足利義昭 …………。 やくも ど、どうした……もう終いだに!? 千狐 や、やりました! 巨大兜の力は、もう殆ど――! 足利義昭 ……これにて終幕、か。 足利義昭 負けた……負けた。 ああ、そうだな……確かに私は、敗北した。 足利義昭 ……だが。 足利義昭 ……私の敗北が、お前たちの勝利であるとは……限らない。 足利義昭 ――ぬううううううぅぅぅぅぅんっ!!! 殿 …………!? 那古野城 きっ、巨大兜が凄まじい力を発していますよ!? 柳之丸 まだ底力を残していたのかっ!? 今川館 自らの力を、懐の赤い珠に込めている……のか? じゃが……何のためにそんなことを? 千狐 あれほどの力を一度に失えば、 千狐たちに立ち向かうことなんて、とても……。 千狐 そもそも、あの珠がそこまでの力に耐えられる保証なんて―― 千狐 ――――っ! 千狐 まさか……まさか! 足利義昭、貴方は……! 殿 …………。 柳川城 死なば諸共……ということですか。 足利義昭 目的は一つ、此世を崩壊へと導くこと。 『足利義昭』の存在は……手段に過ぎない。 那古野城 最初から……追い込まれたら、 自爆するつもりだったのか……! 足利義昭 そう……決まっていたのだ。 お前たちが『勝てない』ことだけは。 柳之丸 そんなぁ……せっかく倒せたのに……! 足利義昭 …………。 殿 …………。 足利義昭 ……さらばだ。 足利義昭 お互い、無事に死ねたら……またどこかで―― ―――― ……至近距離での大爆破。 まばゆい光に眩む視界。 膨張する空気……拡散する灼熱。 爆発音が鼓膜を震わせ、あらゆるすべてを焦がしていく―― ―――― ??? ……これは。 爆ぜた力が、拡散していく。 このままでは、周囲の国々にまで被害が……。 ??? ……妾の胸に渦巻く、この想いはなんじゃ? ??? 惜しいと……悲しいと感じておるのか? 国や民を失うことが……殿たちの願いが、遂げられないことが。 ??? 殿……殿よ。妾は長らく、 お前の戦いを、この目で見てきた。 ??? 答えには未だ……辿り着けておらぬ。 分からぬことは増えるばかりだ。 負の記憶に焦がされる苦しみも、まるで和らぐことがない。 ??? じゃが……一つだけ確かなことがある。 ??? お前が治める世と、兜が治める世。 どちらかを選べと言うなら……。 妾は、お前の願いが実った先を見てみたい。 ??? ゆえに……片時。 おぬしの未来を切り開く、支えとなろう。 ??? 暗き闇より出でし『裏』たる妾の……この力で! 柳之丸 きゃあああぁぁぁぁぁぁっ!! 近づいてくるよ……爆風がっ! 那古野城 ――なんて勢いだ……受け止めきれないよ! 今川館 力も殆ど使い果たしとる……万事休すか――! ??? ――まだ早い! 最後の最後まで諦めるな! ??? 本当に貴方は、最後の最後まで手が掛かるんだから……。 殿 …………! 石田三成 全員、残る力を総動員しろ! 出し惜しみは要らぬ……これで最後だ! 立花山城 ――任せてっ! 私も受け止めるわ! ゴオオオオオオオオオオオォォ――!! 石田三成 ぐ、ぐぅぅ……これは……! 立花山城 なんて力なのよ……こいつ……! 柳川城 立花山城さん……目が覚めたのですね! 立花山城 またすぐ怪我人に……逆戻り、しそうだけどね……! やくも 石田三成……立花山城! 今川館 いかん! 義昭の爆風をまともに受け止めては! 立花山城 もう、こうするしか……手は無いわ。 壁役になれれば、本望……よ。 石田三成 その……通り! 奴の攻撃も、これで最後……。 力の全てを結束し……守り抜くのだ……! 柳川城 ……私たちも力を尽くしましょう! お二人と協力して壁となり、殿をお守りして―― 殿 …………。 殿 …………っ。 柳川城 ……『逃げろ』? 柳川城 ……そんな、寂しいことを仰らないでください。 立花山城 そうよ……貴方を犠牲に生き延びてまで、 何をしろっていうの? 