ストーリーテキスト/彩れ鉄鎖!_宴呼ぶ南瓜姫たち

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目次

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち[]

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -序-

アイアンリング城娘からの招待を受け、ひと足早く
ハロウィン会場へ到着した一行。ところが、主催の
コンウィ城は、何やら思い悩んでいる様子で……?

前半

ハロウィンを目前に控えた、ある晩。
イングランド、ウェールズ北部の某所――

そこには、何やらただならぬ様子の城娘たちが……。

ハーレック城
まったく、この華麗にして完璧なハロウィンプランを解さぬとはな。
アイアンリングの名声を高めるのに、これ以上の提案はあるまい?

ハーレック城
第一、お前の案では無粋すぎるぞ、カーナーヴォン城。

カーナーヴォン城
ふん、何を言うかと思えば。
規律あるアイアンリングを世に示す絶好の機会なのだ、当然だろう?

フリント城
それにしたって、カーナーヴォン城のはやりすぎよー!

カーナーヴォン城
その言葉、フリント城にだけは言われたくないな!

ハーレック城
分からず屋め。
――まぁ、コンウィ城は私の趣旨を理解してくれているはずだがな。

カーナーヴォン城
ふふ、どうかな?
コンウィ城はお前と違い、規律と倹約に理解のある者だ。そうだろう?

フリント城
どうなの、コンウィ城!

コンウィ城
あわわわ……。
皆、少し落ち着いて~!

コンウィ城
(うう……どうして、こんなことに……!)

その翌日、日もすっかり落ちた頃。

千狐
コンッ!
転移、無事に完了しました!

殿
…………!

柳川城
すごい、御城の飾り付けはもう既に済んでいるようですね!

やくも
くんくん……甘ぁ~いお菓子の香りも、漂っとるがや……むふふ……!

立花山城
……流石に、早く着きすぎたんじゃない?

柳川城
『ハロウィンの前週からお入り頂ければ、観光案内もいたしますよ♪
 どうぞご遠慮なく、お気軽にお越しくださいませ~!』

柳川城
――という、コンウィ城さんからの招待状の文言を真に受けて、
ひと足早く遊びに来てしまったわけですが……。

殿
…………。

柳川城
そうですね。何はともあれ、まずは主催である
コンウィ城さんの元へ、ご挨拶に伺いましょう!

――――

コンウィ城
う~ん……。

殿
…………!

柳川城
あ、御庭にいらっしゃいましたね!
コンウィ城さ~ん!

コンウィ城
むむぅ…………。

殿
…………。

立花山城
聞こえていないようね……。

柳川城
お顔をしかめて、同じところをぐるぐると……。
どうされたのでしょうか……?

コンウィ城
リズラン城姉さまなら、こんな時…………。
うぅ、やっぱり、私に姉妹をまとめるなんて――。

殿
…………?

コンウィ城
あぁ、気にしないでくださいね。
ただの独り言ですから……――って、王様!??

柳川城
お、お邪魔しています!

コンウィ城
あわわ、皆さんお揃いなのですね……ごめんなさい、気づかなくて!

コンウィ城
――こほん。
ようこそ、アイアンリングのハロウィンへおいでくださいました!
歓迎いたしますよ♪

やくも
さあて、どんな名物がうちを待っとるがや~?
やっぱり、異国の観光は胸が高鳴るだに!

千狐
ちょっとやくも! お世話になる前提で話さないの!

コンウィ城
うっ……そうでした、観光のご案内……!
皆さん、それを御期待して早めにいらしたのですよね……。

コンウィ城
(飾り付けの準備がトントン拍子に進んだからって、
 浮かれて招待状を書いた私の馬鹿ぁ……!)

やくも
だに……?

立花山城
……何か、事情があるようね?

柳川城
先程から、物思いに耽っておいでのようでしたが……。
もし良かったら、お話を聞かせていただけませんか?

コンウィ城
そんな、来賓の方々に、ご迷惑をかけるわけには……。

殿
…………。

コンウィ城
王様……!

コンウィ城
……分かりました。
このまま説明もなく皆さまをお待たせする訳には、いきませんものね。

コンウィ城
お恥ずかしい話なのですが……実は――

――――

柳川城
な、なるほど……。
予定より早くハロウィンの準備が終わったので、
御姉妹に追加の出し物案を募ったところ――

立花山城
喧嘩になって、未だ肝心の出し物が決まっていない……というわけね。

コンウィ城
はい……。
『アイアンリング』としてお客様をもてなすのであれば、
皆の意見をできる限り取り入れたいと思ったのですが……。

コンウィ城
目玉となるイベント案が見事に食い違ってしまって……。
かといって、私から聞いた手前、今更取りやめるわけにもいきません。

コンウィ城
リズラン城姉さまが御多忙で不在の今……。
不甲斐のないことに、未だ収集がつかないのです。

殿
…………。

柳川城
そうですね。
私たちも、ひとまずアイアンリングの皆さんと面会いたしましょう。

柳川城
その上で直接お話を聞けば……何か道が開けるかもしれません!

コンウィ城
うぅ、すみません……お恥ずかしい限りですぅ……。

立花山城
気にしないで良いのよ、この人たちは根っからのお人よしなんだから。

立花山城
それに、そうと決まった以上――善は急げでしょう?

コンウィ城
はい……!
では、皆の元へご案内いたしますね……さあ、こちらへ!

――城内広間

カーナーヴォン城
むむむむ……。

ハーレック城
ぐぬぬぬ……。

コンウィ城
みんな~!
王様たちがいらっしゃいましたよ~っ!

フリント城
あ、コンウィ城が帰ってきたみたい!
……あれ、なんかいっぱいいる?

カーナーヴォン城
随分と遅かったではないか……おや。

ハーレック城
ほう、王がもう到着したか。

柳川城
お久しぶりです、アイアンリングの皆さん!
あ、初対面の方もいらっしゃいますね?

殿
…………!

フリント城
ふ~ん、アナタが城娘を束ねる王様なのね……話には聞いていたわ!

フリント城
アタシはアイアンリングを束ねる筆頭お姉ちゃん、フリント城よ!
よろしくね♪

殿
…………?

コンウィ城
(ま、まあ、『お姉ちゃん』については気にしないでください……)

フリント城
コンウィ城、何かいったかしら?

コンウィ城
いえお姉さま、なんにも♪

フリント城
おねえ……えへへ……そ、そう?
なら良いわ!

立花山城
(チョロいわね……)

やくも
(チョロいだに……)

ハーレック城
さて、客人が着いたとあらば……。
いよいよ早急に決着をつける必要があるな、カーナーヴォン城?

カーナーヴォン城
望むところだ、ハーレック城。
アイアンリングの伝統にのっとり、一騎打ちで雌雄を――

コンウィ城
はわわ、二人ともアロース! 落ち着いて~!

殿
…………!

柳川城
は、はい!
あの、私たちも皆さんの意見を具体的に伺いたい……と思うのですが!

カーナーヴォン城
なに、殿下の裁量を仰ぐのか……?
ふむ……それも悪くないな。

ハーレック城
そういう話なら、私も異論はない。
――では、どちらからお披露目といこうか?

カーナーヴォン城
先手必勝だ。
私からいかせてもらおう。

ハーレック城
良いとも……生憎、私は守勢からの挽回は十八番なのだよ。

カーナーヴォン城
ふっ、そちらの番が回ってくるとは思わないことだな。

ハーレック城
ほほう、言うじゃないか。

やくも
二人とも笑ってるはずなのに、何だか恐ろしく聴こえるがや……!

カーナーヴォン城
それでは、諸侯にもご傾聴頂くとしようか。
模範と規律に満ちた、誇り高きアイアンリングのハロウィンを!

カーナーヴォン城
――そも、ハロウィンの『悪戯』は規範を乱しかねないものだが……。
だからといって、コンウィ城が用意してくれた催しを、
むざむざ諦めるわけにはいくまい?

コンウィ城
カーナーヴォン城さん……。

カーナーヴォン城
そこでだ。アイアンリングでは悪戯を『戦闘訓練』とみなし――、
お菓子を、その報酬とすることにした!!

