ストーリーテキスト/天下統一2章

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目次

2章 征伐編[]

第16話 来訪せし者 ~因幡~[]

所領に留まる殿の前に見知らぬ娘が現れた。
その出会いは、新たな道への懸け橋か?
少女と共に、因幡の地へと急行せよ!

前半
石田三成との戦いから数週間後――。

殿たちは幾度となく関ヶ原への転移を試みたが、
その度に得体の知れない結界に阻まれ
所領で足踏みを余儀なくされていた。

やくも
なあ千狐ぉ……。
いつまでうちらはここでじーっとしてるつもりがや?
こうしてる間にも兜たちはその数を増やしてるけん、何かするにぃ!

千狐
仕方ないでしょ!
関ヶ原に巨大な結界が張られていて、何度やっても
転移することができないんだから……。

千狐
あれほどの結界が張られているということは、
関ヶ原に敵の要所があるまぎれもない証拠よ。

千狐
なのに、打開策は依然として見つからないまま……
どうしたらいいの?

???
お取り込み中のところ悪いけど、邪魔するよ。
ちょっと頼みたいことがあるんだ。 

やくも
――ひゃぅっ!
び、びっくりしたにぃ……って、いったい誰や?
どうしてこの所領に誰も気づかれずに入れただに?

???
そんなこと、今はどうでもいいさ。
それよりも、私の村を……因幡の地を兜から救ってほしいんだ。
貴方たちが各地で兜を退治してまわってること、私は知ってるよ。

千狐
(この所領に入れたということは、この方はもしや……)

千狐
どうやら、これまでの兜との戦いによって
殿の名が少しずつ世に広まり始めているようですね。

千狐
このまま所領に籠もっていても始まりません。
もちろん、協力させていただきますわ!

???
ありがとう。恩に着るよ。

???
ただ、ここから因幡だとけっこうな時間がかかる……。
兜の猛攻に村が耐えられるかどうかが心配だ。

千狐
因幡……ということは中国地方ですね。
一度、出雲へ転移してから因幡へと向かえば
そこまで時間はかからないでしょう。

やくも
そうと決まればさっそく鳥居から転移するに!
ほらほら、急いだ急いだー!
じっとしてるのはもう飽き飽きだにぃー!!

???
え、何で鳥居に……?
待ってって、ちょっと、押さないで……やだ……、

???
と、鳥居が…光り出した!?
……きゃぁっ――!?

所領から出雲を経由して、因幡に辿り着いた殿一行。
そこには大量の兜と、その猛攻を食い止めようとする村人たちとの
激しい戦いの光景が広がっていた。

千狐
事態は一刻を争うようですね。
殿、久しぶりの戦いですが、刀は錆びついてなどいませんよね?
さあ、この地から兜たちを一掃しましょう!!

後半
やくも

だにーっ!!
やっぱりこの娘さんも城娘だったかや!?
誰にも気づかれずに所領に忍び込んだ時から、うちは怪しいと思ってたに!

防己尾城
ああこの感じ……いいね、力がみなぎってくるよ。
礼を言うのを忘れていたね。村を救ってくれたこと、感謝する。
この恩には、私の武をもって報いるつもりだよ。

防己尾城
私が得意なのはゲリラ戦法でね、奇襲となれば比肩する者はいないはずだよ。
殿、私のこと好きに使って良いからね。
もちろん、上手に使ってよね?

長浜城
あーーッ!!
あなた防己尾城だったのね!
前に私から奪った千成瓢箪を返してよぉ~大事なものなんだからぁ!!

防己尾城
兜から魂が解放されたばかりで、覚えてないなぁ……ふふ。

長浜城
うっきゃ~っ!!
その顔はぜったいに覚えてる顔だよぉ……うぅ。
いつかちゃんと返してもらうんだからね、忘れないでよね!?

防己尾城
はいはい、思い出したらね……ふふ。

防己尾城
それよりも殿、兜に襲われているのはここ因幡だけじゃないの。
実は中国地方全域に兜が氾濫し始めているんだ。

千狐
中国地方全域……っ!?
妙ですね……もしかしたら、その土地に縁のある
武将の魂を模倣した巨大兜が出現したのかもしれませんね……。

防己尾城
巨大兜……? そんな物騒なものがいるのか……。
ねえ、殿。危険を顧みずに私を助けてくれた貴方のことだ。
中国地方の今の状況を黙って見過ごせるわけ……ないよね?

やくも
あったりまえだにぃー!!
殿さん、何が何でも中国地方で悪さする兜をみんな追っ払うに!

千狐
やくもったら……。
関ヶ原に進めず、所領に留まっていたのがよほど退屈だったのね。
あんなにやる気になっているだなんて……実に良いことですわ!

千狐
防己尾城さんとの出会いが、
兜を統べる存在へと通じる新たな道となる予感がします。
殿、これより中国地方全域の兜討伐へと打って出ましょう!!

第17話 智謀同穴 ~備前~[]

突如としてやくもを襲う凶悪な罠。
そして、間断なく来襲する兜の軍勢。
この窮地を、己が武を以て切り抜けよ!

前半
千狐

備前国に到着しました。
ご覧下さい、殿。露店に陶器が並んでいますね。
あれが備前焼というものでしょうか? 風情がありますね。

やくも
器なんて、お米さんがのっかれば何でもいいだに。
千狐は殿さんの前だからって通ぶってるだけやけん、
こげにいっぱい並んでるもんの違いなんてわかるわけ――

やくも
――ふぎゃっ!?

千狐
大丈夫、やくも!?
何でこんな所に落とし穴が……?

???
ひゃはっ!
かかったな、兜め!

???
これに懲りたら、この村を襲おうなん、て……
あれ? 兜じゃ……ない?

やくも
こんな可愛らしい神娘つかまえて何が兜や!!
早く出してほしいだにぃ~!!

???
ああ、ごめんなさいね旅の方々。(ったく、まぎらわしいなぁ。)
近頃この辺りは兜が出回っていまして、
こうして罠を張らねば、心許ないのです。

千狐
とはいえ、お店の前に落とし穴とは少々物騒ですね。
恥ずかしながら私、全く気づきませんでした……。
でも、殿が落ちなくて良かったです。

やくも
うちだったら良いってことじゃないがや!
――って、殿さん、あっちを見るだに!!

???
あんなに沢山の兜が……嘘でしょ……?
私の落とし穴なんかじゃどうしようもないよ……。

千狐
やはり中国地方に兜が横行しているのは間違いないようですね。
ここは私達に任せて下さい!

千狐
さあ、殿!
この地の兜を一掃し、次戦の弾みといたしましょう!

後半
石山城

クククッ……ようやく解放された、というわけか。
ここは素直に礼を言う……じゃなく言います、殿。
本当に、感謝しています。

石山城
私が得意とするのは裏工作です。
きっと、何かのお役に立てるかと存じます。

石山城
私の魂を閉じ込め、あまつさえ殿に刃を向けた兜らを後悔させてやりましょう。
(殿が隙を見せた際には、その御首も……ククク)

やくも
まさか落とし穴のお嬢ちゃんが城娘だったなんてなー。
これからよろしく頼むにぃ!
ただ、危ない罠はほどほどにするがね?

石山城
は、はい……分かりました。
(まあ、しばらくは大人しくしといてやるか)

防己尾城
……。

石山城
な、何ですか?
さっきからじろじろと私を見ているようですが……。

防己尾城
いや、私も石山城さんが得意とする裏工作に近い分野に秀でていてね。
何か良からぬことを企んでいるようなら、予め諫めておこうかと思ったまでさ。
ふむ……今のところは殿に危害を加える気はないようだな……今のところはね。

石山城
な、何て物騒なことを仰るんですかぁ。
助けていただいた殿に私が酷いことするわけないですよ。あはは……。
(この城娘……できる。殿は良き仲間に囲まれているというわけか……)

千狐
また新たな仲間が増え、中国地方の兜征伐は順調そのものですね!
ですが、油断は禁物ですよ、殿?
さあ、しばしの休憩の後、さらに西進していきましょう。

第18話 水厄の童女 ~備後~[]

備後の地に辿り着いた殿一行を待っていたのは
兜により川面に追い詰められた娘の姿だった。
涙に濡れる娘を救う為、いざ参らん!

前半
やくも

備後国に到着やー!
備後灘は鯛(たい)の網漁で有名やけん、
もしかしたら鯛料理にありつけるかもしれないだにぃー!

千狐
やくもったら、またそんなこと言って……。
備後と言えば、備後かすりでしょ!?

千狐
久留米かすり、伊予かすりと並ぶ、日本三大かすりのひとつである備後かすり……。
素朴だけど作り手の温かみに溢れた逸品であると有名なんだから。
所領内の畑の耕作作業着として一着ほしいなぁ……。

やくも
服だったら何でもいいがや。
千狐は殿さんの前だからって、やっぱり無理してるにぃー。

千狐
そ、そんなことないの!
食いしん坊のやくもとは感性が違うからなのー!!
殿! 千狐は本当にその土地ならではの特産品をですね――

千狐
――っ!?
……殿、刃を交える音や火縄の匂いがしませんか?
もしや、向こうの村ではすでに兜が……!?

やくも
言われてみれば……たしかに……。
うん、間違いないけん!
殿さん! すぐに向かうだに!

???
ふえぇ……村が兜に……ぐす……。
私も早く逃げないと……でも……逃げ道が水路しかないのです……。
水は怖いのですぅ……これでは、逃げられないのですぅ……ふぇーん……。

やくも
殿さん、あそこ見てや!
お嬢ちゃんが逃げ遅れてしまったみたいだに!
……でも、なんであの程度の浅い川で尻込みしとるがや?

???
誰か助けて下さいですぅ……兜も怖いですけど、
水はもっと怖いのですぅ……ふぇーん……。

千狐
殿! 彼女を救う為にも、
この地に溢れる兜たちを討ち払いましょう!

後半
千狐

あなたも城娘だったのですね!?
兜に襲われる前に助けることが出来てよかったです。

備中高松城
皆さん、本当にありがとうございますぅ……ぐす……。
私、とっても怖かったのです……本当に、もう駄目かもって……ふえぇ……。

備中高松城
で、でも、こうして城娘として、殿の前に立っているのですから、
私、そ、その、命が、は、果てるまで、殿を御守りする所存ですっ!

やくも
とっても可愛らしい城娘だにぃ。
でも、殿さんを守るってよりは、殿さんに守られるような感じかいね~。

備中高松城
そ、そそ、そんなこと、ないです!
私、こう見えても不落の沼城と呼ばれているのですよ!
水攻めさえなければ、誰にも負けたりなんかしないのですっ!

能島城
んー?
水攻めが何だってぇ?
お前も海賊になりたいのか?

備中高松城
ち、ちちち、違いますぅ!
わた、私、かつて水攻めされた嫌な思い出があって……、
本当に水は駄目なのですー!

やくも
ちょっと、どこ行くがやー!?
これから向かうのは石見の方向だにぃー!!

千狐
本当に水がお嫌いのようですね……。

千狐
ですが、そうした苦手な一面は
城娘さん達が互いに補うことで、
力を存分に発揮できることでしょう。

千狐
さあ殿! 
中国地方における進軍も徐々に慣れ始めてはいますが、
今一度ここで気を引き締め、万全を期して次の地へと進みましょう!

第19話 微笑麗人 ~石見~[]

謎の麗人との出会いに驚く殿達だったが、
息つく間もなく兜の影が忍び寄る……。
その剣戟を以て、敵影を討ち払え!

前半
???

ふむ、本日も良き日柄なり。
こんな日は、厳島神社へ出向き、
参拝と境内の清掃でもするかね……おや?

やくも
殿さん! 殿さん!
石見に着いたからにはやっぱり石見銀山に寄っていくだに!
噂によると、山が光って見よーけん、すぐに分かるはずにぃー!

千狐
殿、それよりも石州瓦(せきしゅうがわら)を購入するお時間をください。
石州瓦は三州瓦、淡路瓦と並ぶ日本三大瓦の一つで有名な粘土瓦なのです!
聞いた話では、味わい深く趣のある独特の赤褐色なのだそうですよ?

やくも
却下やー!
瓦じゃあお腹は膨れんけん、
米代になる銀の方がずっとずっと大事だにぃー!

千狐
仕様が無いでしょ!
この前やくもが所領の屋根裏で昼寝してる時に、
寝ぼけて瓦を剥がしちゃったんだから!

やくも
な、なな、何でそれを知っとるがや……?
確かにあそこの瓦さんはいつかこっそり直そうと思ってたけん、一理あるに……。
でも千狐だってこの前、もう少し金銭に余裕があればな~って言ってたやないね?

千狐
あ、あれはうっかり口に出ちゃっただけなのー!
千狐がきちんとやりくりしてるんだから、べ、別に大丈夫なのー!!

???
まあまあ、落ち着きなさい可愛い子猫ちゃんたち。
可憐なおなご達が争うことほど嘆かわしいことはありませんぞ。

やくも
わわっ!?
急に何だにぃ!?
いったいあんた何者や?

???
ゆっくりと自己紹介したいところだけど、
こんなところで騒いでいると、近頃ここらを荒らし回っている兜達が――。


出アエー! 出アエー! 
正眼ノ構エニテ、斬レ、斬レ、斬レーッ!!

???
口は災いのもと、か。
まったく、本当に現れるとはね。
さて、どうしたものか……。

千狐
ここは私達に任せてください!
殿、急ぎこの地を荒らす兜を退治しましょう!

後半
桜尾城

神聖な力が、我が身にこれでもかと充ち満ちてくる……。
これなら、宗像三女神に仕えるだけでなく、守ることだってできる……。

桜尾城
貴公らが私の魂を解放してくれたのですね。
感謝のしようがありません……。
この命果てるまで、殿に仕えさせていただく所存です。

やくも
あんたも城娘やったんね!?
殿さんには及ばないけど、随分な男前の城娘だにぃー!