柳川城 私の最期は、既に決まっているのですよ。 『柳川城』の全ては……貴方のためにあるのですから。 立花山城 ……怖くなんかないわ。 貴方を失うことに比べれば、へっちゃらよ。 柳川城 ……この命が続く限り、 貴方と共に生きていたいのです。 貴方を守る盾として……矛として。 立花山城 だから……信じてよ。 私と、柳川城の力を……。 殿 …………。 柳川城 ……一人では逝かせません。 殿の背中は御守りします……いつまでも、ずっと! 立花山城 さぁ……行くわよ、柳川城。 必ず、殿を守り抜きなさい……死んでもよ。 柳川城 …………はい! 千狐 お願いします、お願いします……! どうか城娘たちを……殿をお守りください……! やくも い、今のうちには、祈ることしかできんだにぃ~……! 殿 …………。 殿 …………! 柳川城 く、うぅ……ううう……! 柳川城 (殿だけは……殿だけは! 私の何と引き換えにしても良い。 だから殿だけは、どうか……!) ―――― 『何と引き換えにしても』……とな? それが真の想いならば……願え。 強く……強く願え! ……もっとだ! 柳川城 ―――― 長い……長い、衝撃……灼熱、光。 そして……やがては、それも収まり―― ―― ―――― ―――― ―― …………。 …………。 やくも (がばっ!!) やくも (きょろきょろ) やくも み……みんな! 無事だにっ!? 柳之丸 那古野城、大丈夫っ!? 那古野城 ぺっ、ぺっ……口の中に砂利がぁ……。 稲葉山城 し、信じられん……皆、 かすり傷程度で済んでおるようじゃぞ? 今川館 き、奇跡じゃ……奇跡が起きたんじゃ……! 立花山城 柳川城……柳川城っ!! 無事なの? 無事だったら返事を―― 柳川城 お、落ち着いてください立花山城さん。 無事ですから、私も……殿も。 殿 …………! 千狐 致命傷を負わなかったどころか、 皆、軽症で済んだなんて。 これは、どういうからくりでしょう……? 石田三成 わからん。だが……、 乗り越えたと見て間違いないようだ。 こうして生き延びているのだからな……。 立花山城 …………まさか。 立花山城 柳川城、貴方―― やくも ――うぅおぉぉ!!? あれは、あれはぁぁ!? 千狐 ――コンッ!? どうしたのやくも、急に叫びだして……? やくも あれを見るがや! 赤ーく光っとる欠片が見えるだに!? 千狐 ――……っ! あの輝き……見覚えがあるの。 柳之丸 さっきまで巨大兜の懐で輝いていた、 でっかい珠の……破片か? 那古野城 ああ、間違いない! あの珠が爆ぜた後、 こんな欠片があちこちに飛び散ったってことだな! 千狐 凄いわやくも! 大手柄よ! あの巨大兜について、新たな情報が得られるに違いないわ! やくも 苦しゅうない、苦しゅうないがや~♪ やくも ぐふふ……それじゃあの欠片は、 うちが責任を持ってお持ち帰りして―― 石田三成 ――待て、やくも! その欠片からは何か、嫌な予感が――! やくも ……へ? なんか言ったがや? 羊かんがなんやって――?(ぴと) バチィィィィイインッ!! やくも ぎゃああっ!? 痛っ、痛いだにいぃぃぃ!! 千狐 ――やくもっ! 何が起こったの!? やくも か……欠片に触ろうとしたら、 触れるか触れんかくらいのところで、 身体に衝撃がびりびり~って……。 石田三成 痛みはもう引いたのか? ……他に悪いところは? やくも ん~、もうどこも痛くないがや。 びっくりしてすぐに手を引いたのが良かったんかも……。 石田三成 ……自分の愚かさが恨めしい。 勝利に浮かれ……気が緩んでいたようだ……。 柳川城 どういう……ことですか? 石田三成 私たちは常に……事態が、 『最悪』へと転がっていくことを想定しなければならぬ。 それが、敵の大将を討ち取った直後であってもだ。 柳之丸 でも……その珠の欠片だって、 主である義昭が居なくなった以上、 大した脅威にはならないんじゃないか? 