カーナーヴォン城
どうだ、これほど正当で模範的な催しは他にないだろう?

やくも
……悪戯の代わりの訓練で、お菓子を貰うがや?

千狐
そ、それだと『とりっく・あんど・とりーと』なの!

立花山城
(そこ……?)

合戦中

柳川城
これは……兵舎と……演習場のような……。

コンウィ城
どうやら、ほとんど実戦形式の演習プランもあるようでして……。

殿
…………!

やくも
か、過酷すぎるだに……!

殿
…………っ!

コンウィ城
(この反応……や、やっぱりやり過ぎです、カーナーヴォン城さん~!)

後半

カーナーヴォン城
――無論、老若男女城娘神娘に合わせた課題を設定してある。
あらゆる心配は無用だと、最後に一言添えておくとしようか。

カーナーヴォン城
おお、そうだ。
訓練の後の菓子は美味しさもひとしお、
五臓六腑に染み渡る……ともな!

カーナーヴォン城
では、私からのプレゼンは以上だ。
……如何でしたでしょうか、殿下?

殿
…………。

殿
……………………。

柳川城
う、うーん……。

フリント城
カーナーヴォン城は真面目すぎるのよ。
第一、これじゃあちっともハロウィンらしくないじゃない!

カーナーヴォン城
何を言う、誇り高きアイアンリングらしくあれば、
それで十分ではないか!

ハーレック城
ふふ、評判は芳しくないようだな、カーナーヴォン城?

カーナーヴォン城
ぐっ……。

ハーレック城
もはや私の勝利は決まったも同然だが……。
貴重な機会だ、次は私のプランを諸侯に紹介するとしよう!

コンウィ城
(でも、カーナーヴォン城さんがそうしたいなら……。
 あぁ、私はどうしても、無下にできないのです……)

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -破-

城下街に仮装した城娘たちが集いつつある中――。
御城では、カーナーヴォン城に引き続き、
ハーレック城のプランが披露されようとしていた。

前半

一方その頃。
城下街には、新たな――もとい気の早い――招待客たちの姿が、
ちらほらと見えはじめていた……。

ホーエンツォレルン城
ふむ、この時点で街の装飾は完璧……。
流石アイアンリング、勉強になりますわ……メモメモ……。

ホーエンツォレルン城
ハロウィン、見様見真似で仮装は間に合わせましたが……。
いずれ故郷で開催する為には、学ぶべきことが山ほどありますわね!

ホーエンツォレルン城
ふぅ……それにしても、少々早く着きすぎたかしら?
招待状にああ書いてあったとはいえ、ハロウィンまではまだ数日――

ホーエンツォレルン城
あら?
あそこに見えるのは……。

カステル・デル・モンテ
ファンタスティ~コ♪ 素晴らしい飾り付けだね~!
心のこもったもてなしの心を感じる……これがハロウィンか!

カステル・デル・モンテ
えへへ~、宴会にお呼ばれしちゃったんだもんね、わたし!
やった~~~っ、と思って早めに来ちゃったけど、大丈夫かな?

カステル・デル・モンテ
でもまあ、街の様子を見た感じ、衣装はばっちり似合ってそうだし?
問題ないよね~!

ホーエンツォレルン城
もし、そこの御方!
貴方も、コンウィ城さんの招待客ですの?

カステル・デル・モンテ
おおっと~、城娘ちゃんだ!
第一城娘発見~!

カステル・デル・モンテ
えへへ、よろしくね~!
いや~、やっぱり宴会はこうじゃないとー!

ホーエンツォレルン城
あ、貴方……もしかして酔っていませんこと?

カステル・デル・モンテ
ううん、まだ素面だよ~♪

ホーエンツォレルン城
(この距離感ゼロでくっついてくる感じ……。
 素面でハイデルベルク城みたいな子ですわ……)

カステル・デル・モンテ
あぁごめんごめん、質問に答えてなかったね!
そう、わたしはコンウィ城ちゃんに招待されたんだ~。

カステル・デル・モンテ
……ってことは、キミもそうかな?

ホーエンツォレルン城
ええ、私もですの!
到着が早すぎたのを危惧していましたが……。
他の招待客の方と合流できて、安心できました♪

ホーエンツォレルン城
――失礼、私としたことが、ご挨拶が遅れましたわね。
ドイツ三大名城が一角、ホーエンツォレルン城と申しますわ。
以後、お見知りおきを。

カステル・デル・モンテ
おぉ、聞いたことあるかも?
わたしはイタリアの黄金八角形、カステル・デル・モンテだよ!
よろしくね~♪

カステル・デル・モンテ
それじゃあ早速だけど……トリック・オア・トリート!
はーい、お菓子あげる♪

ホーエンツォレルン城
こ、これはどうも……?

ホーエンツォレルン城
(ハロウィンって、そういう感じでしたっけ……?
 ちょっと違ったような……)

ホーエンツォレルン城
と、とりあえずメモメモ……。
よし……そういうことでしたら、私からもお返しを!

ホーエンツォレルン城
はい、こちらをどうぞ♪

カステル・デル・モンテ
おっとー?
これは……人参だね?

ホーエンツォレルン城
ええ、私の所領で採れた、甘ーいお野菜ですわ!
そのまま食べても、美味しくてよ?

カステル・デル・モンテ
ほええ~、面白いね!
ありがと~♪

カステル・デル・モンテ
甘い南瓜の飾り付けに、甘いお菓子に、甘いお野菜かぁ……。
多分、これぞハロウィン…………なんだろうね!

ホーエンツォレルン城
ええ!
きっと、多分、おそらく……そのはずですわ!

ホーエンツォレルン城
……ところで、カステル・デル・モンテさん。
コンウィ城さんとは、もう面会しましたの?

カステル・デル・モンテ
あっ、そうだった!
お菓子を配るのに夢中で、忘れてた~!

ホーエンツォレルン城
ふふっ。実は私も、今し方ウェールズに着いたばかりですの。
せっかくですし……二人でご挨拶、伺いませんこと?

――同時刻、城内。

ハーレック城
それでは、私のプランを発表しよう。
題して――『劇団アイアンリング』ハロウィン公演だ!

殿
…………?

やくも
劇団、だに?

ハーレック城
その通り!

ハーレック城
まずは、意匠を凝らした仮装に身を包んだ我ら姉妹が、
ハロウィンの街を優雅な台車に乗って行進する……。
いわゆる、パレードというやつだな。

フリント城
アタシたちの後には、劇団員が続くの!
もっちろん、パレード中のパフォーマンスも、ばっちり豪華よ!

ハーレック城
そして、街中を巡った後、公演会場にたどり着けば……。
そこからは――誰もが驚嘆し悲鳴を上げる、ビザー・ステージ!

ハーレック城
恐ろしくも面白い、華やかな演目が飛び交うのだ……そう、このように!

合戦中

柳川城
歌あり、踊りあり……物凄い舞台の予感です……!

コンウィ城
ええ、確かにハーレック城さんの演目は素晴らしいのです。
それはそう……なのですが……。

殿
…………?

やくも
うひゃ~、お菓子が客席に降ってくるお芝居なんて、
聞いてるだけで涎が出てくるだにぃ~!

千狐
こ、これは期待できそうなの……!

コンウィ城
うぅ~ん……。

立花山城
……どうやら、カーナーヴォン城の案とはまた別の問題があるようね。

後半

ハーレック城
ふふふ……どうだね諸君?
アイアンリングの格式、高貴さ、
そして優雅さを兼ね備えた私のプランは、完璧だろう?

やくも
異議なしだに!

フリント城
あ、ねえねえハーレック城!
今思いついたんだけど、貴方が歌うオペラの場面に、
ドラゴンも登場させましょうよ!

フリント城
瞳が大きなルビーで、全身が真っ赤な薔薇の花!
しかも口から火を噴くのよ!

コンウィ城
あの、フリント城……これ以上はちょっと、その……。

ハーレック城
ほほう、流石は我がプランの演出担当……!
素晴らしい、アイアンリングの名声がより高まりそうだ!

コンウィ城
はわわ……。

カーナーヴォン城
待て待て! 全く、黙って聞いていれば……。
先日私が耳にしたものより、更に豪勢になっているではないか!