桜尾城
男前ですと? 
ははは、よく言われます。
やくも殿と言ったかな? これからよろしくお願いしますぞ。

やくも
ちょ、ちょっと近いだにぃー!
分かったから少し離れるがやぁ。

備中高松城
はぅ……本当に男前な城娘さんなのですぅ。。

桜尾城
おや、こんなところに可愛い子猫ちゃんがいるようですね。
私は桜尾城。
先ほどの戦いでは私の為に頑張ってくれたこと、感謝していますぞ。

備中高松城
ひぅっ!
あの、そんな近づかれると……私、あの、困りますぅぅ……。

千狐
何と言いますが、今までにない距離感をお持ちの城娘さんですね……。
悪気はないのでしょうが、備中高松城さんが涙目になってますわ。

桜尾城
……ところで、一つ尋ねますが、
貴公らこの中国の地に起こった兜の異常発生に対して、
原因の目星はつけておられるのでしょうか?

千狐
い、いえ……お恥ずかしながら、まだ具体的には何も……。

桜尾城
ふふ、謝る必要などありません。
取り戻した我が知の内で、ある者の名が浮かび上がった故、
確かめる意図で以て、貴公らに問いを投げかけてしまっただけのこと……。

千狐
思い当たる節があるのですか!?

桜尾城
ここら一帯を治めていた武将の魂と何か関係があるように思ったのですが……、
いえ……浅慮な推測は災いのもと……。
不吉な言霊が宿らぬよう、今は口を閉ざさせて頂くこととしましょう。

千狐
……中国地方を治めていた武将。
もしそうだとすれば、いずれ……いえ、今は考えるよりも行動すべきでしょうね。

千狐
殿、中国地方の兜征伐ですが、既に多くの地を巡って参りました。
ですが、未だその終着点は判然としておりません。

千狐
それでも殿ならば必ずや成し遂げられると信じています。
さあ、次の地へ参りましょう!

第20話 命の値段 ~長門~[]

長門に到着した殿達を待ち受けていたのは、
厳しい関税の徴収と兜の軍勢であった。
此の地を守る為、その武を存分に奮え!

前半
千狐

ようやく長門国の領域に入ったようですね。
殿、長く林道が続いていますが、お疲れではありませんか?

やくも
千狐ぉ~。
うちはもう歩く気力がないけん、
ここらで休憩せんと倒れてしまいだにぃ……。

千狐
やくも……ごめんね、もう少しだけ頑張って歩いてくれる?
それにほら、微かに潮の匂いと波音が聞こえるでしょ?
きっと、この林道を抜ければ海が見えてくるはずよ。

やくも
それは本当かや?
よっしゃ、海に一番のりするんはうちやけん、
全力疾走だにぃー!!

千狐
あ、こら、待ちなさい!
こんな狭い道をそんな進み方したら危ないわよ!

やくも
――へぶゅっ!?
うぅ……痛いだにぃ……。

???
おうおうおう!
人様にぶつかってきておいて、謝罪もなしかぁ?
良い度胸してるじゃねーか、ああん?

やくも
ひぃっ……ごめんなさい……許してほしいだにぃ……。

???
仕方ねえな。アタシも鬼じゃねえ。
許してやるよ。

やくも
ほ、本当かや?
だんだんねー!

???
んじゃあ、迷惑料とここの通行税とで、併せて金貨2枚でいいぜ。
ほら、さっさと払いな!

やくも
金貨2枚!?
そ、そんな持ってないけん、払えるわけないね……。
千狐ぉー、殿ぉー、助けて欲しいだにぃ!!


テェ変ダ! テェ変ダ!
泣ク子ハ穿テイッ! テイ、テイ、テイーッ!

???
――なっ!? 何であんなところから兜が!?
すごい数だ……。
あの方角は……もしやアタシの村を襲うっていうのか……?

???
これまでこんなことなかったのに……どうしよう。
もしかして、アタシの日頃の行いのツケが回ってきたってのかよぉ……。
ちくしょう……どうしたらいいんだ……。

やくも
泣くんじゃないだに!
さっきまでの威勢はどうしたがや!?
泣いてる暇があったら、さっさと村の人を避難させるに!!

千狐
殿、どうやらこの地にも兜の脅威が迫っているようですね。
急ぎ陣形を敷き、襲来する兜を迎え撃ちましょう!!

後半
上関城

ふーっ、ようやく兜たちから解放されたぜ! 
いいねぇこの感じ、懐かしいぜ!

上関城
どうやら、アンタらがアタシを助けてくれたみたいだな?
仕方ねえ、この借りはきっちり返すぜ! 
たっぷり奉仕させてもらうからな!

やくも
じゃあ、これでさっきの迷惑料や通行税なんかは、無しやね?

上関城
あったり前だろ?
助けて貰った恩人なんだ、今さらそんなつまんねえことで
ふっかけたりなんかしねえよ。よろしくな、やくも!

やくも
なんや、怖い城娘かと思ったけど、誤解だったんね。
こっちこそよろしく頼むだにぃー!

上関城
それじゃあ、アンタらの仲間になる前に、
アタシを受け入れる為の金……言ってみれば加入税を払ってもらおうか!
そうだな……恩もあるし、金貨5枚にまけておいてやるぜ!

やくも
だからそんなにうちはお金持ってないだにぃ……。
殿さ~ん、どうしたらいいだにぃ……?

能島城
さっきから何をくだらねえこと言ってんだぁ?
新入りなら新入りらしく殿に……ってお前、上関城じゃねえか!?

上関城
能島ねえさん!?
おいおい、こりゃ何の冗談だよ!?
まさかこんなところで能島城ねえさんに会えるなんて……感激ですっ!

能島城
久しぶりだな。
ったくよ、お前も殿に助けて貰った身だろ?
金だなんだと細かいこと言ってねえで、兜退治に手を貸しな。

上関城
や、やだなぁ……さっきのは冗談ですよぉ~。
てことで殿、これよりこの上関城があんたに手を貸すぜ! もちろんロハでな!
共に兜退治っていう大航海に向けて、頑張っていこうぜっ!

やくも
またいつお金を請求されるか分からんけん……、
上関城に何か頼むときは、能島城と一緒の時にするよう気をつけるだに……。

千狐
お金に厳しい城娘さんはこれまでに居ませんでしたね。
これからの帳簿付けなどは上関城さんにお任せした方がいいかもしれませんね?

千狐
殿、いよいよ、中国地方における兜征伐も佳境ですね!
出向いていない中国の地は、あと僅かです。
残りの地にて兜が氾濫した元凶と対峙する可能性は十分に考えられますわ……。

千狐
思えば、随分と多くの地を巡りましたね。
目に見えぬ疲労も蓄積されていることかと思います。
殿、今日はこの地にてしっかりと休息をとり、明日からの戦いに備えましょう!

第21話 御仏の導き ~豊前~[]

豊前の地にて休息を取ろうとした殿一行。
だが、そんな殿たちの前にひとりの尼が現れる。
兜を倒すと息巻く、その女性の正体とは……。

前半
鹿児島城

殿どん、ようやく豊前国についたようですわ~。

千狐
見たところこの辺りには兜はいないようですね。

千狐
少し休憩をとりましょうか、殿。

やくも
やっと休めるだにぃ……ふぅ。

やくも
さぁて、竹筒に入れて持ってきたお水さんを飲むだにぃ!
ちゃんと準備してきておいてよかったがやぁ。

鶴崎城
もし……そこの旅の御方。

やくも
――んぶっ!?

やくも
けほっけほっ……。

やくも
――って、あああ~~~っ!?

やくも
びっくりしてお水さんをこぼしてしまったにぃ!

鶴崎城
お、驚かせてごめんなさい。

鶴崎城
お詫びに、よかったら私の持ってるお水を飲んで下さい。

やくも
わーいだにぃ!
こっちの方が冷えてるがや~、ごくごくごくぅ~♪

やくも
ぷはぁ~……で、あんた一体どちらさんやね?

鶴崎城
名乗るほどの者ではございません。
ただ、この地に用があって訪れている尼にございます。

鹿児島城
あらー? あなたは……もしかして? あらら~?

鶴崎城
……そ、そんなに私を見つめて、どうなされたのですか?

鹿児島城
ん~。知り合いにとても似ていたような気がしましたの~。

鹿児島城
ですが、どうやら気のせいのようですわー。

鶴崎城
……?

千狐
それよりも、この地に用があって
訪れていると言っていましたが……。

千狐
一体どんな用事なのでしょうか?

鶴崎城
実は……。

鶴崎城
この辺りでは近頃、兜と呼ばれる存在が、
田畑を荒らしているという風聞があるのです。

鶴崎城
あなたたちのようなか弱い女子供たちが
犠牲になってからでは遅い、と想い、
こうして私が討伐に出てきたという次第なのです。

やくも
あ、尼さんが兜討伐……!?

やくも
そげなこと、いくらなんでも危なすぎるだに!

鶴崎城
心配してくださっているのですか……?

鶴崎城
優しい子たちですね。
ですが、心配はいりませんよ。

鶴崎城
女性の力であってしても、
知略と信心が確かなものであれば、
戦いでの勝利を得ることは不可能ではありません。

千狐
知略と信心って……そうは言いますが……。

兜軍団
――ザザッ! ザザザッ!!

やくも
って、兜さんの話をしてたら
本当に現れただに……!?

鶴崎城
あれが……兜!?

鶴崎城
さあ、みなさん。
私の後ろに下がってください。
ここは私が――。

鹿児島城
下がるのはあなたの方ですの。

鶴崎城
……え?

鹿児島城
餅は餅屋。蛇の道は蛇、ですわ~。

やくも
そうだがや!
兜退治は殿さんや城娘さんに任せるだに!

鶴崎城
殿……? 城娘……?

鶴崎城
あなたたちは一体……?

鹿児島城
詳しい話は後ですの~。

鹿児島城
さあ、殿どん。兜は目の前ですわ。

鹿児島城
気張っていきますの~!

後半
鶴崎城

城娘……兜……。
今、すべてを思い出しました。

鶴崎城
我が魂を兜から取り返して下さり、
本当にありがとうございます。

鶴崎城
この恩に報いる為、
是非とも城主様のお役に立たせて下さい。

千狐
まさか、あなたが城娘のひとりだったなんて……!?

やくも
どうりで血気盛んな尼さんだったわけやね。

やくも
これで納得がいっただに!

鹿児島城
…………。

鹿児島城
やはり、鶴崎城さんでしたのね~。

鶴崎城
そういうあなたは、鹿児島城……でしたか。

鶴崎城
あなたに助けられたかと思うと、
少々複雑な心持ちがいたしますね。

鹿児島城
ふふ、あまり気にしないことですわ~。

鹿児島城
今の私は殿どんの為に、戦っている城娘ですの~。

鹿児島城
鶴崎城さんも、これからは殿どんの為に
城娘の力を奮う者ですもの……、
つまりは仲間ということになりますわ~。

鶴崎城
…………。

鶴崎城
そう、ですね。

鶴崎城
我が私情にて、この運命の輪を乱すことに
何ら益などはありませんから。

鹿児島城
そういうことですの~。

鹿児島城
鶴崎城さん、これから宜しくお願いしますわ~。

やくも
(なあなあ、千狐)

千狐
(なによ、やくも)

やくも
(何や鹿児島城と鶴崎城は顔見知りのような感じやね)

千狐
(そ、そうね……)

千狐
(城娘の方々にも、色々と因縁があるということね)

鹿児島城
どうかしましたか、千狐さん、やくもさん?

千狐
い、いえ。何でもありませんわ……あはは。

鹿児島城
ん~?

鶴崎城
さあ、城主様、参りましょうか。

鶴崎城
聞けば、この中国地方に蔓延する兜たちを討伐して
旅を続けているとか……。

鶴崎城
我が信心と共に、
世の平和の為、今こそ歩みを進めましょう!

第22話 巡合茶屋 ~周防~[]

山陽道八か国の一つ、周防。
長閑なこの地に、兜の這い寄る気配あり。
己が武を以て、この地の危機を救え!

前半
千狐

中国地方における兜討伐を目的に
進軍を続けてきましたが、
残す地もわずかとなりましたね。

千狐
この地に、その元凶がいるかもしれません。
殿、あまり気を抜かぬようにお願いしま――

勝瑞城
あら、いらっしゃい御殿様♪
うちの茶屋の前を通ってくれるなんて
すごく嬉しいわぁ。

勝瑞城
さあさあ、早く店の中へ入って。
たっぷりと持て成させていただくわ……うふふ。

千狐
――な、なななっ、何なのですかあなたは!?

勝瑞城
何ですか、って、
そこの茶屋の者だけど?

勝瑞城
それより、あなたのその耳と尻尾は何なの?
すごく可愛いわねぇ。

千狐
はっ、あわっ、あわわわっ……!?

勝瑞城
やだ、この耳も尻尾もすごく気持ちいいわぁ。
もふもふもふ~♪

千狐
コンっ!?
やくもぉ~助けて……助けてなのぉ~!!

やくも
(殿さん殿さん、千狐のやつ、もうあんなに仲良くなってすごいだに)

殿
…………。

勝瑞城
あら、ごめんなさいねぇ。
御殿様を放っておくなんて、無礼だったわねぇ。

勝瑞城
ささ、取って置きの茶を用意するから、
ゆっくり寛いでいってねぇ……うふふ。

やくも
やっただにぃ! お団子もいっぱい食べるだにぃ!

やくも
なあなあ、千狐は何を頼むがやぁ?

やくも
……って、千狐!?

