしかったですよ、とっても。

唐津城
っ!!

高鍋城
皆さんがここまで成長していたなんて……先生はびっくりしてしまいました。

高鍋城
巨大兜はあなたたちに力が備わっていないことを理由に狙いを定めたようですが……。
どうやら、私もあなたたちの実力を見損じていたようです……。

佐土原城
えへへ、褒められちゃった♪

延岡城
日頃、先生の授業に真面目に取り組んでいたお陰ですね。

丸山城
何かご褒美がもらえたらいいのですが……。

飫肥城
何を言うんですか丸山城さん、
私たちにとっては先生が無事だったことがなによりのご褒美じゃないですか♪

高鍋城
うぅ……それはこっちの台詞です……。

高鍋城
良かった……。
子供たちが無事で、本当に良かったぁぁ……。

高鍋城
ぐすっ……う、ぅぅ……。

唐津城
な、泣くことないじゃん……。
こうして無事に戦いを終えられたんだからさぁ……。

高鍋城
そうですけど……そうですけどぉ……。

佐土原城
先生泣きすぎだよぉ、あははっ。

高鍋城
だって、だってぇ……うぅ、止まらないんです~……。

やくも
高鍋城、ずっと気持ちを張り詰めていたんやね……。

柳川城
ええ……私たちの前でも、生徒の前でも常に毅然に振る舞って……。
やはり無理をしているところがあったのだと思います。

柳川城
こうして高鍋城さんの御城を守ることができて、本当に良かった……。

殿
…………!

千狐
殿……此度の戦も、本当にお疲れ様でした!

徒導く訓示燈 -絶弐-

平穏を取り戻した高鍋城の元に都於郡城が訪れる。
滞在中の予定を相談する中、彼女の頭の中では、
とある城娘を中心とした妄想が繰り広げられる……。

前半
高鍋城に平穏が訪れてから、しばらくが経った頃のこと……。

都於郡城
ふぅ……ようやく到着ですか。

高鍋城
都於郡城さん! ようこそいらっしゃいました!

都於郡城
お久しぶりですね。高鍋城さん。

都於郡城
先日は申し訳ありませんでした。
兜に襲われ危機に瀕していたというのに、加勢することができず……。

高鍋城
いえいえ、都於郡城さんは伊東四十八城の中心としてお忙しい立場ですから。

高鍋城
私としては、こうして直接お話しできるだけでありがたやー、という思いですよ♪

都於郡城
まったくあなたは……長い付き合いなのですから、
もっと気安く接してほしいと申し上げておりますのに……。

高鍋城
そうご謙遜なさらないでください。
都於郡城さんは今も昔も変わらず、私の憧れなんです。

高鍋城
……ところで、今日は何をいたしましょうか?
せっかくの余暇ですし、ゆったりと過ごせればと思ったのですが……。

都於郡城
そうですね……それを考える前に、
まず聞いておきたいことがあるのですが……高鍋城さん。

高鍋城
はい、なんでしょうか?

都於郡城
子供たちはどこに居るのですか?
先程から周囲を見回しても、姿が見えません……。

高鍋城
あぁ、子供たちですか。今日は授業がお休みなので、
皆それぞれ自由に遊んでいると思いますよ。

都於郡城
なっ……!?

都於郡城
では、飫肥城ちゃんの居場所もわからないというのですかっ?

高鍋城
えっ? そうですね……私の方では、ちょっと。

都於郡城
そんな……! なんということでしょう……。

都於郡城
高鍋城さんのところに来て、
子供たちと顔を合わせることができないなんて……!

高鍋城
やはり、子供たちの顔を見るのが目的だったのですね……。

都於郡城
それだけではありませんよ?
もちろん、高鍋城さんの無事を確認したいという気持ちも大いにあります。

都於郡城
それに……ほら、お馬さんもいるでしょう?
あの子たちと会うのも、楽しみにしていたんです。

高鍋城
御崎馬のことですか。この前いらした時も、気に入っていた様子でしたものね。

都於郡城
そうなんです。
高鍋城さんのところへ行くことがあったら、また乗せてもらいたいと思っていたんですよ。

高鍋城
では、滞在中には一度、牧場へ向かうことにしましょう!