ハーレック城
逐次改善し、より良い演出にしていくのは当然のことだろう?

カーナーヴォン城
ええい、そういうことではない!

カーナーヴォン城
ただでさえ大赤字のお前の計画に……今度はドラゴンだと?
予算はどうするのだ、予算は!

立花山城
あー……。

柳川城
た、確かに……。

ハーレック城
ふ。此度のように各国の来賓も招く催し……。
多少は懐が痛むのも――

カーナーヴォン城
多少どころではない!
コンウィ城の試算では、アイアンリング共有資産の、
実に二年分の貯蓄を使い果たすことになっているのだぞ。

殿
…………っ!

千狐
そ、そんなに……。

フリント城
む~、別に良いじゃない、ちょっとくらい……。

カーナーヴォン城
ちょっとくらい、だと……?
ははは、フリント城! 面白い冗談だ。

フリント城
な、何よ……。
カーナーヴォン城の満面の笑み、ちょっと怖いんだけど……。

カーナーヴォン城
そもそも、平時より我らに余裕はないわけだが。
一体、誰の無駄遣いのせいだと思ってるのかな~?

フリント城
ひ、ひええ、ごめんなさ~い!!

コンウィ城
それに……ハーレック城さんの案には、
もう一つ深刻な懸念があるのです。

柳川城
ま、まだあるのですね……。

コンウィ城
ええ……もっと根本的に……。
そもそも、あとたったの数日で、パレードに各演目の準備は……。

立花山城
無理ね。

コンウィ城
はい……!

ハーレック城
なに、案ずるなコンウィ城よ。
歌劇なら私にも多少心得はある!

ハーレック城
それに、我らアイアンリングの絆があれば、
やってできないことなど無いだろう?

カーナーヴォン城
勝手に協力することにしないでもらえるか?

ハーレック城
水を差すというのか、カーナーヴォン城!

カーナーヴォン城
そうではなく、それ以前の問題だと言っているのだ!

柳川城
お二人とも、落ち着いて……!

コンウィ城
うぅ、やはり、こうなってしまうのですね……。

殿
…………?

コンウィ城
王様……。
お気遣い、痛み入ります。でも、私は大丈夫ですから……!

コンウィ城
も、もう一度、外の空気を吸ってきますね!

殿
…………。

――裏庭。

コンウィ城
はあ。
風に当たったところで、状況は何も変わらないのに。

コンウィ城
(私、また逃げてる――。
 こんなことでは、リズラン城姉さまの代わりなんて、とても……)

カステル・デル・モンテ
ありゃあ~?
もしかしてわたしたち、迷っちゃったかな?

ホーエンツォレルン城
いえ、そんなはずは……!
御城は目前ですし……入り口は確か、こっちのはず……あら?

カステル・デル・モンテ
およ?
もしかして……この子がコンウィ城ちゃん?

コンウィ城
――――……ひゃあっ!?
す、すみません、考え事をしていて! た、確か、お二人は……。

ホーエンツォレルン城
ええ。
ご招待にあずかりました、ホーエンツォレルン城と申しますわ!

カステル・デル・モンテ
わたしはカステル・デル・モンテ!
呼んでくれて、グラッツェ~だよ♪

コンウィ城
喜んで頂けて、何よりです……!

コンウィ城
うぅ……。
ですが……今となっては、御期待に沿えるかどうか……。

ホーエンツォレルン城
どうか、されましたの……?

カステル・デル・モンテ
えぇ~!
せっかくの楽しい宴会なのに、そんなに悲しい顔しちゃだめだよー!

コンウィ城
す、すみません!
私としたことが、つい弱音を……。

ホーエンツォレルン城
あの……もし良ければ、事情を聞かせてくださいませんか?

コンウィ城
しかし、これ以上お客様にご迷惑は……。

ホーエンツォレルン城
ふふ。
ハロウィンという催しは、参加者皆で作り上げるものと聞きましたよ?

カステル・デル・モンテ
うんうん!
わたしたちに力になれることがあったら、何でも言ってよ!

コンウィ城
お二人とも……!

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -急-

二人の城娘によって、目指していたハロウィンの形
を思い出したコンウィ城。しかしその周囲には、
菓子の香りに誘われて跳梁する、不穏な影が。

前半

カステル・デル・モンテ
そっかぁ~……。
考えていたおもてなしの形が、みんなそれぞれ違ったんだねえ。

コンウィ城
そうなのです。
アイアンリングのためを思って、
精一杯考えてくれているのが、分かっているだけに……。

ホーエンツォレルン城
無下にできない、のですわね。

コンウィ城
はい……リズラン城姉さまが不在の今、
私がしっかりしないといけませんのに……。

カステル・デル・モンテ
ねえねえ、カーナーヴォン城ちゃんたちの考えは分かったけど~……。
キミは……コンウィ城ちゃんは、どうしたいのかな?

コンウィ城
え……私、ですか?

カステル・デル・モンテ
うん。
だって、招待状にあった主催者名義は、コンウィ城ちゃんだもんね!

ホーエンツォレルン城
確かに……。アイアンリングとしてのハロウィンの前に、
主催であるコンウィ城さんの考えるハロウィン、があっても、
良いのではないかしら?

コンウィ城
そんな、私なんて……何も特別なことは、思いつきませんもの……。

コンウィ城
私はただ、皆に日頃の感謝を伝えて、
仲良く、楽しんでもらいたかっただけで……。

ホーエンツォレルン城
うふふ♪
答えはもう、出ているようでしてよ?

コンウィ城
え……?

カステル・デル・モンテ
街の飾り付けから感じたもてなしの心は、本物だったもんね~!

コンウィ城
どういう、ことでしょうか……?

ホーエンツォレルン城
リズラン城さんの代わりの、まとめ役としてではなく。
アイアンリングとしての、ハロウィンでもなく……。

ホーエンツォレルン城
コンウィ城さんとして成し遂げたいハロウィンは、
既に、貴方の胸の内にあるのですわ。

カステル・デル・モンテ
『日頃の感謝を伝えて、楽しんでもらいたい』……。
ボーノな宴会に必要な、おもてなしの心そのものだよ♪

コンウィ城
あ……。

コンウィ城
(そうでした……私が最初に考えていたハロウィンは……)

ホーエンツォレルン城
御姉妹も、貴方の力になりたくて張り切っているのです。
貴方自身の言葉で、想いを告げれば……きっと分かってくれますわ。

コンウィ城
ホーエンツォレルン城さん……。

カステル・デル・モンテ
うんうん、心配いらないよ! わたしたちもいるしね!

カステル・デル・モンテ
はい! じゃあ早速、トリック・オア・トリート♪
お菓子を食べて、元気出そう!

コンウィ城
え、ええっ……?

ホーエンツォレルン城
では私からも……あまーいお野菜をどうぞ♪

コンウィ城
お二人とも……うふふっ。

ホーエンツォレルン城
あら、どうかされました?

コンウィ城
いえ、なんでも……!
でも……おかげさまで、勇気と元気を頂きました。

コンウィ城
感謝します、
カステル・デル・モンテさん、ホーエンツォレルン城さん!

カステル・デル・モンテ
良かった~!
やっぱり、宴会には笑顔が一番だね!

(ザッ……ザッ……)

ホーエンツォレルン城
おや……この音……。

兜軍団
ザッ……!
 ザッ……!
  ザッ……!

ホーエンツォレルン城
あ、あれは……兜!?
コンウィ城さん、大変! 兜が御城に向かっていますわ!

コンウィ城
な、なんですって……!

――同時刻城内。

フリント城
3、2、1――
はい、そこまで~!

ハーレック城
くっ、後れを取ったか。

カーナーヴォン城
ふう……腕相撲では、私のワンセット勝ち越しだな!

ハーレック城
しかし、次のチェスでは私に分があるぞ、カーナーヴォン城?

カーナーヴォン城
望むところだ。

フリント城
(う~ん……決闘にならないように、
 時間稼ぎで緩い対戦を続けさせてるけど……。
 やっぱりおかしいわよね……これ……)

ハーレック城
フリント城、チェス盤を借りたいのだが、問題ないか?