千狐
うぅぅ……何で助けに来てくれないのよぉ~。

やくも
だって、楽しそうにあそこの姉さんとじゃれ合っとったけん、
邪魔しちゃ悪いと思ったがやぁ。

千狐
楽しくなんて……ぐすっ、なかったもん……やくもの、ばかぁ……。

やくも
まぁまぁ、面白い姉さんやけん、
悪気はないと思うに、お団子食べて機嫌直すだに!

千狐
お団子……お団子ねぇ……。

千狐
――はッ!?

千狐
こ、この気は!?

勝瑞城
あれ? どうしたの狐娘ちゃん?

勝瑞城
厠ならお店の裏に――

千狐
そ、そんなんじゃないのー!

千狐
殿、店の外……あっちの方角を見て下さい!

殿
…………。

殿
…………!?

兜軍団
進軍セヨッ、進軍セヨォォォッ!!

勝瑞城
な、何よ、あの気持ち悪いのは……!?

やくも
あれは兜さんっちゅー悪いやつらだに!
姉さんはどっか安全な場所に避難するがや!

勝瑞城
馬鹿言わないで!
お店ほっぽってどっかに行けるわけないでしょ!

勝瑞城
ここは私の大事な場所なのよ。
何があったって逃げないわ!

やくも
そ、そげなこと言ったってなぁ……。

勝瑞城
そ・れ・に♪

勝瑞城
そこの強そうな御殿様が何とかしてくれるんでしょ?

勝瑞城
あなたたち何だかあの兜って奴等を見慣れてるようだし、
それに、その刀は飾りなんかじゃないんでしょう?

やくも
当たり前だに!
殿さんが絶対にこっから兜さんを追い払うだに!

千狐
そうですね!
殿、兜を迎え撃ちましょう!

勝瑞城
御殿様、頑張ってね!

勝瑞城
もしあいつらを追い払ったら、
いっぱい御褒美あげちゃうからね♪

後半
勝瑞城

この地を守ってくれてありがとう。御殿様♪

勝瑞城
おまけに、城娘だった私の魂まで取り返してくれるなんて……。
これはもう運命という他ないわねぇ。

やくも
何や、茶屋の姉さんが城娘だったなんて、
思いもつかなかっただにぃ!?

勝瑞城
でも、城娘に戻ったせいで
一つ困ったことが起こったわねぇ……。

千狐
困ったこと……?

千狐
いったいどのようなことでしょうか?
お話をお聞かせ下さい。

勝瑞城
実はね……。

千狐
(……ごくり)

勝瑞城
城娘になったことで、何だか胸回りが苦しいの。
力を取り戻し過ぎちゃったからかしら……。

千狐
……む、胸回り……?

殿
…………!?

やくも
んぁ? どういうことがや?

千狐
やくもは分からなくていいのー!

勝瑞城
冗談よ、じょーだん……うふふ♪

勝瑞城
それにしても本当に、御殿様に出会えて良かったわぁ。

勝瑞城
だって、強くて勇敢なだけじゃなくて、
私好みの可愛い顔してるんだもの……。

千狐
――っ!?

千狐
勝瑞城さん……。
あの、少し殿にくっつきすぎではありませんか?

勝瑞城
え? これくらい普通よねぇ、御殿様。

殿
…………。

やくも
殿さん、ちょっと困ってるだにぃ……。

柳川城
(……勝瑞城さんばっかりあんなに……。
ずるいです……。)

千狐
こうなったら、私たちも殿に抱きつくのー!

やくも
何や面白そうやけん、うちもくっつくだにー!

柳川城
え、あの、皆さん……!?

柳川城
そ、それじゃあ……私も行きます!

勝瑞城
ふふ……みんな御殿様のことを慕ってるのね。

勝瑞城
人徳のある御殿様と顔見知りになれてよかったわぁ。

勝瑞城
でも、真面目な話、さっき千狐ちゃんから聞いたけど、
御殿様たちは、この辺りの地の兜征伐を行っているんでしょう?

勝瑞城
取り戻した私の城娘としての記憶と、
御殿様たちが渡ってきた地を鑑みれば、
そろそろ元凶に辿り着いてもおかしくないわ……。

勝瑞城
こうしてあなたに取り戻してもらった魂だもの。
茶屋はしばらく休業して、御殿様のお手伝いをしなくちゃね。

勝瑞城
戦いはあまり好きじゃないけど、
ゆっくり御殿様とお茶を飲める日を迎える為に、
この勝瑞城、精一杯頑張るわ♪

第23話 百万一心 ~安芸~[]

中国地方征伐の最終地、安芸国。
そこには三眼三矢の巨大兜の姿が在った……。
己が武を以て、この地に安寧を取り戻せ!

前半
やくも

ど、どういうことや……!?

やくも
ここらには人っ子一人見当たらんね……。
土地や建物も……何だか荒らされたような痕があるだに……。

千狐
……それだけじゃないわ。

千狐
そこかしこに不穏な気配が点在している……。
きっと兜のものだわ。

千狐
……現状から察するに、
この地に住んでいた人々は、既に兜によって……。

やくも
……そげな不吉なこと言うなや!

やくも
まだ決まったわけじゃないけん、
あたりに誰かいないか探すだに!

千狐
や、やくも……。

千狐
そうね! 気落ちしてる場合じゃないわ!
そうとなれば辺りを調べてみましょう。

柳川城
…………。

柳川城
――殿っ!?

柳川城
ご覧ください! あそこに人がいます!

柳川城
ですが……様子がおかしいですね。
怪我を、しているのでしょうか……?

???
――――どうやら、皆の避難は完了したようですね……。

???
危険な化物から皆を逃がすために、
駆けずり回った甲斐が……あったと、いうものです……。

???
ですが……ここは既に、
退路なき戦の地となってしまいました……。

???
ふふ……。

???
何の取り柄も生き甲斐もなかった私ですが……。

???
誰かを守って絶えるのであれば、
過分な死に際と言えるでしょう……。

???
もう……思い残す、ことは……何も…………。

千狐
し、しっかりしてください! 

千狐
千狐の声が聞こえますか?
一体ここで何があったと言うのですか?

柳川城
……ダメです、気を失ってしまっているようですね。

やくも
――と、殿さん!!

やくも
何か、向こうから来よーけん、注意するに……。

やくも
うぅ……嫌な予感しかせん……。

やくも
この感じは……もしかして……巨大兜、なんかや……?

――『それ』は、転じぬ聡慧(そうけい)の集積であった。

盤石四肢からほとばしる、永劫持続の妄執が、
不穏な黒霧に姿を変えて、紅紫の三矢を放てと猛る。

ただ護り、ただ鎮め、ただ殺す……。
三玉の血眼が殿を捉え、一際盛んに黒煙が爆ぜた。

毛利元就
善哉、善哉…………是カラ話ス…………。
必勝……必殺……必守……ノ……計ナレバ……。
誓ウ……近ウ……血交ウ…………。

毛利元就
先ズ……先手衆……是、是……徒士ヤ足軽ハ……死……四散セヨ……。
万事……勝利ノ布石ジャテ……安ンジヨ……ジヨ……ククク……。
米ガ無ウナラ……稗粟ヲ喰メ……グ、ギギ……善哉、善哉……。

毛利元就
孤兵ノ攻メ手ハ……悪手ジャテ……要ス戦ハ……三人三鍬ノ……粉砕突貫……。
覇道ハ要ラヌ、只殺セ……想ウハ不要、只謀レ……天下ハ求メヌ、只護レ……。
百万一心三矢教訓……皆ノ結ビニ我ハ応ジン……イザ……イザ……参……乱……。

やくも
…………嘘や。

やくも
あげな恐ろしい気を放ちよー兜が、この世にいるなんて……。
これまでの兜とは、ぜんぜん違うに……。

やくも
なあ、千狐、殿さん……ほんとにアレと戦うんか?

千狐
私だって、今すぐ逃げ出したいくらい怖いわよ……。

千狐
でも……ここで退いたら、
いずれ全てがあの暴威に飲み込まれるわ……。

千狐
殿、中国地方に氾濫した兜の軍勢の元凶は、
間違いなく目の前の巨大兜です!

千狐
正直、これほどまでにおぞましい兜が現れるなんて
予想もしていませんでした……。

千狐
ですが、千狐は信じています。
殿ならば、あの巨大兜を倒せると……信じていますわ!

柳川城
行きましょう、殿。
勝って、この地に安寧を取り戻しましょう!

後半
???

明瞭さが、この身に満ちていく……。
そしてこの力の猛りは……?

???
……そうか……私は、城娘……。
そう、でした……これは……夢では、ない……。

???
また私は……誰かの為に戦うことが……できるのですね……。

千狐
あ、あの……あなたは……?

千狐
い、いえ! それよりもお身体は大丈夫ですか!?

???
は、はい! 
あなた方のおかげで、こうして城娘に戻ることができましたし、
身体も問題……ないみたいです。

三原城
はっ! 申し遅れました。
私は三原城という者です。

三原城
この度はこの地を守っていただいただけではなく、
三原の城娘の魂まで取り返していただいて、なんとお礼を言ってよいか……。

やくも
困っちょう人を助けるのは当然やけん、
気にするなんて野暮ってもんだに!

千狐
なんともなくてよかったですわ……。

千狐
三原城さん、あなたが城娘であったということを、
運命のように感じますわ。

三原城
運命……ええ、三原も同感でございます。

三原城
殿たちに出会えたことは、まさに幸甚の至り……。

三原城
窮地を助けて頂いたご恩は、
三原のこの頭脳を以て報いる覚悟でございます!

桜尾城
それにしても、
今は亡き我が城主の父君であらせられる
毛利元就の魂を模した巨大兜を討ち果たすとは……。

桜尾城
殿のお力はまさに鬼神のそれでございますね。

桜尾城
桜尾城……誠に感服いたしました。

防己尾城
毛利元就の魂を模した兜……やはりそうだったか。

防己尾城
かつて中国地方一帯を治めたあの方の魂を利用するとは……。

防己尾城
少しだけ、やるせないな……。

上関城
でも、こうして倒すことができたんだ!

上関城
めでたしめでたし、だろ?

やくも
そうだにぃー!
今は殿さんといっしょに勝てた喜びを
しっかり噛みしめるのがいいにぃー!!

備中高松城
わ、私はあまり……お役に立てなかったかもしれませんが……。

備中高松城
その、わ、我がことのように嬉しいです……。

備中高松城
それに何より、と、殿が無事で、本当によかったのですぅ。

石山城
おいおい、殿。
私の裏工作の功績も忘れて欲しくないな……。

石山城
ちなみに私は、戦う前から殿の勝利を確信していたけどね……クク。

鶴崎城
城主様……。

鶴崎城
私の信仰心も、少しはお役に立てたでしょうか……?

勝瑞城
もぉ、しっかり殿の役に立てたに決まってるでしょう?

勝瑞城
私だって、戦うのは苦手だけど、
しっかりと殿のお手伝いはできたって自負してるわ。

防己尾城
ああ、そうだとも。

防己尾城
誰一人欠けてもこの勝利は実現し得なかっただろう。

防己尾城
そして、そんな私たちをひとつにまとめ上げた殿の器には脱帽しっぱなしだ。

防己尾城
私の言葉を疑わずにこの地に赴き、
そして救ってくれたこと……改めて感謝するよ。

千狐
コンっ! 
殿ー!! 本当に本当にすごいのー!!
やっぱり殿が一番なのー!!

備中高松城
……こ、コン?

桜尾城
……なのー、とはまたかわいい。 ふふ。

千狐
……あ、えっと……すみません、嬉しすぎてつい……えへへ。

千狐
思えば……様々な出会いや戦いがありましたね……。

千狐
色々なことがありましたが、
こうして無事中国地方を平穏な地へと
治めることができて本当によかったですわ。

柳川城
私も、心からそう思います。

柳川城
辛いことや悲しいこともいっぱいありましたが……。

柳川城
殿とだからこそ、私たちは頑張れたのです。

千狐
ここにいる皆が、おそらく同じ気持ちでしょう。

千狐
……あれ? やくも、どうしたの……?
じぃっと、遠くを見つめて。

やくも
あれを見ぃがや、千狐……。

やくも
すっごく綺麗だにぃ!

千狐
神社境内に潮が満ちていく……。

千狐
社殿がまるで海に浮かんでいるようだわ……本当に綺麗ね。

三原城
あれは、厳島神社(いつくしまじんじゃ)にございます。

三原城
日本三景の一つとされる美しい景観を
こうして守ることができた喜びを、
今この瞬間、三原は強く感じています……。

三原城
殿……本当に、ありがとうございました。

柳川城
中国地方での兜征伐の最後を飾るには、
十分すぎるほどの美しさですね。

桜尾城
ええ……心が洗われるようです。

上関城
ま、金にならないもんだけど、
こんだけ綺麗な景色なら悪い気はしないわな。

備中高松城
皆さんと、こうして一緒にこの絶景を目にすることが出来て、
私……すごく、嬉しいですぅ……。

勝瑞城
ねぇ、せっかくだからここでお祝いしない?

勝瑞城
私、お茶には自身があるのよぉ♪

石山城
クク……こんなこともあろうかと、
私は茶菓子を用意していたのだ。

石山城
ああ、自分の用意周到さが怖い……クク。

鶴崎城
どうでしょうか、城主様。
皆の健闘を称え合い、より親睦を深めるというのは……?

殿
…………。

殿
…………!

やくも
さっすが、殿さんだにぃ!
そうとなれば、色々準備するがやー!

柳川城
わ、私もお手伝いします、やくもさん!

千狐
やくもー、はしゃぎすぎないようにしなさいよー!

やくも
わかってるだにー!

千狐
もう、本当に分かってるのかしら?