那古野城 そうだ……あの珠を悪用する奴なんて、 もうどこにも居ないんだから。 石田三成 ……そうかもしれない。 だが、想像してみてほしいのだ。 我々にとって『最悪の事態』とは、なんだろうか? 殿 …………。 石田三成 ……あの珠を生み出していたのが義昭で、 それを奴が利用していたのならば……まだ良い。 石田三成 だが例えば……義昭の力が、 あの珠に支えられていたとしたら……どうだ? 殿 …………!? 稲葉山城 そ、そんなことはありえん! 義昭に、強力な後ろ盾でもない限りは……! 立花山城 考えたくもないわ。 正に最悪の事態……ということね。 石田三成 不安を煽ってしまったが……今のは一つのたとえ話だ。 杞憂で終わる可能性も、多分にある。 石田三成 だが……私たちは考えなければならないのだ。 義昭が自然にああなったのか……そうでないのか。 そして奴に代わる敵が生まれることは、あり得るのか。 殿 …………。 やくも よ、よー分からんのやけど……。 要するに……どういうことだに? 石田三成 可能な限り速やかに、欠片を調べねばなるまい。 そして何より、他の欠片も余さず集める必要がある。 欠片が持つ強き力を、悪用する者が現れる前にな。 千狐 やくもの食い倒れ行脚は、 もうしばらく先になりそうね……。 やくも そ……そ……。 やくも そ、そんなのってないがやあぁぁぁぁぁぁ~~~~!! ―――― 石田三成 ――うむ。これでよし……と。 千狐 そ、その欠片……。 持ち歩いても平気なのですか、三成さん? 石田三成 ああ……どうにかな。 今は、私の力で厳重に覆うことで、 欠片の持つ力を抑え込んでいる状況だ……。 石田三成 (先ほどの嫌な予感が、 的中しないことを祈るばかりだが……) 殿 …………? 石田三成 ――いや、なんでもない。考え事をしていただけだ。 とにかく……見える限りの欠片はこれで拾い終えた。 石田三成 珠の大きさを考えると、大半の欠片は、 まだ見つかっていないが……今はこれ以上のことはできん。 持ち帰り、その正体を究明することとしよう。 殿 …………! 石田三成 いや、礼を言われる程のことではないさ。 ……それでは千狐、転移術で帰還を―― ??? ――あ、あのっ。 石田三成 ――ん? ??? つかぬことを伺いますが、そこの青い髪の方……。 やくも ――ん、うちのことだに!? 今のうちは冷静さを欠いとるから、 あんまり刺激せん方が良いがや! 柳川城 無関係の人に絡むのはやめてください、やくもさん……。 稲葉山城 (……む? その者の姿、どこかで――?) ??? そこの青い髪の……二人。 もしかして―― ??? ――那古野城と柳之丸ではありませんか? 那古野城 ……ん? 柳之丸 え……? 名古屋城 私……名古屋城です。 覚えてませんか……私のこと! 那古野城 …………っ! 那古野城 お、覚えてる……覚えてるよ……! 今、突然思い出して……。 柳之丸 わたしもだよ……。 どうしてこんな大事なこと、忘れてたんだろ……。 石田三成 ……名古屋城。確かに、 忘れていたことが不思議に思える程の名前だな……。 稲葉山城 ……足利義昭の力によって、自由を奪われていたのだろう。 そして、奴が消えたことで……解放に至った。 今川館 では……他にも名のある城娘たちが今頃―― 長浜城 彦根城……彦根城……。 また会えて良かったよぉ……うぅ……。 彦根城 長浜城さんったら……。 泣くことないではありませんか。 そんな風にされたら、私まで……ぐす……。 長浜城 無事に戻ってくれて良かったよ……彦根城。 本当にごめん……もう忘れたりしないからね……! 彦根城 はい……そうですね。 これからは、いつでも一緒です。 真田丸 大坂城殿~!! 大坂城殿~! お~さかじょうどの~~~!! 雑賀城 (ぶんぶんぶんぶん) 大坂城 (ああ……思い出してきた。