フリント城
え、ええ、もちろんよ!

フリント城
(コンウィ城~! 早く帰ってきて~!)

――城門付近。

フリント城
つい探しにきちゃったけど……表の庭園にいないなんて……。
一体どこにいったのかしら、あの子……。

(ザッ……ザッ……)

フリント城
あ、コンウィ城……?

フリント城
もー、遅い! お姉ちゃん心配したんだか――

桃形兜
山積ミノ菓子ノ匂イ……沢山ノ霊力ノ匂イダ……!

フリント城
きゃあああ!?

――――

柳川城
今、フリント城さんの悲鳴が……?

殿
…………!

柳川城
はい、城門の方角です……!
急ぎましょう!

カーナーヴォン城
むむむ……そうくるか……。
ええい、金細工のチェス盤は眼がチカチカする……。

ハーレック城
ふうむ、やはりチェスは面白いな……やや盤面が眩しすぎるが……。

立花山城
……聴こえてないみたいだけど、
あの二人も、呼んだ方が良いんじゃない?

――――

フリント城
おりゃーっ!

桃形兜
ギャアアアアア!!

フリント城
ふう、ふう……。

兜軍団
ザッ……!
 ザッ……!
  ザッ……!

フリント城
うう……まだあんなに、沢山いるの……?

フリント城
でも、お姉ちゃんなら……皆を守らないと……!

コンウィ城
あれは……フリント城!?
そんな、独りで多勢に立ち向かうなんて……危険すぎます!

ホーエンツォレルン城
私の魔術も、射程まで近づかないと……。
急ぎましょう!

カステル・デル・モンテ
うん!
――あれ、あそこに見えるのって、王様?

殿
…………!

柳川城
コンウィ城さんに……あのお二方は、確か……!

カステル・デル・モンテ
王様~!
コンウィ城ちゃんの妹ちゃん……で良いのかな……が大変だって!

カステル・デル・モンテ
楽しい宴会を守るために、力を貸して!
――プレ・ファヴォーレ!

合戦中

桃形兜
菓子ヲ、霊力ヲ寄越セッ……!!

殿
…………!

カステル・デル・モンテ
任せて、王様~♪
兜なんて、お菓子のチャルダよりも薄~く、
ぺっちゃんこにしてあげる!

コンウィ城
フリント城は無事……ですね?
はぁ、良かったぁ……!

柳川城
お菓子の霊力に惹きつけられた兜達は、全て退治できたようです!

コンウィ城
そういうことでしたか。
まさか、事前に沢山焼いておいたウェルシュケーキが、
仇になるなんて……。

後半

カーナーヴォン城
すまなかった、フリント城、コンウィ城。
敵の迎撃に遅れるなど、アイアンリングの名折れだな……。

ハーレック城
私も、熱に浮かれて、周囲が見えていなかったようだ。
姉妹の危機に真っ先に気づけぬとは……生涯の恥だよ。

フリント城
ううん、アタシが意地になって助けを呼べなかったのも悪いし……。
結局助けてもらうなんて、お姉ちゃん失格だわ。

コンウィ城
そんなこと――。
そんなこと、ありません……!

殿
…………!

コンウィ城
皆さんがアイアンリングの絆のことを、
誰よりも大切に考えているのは……私が一番、よく知っています!

コンウィ城
今回も、皆が姉妹の為に最善を尽くそうとした結果ではないですか。
私は……それを誇りにも、頼りにも思います……!

カーナーヴォン城
コンウィ城……。

コンウィ城
そして、その……ええと……。
じ、実は……ハロウィンで、私が一番やりたかったことは……。

カステル・デル・モンテ
(がんばれ~!)

コンウィ城
そんなアイアンリングの姉妹に……。
感謝の気持ちを伝えて、楽しんでもらうことなんですっ……!

ハーレック城
なんと……。

コンウィ城
その為に、少しずつ皆の意見を取り入れたいと思って……。
あの、もし良かったら、もう一度考えさせてくれませんか?

コンウィ城
皆で一緒に……楽しめるような、ハロウィンを!

ハーレック城
そういうことなら、無論、喜んで協力するとも!

ハーレック城
我々はてっきり――

カーナーヴォン城
ああ。
コンウィ城に何も腹案がなく、窮しているのかと思ってな。
……二人して、つい気合を入れ過ぎてしまったぞ?

コンウィ城
あ、それは……すみませんっ、私の言葉足らずでした!

フリント城
も~、コンウィ城は控えめすぎるのよ!
もっと、思ったことはどんどん言っていいの!

フリント城
だって……アタシたちは、アイアンリングの姉妹なんだから♪

コンウィ城
うふふ……そう、ですね……!

カーナーヴォン城
それにしても、フリント城は少々我儘が多すぎるがな。

フリント城
な、何よ~!
カーナーヴォン城だって、いっつも小言が多いじゃない!

ホーエンツォレルン城
どうやら、一件落着のようですわね、王様?

カステル・デル・モンテ
うんうん、とっても楽しい宴会になりそうだよね~!
今から楽しみだよ♪

殿
…………!

コンウィ城
改めてのご挨拶も兼ねて、ひとまずティータイムといたしましょうか!
うふふ……皆様に、とびきりの昆布茶を振舞わせてくださいな♪

――そして迎えた、ハロウィンの当日。
大盛況の様相を見せる催しの隅に……とある城娘の姿があった。

リズラン城
まあ、まあ……!
わたくしが居ない中で、こんなにも素敵なお祭りができるだなんて……!
うふふ、妹たちの優秀さで鼻が高いと同時に……少し寂しかったり?

リズラン城
それにしても、この多様な出し物のバランス感覚……。
あの個性的な子たちをまとめられる妹なんて、一人しかいませんね。

リズラン城
さてと……これ以上ここにいては、
妹たちに交じって楽しむ誘惑に、抗えそうもありませんし……。

コンウィ城
――――ラン城姉さま?
あ……やっぱり、リズラン城姉さまです!

リズラン城
あら……噂をすれば、というものでしょうか。

コンウィ城
え……?

リズラン城
ふふ、何でもありませんよ。
それにしても、ハロウィン……よく成し遂げましたね。

コンウィ城
は、はい……!
アイアンリングの皆が、協力してくれたおかげで……。

リズラン城
いいえ……今わたくしが評価しているのは、他でもない。
あなたの努力についてですよ、コンウィ城さん。

コンウィ城
ふぇ……!?

リズラン城
姉妹をまとめて一つのことをやり遂げる難しさは、
長女として、よく身に染みていますから……。

リズラン城
いえ、むしろ、わたくしは諦めたことの方が多いくらい……。
このハロウィンだって、私ならここまで出来たかどうか。

リズラン城
コンウィ城さん……あなたは自分で思っているよりも、
ずっと頼りがいのある、姉妹の中心です。
――もっと、自信を持っても、良いのですよ?

コンウィ城
そ、そんなお言葉、はわわ……!
こ、これは、夢なのかしら……!?

リズラン城
ふふふ、そう思いますか?
あ、その昆布茶、ひと口貰いますね♪

コンウィ城
ひゃ、ひゃい……!

リズラン城
(う~ん、やっぱり可愛いですね、コンウィ城さんは……!)

結局、リズラン城が帰路に着いたのは、
もう暫く後のことだった……。

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -絶壱-

盛況を見せるアイアンリングのハロウィンに、
遅れて参じたブラン城。何やら事情がある様子
だが、周囲の関心には満更でもないようで――。

前半

アイアンリングのハロウィンは、宴もたけなわ――
そんな中、賑やかな城下街にまた一人、新たな城娘が足を踏み入れた。

ブラン城
よしよし。
なんとか間に合ったようだな!

ブラン城
残してきた彼奴らが心配ではあるが……仕方あるまい。
招かれた客として、今はせいぜい楽しむとしようじゃないか!

やくも
わ~い、次はあそこの芝居小屋だにぃ!
人形劇を見られてお菓子も貰えるだなんて、行くしかないがや~♪

千狐
ちょ、ちょっと待ってやくも!
騎馬戦の後で私はへとへとなのに……なんでそんなに元気なのぉー!