千狐
…………はぁ。

千狐
あ、と、殿……すみません、目の前で溜息などついてしまって……。

千狐
ですが、こうして出会えた仲間たちと共に、
笑い合い、時を分かち合えるのは、
何物にも代えがたい一瞬のように千狐は思います……。

千狐
最初は、少し不安な旅でしたが……、
こうして殿も城娘の皆さんも無事だったこと、
何よりも嬉しく思いますわ。

やくも
おーい、千狐ぉ!
準備できちょーけん、はやぁ来るがやぁ!

柳川城
殿のお席もこの通りしっかりと用意させて頂きましたよー!

千狐
今、行きますわー!

千狐
さあ、殿。
ご覧の通り、皆があなたを待っています。

千狐
今日の勝利を仲間たちと祝うことで、
明日からの戦いの英気としましょう!

第24話 一通の手紙 ~出羽(羽後)~[]

――関ヶ原への道、未だ通じず。
現状を打破できずに焦る殿たちの許へ、
ある者から一通の手紙が届くのだが……。

前半
毛利元就との戦いから数週間後――。

中国地方での兜討伐を経たことで、
関ヶ原を覆っていた結界に何か変化があるかと
期していた殿たちだったが……。

千狐
…………。

千狐
ダメですわ。

千狐
未だに関ヶ原を覆う結界は強力で、
近づくことすらできそうにないです……。

柳川城
中国地方で溢れ出した兜たちを討伐することで、
関ヶ原にも何か変化があるのではと思っていたのですが……。

柳川城
……少し、考えが甘かったようですね。

長浜城
うっきゃ~っ!!
これじゃあまた摂津で行き止まりってことぉ?

長浜城
もういい加減、所領でじっとしてるのはいやだよお~。

防己尾城
殿の恩に報いようと
私たち中国地方の城娘も
結界を討ち破る方法を探ってはみたのだが……。

三原城
……申し訳ありません。
三原の頭脳をもってしても、
あの結界を討ち破る手段は見つけられませんでした……。

殿
…………。

千狐
いったいどうすればいいのでしょうか……。

解決の糸口すら見えぬ現状に、意気消沈する殿たち。

だが、そんな重苦しい沈黙を破るように、
けたたましい足音が殿のもとに迫ってきていた。

やくも
殿さ~~~~~んっっっ!!

千狐
や、やくも!?
そんなに慌ててどうしたの?

やくも
どうもこうもないだにぃ!
これを読むがやー!

千狐
……これは、書状?
いったい誰からのものなのかしら。

千狐
…………っ!?

千狐
殿、これをご覧ください!

千狐
兜に故郷を襲われている者からの、救援の要請ですわ!

柳川城
場所は、どこなのですか……!?

千狐
……出羽国(でわのくに)ですわ。

柳川城
出羽国となると、かなりの遠方ですね……。

柳川城
千狐さんの転移術で移動可能な地なのでしょうか……?

千狐
……地気に目星をつければ、
出羽国そのものに行くことは可能です。

千狐
ですが、転移術のみでこの書状の送り主の許へ
直接辿り着くことは難しそうですわ……。

防己尾城
転移術を使った後は、
歩いて送り主のとこに行けばいいのでは?

千狐
それは、そうなのですが……。

千狐
……文面から察するに、緊急を要するみたいですから、
もし転移術の失敗によって出羽国の端などに到着してしまったら、
最悪、千狐たちの救援が間に合わないかもしれません……。

長浜城
ええ!?
それじゃあ助けにいっても、意味ないじゃん!

千狐
だから……何か、目印となる特徴的な霊気や、
送り主のいる土地と縁のある品が手元にあればいいのですが……。

やくも
土地と縁のある品……?

やくも
――ああっ!?

やくも
なぁ、千狐ぉ!
書状と一緒にこんなもんも届いてたけん、
何かに使えたりしないかや?

千狐
え? 何……これ?

千狐
……鬼の、お面?

三原城
あの、少しこの三原に見せてもらっていいでしょうか?

三原城
……ふむ。

三原城
このお面……恐らくですが、ナマハゲのお面でしょう。

三原城
たしか、出羽国の地に縁のある品だと思われますが……。

長浜城
それ、本当なの!?

三原城
これを使って千狐ちゃんの転移術を使うことができるんじゃ……!?

千狐
はい!

千狐
薄らとですが、送り主のものと思われる霊気も感じられますし、
これなら確実に転移術を成功させることができますわ!

やくも
よっしゃ!
そうと決まれば出羽国へ向かうだにぃ!

柳川城
そうですね!
関ヶ原へ向かうことの出来ないこの状況を打破する
何かのきっかけになるかもしれません。

柳川城
殿、さっそく準備に取りかかりましょう!

殿
…………。

殿
…………!

こうして殿たちは東北地方への遠征を決したのだった。

――数刻後。

出羽国北部、某所。

脇本城
さて……そろそろ彼らに書状が届いた頃でしょうか。

脇本城
海路にて届けられる限界が一通の手紙と、ナマハゲのお面だけでしたが、
私の計算によればきっと上手くいくはずです……。

一般兵
――伝令っ!
兜軍団が城壁を越えて、こちらへ攻め入ってきています!

脇本城
な、何ですって!?

脇本城
そんな、予想よりずっと速い……!

脇本城
どうしよう……今の兵力じゃ太刀打ちなんてとてもできないわ……。

脇本城
……くっ。
知識だけでなく、城娘としての力が私にもあれば……!

一般兵
如何なさいますか……?
ここを放棄するという手も……。

脇本城
……分かりました。
貴方たちは民を連れて安全な地へと逃げてください。

一般兵
わ、我らだけでですか!?

脇本城
そうです。
私はここに残り、兜達を少しでも足止めします。

一般兵
……ならば我らとて逃げるわけにはいきません!

脇本城
武士の名折れだとでも言うのですか?

脇本城
状況を見誤らないでください!
私は最善の手を打とうとしているのです。
分かったら、すぐに避難を――

一般兵
――なりません!
貴方様が城娘としての力を取り戻すまでは、
我らがお守り致すと伝えたはず……!

脇本城
……それは、そうですが……。

脇本城
でも、このままじゃ皆……兜にやられてしまう……。

脇本城
どうしたらいいの……!?

――その時だった。

少女の背後にそびえ立つ鳥居から、
堰を切ったように清浄なる光が溢れだした。

次の瞬間、まるで後光を背負うようにして、
少女の眼前に殿たちが現れたのだ。

千狐
よかった……転移術は成功ですわ!

柳川城
ここが、出羽国……なのですね?

脇本城
あ、貴方たちは……!

殿
…………?

脇本城
お待ちしていました、殿!
私が、貴方に書状とお面を送った者にございます!

殿
…………!

やくも
あんた、殿さんを知ってるんかや!?

千狐
いえ、それよりも千狐たちが転移してきたことにも
あまり驚いていないのはどうしてですか……?

千狐
(それに、彼女から感じられる不思議な霊気は……?)

千狐
(……まさか!?)

脇本城
すみません、話すべきことは多くあるのですが、
今は迫り来る兜への対処が最優先かと……。

やくも
兜……?


……敵、発見セリ……!

兜軍団
陣形展開……今コソ、突撃セヨ……ッ!

やくも
あげに近くまで兜さんが来てるだなんて、
聞いてないだにぃっ!?

柳川城
状況はかなり切迫しているようですね……。

千狐
ですが、遅きに失した訳ではありません!
殿、何としても此の地を守り抜きましょう!

後半
脇本城

良かった……ようやく、私も……。
城娘としての力を取り戻せたのですね……。

やくも
おぉっ!?
あんたも城娘の一人だったんやね!?

やくも
……って、何だか本人はあんまり驚いてない様子やけん、
どういうことがや?

千狐
脇本城さんはおそらく、
ずっと前から城娘としての自覚があったのでしょう。

千狐
いえ、むしろそうでなくては殿へ助けを求める書状に、
此の地に縁のあるお面を添えた説明になりませんわ。

脇本城
さすがは噂に名高い殿の従者。
ご慧眼であらせられますね。

脇本城
えっと……すみません。
お名前をまだ聞いていませんでしたね。

柳川城
私の名は柳川城と申します。
そして、こちらが千狐さんとやくもさんです。

やくも
よろしくだにー!

脇本城
柳川城さんに、千狐さんに、やくもさん……そして、殿。

脇本城
はい! 
皆さん、よろしくお願いします!

脇本城
そして、改めてお礼をさせてください。

脇本城
兜を退け、我々の窮地を救ってくださりありがとうございます。

脇本城
……ですが、
未だ此の地の脅威が全て取り除かれた訳ではありません。

柳川城
それは、どういうことなのですか?

脇本城
実は今、この出羽国だけでなく、陸奥国を含む東北全域で
兜たちの動きが活発になっているのです……。

脇本城
今までも兜の侵攻は東北各地で起こってはいましたが、
近頃、急激にその勢いが増した為、
もう私たちだけでは手に負えない状況となっているのです……。

千狐
確かに……少し意識を外に向けただけでも、
凶暴な兜の気をたくさん感じますわ……。

脇本城
……先の中国地方での兜征伐のお噂は、
この地にも希望の音となりて我が耳に届いております。

脇本城
だからこそ、私は殿に救援の書状を送ったのです。

脇本城
……お願いします。
どうか、その力をお貸しください……。

一般兵
わ、我々からもお願いさせて頂きたい……!
此の地を、兜から守りたいのです!

殿
…………。

殿
…………!

脇本城
手伝って、頂けるのですね!?

脇本城
ありがとうございます!

脇本城
ああ……何とお礼を言ったらいいのか……ぐすっ……うぅぅ……。

やくも
泣くほど喜ばれると何だかこしょばいだにぃ……。

やくも
でも、殿さんが来たからにはもう大丈夫だに!
中国地方の時みたいに、バシッと兜さんたちを退治するがやー!

柳川城
私も、微力ながら頑張ります!

千狐
とはいえ、じきに日も暮れます。

千狐
今日のところは此の地で休息を取り、
明日から兜征伐へと乗り出しましょう!

第25話 立螺の作法 ~出羽(羽前)~[]

陸奥国の兜を退治せんと進軍する殿達の前に、
法螺貝を手にした童女が現れ、千狐を掠う。
童女を追いかけ、その真相を突き止めよ!

前半
――出羽国南部、某所。

脇本城
我が故郷から、ずいぶん南へと進んできましたね。

脇本城
千狐さんの言によれば、
陸奥国南部に兜が密集しているという話でしたが……。

千狐
間違いないと思います。

千狐
現状では陸奥国の中部や北部よりも、
南部に兜の禍々しい気を強く感じますから……。

脇本城
ではこのまま南進することで出羽国全土を調査し、
そのままの勢いで陸奥国へと向かうこととしましょう。

やくも
ってことは、まだまだ先は長いってことやね。

やくも
それじゃあ、ここでしっかり休憩しとくがやー!

柳川城
あれ? 
やくもさん、そのおにぎりは?

やくも
朝早く起きて大高坂山城と作ったやつだにぃ~♪

大高坂山城
みんながお腹空かないようにって、
いっぱい作ったんだからっ!

大高坂山城
柳川城ちゃんも、遠慮しないで食べてね♪

柳川城
あ、ありがとうございます。

柳川城
でも、見たところ……ちょっと作りすぎなのでは……?

大高坂山城
――え!?

大高坂山城
もしかして、柳川城ちゃんって小食?

柳川城
え?
いや、あの……ふつう、だと思いますけど……。

大高坂山城
――あっ!?
さては体重を気にしてるのね?

大高坂山城
ダメよ、柳川城ちゃんだって成長期なんだから、
しっかり食べないと、いろいろと大きく育たないわよ?

柳川城
そ、そういうことではなくてですね……。

やくも
まあまあ、無理して食べるこたぁないだに!
みんなが食べないなら、うちが全部たいらげるがやぁ♪

やくも
ぱくぱくぱく~っ♪

やくも
……って、んん?

大宝寺城
…………じ~。

やくも
……?
何や、このあたりのコかや?

やくも
なぁ~、もしかして、
あんたもおにぎり食べたいんかや?

大宝寺城
ぶおお~ん!ぶおお~ん!

やくも
――ぴぅっ!?

やくも
きゅ、急に法螺貝を吹き鳴らすとはどういう了見だにぃ!?

やくも
――って、あああああっっっ!?

やくも
ビックリしておにぎり落としてしまっただにぃ!?

大高坂山城
はいはい、泣かないの、やくもちゃん。

大高坂山城
まだまだおにぎりはいっぱいあるんだからね。

大宝寺城
ねえ……。

大宝寺城
もしかしてお姉ちゃんたちって、旅の人たちなの?

大高坂山城
そうよ。
悪い兜を退治する為に、殿と一緒に旅をしてるの。

大宝寺城
兜退治……!?

大宝寺城
兜って……あの悪いことばっかりしてる兜だよね?

千狐
そうですわ。
こちらの殿が――、

大宝寺城
だったらすぐに手伝ってよ!
私たちの町が大変なことになってるんだっ!

千狐
えっ、ちょっ、ちょっと……!?

千狐
そんなに強くひっぱ……引っ張らないでくださいぃー!

千狐
い、痛いです……!

千狐
やだっ、だめ……それ以上は尻尾が千切れちゃう……っ!

千狐
と、殿ぉ……助けてなのぉー!

やくも
せ、千狐が……。

やくも
千狐が連れ去られただにぃっ!?

柳川城
すぐに追いかけましょう、殿!

少女に無理矢理引っ張られていく千狐を追いかけていくと、
そこで殿たちは兜に襲われている町を目にした。

大宝寺城
ほら、あそこを見てよ!
あそこにいっぱい兜がいるでしょ……!?

千狐
わ、分かったから……尻尾を離してほしいのぉ……!