高鍋城
教え子の城娘たちも御崎馬はお気に入りで、
よく触れ合ったり背中に乗ったりしているんですよ。

都於郡城
そうですか。
では馬をきっかけに仲を深める……なんてことも可能なのですね。

都於郡城
しかし、なんて羨ましい立場なのでしょう、高鍋城さんは……。
日頃から子供たちと接することができるなんて……。

高鍋城
都於郡城さんは本当に子供たちが大好きなのですね。

都於郡城
かつての城主・伊東祐堯様がお子を二十五人も持っていた影響かと思います。

都於郡城
子供とは本当にすばらしい……。
無垢な笑顔……未来を照らす輝き……。見ているとつい、顔が綻んでしまいます。

高鍋城
ふふ……都於郡城さんは良い教師になりそうですね。

高鍋城
子供への愛情の深さにおいて都於郡城さんは、
誰にも引けを取らないと思います。

都於郡城
そうですね、確かにその部分には自信がございます。
特に……飫肥城ちゃんへの思いに関しては!

高鍋城
あはは……都於郡城さんが教師になったら、
飫肥城さんだけ極端に可愛がってしまいそうです……。

都於郡城
……この気持ちを抑えることは非常に難しいです。
なぜなら、これは単なる贔屓ではなく、私の業とも呼ぶべきもの……。

都於郡城
私の城主・伊東氏はかつて、
飫肥城ちゃんを巡って何代にも渡る争いを繰り広げていましたから……。

都於郡城
ですので……飫肥城ちゃんを求めるこの衝動は仕方ない……、
止めようのないものなのです。

都於郡城
あぁ、飫肥城ちゃんに会いたい。
会えないこの時間がもったいない……一秒でも早く飫肥城ちゃんのもとに行かなければ……。

高鍋城
(愛情と一口に言っても、少々歪んでいる気がしないでもありませんが……)

都於郡城
はぁ……高鍋城さんの学び舎で先生になることを、
真剣に検討してみても良いかもしれませんね……。

都於郡城
高鍋城さんの補佐としてでも、先生になれば……
飫肥城ちゃんの姿を常に視界に入れておけますし……。

高鍋城
……もし都於郡城さんが教師になったら、
生徒にはどんなことを教えたいですか?

都於郡城
先生になったら、ですか……。
そうですねぇ……。

都於郡城
やはり、元気に駆け回っているところを見ていたいです……。

都於郡城
あとは一緒に遊ぶのも楽しそうです。
鬼ごっことか、隠れんぼとか……。

高鍋城
良いですね♪
運動になることはもちろん、知恵を磨くことにも繋がりそうです。

都於郡城
もし遊ぶとなったら、私は鬼に立候補したいところですね。
それからお馬さんをお借りして……。

――――。

飫肥城
(都於郡城製幻想形・飫肥城)

飫肥城
はぁ、はぁ……はぁ……!

???
(パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……)

飫肥城
(これは……蹄の音……? 近づいてきてる……!)

都於郡城
困りましたねぇ……誰も見つからないとは……。

都於郡城
……あちらの方を探してみましょうか。

飫肥城
(……ほっ)

都於郡城
なーんて……言うと思いました?

都於郡城
私が飫肥城ちゃんの気配を見逃すはずがないではありませんか……?

都於郡城
そこにいるのでしょう?
待っててくださいね。いますぐに向かいますから……。

飫肥城
見つかった!?

都於郡城
あら、逃げるおつもりですか……?

都於郡城
ではお馬さん、あの凄まじく可愛らしい城娘さんを追ってください。

都於郡城
(パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……)

飫肥城
そんな、ちゃんと隠れていたはずなのに……!
どうして……!

飫肥城
はぁ、はぁ、はぁ……。

都於郡城
(パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……)

飫肥城
だめ、もう逃げられない……!

都於郡城
(パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……)

飫肥城
きゃーーーーー!

後半
都於郡城

えへへ……顔が綻んでしまいます……。

高鍋城
なんですかその妄想は!?

高鍋城
というか都於郡城さん、馬に乗っていませんでしたか!?
パカラッパカラッていってましたけど!

都於郡城
ええ。高鍋城さんのところから御崎馬をお借りしました。

都於郡城
私、あまり活動的ではないものですから。
……鬼役が鈍くさくては、遊びにも張りが出ないでしょう?

高鍋城
それは一理ありますが……。

高鍋城
……ただ、人様にお見せできない画になっていたように思えたのは、
私の気の所為でしょうか……?

都於郡城
気の所為でしょう。ただの鬼ごっこですよ?

都於郡城
あぁ、想像していたら本当にやりたくなってきてしまいました。
……私、子供たちを探しにいってきますね。

高鍋城
…………。

高鍋城
なんでしょう……。理由もなく湧き上がってくるこの不安は……?

高鍋城
都於郡城さんの想像が現実になったら大変なことになる気がします……!

高鍋城
待ってください、都於郡城さーん!
私もご一緒しますー!

こうして高鍋城は、
所以のわからない胸騒ぎを抱えたまま、都於郡城の後を追うのだった――。



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