ブラン城
む、あの娘たちは……。

立花山城
千狐たち、思いきり楽しんでいるわね。
所領の民たちも、皆笑顔で……。

殿
…………♪

柳川城
はい!
アイアンリングの皆さんのハロウィン、大成功です!

カステル・デル・モンテ
あ~、ハーレック城ちゃんの人形劇、面白かったぁ~♪
人形のお洋服もキレイだったし、ドラゴンもかっこよかったし。
何より、あの歌には感動しちゃったよね~!

ホーエンツォレルン城
カーナーヴォン城さんの仮装運動会も、大盛況でしたわ。
仮装ならではの体の動かし方……大変勉強になりました!

ブラン城
日の本の王よ!
貴殿らも来ていたのか!

殿
…………!

柳川城
ブラン城さん!

カステル・デル・モンテ
おっと~!
またまた、ハロウィンな城娘の登場だー♪

ブラン城
フフ……これはますます、足を運んだ甲斐があったというわけだ。

――――

ブラン城
ほほう、舞台裏ではそんなことがあったとはな……。
道理で、多様な出し物が見事にまとまっているわけだ。

ブラン城
アイアンリングの団結力、存分に見せてもらっているとも!

ホーエンツォレルン城
そういえば、ブラン城さんは今し方到着されたばかりですの?

ブラン城
ああ。
実を言えば、ハロウィンの準備に少々手間取ってしまってな。

ホーエンツォレルン城
ルーマニアのハロウィンですか……興味深いですわね!

ブラン城
はは、嬉しいことを言ってくれるじゃあないか!

ブラン城
ついでに言うと、本来、ここには三人で来るはずだったのだが……。
まあ、それは遅れの余波……というより自業自得でな。
代表者の妾だけでもと、急遽飛んできた次第だ。

殿
…………?

カステル・デル・モンテ
ねえねえ!
ブラン城ちゃんのとこの宴……じゃなくて!
ハロウィンって、どんな感じなの~?

カステル・デル・モンテ
わたしも気になるな~って♪

ブラン城
おお、我が故郷にここまで関心を持ってもらえるとは、嬉しい限りだ!

ブラン城
諸侯さえ良ければ……ここで妾の練りに練った演出を披露するのも、
やぶさかでないぞ!

殿
…………!

ホーエンツォレルン城
ええ!
私からも是非、お願いしたいですわ!

合戦中

ホーエンツォレルン城
ブラン城さんの仮装もそうですが……。
ルーマニアと言えば、吸血鬼のイメージが強いですわよね?

カステル・デル・モンテ
そうなんだ~!
じゃあ、ハロウィンにぴったりだね♪

ブラン城
ふふふ、それだけではないぞ!
ルーマニアにはこのように、あまたの怪物伝説が残っているからな!

殿
…………!

カステル・デル・モンテ
うひゃ~、結構怖いんだね~!
ぞくっとしちゃったよ!

ホーエンツォレルン城
それにしても、本格的な仮装ですのね……!

ブラン城
うむうむ、そういう反応は実に嬉しいとも!

後半

ブラン城
――実のところ、我がルーマニアにおいては、
元々ハロウィンは縁遠いものだったのだよ。

ホーエンツォレルン城
あら、意外ですわね……。

ブラン城
ああ。
ここ数年、各国で大々的にハロウィンを催す者たちが出てきて、
ようやくルーマニアにも収穫祭の風習が入ってきたのだ。

ブラン城
ま、積極的に取り込んだのは妾なのだがな!

カステル・デル・モンテ
分かる~!
楽しい宴会のきっかけは、いくらあっても良いもんね♪

ブラン城
それに、ルーマニアは怪物の逸話に事欠かぬ。
こんなに美味しい催しを逃す手はないのじゃ!

ハーレック城
――ふむ、ウェルシュケーキに昆布茶はどうかと思ったが……。
中々どうして、悪くないではないか。

カーナーヴォン城
程よい甘さと塩気で、いくらでも交互にいけるな。
むむ……これはいかん、止まらなくなるぞ!

フリント城
ねえ、二人もこれ食べてみて!
コンウィ城の焼いたカボチャパイ、とっても美味しいから!

殿
…………?

柳川城
この声は……!

コンウィ城
まぁ、王様♪
皆さまもお揃いで……!

コンウィ城
いかがでしょう……?
私たちのハロウィン、楽しんでいただけていますか?

殿
…………!

コンウィ城
うふふ、それは良かったです♪

ハーレック城
我々も、休憩がてら皆で散策していたところだ。

カーナーヴォン城
先程の騎馬戦――神娘たちの奮闘には感心しましたよ、殿下。

フリント城
あら、見慣れない子もいるわね?

ブラン城
おお、これはこれは!
主催のコンウィ城にアイアンリングの諸侯らか!

ブラン城
妾はブラン城じゃ。
ご招待にあずかり、感謝するぞ!

コンウィ城
こちらこそ、ようこそおいでくださいました♪

コンウィ城
あら……でも確か、ルーマニアからはあとお二人……?

ブラン城
うぐ、すまぬ……。
諸事情につき、二人は留守番中でな。

カステル・デル・モンテ
なんかね、ハロウィンの準備が大変なんだって~!

ブラン城
こりゃ、余計なことを言わんで良い!

コンウィ城
まあ、そうなのですか?

ブラン城
申し訳ない……。
代表として、せめて妾だけでも顔を出そうと思ってな。
遅れての参上と二人の欠席は、妾から陳謝しよう。

コンウィ城
いえいえ、とんでもないです!
またいつでも、皆で遊びに来てくださいませ。
アイアンリング一同で、歓迎いたしますわ!

コンウィ城
それに……ルーマニアのハロウィンって、とても心惹かれますね。
私たちウェールズのものとは、また違った趣がありそうで……♪

ブラン城
なんと、ハロウィンの本場たる貴殿までも、そう言ってくれるのか。
これは張り切り甲斐があるというもの!

ブラン城
……うぬ、今年の催しは身内だけで行う予定だったが――

ブラン城
せっかくの機会だ! この後、
我らのハロウィンに貴殿らを招待したいのだが、如何かな?

殿
…………!

カステル・デル・モンテ
わぁ、本当!?
やった~! 二次会もんて、でるもんて~!!

ホーエンツォレルン城
私としても、願ってもいないお話ですわ!
……メモ帳とお野菜のストックは、大丈夫かしら?

コンウィ城
(う……)

殿
…………?

コンウィ城
お誘いはとても嬉しいのですが、その……。
…………私たちアイアンリングは、後片付けがありますので……。

ブラン城
おお、そうであったか……。
これは無神経なことをしたな、すまなかった。

殿
…………。

フリント城
ううん!
コンウィ城は、王様たちとルーマニアに行くわよ!

殿
…………!

コンウィ城
ふ、フリント城……?

カーナーヴォン城
ハロウィンがここに至るまで……。
コンウィ城には、随分と心労をかけてしまったからな。

ハーレック城
うむ。片付けは我らに任せて、存分に羽を伸ばしてくるが良い!

ハーレック城
ふふ、前々からコンウィ城は外国に行きたがっていたものな。
良い機会ではないか。

コンウィ城
みんな……。

フリント城
大丈夫よ!
この、フリント城お姉ちゃんがいるんだもの♪

フリント城
心配しないで、いっぱい楽しんできて!

コンウィ城
うぅ……!
ありがとうございます……!

カステル・デル・モンテ
うおぉ~、これが姉妹の絆かぁ~!
なんか、良いなぁ~~うらやましい~~!

ホーエンツォレルン城
雨降って、地固まる……ですわね♪

柳川城
はい。
アイアンリングの絆の強さ、しかとこの目に焼き付けました!

殿
…………。

立花山城
ところで……。
ルーマニアに行くのなら、千狐たちと合流しないといけない訳だけど。

立花山城
……あの子たち、今どこにいるのかしら?

柳川城
あっ……。

殿
…………っ!

カステル・デル・モンテ
おっと~?
まずは、迷子探しの時間だね~?