大宝寺城
あ、ごめん……これ尻尾だったんだ。
ぜんぜん気づかなかったよぉ。

千狐
はぅぅ……やっと自由になれたのぉ……。

千狐
――って、そうではありませんわ!

千狐
殿、ご覧ください!
兜が城下町を襲撃しているようですわ!

やくも
なんて酷いことしてるがや……!

やくも
殿さん、すぐにこの町から兜を追っ払うだに!

大宝寺城
……すごい。
お姉ちゃんたち、兜をみてもぜんぜん物怖じしてないや!

大宝寺城
(これなら町を救って貰えるかもしれない……!)

大宝寺城
ぶおお~ん!ぶおお~ん!

大宝寺城
聞けぇ、兜ども!
ここにいるお姉ちゃんたちがお前達を
ぜーんぶやっつけるんだから、覚悟しとけー!

柳川城
だからって何もこちらの居場所を法螺貝で報せなくても……!

大高坂山城
――うわっ!?
町を襲ってた兜がみんなこっちに向かってくるわ!

柳川城
覚悟を決めるしかありませんね……。

大高坂山城
そんなに不安がることはないわ、柳川城ちゃん。

大高坂山城
だって、あたしがいるんだから!
さあ殿、みんなで協力して敵をやっつけるわよー!

後半
大宝寺城

うわ、うわわっ!?
何これー!?

大宝寺城
……ああ、そっかぁ!

大宝寺城
私、城娘だったんだぁー!

大宝寺城
何でそんな大事なこと忘れちゃってたんだろう。

脇本城
それは、貴方の城娘としての魂が
兜たちによって囚われていたからですよ。

大宝寺城
……え!?
私の魂が……兜たちに?

大宝寺城
そうだったのかぁ……。

大宝寺城
あれ? 
でも、他にも大事なことがあったような気が……うーん。

千狐
まだ、少しだけ記憶の混濁がみられるようですね……。

大高坂山城
だいじょうぶ、大宝寺城ちゃん?

大高坂山城
落ち着くまでギュってしててあげようか?

大宝寺城
ありがとう!

大宝寺城
でも、もう大丈夫だよ。

大宝寺城
私がやるべきこと、今ね、ちゃんと思い出したから!

大宝寺城
私はね、此の地を兜から守りたいんだ!

大宝寺城
ううん、出羽国だけじゃなくて、
陸奥国だって守りたいの!

大宝寺城
だって、私は東北の山々と自然が大好きだから!

大宝寺城
だから殿、私もついて行ってもいいかな?

殿
…………。

殿
…………!

大宝寺城
ありがとう、殿ぉ!

大宝寺城
何だか気分が高まってきちゃったよぉ~!

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおお~ん!

やくも
法螺貝吹くのは城娘になっても同じなんやね……。

柳川城
道中で吹き鳴らしすぎて、
兜に襲われたりしなければいいですが……。

千狐
千狐は、尻尾をまた引っ張られたりしないか心配ですわ……。

大高坂山城
もう、みんなしてそんな不安そうな顔してぇ。

大高坂山城
仕方ないわね。
殿の面倒と一緒に、大宝寺城ちゃんの面倒も
あたしがちゃんと見てあげるわ!

大宝寺城
ねぇねぇ~!
早く兜を退治しにいこうよぉ!

脇本城
やれやれ……何だか道中が賑やかになりそうですね。

脇本城
殿、まだまだ道のりは長いのですから、
今一度、気を引き締めて参りましょうね?

こうして新たな仲間を得た殿たちは
陸奥国へ向け、再び歩みを進める――。

だが、そんな一行を待ち受けている凶悪な存在がいる事など、
今の殿たちには知る由もなかった……。

???
…………。

???
………我等の野望を阻もうとは……アア……ゲニ、許せんことよ……ナァ。

第26話 桜花の巫女 ~陸奥(磐城)~[]

ついに陸奥国に到着した殿一行。
大きく美しい桜の木の下で、
殿たちはひとりの巫女と出会うのだが……。

前半
――陸奥国南東部、某所。

千狐
ようやく陸奥に辿り着きましたね、殿。

脇本城
此処が、陸奥国……。

脇本城
出羽国における勢いをそのままに、
この地での兜討伐も上手くいくといいのですが……。

若松城
なーに不安がってるんだよ、脇本城。

若松城
ほら、あれ見て元気だしてこうぜ!
綺麗な桜が私たちを出迎えてくれてるみたいじゃねえか♪

やくも
おおーっ!? すっごくデカい桜の木やね!
こんな時じゃなければお花見していきたいところだに。

脇本城
確かに、美しさに心が洗われますね。

脇本城
実際にこの眼で見るのは初めてですが、
此処の桜木は日本屈指の大きさと美しさを誇るものと言われています。

脇本城
これほどの美を前にしていながら、気づかなかったとは……。

脇本城
少しばかり私は、気を揉み過ぎていたようですね。

脇本城
ありがとうございます、若松城さん。
おかげで、改めて心を強く持てるような気がします。

若松城
お、おう……。
そんな風に真面目に返されると何だか恥ずかしいぜ。

矢留ノ城
…………。

若松城
――んっ?

若松城
おい、そこにいるのは誰だ!?
コソコソとこっちを窺いやがって……一体どういうつもりだ!

矢留ノ城
ご、ごめんなさい……わ、わわ、私は……怪しいものでは、ありません……。

矢留ノ城
私は……あの、此の地の巫女でして……えっと、
じ、神社にて日課を終えて、いつものように桜木を……見に立ち寄ったら、
見知らぬ方々がいて……び、びっくりして…………。

矢留ノ城
だから……あの、その……ご、ごめんなさい!

若松城
おいおい、そんな謝らないでくれよ。

若松城
私たちは兜討伐の為に出羽から来たばかりで、
すこしばかり警戒してただけだからよ、あんまり気にしないでくれ。

矢留ノ城
そ、そうだったのですね……。

矢留ノ城
よかった……悪い野盗の方々でなくて……。

千狐
や、野盗!?

やくも
うちらって、そげん危ない集団に見えーやね……。

矢留ノ城
ご、ごご、ごめんなさいぃ……!
そういうつもりで言ったのではなくて……えっと……、
だから……その、ですね……ほ、本当にっ、ごめんなさい……。

若松城
だーかーらー、そんな謝んなって言ってんだろ?

若松城
こうして出会えたのも何かの縁なんだ。
少しこの地のことを……。

若松城
――っ!?

柳川城
どうしましたか、若松城さん……?

若松城
どうしたもこうしたもねぇぜ。
あそこ見ろよ、柳川城。

柳川城
……え?


――ザッ!

兜軍団
――ザザッ、ザザザッ!!

柳川城
兜……!?
やはりこの地にも潜んでいたのですね!

矢留ノ城
そ、そんな……!?
あんなに多くの兜が……こ、こんなところにまで……!

矢留ノ城
みなさん! す、すす、すぐに逃げましょう……!

矢留ノ城
神社に行けば……し、神聖な気によって、
か、兜たちを祓ってくれるかもしれません……!

若松城
逃げる……だって?

矢留ノ城
そ、そうです……。

若松城
冗談じゃねえっ!!

矢留ノ城
――ひぅっ!?

若松城
私たちは兜討伐の為にこの地に来たって言ったろ?
ここで逃げたら何しに来たか分かったもんじゃねぇぜ!

矢留ノ城
で、でも……。

若松城
いいから、つべこべ言ってねーで、お前は安全なところに隠れてろ!

若松城
おい、千狐! やくも!
こいつのことは頼んだぞ!

千狐
分かりました!

やくも
任せるだに!

若松城
よし、それじゃあ戦いの準備といこうぜ、みんな!

脇本城
はいっ!

矢留ノ城
……えっ!?

矢留ノ城
どういうこと、なのですか?
皆さんの身体から光が……!

千狐
彼女たちは城娘と呼ばれる方々ですわ。
兜に抗する力を有し、そして殿と共に戦う猛き者たちなのです!

矢留ノ城
あれが、噂に名高き城娘……。

矢留ノ城
すごい……私、あんな美しい輝き……初めて、見ました……。

若松城
さあ、行こうぜ、殿!

若松城
兜たちに綺麗な桜を穢させたりなんかしねぇ。
あいつら、みんなまとめて吹っ飛ばしてやる!

後半
矢留ノ城

皆さん、ありがとう……ございます。

矢留ノ城
この地の桜を守ってくれて……。

矢留ノ城
そして、わ、私の……城娘としての魂を、解放してくれて……。

矢留ノ城
本当に……ありがとうございます!

若松城
驚いた……まさかお前も城娘の一人だったとはな。
ぜんぜん気づかなかったぜ。

若松城
やっぱり、確かな縁が私たちを結んだようだな。

若松城
で、これからどうするんだ?
私たちと一緒に来るのか?

矢留ノ城
は、はい!

矢留ノ城
……た、助けてくださった恩もありますし。

矢留ノ城
それに何より……し、城娘としての使命を全う……したいです。

矢留ノ城
ただ……、
これから行動を共にするにあたって、
その……確認しなくてはいけないことがあるのです……。

千狐
確認しなくてはいけないこと……ですか?

矢留ノ城
はい……とっても、大事なことです……。

やくも
で、その大事なことって何だに?

矢留ノ城
えっと……その、あの……。

矢留ノ城
私、争い事は正直、好きではありません……。

矢留ノ城
だから、あまり戦場に立つことは、したく……ないです……。

若松城
……。

矢留ノ城
私は、その……皆さんと違って戦慣れしてませんし……、
それに……人前に出るのも……は、恥ずかしいです……。

矢留ノ城
だ、だから……戦いの場に出たとしても……、
邪魔になってしまうかも……しれません……。

矢留ノ城
こんな私でも、一緒に行って……いいのでしょうか?

若松城
……。

若松城
…………。

矢留ノ城
あの、やっぱり……だめ、でしょうか……?

若松城
……駄目なわけ、ねぇだろ!

矢留ノ城
え……?

若松城
そんな恐がりなくせに、お前は世のために頑張ろうって奮起しようってんだろ?

若松城
そういう勇気のあるヤツは大好きだぜ!

若松城
城娘にも向き不向きはあるんだ。
お前はお前の出来ることで殿の役に立てばいいじゃねえか!

若松城
ま、そういう訳だからよ、これから一緒に頑張って行こうぜ!

矢留ノ城
……はい。

矢留ノ城
城主様、若松城さん……ありがとうございます。
こんな私を受け入れてくださって……。

若松城
お、おい……!?
急に抱きつくんじゃねえって!

若松城
殿が見てるだろ……おい、聞いてんのか?

矢留ノ城
だって……嬉しくて。涙が止まらなくて……ぐすっ……。

若松城
いや、だからってこれは……。

若松城
なぁ、殿ぉ……何とかしてくれよぉ……!

殿
…………。

殿
…………!

やくも
殿さんの言うとおり、
仲が良いことは素晴らしいことやけん、
うちらが邪魔する訳にはいかんだに。

若松城
そ、そんなぁ……。

脇本城
何はともあれ、また新たな仲間が増えたことは嬉しい限りですね。

脇本城
陸奥国での兜討伐も幸先の良い出だしとなりましたし、
今後を見据え、ここで少し休息をとることにしませんか?

千狐
それはいいですね!

千狐
兜から守ることのできた桜の木を眺めながら、
暫しの休憩としましょう、殿。

若松城
――なぬっ!?
桜を見ながら休憩……だと!?

若松城
(きっと上等な茶菓子を千狐が用意するはず……こりゃあ急がねぇと!)

矢留ノ城
ふぇ~ん……若松さん……ありがとうございますぅ……!

若松城
お前、いつまで泣いて――あっ、ちょ……ちょっとぉ……!
へ、変なところ触んなって……!

矢留ノ城
うぅぅ……若松城さ~ん……。

若松城
……だ、だめだ……がっちり抱きつかれてて、離れない…………くぅぅっ!!
はぁ、はぁ……こ、このままじゃ、私の茶菓子がなくなっちまうっ!

若松城
なぁ、ほんと……頼む、誰か手を貸してくれよぉぉ……!
私だって休憩したいんだからさぁ~~~~っ!!

第27話 蒼の山風 ~陸奥(岩代)~[]

空より現れたる巨大兜・蒲生氏郷。
城娘を我が物にせんと目論む敵から
此の地と仲間を守る為、いざ出陣せよ!

前半
――陸奥国南西部、某城址。

脇本城
陸奥国南部における兜討伐も、いよいよ残すはこの地のみとなりましたね。

やくも
最初はどうなることかと思ったけど、
案外、簡単に終われそうでよかっただに。

千狐
もう、やくもったら。
まだ完全には終わってないんだから、気を抜いては駄目よ。

やくも
そうは言うても、千狐が兜の気配を察知してない以上、
今すぐに身構える必要も――、

やくも
――あれ? あそこにいるのは誰がや?

黒川城
…………。

黒川城
…………分からない。
いったい、どうして……私は……此の地に…………。

柳川城
何だか、困っている様に見えますが……どうしたのでしょうか?

脇本城
私、ちょっと声をかけてみます。

脇本城
あの、どうかされましたか?
よければ私たちが力になりますよ……?

黒川城
――え?

黒川城
も、もしかして……私に話しかけてるのですか!?

脇本城
そうですが、あの……迷惑だったでしょうか?

黒川城
いえ、そんなことは……。

黒川城
むしろ、お声がけ頂いたのに、
なんと応えていいものやら……。

やくも
そげに困ったことでもあったんかや?

黒川城
困った……ええ、そうです。
すごく、困ってます……私。

黒川城
ただ、すごく漠然としていて……こんなことを他人に話していいものかと……。

大宝寺城
遠慮しないで、お姉ちゃん!
どんな悩み事でも私がちゃーんと聞くよ!

黒川城
ありがとうございます。

黒川城
それでは、あの……本当に妙なことを尋ねるのですが……。

大宝寺城
ふむふむ……!

黒川城
私、何故このような場所にいるのでしょうか……?

大宝寺城
…………え?

大宝寺城
…………うーん。

大宝寺城
…………。

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおお~ん!

黒川城
きゃっ……!?

黒川城
ど、どうして急に法螺貝を吹き鳴らすのですか?

脇本城
すみません、貴方の質問が
どうやら大宝寺城さんの理解を超えてしまったようです。

黒川城
大宝寺城……?

脇本城
いえ、それよりも、
貴方の先ほどの質問ですが、
いったいどういう意味なのでしょうか?

黒川城
どういう意味と言われましても……そのままの意味です。

脇本城
と、言うと……?

黒川城
私、どうして此処に来たのか分からないのです……。

黒川城
自室にて、書を読んでいたはずなのに……
気づいた時にはこの場所に立っていて……。

やくも
自室……? 気づいた時には……?

やくも
――――だにっ!?

千狐
どうしたの、やくも!?
もしかして何か分かったの?

やくも
いや、さっぱり分からんだに!

千狐
もうっ、こんな時にふざけないでよ!

黒川城
……ごめんなさい。
私が変なことを言ってるのですから、分からなくて当然です。

???
……其ノ理は……至極……明快よ……ナァ……。

千狐
――えっ!?

やくも
な、何や今の不気味な声は……?

???
此処ニ訪れたるは……我ガ……貴様を……呼び求めた……ユエ。

黒川城
だ、誰ですか!?

???
……我ガ分カラヌ……カ?

黒川城
分からないも何も、姿が見えないのに、
判断することなんて出来るわけがないじゃないですか!

???
こんなニモ、近くにいるトいうのに……ゲニ、滑稽よ……ナァ。

千狐
――上です、殿っ!!
巨大兜が空から降ってきます!

――『それ』は、幽玄たる蒼の魔弾であった。

飛翔せし華奢なる躯に洗煉の果てを映し、
接触能わぬ優雅さは天舞う燕を思わせる。

そうして降り立った異形は、
ゆっくりと言の葉を紡いだ。

蒲生氏郷
アア……我が……我が、愛しき城娘……黒川城……。

蒲生氏郷
死染ノ因果ヲ経……今、此の時世にて巡り会うとは、
……ゲニ、数奇な運命よ……ナァ。

黒川城
あ、貴方は……何を……言ってるのですか……?

千狐
(黒川城……?)

千狐
(今確かに、巨大兜はこの方を黒川城と呼んだ……!)

千狐
(そして、わずかに感じる不思議な気の存在……まさか、この方も……!?)

蒲生氏郷
臆すことは無い黒川城……我が再び貴様に入城シ、
……そして、栄光の礎と……スル。

蒲生氏郷
サァ……我を再び受け入れヨ……其れこそガ……城としての真ナル愉悦……ナリ。

黒川城
分からない……。

黒川城
何を言っているのか、分からない……のに……。
どうして、私は……あの様な異形に懐かしさを覚えているの……?

黒川城
この切なさは……いったい……な……………に……………。

やくも
ど、どうしたがや!?

やくも
おい、しっかりするだに!

柳川城
どうやら、気を失ってしまったようですね……。

脇本城
普通の人間が巨大兜を眼の前にすれば当然のことでしょうね。

脇本城
かくいう私も、噂には聞いていましたが、
こうして初めて巨大兜を目の当たりにして、
正直今にも逃げ出したいほどです……。

蒲生氏郷
フム……成る程……陸奥や出羽の城娘も居るようだ……ナァ……。

蒲生氏郷
良かろう……ゥゥ……黒川城と共に、
我ガ……ァァ……慈しんでヤルとし……ヨウ。

やくも
殿さん、巨大兜が武器を構えだだに!

千狐
どうやら、あの巨大兜は、
城娘の皆さんを狙っているようですね……。

千狐
此の地も、仲間の皆さんも、兜に奪われるわけにはいきません!
殿、何としてでもあの兜を討ち果たしましょう!

後半
黒川城

御殿様……。

黒川城
私の魂を……救って頂き、ありがとうございます。

黒川城
ようやく、城娘として……主と呼ぶべき方に会うことができました……。

やくも
えええっ!? 
この娘さんも城娘だったがや!?

千狐
巨大兜が、この方を指して黒川城と呼んでいた時から、
そうではないかという想いはありましたが……。

千狐
こうして無事に助けることができて本当に良かったです。

黒川城
もし、御殿様たちが来て下さらなかったら、
私は今頃、かつての城主、氏郷様……いえ、
蒲生氏郷の魂を悪用した巨大兜によって心身を永久に囚われていたことでしょう。

脇本城
かつての城主……蒲生氏郷……。

脇本城
なるほど、そういうことだったのですね。

大宝寺城
そういうことって、どういうことなの……?

脇本城
先ほどの巨大兜は、黒川城さんのかつての城主の魂を模して
その心身を駆動させていましたが、その魂による波長の適合によって、
黒川城さんは意識に反して、此の地に引き寄せられてしまったということです。

大宝寺城
…………?

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおお~ん!

脇本城
……わ、分からないなら分からないと、
法螺貝でなく、言葉で仰ってくださればいいのに……。

やくも
とりあえず、黒川城は殿さんのおかげで無事に城娘に戻れたし、
しかもこうして仲間になってくれるってことでいいがや?

脇本城
…………。

脇本城
そうですね、現実をありのままに理解するのならば、
それまでの過程すべてを故意に黙殺するのも時として聡明と言えましょう。

やくも
聡明やなんて、照れるだに~。

千狐
(たぶん、呆れられてるのよ、やくも……)

黒川城
ふふ……御殿様の周りには、愉快な方が多くいらっしゃるようですね。

柳川城
(愉快な方……)

柳川城
(私も、その一人に入っているのでしょうか?)

黒川城
話は変わりますが、巨大兜の脅威もこうして無くなった今、
御殿様たちはこれからどうするのでしょうか?

脇本城
私たちはこれまで、出羽国から南下して、比較的動きの活発だった
陸奥国南部の兜を退治しましたので、一度、出羽国北部にある我が本拠へと帰還し、
その後、準備が整い次第、陸奥国北部から中部への征伐を開始しようかと思います。

やくも
巨大兜を倒したから終わりかと思ったけど、
まだ行かなきゃいけない所がけっこうあるんやね……。

脇本城
とはいえ、残りの地は
今までの遠征に比べずっと楽になるはずです。

やくも
どういうことがや……?

脇本城
先ほどの巨大兜の行動や力量から察するに、
恐らく此の地の兜を煽動していた存在と見て間違いありません。

脇本城
ですので、先ほどの巨大兜を倒したことで、
既に東北全土にて活発化していた兜の動きは
その激しさを失うと予想されるからです。

黒川城
なるほど……。

黒川城
指揮系統を失った兜ならば、
今の御殿様たちにとっては恐るるに足らぬと、そういう訳ですね。

脇本城
ええ。過信は良き事とは言えませんが、
相応の自信ならば、在るにこしたことはないでしょう。

黒川城
素晴らしい目算にございます、脇本城さん。

黒川城
私も軍略や知識においてはある程度の自負があります故、
どうか貴方と共に、御殿様の助けとさせてください。

脇本城
願っても無い申し出です、黒川城さん!
是非とも、貴方の叡智をお貸しください。

やくも
(な、なあ千狐ぉ……)

千狐
(……何よ、やくも?)

やくも
(黒川城も脇本城も、どっちもすごく頭良さそうやけん、
いつもみたいに千狐が講釈する隙がないだに……)

千狐
(コンッ! とっても悔しいのぉっ!)

千狐
(――って、何言わせるのよ! そんなこと全然これっぽちも思ってないのー!)

やくも
(いひゃいだにぃっ! ほっぺをつねるのは止めるがやぁっ!!)

脇本城
それでは殿、千狐さんの転移術にて、
一度我が本拠、出羽国へと戻りましょう。

脇本城
戦いで疲弊した皆さんに、幾分かは馳走を振る舞うこともできるかと思います。

脇本城
今日はしっかりと身体を休め、明日からの戦いに備えるとしましょう!

やくも
わ~いっ! ご馳走たのしみだにぃっ!

柳川城
そうですね、やくもさん!
今日くらいは私も羽目を外して……。

柳川城
そう、羽目を……はず、して…………。

柳川城
――っ!?

柳川城
(な、なに……今の感覚は……?)

柳川城
(とてつもなく邪悪な存在が私たちを視ていたような……。
なのに……今はもう、全くその気配を感じることが出来ない……)

柳川城
(先刻の巨大兜よりもずっと強く、禍々しい霊気だったのに……どうして?)

千狐
どうかしましたか、柳川城さん?

柳川城
い、いえ……何か、妙な気配を感じたもので……。

千狐
……妙な、気配?

千狐
すみません、千狐は何も感じませんでしたが……。

柳川城
そう……ですか。

柳川城
(あの千狐さんが、何も感じ取れなかったということは、
やはり私の勘違いなのでしょうか……)

柳川城
(殿……)

殿
…………?

柳川城
す、すみません……無用な視線を向けてしまって……。

柳川城
さあ、脇本城さんの本拠へと戻りましょう。

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
(殿……)

柳川城
(たとえ、どんな敵が来ようとも、
貴方様を守り抜いて見せます……)

柳川城
(この命に代えても……必ず……)

こうして巨大兜の脅威を除き、
新たな城娘、黒川城を仲間とした殿たちは、
脇本城の本拠へと帰還する――。

――だが。

巨悪は、未だ東北の地に在った……。

???
…………。

???
……氏郷。
まさかアノ程度の雑魚に敗れるトハ……奥州ノ面汚シメ。

???
……殿、か。

???
面白い……貴様が奥州ヲ欲すとアラバ……俺が、この手デ滅するマデダ……。

第28話 正義の味方 ~陸奥(陸中)~[]

再び始まった東北地方における兜討伐。
向かう先は陸奥国中部。そこで殿たちは、
兜に取り囲まれた町娘の姿を目にする……。

前半
――陸奥国、某所。

少女はひとり、遠くの夜空を見つめていた。

千代城
そろそろヤツらが動き出す頃合じゃな……。

千代城
じゃが、未だ此の地に彼を来させる訳にはいかない……。

千代城
柳川城という城娘の勘の鋭さには驚かされたが、
今はわらわの最後の力が機能しておる故、
此の地に存するヤツの霊気を感じ取ることは出来ないじゃろう……。

千代城
……まあ、おかげでわらわの城娘としての力は殆ど失われたがな……。

千代城
…………。

千代城
……城娘を束ねし者よ。

千代城
今は、未だ目覚めぬ城娘たちの許へと向かうのじゃ……。

千代城
それが、この地を救う最善の道なのじゃから……。

――翌日。

出羽国北部、某所。

柳川城
…………。

千狐
柳川城さん?
あの……どうしたのですか、ぼうっとして?

柳川城
……え?

柳川城
あ、その……すみません。

柳川城
少し、考え事をしていたもので……。

千狐
考えごと……ですか?

千狐
あの、あまり一人では抱え込まないで下さいね?

千狐
千狐が、何でも相談に乗ります。
頼って頂けると嬉しいですわ!

柳川城
……千狐さん。

柳川城
ありがとうございます。
では脇本城さんのお話が終わったら、少し話をさせてください……。

千狐
分かりましたわ。

脇本城
――というわけで、巨大兜討伐後、
こうして我が本拠にて休息を取った訳ですが、
改めて、出立の準備は出来ていますでしょうか?

やくも
大丈夫だにぃ!
お弁当もしっかり作っちょーけん、
何も抜かりは無いがや~!

脇本城
それでは、これより東北における兜討伐を再開したいと思います!

大宝寺城
ねえねえ、兜討伐の再開だなんて大げさに言うけどさ、
すでに陸奥国で大型兜を倒してるし、
後は残党を討つって感じなんだよね?

黒川城
間違ってはいませんが、油断をしてはいけません。

黒川城
確かに、東北において活性化した兜たちはその支柱を失ったことで、
軍勢を著しく弱めたかもしれません。

黒川城
それでも相手はあの兜……。
用心するに越したことはないと思います。

大宝寺城
でもさ、今までの遠征よりは楽になりそうなんでしょう?

黒川城
その可能性を否定はしません。

矢留ノ城
……それが本当なら、嬉しいです。

矢留ノ城
また、大きな兜が出てきたらどうしようかと……、
実は少し……心配だったのです。

大宝寺城
まったく、矢留ノ城は心配性だなぁ。

大宝寺城
ほら、私の法螺貝貸して上げるから、思いっきり吹いてごらんよ!

矢留ノ城
え!? ど、どうしてそこで法螺貝になるのでしょうか……?

大宝寺城
いいからいいから、ぶおお~んって吹いてごらんってば!

脇本城
もう、大宝寺城さん! 少し気が緩みすぎですよ!

黒川城
同感です! これから私たちは戦いにいくのですよ?

大宝寺城
――っ!?

大宝寺城
うっ、ぅぅ……ぐすっ、ごめんなさいぃ……。

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおおお~ん!

やくも
(悲しくても結局吹くんやね……)

鬼ヶ城
おいおい、気張るのはいいけどよ、
何もちっせぇ城娘に剣幕向けるこたぁねーだろ?

黒川城
す、すみません……。
注意喚起の為だったのですが、少しばかり語気が強くなっていたようで……。

脇本城
……同じく、です。

鬼ヶ城
大宝寺城、お前もお前だ。
あんなこと言われただけでいちいち半べそかいてんじぇねえよ。

大宝寺城
……うん。

大宝寺城
もう大丈夫!