その後――
喫茶スペースで昆布茶を啜っている、
遊び疲れた千狐とやくもが見つかるまで、半刻ほどかかったという……。

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -離-

ルーマニアへ転移した一行。物珍しさに沸き立ち
つつ、ブラン城の話とは随分違う趣に首を傾げて
いると、何やら陽気な演奏が聴こえてくる。

前半

ルーマニア東部、某所。

ブラン城と共に転移してきた一行、だったが――

コンウィ城
ここが、あのルーマニア……ああ、かぐわしい甘い香りも……!

コンウィ城
はぁ~……!
コルヌレッテとか、一度食べてみたかったのです……♪

ブラン城
ぬ、妙に詳しいな、貴殿……。

千狐
わ、この南瓜……目がはーとの形でかわいいの!

カステル・デル・モンテ
お菓子の家もあるよ~!
おぉ~、お化けがキャンディでできてるね♪

立花山城
それにしても、この雰囲気――

柳川城
なんだか……先程のブラン城さんの話よりも、陽気な感じが……。

やくも
おどろおどろしいって聞いとったけど……。
な~んだ、これくらいなら全然平気だに!

ブラン城
んん……?
確かにこれは……妾の注文とは少々……。

殿
…………?

ホーエンツォレルン城
ちなみに、ハロウィンの準備はどなたが?

ブラン城
元々は妾の指示のもと、
ペレシュ城とシュテファンの三人でやっておったのだが――

ブラン城
あの二人め。
遊んでいたのか知らぬが、あまりに進捗が滞っていたからな。

ブラン城
コンウィ城の誘いを無下にも出来ず、かといって、
ハロウィンを楽しみにしている領民たちを裏切るわけにも行かぬ故……。
二人に残りの準備を任せ、妾だけがウェールズへ出向いたという次第だ。

コンウィ城
な、なるほど。

コンウィ城
(私たちとは、また別の問題が生じているような……)

カステル・デル・モンテ
おっと~?
ねえねえ、あっちの方から何か聴こえない?

ホーエンツォレルン城
私にも聴こえますわ。
明るく……賑やかな……演奏?

カステル・デル・モンテ
あとは、沢山の歓声と……あぁ~!
とってもカワイイ歌声だね~♪

ブラン城
なんじゃと!?
そ、そんな催しは妾の計画にないぞ……!

コンウィ城
街の飾り付けからして、既に計画外のようですが……。

殿
…………!

柳川城
そうですね、殿。
賑やかな雰囲気のようですが、とりあえず様子を見に行ってみましょう!

街はずれ、野外――

コンウィ城
こ、これは……。

民衆
きゃー!
 素敵~~!

民衆
うぉ~!! ペレシュ城ちゃん、最高にかわいいよ~!!!

ホーエンツォレルン城
とてつもない熱気……これが、ハロウィンですの……!?

カステル・デル・モンテ
うお~、賑やか~!
うんうん、宴会はこういう盛り上がりが醍醐味だもんね♪

柳川城
も、盛り上がり過ぎのような気も……。

ブラン城
(呆然)

やくも
ブラン城が完全に固まっとるがや。

コンウィ城
人々の奥に、ステージのようなものが見えますね――。
わぁ~……街と同じような、可愛らしい南瓜の装飾です♪

ホーエンツォレルン城
今のところ、ステージ上には誰も居ないようですわね。

民衆
アンコール! アンコール!

殿
…………?

カステル・デル・モンテ
おおっと、これは再演を待望する声だね?

ホーエンツォレルン城
あら、ルーマニアの言葉が分かりますの?

カステル・デル・モンテ
なんかね、わたしの国の言葉と系統が似ているみたいなんだ~。
古典語も踏まえると、意味はなんとなーく分かるよ!

ホーエンツォレルン城
貴方……ふわふわしているようで、
実はかなり学識があるのではなくて?

カステル・デル・モンテ
ん~?
わたしはただの、ハロウィン盛り上げお姉さんだよ~?

コンウィ城
あ、皆さん!
ステージに人が出てきましたよ!

ホーエンツォレルン城
いえ……あれは…………。

ペレシュ城
みんなー! おっ待たせ~♪
アンコールありがと~っ♪

民衆
わぁぁあああああああ!!

カステル・デル・モンテ
わあ、またまた城娘ちゃんだ~♪

殿
…………!?

柳川城
は、はいっ。
あれは、ペレシュ城さんに間違いありません!

ペレシュ城
……よ~っし! それじゃあみんな、準備はいーい?

ペレシュ城
聴いて!
――――『恋して♪ パンプキン・コレクション』!

民衆
わああああああああ!!!!

合戦中

カステル・デル・モンテ
すごいすご~い♪
ハーレック城ちゃんの歌もすごかったけど、こっちもすごーい!

殿
…………!

ホーエンツォレルン城
わ、私たちも、歓声に合わせた方が良いのでしょうか?

コンウィ城
い……いえ~い!

コンウィ城
な、何だか……まだ良く分からないのですが……。
とても楽しかったような気がします!

ホーエンツォレルン城
ええ、劇場の歌劇とはまた違って……。
声を出して歌姫を応援するなんて、新鮮な経験でしたわ!

後半

ペレシュ城
みんな~!
最後まで聴いてくれて、ありがと~っ!!

民衆
ペレシュ城ちゃん、最高~!!
 次のステージも、待ってるよー!!

カステル・デル・モンテ
う~ん、楽しかったねぇ~♪
こんなおもてなしは、わたしも初めてだよ!

コンウィ城
思い描いていたハロウィンとは、だいぶ違いましたけど……。
この予想外なところが、実地に出向く楽しみなのですね♪

ブラン城
…………っ、ハッ!?

柳川城
ブラン城さん、だ、大丈夫ですか……!?

ブラン城
あ、あまりのことに、気を失っておったわ!
おのれペレシュ城め、勝手なことを……!

立花山城
まぁ……催しを勝手に魔改造されたら、当然そうなるわよね。

ブラン城
しかし、あやつはこんな大それたことを一人でやるような……。
――――いや、考えるまでもなかったな。

殿
…………?

ブラン城
日の本の王よ、貴殿の力を貸してはくれぬか。
このハロウィンの乗っ取りは、十中八九……。

ブラン城
いや、確実に! あのたわけ者が企んだことに違いないのじゃ!

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -結-

離れの小屋で、金勘定しているところを発見された
シュテファン。誤魔化そうとする程にボロが出る
兜娘の許へ、ペレシュ城も顔をだして――。

前半

ハロウィン会場の郊外。
ポツリと立つ小屋の中から、高らかな笑い声が響いている――

シュテファン
イエ~ス、千客万来デース! 流石はペレシュ城!
やはり、私の見る目に狂いはありませんデーシタ!

シュテファン
初回でこの収益、次のライブも成功は確実デスネ!
ふふふ……この分なら、全国ツアーも夢デハ……。

ブラン城
ほほう……なにが夢なのだ、シュテファン?

シュテファン
ほわわわワッツ!? ブラン城!??  

殿
…………。

シュテファン
ええっ、殿まで居るのデスカー!?

コンウィ城
お、お邪魔しま~す……。

柳川城
(出会いがしら、ひりついた空気です……)

千狐
(ブラン城さんから、物凄い気迫を感じるの……)

シュテファン
ぐっ、ブラン城……今日は終日ウェールズにいるはずデハ……。

ブラン城
シュテファン……やはり貴殿の仕業だったか……。

シュテファン
はて、ななな、なんのことデショウカ?

シュテファン
私は別に……ハロウィンライブでペレシュ城のデビューを飾って、
成功の暁にはルシュノフたちも引き込んでユニットデビューとか、

シュテファン
ルーマニアを城娘アイドルで盛り上げていきたいとか、
鬼の居ぬ間の洗濯とかは……全く考えてないのデース!

ホーエンツォレルン城
尋ねる前から、全部喋ってくださいましたわね……。

ブラン城
語るにおちすぎだ、たわけ!

ブラン城
全く……。
ルーマニアのハロウィンを楽しみに来てくれた客人をもてなすはずが、
これでは失礼の極みというものじゃぞ……!

殿
…………!

ペレシュ城
ふぅ~、歌った歌った♪
お疲れ様で~す!