大宝寺城
脇本城も、黒川城も、私のことを思って叱ってくれたの、
ちゃーんと分かってるもん!

黒川城
大宝寺城さん……。

脇本城
共に殿のお役に立つ為、改めて力を合わせていきましょうね!

大宝寺城
うん! 私、もっともっと頑張るよ!

鬼ヶ城
へっ、急に良い面構えになったじゃねえか。

鬼ヶ城
ま、不安になっちまう奴がいるのはしょーがねぇけど、
なんも心配することはねーよ。

鬼ヶ城
どんな敵が来よーが、俺様が全部まとめて蹴散らしてやっからさ!

鬼ヶ城
……でぇ、どの方角に向かえばいいんだ?
陸奥北部から中部へ、って感じで進むんだっけか?

脇本城
当初はその進路を考えていましたが、千狐さんと話し合った結果、
先ずは、より凶悪な兜の気が強く感じられる陸奥中部へと東進し、
それから北へと向かう進路を取ろうかと思います。

黒川城
成る程、強き邪気を感じ取ったというのならば、
時間が経つ毎に被害も大きくなる……。
ならば、悪路であろうとそちらを優先するのが妥当でしょうね。

鬼ヶ城
まあ良く分かんねえけど、俺様は戦えれば何だっていいぜ。

鬼ヶ城
っしゃぁ! んじゃ、そろそろ行こうぜ、殿!

殿
…………!

こうして、再び殿一行は兜征伐を再開する為、出立するのだった。

――陸奥国中部、某所。

黒川城
……ふむ。

黒川城
陸奥国に入り、ここまでの道中に遭遇した兜ですが、
確かに、その気勢は先の戦いよりも幾分か柔いものにも感じます……。

脇本城
それでも、やはり手強いことには変わりありませんね。

脇本城
少しこの辺りで休息を取り――

千狐
――待って下さい!
何やら彼方が騒がしいですわ……!


……囲メ……。

兜軍団
囲メ……囲メィッ!

不来方城
くっ……とうとう追い詰められちまったみたいだな……。

兜軍団
…………覚悟シロ。

不来方城
ひとりの人間にそんな大群で寄って集って、覚悟しろ……だって?

不来方城
恥を知りな、兜ども! 
お前らには正義ってもんが微塵も感じられないぜ。


…………黙レ。

兜軍団
……黙レ……黙レ……。

不来方城
お、何だよ? 図星を指されて怒ってんのか?

不来方城
その反応だけでも、お前らのやましさが透けて見えるぜ!

不来方城
ほら、かかってこいよ!
たとえ刺し違えてでも、大事なこの場所は守ってみせる!

不来方城
それこそが、俺が信じる正義……そして、これこそが俺のあるべき姿だからだ!


小癪ナ……!

兜軍団
……穿テ……穿テェッ!!

不来方城
――っ!

覚悟を決めた少女へ、兜の鋭き害意が迫る。

――だがその時、
兜と少女の間に、勇ましく割って入る者の姿が在った。

鬼ヶ城
……へへ、危なかったな!
俺様が来なかったら今頃は兜たちに――

鬼ヶ城
――っておいおい、
さっきまで威勢良く啖呵を切ってた割にゃ、足が震えてんぜ?

不来方城
……う、うるさい!

不来方城
っていうかお前、誰だ!?

鬼ヶ城
そうだな……。

鬼ヶ城
とりあえず、お前の味方なのは間違いねぇな。

不来方城
……おお!?

不来方城
もしかしてお前、正義の味方か?

鬼ヶ城
……はぁ? 正義の味方、だと?

不来方城
ち、違ったか?

鬼ヶ城
まあ、よく分からねーが、そういうことにしてさっさと後ろ下がれ。

鬼ヶ城
今は、目の前の兜を打っ倒さなきゃいけねーんだからな。

黒川城
……はぁ、はぁ……よ、ようやく追いついた……。
……鬼ヶ城さん、先行しすぎです。

脇本城
城娘の姿にもなっていませんし、
何かあったらどうするのですか……。

不来方城
おわっ!? また味方が増えた!

不来方城
しかも何か強そうな恰好と武器もってるし!

不来方城
やっぱりあんたら、正義の味方なのか!?

鬼ヶ城
分かったからちょっとどいてろって、お前。
今から俺様は戦う準備するんだからよ……。

不来方城
戦う準備……?

鬼ヶ城
はぁ――ッ!!

不来方城
うぉっ、眩しっ……!?

不来方城
つうか、何で急に光り出してるんだお前……っ!?

不来方城
――って、あぁぁあああっ!?

鬼ヶ城
っしゃぁ! これで準備万端だぜ!

不来方城
お……おお……お、お……っ!?

黒川城
(驚きのあまり、言葉にならないようですね……)

脇本城
(無理もないでしょう……城娘など見たことないはずですから)

不来方城
お、鬼が出たぁぁああああっ!?

鬼ヶ城
おい、ちょっ……待て、どこ行くんだ!?

やくも
鬼ヶ城の見た目が怖すぎて、逃げ出したみたいだに……。

鬼ヶ城
馬鹿言ってねえで、早くあいつを捕まえろ!
兜に殺されるぞ!?

千狐
あの方のことは千狐たちに任せてください!

鬼ヶ城
ったく、世話のかかるガキだぜ……。

鬼ヶ城
まぁいい。
俺様たちは心置きなく兜退治といこうぜ、殿?

鬼ヶ城
っしゃぁー! 全員、気合い入れろ!
これから思う存分、暴れてやろうぜぇええっ!

後半
不来方城

危ないところを助けてくれて、本当に助かったぜ!
ありがとな、殿。

不来方城
おかげで、城娘としての自分も取り戻すことができたぜ!

鬼ヶ城
なんだ、お前。城娘だったのかよ。

鬼ヶ城
だったらさっさと言えってんだよ、まったく!

不来方城
…………む!

鬼ヶ城
な、なに睨んでんだよ……?

不来方城
俺はな、領地に鬼が来ないように
じっと見張ることを使命としてきた城娘でもあるんだ。

不来方城
すなわち、俺にとって鬼は不倶戴天……。

鬼ヶ城
……ああそうかよ。

鬼ヶ城
いいぜ、喧嘩なら喜んで買ってやる。

鬼ヶ城
見たところ、お前なかなかに強そうだしな!

不来方城
…………。

不来方城
…………ふっ。

不来方城
鬼にしちゃ面白いやつだな、お前。

鬼ヶ城
そりゃあ、こっちの台詞だ。

不来方城
……いいだろう。気が削がれた。
お前は退治しないでおいてやる。

不来方城
それに、助けてもらった恩もあるしな。

鬼ヶ城
そりゃどーも。

鬼ヶ城
けど、暇なときは俺様の喧嘩の相手に付き合ってもらうぜ?

鬼ヶ城
殿とするのも楽しいが、お前との喧嘩も同じくらい面白そうだからな。

不来方城
ああ、考えといてやるよ。

不来方城
それより殿。
さっき千狐から聞いたぞ。

不来方城
何でも陸奥中で暴れてる兜を退治して回ってるそうじゃねえか。

不来方城
先刻の戦いで、お前にはきちんとした正義を感じた。
だから俺もその義にのっからせてくれ。

脇本城
殿、思わぬところで、
心強い味方が増えましたね!

やくも
ただ、あの金棒……とげとげが刺さりそうで怖いがや……。

不来方城
安心しろって。
この金棒が倒すのは悪いやつと鬼だけって決まってるんだからよ。

やくも
んん~。そうは言ってもやっぱり怖いだにぃ……。

黒川城
何はともあれ、仲間が増えたことは喜ばしいことですね、御殿様。

黒川城
それではこのまま北進し、次なる地へと向かいましょう!

第29話 塞翁之馬 ~陸奥(陸奥)~[]

奥州最北の神聖なる地に辿り着いた殿たち。
そこで思いがけず出会った女性に、
不来方城は妙な既視感を覚えるのだが……。

前半
――陸奥国北部、某森。

根城
……はぁ。

根城
どうしよう……。

根城
あたし……これでもか、ってくらい道に迷ってる……。

根城
乗ってきた馬ともはぐれちゃったし……。

根城
ここら辺って、かなり有名な霊域だったはずだけど、
……何か変なものでも出たらどーすべ……。

根城
――っ!?

根城
何か、向こうから声が聞こえる……!

根城
幽霊とかじゃ、ないよね……?

根城
いやいや、考えすぎだて、あたし!

根城
よし、そうと決まれば道を尋ねるべ!

根城
あのー! ちょっといいですかぁ?

不来方城
……ん? 何か用か?

根城
――金棒っ!?

鬼ヶ城
あぁん? どうかしたのか、不来方城?

根城
――鬼までいるしっ!?

根城
まさか、あの世に私を連れて行こうっていうんじゃ……!?

根城
こんなところでまだ死ねない!
逃げるんじゃ、あたし……!

やくも
あの娘さんは一体何がや~? 
話しかけてきたと思ったら、急に逃げていっただに。

不来方城
どうせ鬼ヶ城の姿を見てびびったんだろ。

鬼ヶ城
お前の金棒にも怖がってただろうが!

脇本城
まぁまぁ、落ち着いて下さい、二人とも。

脇本城
それよりも先ほどの方はどうして私たちに話しかけてきたのでしょうか?

黒川城
何やら様子がおかしく見えましたが……。

大宝寺城
山伏としての勘だけど、
たぶんさっきの人、道に迷ってたんだと思う。

矢留ノ城
そ、それが本当なら呼び戻した方が良いのではないでしょうか……?

千狐
そうですね!
殿、すぐに彼女を追いかけましょう!

やくも
よっしゃ、それじゃ早速――、

やくも
――って、どうしたがや、不来方城?
何だか難しい顔しているだに。

不来方城
……いや。さっきの女、何か見覚えがあるような気がして……。

不来方城
まあ、そんなことはどうでもいいか。

不来方城
ほら、やくも。
俺たちもさっきの女を追いかけにいくぞ!

やくも
了解だにっ!!

――陸奥国最北部。

根城
はぁ……はぁ……どう、しよう……。

根城
こんなところにまで逃げてきちゃったけど、
勝手に入っちゃってよかったのかな……?

根城
でも、鬼に金棒な感じのよく分からないのが襲ってくるし……。

根城
……き、きっと此処らの地蔵さまも許してくれるはずだて……。


――ガサッ!

根城
……え?

兜軍団
――ザザッ、ザザザッ!!

根城
また変なの出てきたぁっ!?

根城
何で今日はこんな目にばかり遭うのぉ……。

根城
誰か……誰か助けてよぉ~!

不来方城
――っ!?

不来方城
へへ、ようやく見つけたぜ!
ったく、何てところまで逃げてんだよ。

不来方城
――って、お前……何泣いてるんだ?

根城
金棒と鬼とザザザって感じのに追われれば、
そりゃあ泣くに決まってるべ……。

不来方城
何言ってるんだお前……?

兜軍団
……城娘……発見ッ! 城娘……発見ッ!

不来方城
ああ、なるほど……兜が居たってわけか。

根城
はぁ……。
もう駄目なんだ……あたしの人生、ここで終わりだて……。

不来方城
ばーか、俺が終わらせたりなんかしねえよ!

根城
――え?

不来方城
そうだよな、殿?

殿
…………。

殿
…………!

根城
……あ、あなた達は……いったい?

不来方城
俺の名前は不来方城! 正義の味方だ!

根城
不来方城……? 正義の……味方?

根城
(どうして? 懐かしさが、あたしの胸を満たしてる……この子はいったい何なの?)

根城
本当に、大丈夫なの……?

不来方城
安心しろって。
殿に目覚めさせてもらった俺の魂、今はお前を救う為に燃やすぜ!

不来方城
誰が相手でもこの不来方城に敗北は無い!
さあ兜ども、どっからでもかかってこい!

後半
根城

みんな、助けてくれて本当にありがと!
おかげであたし、城娘としてまた復活できたよぉ~!

黒川城
まさか、貴方も城娘だったとは……。

大宝寺城
たぶん、偶然なんかじゃないよ!

大宝寺城
此処はすっごい霊域だもん!
きっと私たちを引き合わせてくれたんだよ!

黒川城
お救いすることが出来て本当に良かったですね、御殿様。

根城
さっきはみっともないところを見られちゃったけど、
これからは取り戻した城娘の力を使って、
殿の役に立てるように頑張るからね!

不来方城
…………。

やくも
……あれ? どうしたがや、不来方城?
さっきから黙って根城のこと見つめて。

不来方城
いや……何で気づかなかったのかな、って思って。

千狐
どういうことでしょうか?

不来方城
いやぁ、実は俺、根城姉さんとは昔からけっこう仲がよくてさ。
本当なら気づけて当然なはずだったんだけど……。

根城
不来方城、しばらぐだの。

根城
こうしてまた会えて、ほんとに良かったよぉ!

不来方城
そ、そうっすね……。

不来方城
……うーん。

根城
ど、どうしたの? 何かあたしの顔についてる?

不来方城
そういうわけじゃ――

不来方城
――って、あああっ!?

不来方城
そういうことかぁっ!!

根城
……え? 何が、そういうこと、なの?

不来方城
姉さんのその服装のせいで、気づかなかったんだ!

千狐
……服?

やくも
まったく意味がわからんだに……。

不来方城
いや、根城姉さんの服装の美意識って独特でさぁ、
さっきはすげー普通の恰好してたから今いちぴんとこなかったけど……、
いやー、やっぱりその恰好じゃなきゃ根城姉さんじゃねえよな!

根城
うぅ……何かそれって褒めてなぐね?

大宝寺城
私は根城さんの服、格好いいと思うけどなー!