ペレシュ城
えへへ、どうだったシュテファンさま?
ペレシュの初ライ――――

ブラン城
…………。

ペレシュ城
って、ブラン城がもう帰ってきてるーっ!?

ブラン城
ふふ、『もう』とはご挨拶だな、ペレシュ城?

ペレシュ城
(あわわ、シュテファンさま、どうするの!?
 帰りは明日になるって聞いてたのに、話が違うじゃな~い!)

シュテファン
(まだ、まだ慌てる時間ではないのデース……期を探りマショウ……!)

カステル・デル・モンテ
ねえキミ、さっきの歌姫ちゃんだよね?
ライブっていうの、とっても良かったよ~♪

ペレシュ城
そ、そう……?
えへへ、ありがと♪

カステル・デル・モンテ
じゃあ、トリック・オア・トリート~!
はい、お菓子をどうぞ♪

ホーエンツォレルン城
では、私からもお野菜を……。
とても素敵な歌でしたわ!

コンウィ城
あっ私も……!
ウェルシュケーキと昆布茶、ご一緒にどうぞ♪

ペレシュ城
え、あ、ありがとう……????

ブラン城
はてさて、どうしたものか……。
とはいっても、今更仕方のないことではあるが。

柳川城
ブラン城さん……。

ブラン城
今から元の想定通りハロウィンをやろうとしても、難しいだろう。
妾とて、それくらいは理解しているとも。

シュテファン
ワオ……ブラン城、もしや……!

ペレシュ城
許して、くれるの……?

ブラン城
ああ。
妾と共に、貴殿らも客人に頭を下げるのだぞ。

ペレシュ城
よ、良かった~……。

ブラン城
もっとも……これに懲りたのなら、
しばらくアイドル活動とやらは控えることだな。

シュテファン
……わっつ…………!?

ブラン城
催事の度にこのようなことがあっては、妾も堪らぬ。
妾の目が黒いうちは、今後一切勝手なプロデュース活動は禁止じゃ!

ペレシュ城
はぁ~……良いところだったのになぁ……。

ペレシュ城
でも仕方ないよね、シュテファンさま?
ブラン城も、今回は許してくれるって言うし――

シュテファン
ノー……!

ペレシュ城
え?

シュテファン
断じて、ノーッ!! なのデース!!!

ブラン城
は……貴殿、何を――

シュテファン
新規アイドルには、既存の枠に縛られない新鮮さが肝要なのデース!
無論、そのプロデュースも変幻自在なものでなくてはなりまセーン!

シュテファン
逐一ブラン城の決裁を仰いでいては、この業界ではデス・オア・ダーイ!
何よりようやく掴んだこのチャンス……逃すわけにはいきまセ~~ン!!

カステル・デル・モンテ
わぁ、あの子足速いね~!

ブラン城
あ、あの大たわけ者っ!
この後に及んで、逃げる奴があるかーっ!!

ペレシュ城
あー! ちょっと、シュテファンさまー!
売り上げは折半だって言ってたのにぃ~!

コンウィ城
シュテファンさんが担いでいった袋は、そういうことなんですね……。

ブラン城
ぬう……今日という今日は、堪忍袋の緒が切れたぞ……!

殿
…………!

ブラン城
待たぬか、シュテファン――!
今日こそは、きつーいお仕置きをくれてやろう!!

シュテファン
ナンセーンス! 待てと言われて待つ兜娘はいまセーン!!

ブラン城
減らず口を叩くなーっ!
ハロウィンを台無しにしおって、たわけ者がー!!

柳川城
二人とも、駆けだしていってしまいましたね……。

ホーエンツォレルン城
ふむふむ……勉強になりますわ……。

殿
…………?

ホーエンツォレルン城
あら王様……これですか?
シュテファンさんの置いていったアイドル事業計画書なのですが……。
中々興味深くて、つい読み込んでしまいました。

ホーエンツォレルン城
ブラン城さんの純ルーマニア風ハロウィンが見られなかったのは、
残念でしたけれど……うふふ♪

ホーエンツォレルン城
アイドルがもてなすハロウィンも、悪くなかった……ですわよね?

殿
…………!

ホーエンツォレルン城
ええ、それぞれのハロウィンを讃え、認め合うためにも……。
まずはこの場の収拾を――!

ホーエンツォレルン城
王様……私の魔法を使って、美しくまとめてみせてくださいませ♪

合戦中

ブラン城
こりゃー!
逃げるな、シュテファーン!!

シュテファン
嫌デース! いっそひと思いに高跳びして、事務所でも立ち上げマース!

ホーエンツォレルン城
まあ、お二人とも元気ハツラツですわね。
それでは王様、ちょっと不器用な私へ……上手に指示して下さいな?

殿
…………!

カステル・デル・モンテ
鬼ごっこ、終了~♪
あ~、楽しかった~!

コンウィ城
わ、私は、少々疲れました……ぷしゅう。

ホーエンツォレルン城
ふふっ。
体力づくりには畑仕事がうってつけですわよ、コンウィ城さん♪

後半

シュテファン
ぐ、ぐふっ……ギブア~ップ! 降参、降参デース!

ブラン城
はあ、はあ……。
全く、手間取らせおってからに……。

ブラン城
だがそれもここまでじゃ。
ハロウィンを台無しにした罪……観念するんだな、シュテファン!

シュテファン
ひぃい~~!! ヘルプ・ミー!!

ホーエンツォレルン城
まあまあ、ブラン城さん。

コンウィ城
私たちは、その…………。
ペレシュ城さんのライブ……楽しかったですよ!

殿
…………。

ブラン城
貴殿ら……。

カステル・デル・モンテ
うんうん! 飾り付けも曲も、ハロウィン~♪
って感じで、ファンタスティーコだったし!

ペレシュ城
でへへ~照れるな~♪

ブラン城
(ジロリ)

ペレシュ城
はうあっ……!

ホーエンツォレルン城
各地のハロウィンから学ぼうと参じた私からしても、
この型破りなハロウィンは、とても勉強になりましたわ。

カステル・デル・モンテ
ブラン城ちゃんのハロウィンも楽しみだったから、
それは確かに、悲しいな~……って思ったよ?

カステル・デル・モンテ
でも、ライブハロウィンもね? 『おもてなし』して、
みんなを楽しませようって気持ちが、しっかり伝わってきたんだ!

ブラン城
むぅ……。

コンウィ城
私たちのハロウィンも、異色の要素ばかりでしたもの。
それでも、ブラン城さんは笑顔で楽しんでくださった……。

コンウィ城
今の私たちも、同じ気持ちですよ。

ホーエンツォレルン城
ええ。決して、台無しなどではありませんでしたわ。
……ですから、あまりお気になさらないで?

ブラン城
そうか――。

ブラン城
客人にそこまで評価して貰えるハロウィンであったなら……。
妾としても、申し分ないとも。

シュテファン
オォ~ゥ! ブラン城、流石話の分かる城娘デース!

ブラン城
しかーっし!
怪我の功名という言葉もあるっ!

ブラン城
今回は偶々上手くいったが、反省はするべきじゃ!
――無論、度が過ぎた悪戯に対する、償いもな!

シュテファン
ノォ~~ウ!!

ペレシュ城
つ、償いって、何をすればいいの……?

ブラン城
ふふ、まだ夜は長い……。
ライブはこれっきり、などと興ざめなことを言って、
客人を退屈させるわけにはいかぬだろう?

ペレシュ城
……ってことは、つまり!

ブラン城
ああ。
今あるステージを存分に使って、盛大に祝祭を盛り上げるのじゃ!

カステル・デル・モンテ
やったぁ~♪
打ち上げだ、打ち上げ~!

カステル・デル・モンテ
ね、ね!
ペレシュ城ちゃん、一緒に歌お~♪

ホーエンツォレルン城
せっかくですし……コンウィ城さん、私たちも一緒に歌いませんこと?

コンウィ城
え、ええ……!
私で良ければ、喜んで♪

やくも
千狐ぉ~、うちらも歌うがや~!

千狐
ええ!?
ひ、人前で歌うのは……ちょっと……。

柳川城
歌唱大会のような様相ですが……ふふっ。
皆さんの歌、楽しみですね、殿!

立花山城
あら、貴方は歌わないのかしら?

柳川城
へっ?

殿
…………?

立花山城
ほら、殿もこう言って――。

立花山城
……は?
…………私も?

殿
…………!

それ以降――『柳川城と立花山城のぎこちないデュエットが、
ルーマニアの夜空へ立ち上った』という、
奇妙な噂がしばらく所領に絶えなかった。

彩れ鉄鎖! 宴呼ぶ南瓜姫たち -絶弐-

ハロウィンをつつがなく終えたルーマニアの地。
後片付けに追われるシュテファンたちの傍ら、
未だにお菓子を配り続けている城娘の姿が……。

前半

ハロウィンの翌日――
ルーマニア某所、撤収作業中の会場では……。

シュテファン
ぜえ、ハア……ちょ、ちょっと休憩デース……。

シュテファン
薄々察してはいまシタガ……よもや会場の片付け一任、
売り上げ半分没収まで含めた『償い』とは……グヌヌ!

ペレシュ城
え~ん!
あんなに歌ったのに、なんでペレシュまで~っ!

シュテファン
しかし、まだ野望は潰えたわけではないのデース!!
残った資金を元手に、早速次のライブの計画を……。

シュテファン
ワッツ!? なぜ街にこんなに大量のカボチャがあるのデースカ!?

ペレシュ城
だって~! シュテファンさまが、
『好きなように飾り付けて良いデース』……って言ったんだもん! 

シュテファン
オオゥ、そういえば……そんなこと言った気もシマース……。

ペレシュ城
ふぬぬ、お、重い~~っ!
シュテファンさまぁ、手伝ってぇ~!

――――

カステル・デル・モンテ
ねえねえブラン城ちゃん、
片付け……私も手伝ってあげた方が良くないかな~?

カステル・デル・モンテ
あ、そこの子! お菓子いる~?
……はーい、トリック・オア・トリート♪

ブラン城
否、手出しは無用じゃ。
あの二人には、しっかりケジメをつけて貰わねばならんからな!

ブラン城
此度は上手くいったとはいえ、独断専行は独断専行……。
お咎めなしにしては、民にも示しがつかぬのじゃ。

カステル・デル・モンテ
う~ん、そっか~。

ブラン城
…………ところで、なぜ貴殿はまだ此処にいるのだ?

カステル・デル・モンテ
えへへ~……。
実はわたし、宴会は大好きなんだけど、
宴会の後の解散って、寂しくてちょっと苦手なんだよね~!

カステル・デル・モンテ
あと、ルーマニアの雰囲気を気に入っちゃったのも大きいかな~?

ブラン城
まあ、気持ちは分からぬでもない。
ひとしきり盛り上がった後の寂寥、というのは、
あらゆる祭事に不随する情緒だからな。

ブラン城
我らの国を気に入ってくれたというのも、嬉しい限りだ!
招いた甲斐があったというもの……なのだが……。

カステル・デル・モンテ
キミキミ、お菓子はいかが~?
やったぁ、は~いトリック・オア・トリ~ト~♪

ブラン城
……のう、もう一つ尋ねて良いか?

カステル・デル・モンテ
うん、なあに?

ブラン城
貴殿、『トリック・オア・トリート』と言いながら、
ひたすらに菓子を配りまくっているわけだが……。

カステル・デル・モンテ
えへへ、そうだよ~!

ブラン城
いや、そうだよ~! ではなくてだな……。

ブラン城
その……貴殿は、ハロウィンにおける、
『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』という趣旨を理解しておるのか?

カステル・デル・モンテ
う~ん、えっとね~。
『悪戯』が必要なのは知ってるんだけどねー……。

カステル・デル・モンテ
わたしは宴会で、みんなに笑顔になってほしいんだ~!
だから悪戯なんてしないで、『おもてなし』だけあれば良いかなって。

ブラン城
ふむ、なるほどな……。

カステル・デル・モンテ
あ、分かってくれた~?

ブラン城
いや、分からんっ!

カステル・デル・モンテ
おっと~~??

ブラン城
そもそもハロウィンは宴会ではなく、
収穫祭だというのは大前提として……。

ブラン城
悪戯は、逆説的に『お菓子をくれたら幸運を授ける』という、
祝祭に欠かせない祈りの形なのじゃ。

ブラン城
民の真摯な願いであり、無償の加護などないという戒めでもある……。
――そんなハロウィンの骨子を省くなど、言語道断!

カステル・デル・モンテ
も~、固いこと言わないでよ~♪
みんな笑顔が一番、だよ~!

ブラン城
妾の固さ以上に、貴殿が緩すぎるのだ!
うぬ、かくなる上は――――

カステル・デル・モンテ
上は~?

ブラン城
悪戯の力……そしてそれが内包する、おもてなしの力を――。
僭越ながら、客人に教授して進ぜよう!

カステル・デル・モンテ
わ~い! ハロウィンの続きだね~?
わたしも、もっともっと、おもてなししちゃうよ~♪

合戦中

カステル・デル・モンテ
もしかして、ルーマニアのハロウィンを楽しめちゃったりするのかな?
えへへ♪ こっちに残って良かった~!

ブラン城
ふふふ、いつまでその余裕が続くかな?
悪戯の恐ろしさと楽しさ、存分に味わってもらうぞ!

カステル・デル・モンテ
わぁ~、面白かったぁ~!
これが悪戯の力、なんだね~♪

ブラン城
うむ!
楽しんでいただけたようで、何よりじゃ!

後半

ブラン城
どうじゃ?
悪戯も、決して悪いものではないだろう?

ブラン城
悪戯とは呼ぶが……ハロウィンという祝祭の要素である以上、
本質的に人を害するものではなく、楽しませる為のものだからな!

カステル・デル・モンテ
うん、とっても楽しかったよ~!
こういうおもてなしの仕方……喜ばせ方もあるんだね♪

カステル・デル・モンテ
でも……はぅ~……。

ブラン城
む、何か問題があったか?

カステル・デル・モンテ
ううん、大丈夫!
むしろ、悪戯が面白かった分……また終わっちゃったんだなぁって。

ブラン城
貴殿……それほどまでに喧騒が好きなのか?
絶え間なく祭りや宴があっては、疲れてしまうだろうに。

カステル・デル・モンテ
うーん、えっとね~……。
わたし、ひろーい丘の上に建ってて、
普段は独りでいることが多いんだよね~。

カステル・デル・モンテ
だから……色んなの子と会えて、みんなで楽しめる宴会が大好きなの!
招待するのも、されるのも、ね?

カステル・デル・モンテ
でも、キミの言う通り……準備やみんなの予定もある以上、
ずーっと宴会はできないから……ちょっと寂しいかなって!

ブラン城
そうであったか……すまぬ、無神経なことを訊いたな。

カステル・デル・モンテ
気にしないで♪
個人的な話だしね~!

ブラン城
だが、そういうことなら妾とて捨て置けぬぞ。
来年のハロウィンは……友人として、貴殿を招待させてくれ!

カステル・デル・モンテ
え、本当??

ブラン城
ああ、次こそは純ルーマニア風を御覧に入れようじゃないか。
楽しみにしておくと良い!

ブラン城
それに……貴殿さえよければ、
我々ルーマニアの一同で丘の上へ遊びに行くのも、やぶさかでないぞ?

カステル・デル・モンテ
わああ……それも、と~っても嬉しい♪
ぜひぜひ、来て来て~! 白い城壁をピッカピカにして、待ってるから!

カステル・デル・モンテ
そうと決まれば……うん!
やっぱり、みんなを手伝ってあげなきゃね♪

ブラン城
……はい?

カステル・デル・モンテ
シュテファンちゃーん、ペレシュ城ちゃ~ん!
えへへ、未来のお客さんたちに、おもてなし~♪

ブラン城
あ、こら!
待て待て、それはまた別の話――――

ペレシュ城
ああ~っ、その山は触っちゃだめぇー!

カステル・デル・モンテ
うわ~っ! カボチャの雪崩だ~~♪

シュテファン
ノォオオウ!! 私たちの努力が水のバブルデ~スッ!!

ブラン城
あーもう、仕方ないのう!
妾も手伝うから、待っておるのじゃー!



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