矢留ノ城
……私も、その帽子……ちょっと被ってみたいです……。

不来方城
俺はもちろん遠慮しておくぜ!
(俺も姉さんの服を着てみたいぜ!)

根城
不来方城……やっぱり褒めてなかったんだぁ……。

不来方城
し、しまったっ!?
本音と建前を間違えたぁぁっ!

根城
もう……っ!

根城
でも、不来方城が相変わらずで何だか安心しちゃった。

根城
で、これから殿たちはどうするの?

根城
聞いた話じゃ、此処らの兜たちを倒して回ってるって話だけど、
次はどこに向かうつもり?

やくも
……ん? よく考えたら、
これでもう陸奥ぜんぶを回ったことになったんじゃないがや?

脇本城
確かに、今この場所は奥州の最北ですし、
これまで進んできた経路を考えれば、
兜がいそうな場所は一通り回れたかと思います。

黒川城
大きな怪我人もなしに、
なんとか遠征を終えることができそうですね。

矢留ノ城
……じゃ、じゃあ……これで、東北の地は兜の脅威から、
救われたってことですか……?

大宝寺城
そうみたいだねー!

大宝寺城
何だか気分が高まってきちゃったぁ!
みんなで法螺貝を吹き鳴らしながら帰ろ――

千狐
――待って下さい。

脇本城
どうしたのですか、千狐さん……?

千狐
まだ、終わってなどいないのです……。

黒川城
ど、どういうことですか……?

千狐
実は、少し前から……千狐は、東北のある箇所に存在する
兜たちの霊気をより明確に感じ取ろうと心を砕いていました。

やくも
何でそげなことを……?

柳川城
私が、千狐さんにお願いしたのです……。

やくも
や、柳川城が……?
どういうことがや?

柳川城
実は……。
陸奥の南西部にて巨大兜との戦いが終わった後、
私は、妙な気配を感じたのです……。

矢留ノ城
み、妙な気配……?

柳川城
……それは、あまりにも凶悪すぎる存在の気配でした。

柳川城
最初は気のせいだと思っていたのですが、
どうしてもその時の不安が拭えず、
千狐さんに特定の箇所に絞っての霊気探査を願ったのです。

不来方城
……で、結果は出たんだよな?

柳川城
……はい。

千狐
ここより南……不来方城さんと出会った場所よりも、
さらに南方に、巨大兜と思しき凶悪な気を感じ取りました。

黒川城
巨大兜……っ!?

黒川城
あれほどの巨悪が、未だ陸奥に潜んでいるというのですか!?

千狐
いいえ……同等などではありません。

千狐
先の巨大兜とは比べものにならないほどの
強大な力を有していることは間違いありません。

脇本城
それほどの力を持った存在に、
なぜ今まで気づけなかったのでしょうか……?

千狐
ごめんなさい……千狐にも、分かりません……。

千狐
ただ、此処での戦いを終えてから、
急激にその存在感は増し、今では間違えようの無い程にまで、
はっきりと感じ取ることができるのです……。

黒川城
隠れていたが、隠れる必要が無くなったか……、
……それとも、何かが巨大兜の存在を隠していたか。

脇本城
今の状況だけでは、何とも言えませんね……。

根城
ねえねえ、不来方城……。

根城
あたしは巨大兜ってのを見たことないけど、そんなに危険な敵なの?

不来方城
根城姉さん……俺もこの眼で見たわけじゃないけど、
柳川城の表情から察するに、相当な邪悪と見て間違いないかと……。

根城
……どうやら、とんだ時分に仲間になっちゃったみたいだね、あたし。

大宝寺城
……でも、放ってなんかおけないよ。

大宝寺城
此処は……私たちの大切な場所だもん!

不来方城
当たり前だ!
この不来方城がいる限り、悪は絶対に許さねぇ!

不来方城
何てったって俺は……

根城
正義の味方、だもんね。

不来方城
姉さん……!

根城
乗りかかった船だて、あたしも頑張るよ!

根城
それに、殿やみんなへの恩返しには
これ以上ないくらいの好機だもんね!

矢留ノ城
こ、怖いけど……私もお役に立ちたいです!

黒川城
皆、気持ちは一緒のようですね。

脇本城
それでは殿、すぐに南進し巨大兜の許へ向かいましょう!

第30話 独眼竜 ~陸奥(陸前)~[]

奥州異事の元凶たる巨大兜・伊達政宗現る。
天を喰らうが如き荒々しき野心を打ち砕き、
兜たちから此の地を救う為、いざ出陣せよ!

前半
――陸奥国中南部、某城内。

其処では、ひとりの娘が異形と対峙していた――。

千代城
…………。

千代城
分かっておった……。
ずっと、わらわには分かっておったのじゃ。

千代城
奥州すべてを覆うほどの、憎悪が……怒りが、
誰の者であるのかを……。

千代城
……のう、政宗?

――『それ』は、無極たる野心の剣尖であった。

真鍮蛾眉、其の伊達者を猶々孤高に。
玄蒼甲冑、其の躯心魂を猶々超然に。

時に忌まれ、刻に蝕まれた紅紫の眼光が瞬き、
今此処に天己朔たりと大望の顎門が明放する。

伊達政宗
……千代城、か。

伊達政宗
城娘としての力を失った貴様ガ、俺の前ニ立つとはな……。

伊達政宗
フッ……まさか、俺ヲ止めに来たとでも言うノカ?

千代城
だとしたら、どうするというのじゃ……?

伊達政宗
無論、滅すマデ……。

千代城
……政宗。

千代城
未だ、天を欲すか?

伊達政宗
……当然ダ。

伊達政宗
今この時世コソ……俺ガ望んでいた真ノ戦国……。

伊達政宗
秀吉への偽りの忠義も、家康との約束も、最早すべてが意味を失った……。

伊達政宗
……世が、俺ニ囁いているのだ。

伊達政宗
今コソ天下ノ覇者トナレ、とな……。

千代城
……偽りと言えど、その魂が欲すは不変……か。

千代城
だがわらわは知っている……おぬしが真に欲していたのは――。

伊達政宗
――それ以上ノ言を吐くなッ!

千代城
……わらわの言の葉に臆すか、政宗?

伊達政宗
黙れと、言っていル……!

千代城
……此方の意を汲み、解する気は無いということか。

伊達政宗
政重の城の言葉を……俺ガ信ずると思うてカ?

千代城
……否。

千代城
端から紛いの魂にわらわの辞が通ずるとは思っておらぬ!

伊達政宗
ならば何故……俺ノ前に立った、千代城ッ!?

千代城
時の重なりを、わらわは待っていたのじゃ!

伊達政宗
なん……だとッ!?

千代城
見ろ、政宗!
わらわの待ち人は、今まさに此の地に来たのじゃ。

殿
…………。

伊達政宗
貴様……。

伊達政宗
俺は貴様を知っているぞ……。

伊達政宗
俺の野望を阻む者……そして、俺ガ討つべき存在……。

殿
…………。

千狐
殿、危険ですわ! それ以上前に出てはいけません!

やくも
な、なあ……巨大兜の近くにいるあの娘はいったい誰なんや?

脇本城
このあたりの町娘……というには、何か様子がおかしいです!

黒川城
慌てるわけでもなく……それでいて気負っているわけでもない……。

黒川城
いったい、何者なのでしょうか?

千代城
…………。

大宝寺城
こ、こっちに来るよ!?

矢留ノ城
巨大兜も攻撃はしてこないようですが……。
……い、いったいどういう事なのでしょうか……?

千代城
ようやく、会えたのぅ。

殿
…………。

千代城
語るべき事は山ほど在るじゃろうが、今は時が足りぬ。

千代城
だが、わらわはあの巨大兜……伊達政宗と所縁在る城娘とだけ伝えておく。

脇本城
――城娘っ!?

千狐
ですが、彼女からは城娘としての力を殆ど感じません……。

脇本城
成る程……貴方はかつての私と同じように、
記憶だけはあるが、城娘としての力を失った者……というわけですね?

千代城
理解が早くて助かるのじゃ。

根城
そんなことより、あなたは早く安全な場所に下がったほうがいいって!

不来方城
ああ、そうだぜ。
……後は俺たちに任せとけ。

千代城
勿論、そうさせてもらう腹積もりじゃ……。

千代城
じゃが、気をつけよ。

殿
…………?

千代城
政宗は……。

千代城
奴は、強いぞ。

殿
…………。

殿
…………!

伊達政宗
どうやら……死出ノ覚悟は出来たヨウダナ。

伊達政宗
蒲生氏郷を凌ぐ貴様の力……今此処デ俺に示セ、殿……。

千狐
殿、兜が刀を構えましたわ!

伊達政宗
天をも喰ラウ、我ガ独眼竜ノ剣技……死ヲ以テその身に刻メッ!!

後半
千代城

城主よ、よくぞ政宗を討ち破った。

千代城
……正直、ここまで力をつけているとは思わなんだ。

千狐
あの……殿のことをご存じなのですか?

千代城
……む?

千代城
当然であろう?
あの蒲生氏郷との戦いは、此の地に
名声を轟かせるには十分すぎる勲功じゃった。

黒川城
でしたら、何故すぐに殿に救援を求めなかったのですか?

千代城
おぬしらが氏郷の戦いの後、
すぐに此の地に来るべきではなかったからじゃ。

脇本城
来るべきでは、なかった……?

千代城
ああ、そうじゃ。

千代城
だからこそ、残っていたわらわの城娘としての力を使って、
此の地に、ある仕掛けをさせてもらったのじゃ。

千代城
わらわは、此処らの地気や依代を利用し、
政宗の禍々しき霊気を外界へ漏らさぬよう制御したのじゃ。

黒川城
……制御?

黒川城
だからこそ、千狐さんが此の地にいる巨大兜の存在に
なかなか気づけなかったというのですか?

千代城
明察じゃ。

大宝寺城
そんなすごいことって、簡単にできることなの?

矢留ノ城
簡単じゃ無いけど……自分と強い縁がある地ならば、
できないことは……ないと思います……。

大宝寺城
ふーん、そうなんだぁ。

大宝寺城
でもさ、何でわざわざ私たちを遠回りさせたのさ?

千代城
戦力は大いに越したことはないからのぅ。
まずは陸奥に潜在していた城娘を覚醒させて欲しかったのじゃ。

不来方城
つまりは俺や根城姉さんが必要だったってことだな。

不来方城
千代城、お前のその読み……結果としてだが実に冴えてたぜ!

千代城
うむ、伊達に此の地の城娘をやっておらんのじゃ!

不来方城
……そこは笑うところか?

千代城
偶然じゃ。あまりつっこむでない。

千代城
それとな、此処に来る直前には、
必ず陸奥北部の霊域に立ち寄らせたかったのじゃ。

根城
っていうと、あたしと殿が出会ったところだね。

千代城
彼処は日本屈指の霊場じゃ。
政宗ほどの邪気と戦うとなれば、可能な限り万全を期したかった。

黒川城
……まさか、そこまでのことを考えていらしたとは……。

黒川城
この黒川城、感服致しました!
千代城さん、是非とも貴方の叡智を御殿様にお貸し頂けませんか?

千代城
元よりその意向じゃ。
まだまだ未熟者じゃが、この力を城主の為、尽くすとしよう。

やくも
(な、なぁ千狐……)

千狐
(なによ、やくも……?)

やくも
(脇本城や黒川城よりももっと頭良さそうな城娘が仲間になっただに……)

千狐
(……だから何よ?)

やくも
(このままだと千狐が講釈する機会がますます無くなりそうがや……)

千狐
(コンッ! いよいよ以て許せないのぉっ!)

千狐
(――って、何言わせるのよ!
そんなこと全然ほんとにこれっぽちも思ってないのー!)

やくも
(いひゃいだにぃーっ!
だからほっぺをつねるのは反則って言っちょーがやぁっ!!)

不来方城
ったく、仲良いなお前らは……。

不来方城
ま、これでほんとに東北での兜討伐は終わりってことだな。

根城
そうみたいね!

根城
と言ってもあたし、あんまり活躍の機会は無かったけど……。

矢留ノ城
そんなことないです……私よりもずっと殿のお役にたってました。

大宝寺城
何言ってるんだよ、矢留ノ城!

矢留ノ城
……え?

大宝寺城
みーんな頑張ったし、みーんな殿の役に立ててたよ!

大宝寺城
私ちゃんと見てたから分かるもん!

大宝寺城
ぶおお~ん! ぶおおお~ん!

黒川城
ええ、大宝寺城さんの言うとおりですね。

黒川城
誰ひとり欠けても、この勝利は掴み得なかった……。

黒川城
それは間違えようのない事実です!

不来方城
みんなで掴んだ勝利、か……。

不来方城
へへ、まさに正義の味方って感じだな!

脇本城
……そうですね。

脇本城
本当に……本当に、よかったです……。

脇本城
大事な東北の地を守ることが出来て……ぐすっ……、
本当に……ほんとうに、良かったですぅ……ふぇ~~~ん……っ!

不来方城
本気泣きかよっ!?

柳川城
仕方ありませんよ、だって……、

柳川城
脇本城さんの手紙から、この遠征は始まったのですから。

千狐
そうですわ! 脇本城さんが殿へ文を送って下さったから、
千狐たちは今この地に立ち、皆さんの力になれたのです!

脇本城
ぐすっ、ひぐ……そんな、たいそうなこと……してないれすぅ……うぅぅ。

千代城
何はともあれ、皆がひとりひとり此の地を想い、
そして行動をしたことが勝利に繋がったのじゃ。

千代城
じゃが、それを纏め上げ、一つの力としたのは、紛れもなくおぬしじゃ。

殿
…………。

殿
…………!

千代城
此の地の城娘として、改めて我が心の辞を贈ろう。

千代城
ありがとう、なのじゃ!



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]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...