なんだか懐かしいな、この感じ) 大坂城 (皆に愛されるって……願われるって、 こんなに幸せなことだったんですね) 大坂城 よぉし、それじゃ――! 大坂城 みんなぁーー! 待っててくれて、ほんとにありがとぉ~! 大坂城 今日は心ゆくまで楽しんでいってねぇ~~~~! ファン一同 わああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 稲葉山城 ――うむ、そうじゃろうな。 ……名古屋城はどうじゃ。何か覚えていることはないか? 名古屋城 どこか暗い場所に……一人ぼっちで長い間、 取り残されていたような記憶が、ぼんやりと……。 名古屋城 ご、ごめんなさい。 曖昧な記憶しか残ってなくて……。 柳之丸 ……謝るのはわたしたちの方だよ。 本当はわたしたちが、 一番に気づかなきゃいけなかったのに……。 那古野城 ごめんね……。 でも会えて良かった……よかったよぉ……。 うぅ……ううぅ……! ―――― ―――― 佐賀城 鹿児島城、これは……! 鹿児島城 ええ、間違いありませんの! やってくれました……殿どんが遂に、やってくれましたの! 島原城 信じてはいたけれど……、 まさか本当に、こんな日がやってくるなんてね。 鹿児島城 ぼーっとしている暇はありません! 準備を始めましょう、殿どんの帰りを盛大に迎えますの! 千代城 ふぅ~……そうか。 そうかぁ……終わったのか……。 不来方城 どうした、千代ちゃん!? 急にへたり込んで、体調でも悪いのかっ? 千代城 いや、問題ない……それがな、聞いてほしいのじゃが―― 大多喜城 なんですって、千代ちゃんが倒れたと!? 大変だ……すぐに運ばなければ……! 千代城 ――ええい、うるさいうるさーい! わらわを気遣うなら、わらわの言葉を聞かんか! 千代城 ……それと! 千代ちゃん言うなと言っておるじゃろうが~! 龍王山城 そうか……遂にやったのじゃな、殿……! 信貴山城 ふふ……ふふふ。 信貴山城 ですが、油断するのはまだ早いですよ。 直に貴方は思い知るのです……本当の戦いは、 まだ始まっていなかったのだと―― 多聞山城 何をやっているのです、姉様。 信貴山城 ……いや、私の立ち位置を考えると、 こういうことを言っておくべきかと思いまして。 龍王山城 相変わらずじゃな、ぬし……。 鍋蓋城 感じたか! 新府城、乙女城! 兜の力が、一気に弱まっていくぞ! 新府城 はい、私も感じま――こほん。 ああ、私も感じたぞ。 間違いない、殿たちの戦いが実を結んだんだ! 乙女城 と、殿は無事なのでしょうか……ちょっと心配です。 坂戸城 ……とはいえ、此地を離れるわけにはいかない。 坂戸城 主を無くした兜の動向を追い、 此地の平穏を守り続けなければな。 新府城 ――坂戸城、いつの間にっ!? 鍋蓋城 何の用だよ、突然……! 坂戸城 なに、お前たちが腑抜けていないか、探りに来てみただけだ。 坂戸城 成すべきことを忘れるなよ。 それを伝えたかった……ではな。 鍋蓋城 なんだよ……相変わらず無愛想な奴だぜ。 乙女城 でも……私たちのこと、心配してくれたんですよね。 ―――― 坂戸城 (よくやったな……殿。 近い将来……再会を果たし、 共に勝利を祝えることを楽しみにしているぞ) 坂戸城 (それにしても……遂にこの日がやってきたのだな。 兜が力を失ったというのなら、私の主ともあるいは……) 坂戸城 いや……無用な期待は止めておこう。 出会えぬのなら……それが私の運命なのだ。 坂戸城 新府城たちに言った手前、無様な姿は見せられない。 私も仲間たちと合流し、共に―― ??? ――寂しいことを言いますね、坂戸城。 私の不在を悲しんではくれないのですか? 坂戸城 ――っ!? あ、貴方は……! ??? さぁ、急いで帰りますよ。 貴方の言う通り、やるべきことは山積みなのですから。 ??? ……案内をお願いできますね、坂戸城? 坂戸城 はい……はい! 喜んで! 駆け足で帰りましょう! 支城たちも、貴方の帰りを待ちわびています! この日……巨悪が討たれ、 世に光がもたらされたことを、各地の城娘たちが知った。 ――それから……。 千狐 こらあぁぁ! やくも、待ちなさ~い! やくも 待たないがや~♪ 今日のうちはひと味違うだにぃ~! 立花山城 ……はぁ、元気ねぇ。 決戦を乗り越えたばかりだっていうのに。 柳川城 立花山城さんもお元気なようで……安心しました。 立花山城 言ってくれるわね。 こう見えて、結構疲れているのだけど? 柳川城 ですが……ここまでの苦労を思えば、奇跡のようなものです。 誰一人欠けることなく、決戦を越えることができたのですから。 立花山城 ……奇跡。 そう……奇跡、ね……。 柳川城 …………? 何か、気になることでも……? 立花山城 そうね……私もそう思うわ。 皆の願いが手繰り寄せた奇跡だってね。 立花山城 でも……そうじゃなかった可能性も、大いにあるわ。 たとえば、あの時の貴方が―― 柳川城 …………? 立花山城 …………。 立花山城 (いえ……今更こんなことを言うのは、野暮よね) 立花山城 (私は柳川城を信じて……託した。 そしてこの子は全てを守り抜いた。それが答えじゃない。 此世がどんな道を歩んだって、私に文句を言う筋合いはないわ) 立花山城 ……ごめんなさい。 なんでもないの……今のは忘れてちょうだい。 立花山城 さ、行きましょ。そろそろ昼餉の時間だわ。 今頃やくもがお腹を空かせて―― 柳川城 …………。 ??? それが真の想いならば……願え。 立花山城 ――っ!? 立花山城 柳川城、貴方っ――!? 柳川城 …………? 柳川城 立花山城さん、もしかして……。 立花山城 …………。 柳川城 ――もしかして、 どこかで頭を打ってしまわれたのですか? 立花山城 …………え? 柳川城 どうもこうも……挙動が不審じゃないですか! 何かを言いかけてる最中に固まって……泣きそうな顔をしたり。 急に慌てた様子で振り向いたり! 柳川城 心か身体か……その両方か。 何か問題を抱えているに違いありません! 柳川城 千狐さんか殿に言って、相談を聞いてもらいましょう! すぐに呼んできますから! 柳川城 千狐さ~ん、殿~! 助けてくださ~い! 立花山城さんの頭がおかしいです~! 立花山城 ちょっと! 失礼なこと言わないでよ!? 殿 …………? 柳川城 あ、殿……良いところに! 今ですね、立花山城さんの頭が―― 立花山城 ――やめなさいって! 殿は今、 久しぶりの休みを謳歌しているところなんだから! 柳川城 ――そ、そうでしたね。 すみません。悪ふざけが過ぎました……。 殿 …………。 柳川城 あの……殿っ。 柳川城 此度の戦い、本当に……本当に、お疲れ様でした。 柳川城 思えば……あの日、 殿の許に馳せ参じてから、長い時が流れましたね。 柳川城 多くの苦難に見舞われながらも、 ここに至ることができたのは……殿のお陰です。 柳川城 散らばった珠の行方に……兜の残党。 果たすべき役目はまだ残っていますが……きっと大丈夫。 柳川城 殿のお傍に居れば……どんなことだって乗り越えられる。 私はそう信じていますよ。 柳川城 それから……ですね。 ずっと、お伝えしたいと思っていたことが……。 柳川城 あ、あの……私は……貴方のことが、す―― やくも うおおおおおぉぉぉおおおお! やくも まんじゅうも羊かんも、肉も魚も米も野菜も! ぜーんぶうちのもんだにぃ~~~~~! 千狐 コーンッ! そのお菓子は、 千狐が楽しみに取っておいた物なの! 手を付けたら承知しないのー! 千狐 柳川城さん、助けてください! やくもの非道な所業を、 これ以上許すわけにはいかないのー! 柳川城 ――……ええと。 柳川城 は……はーい。 今行きますので、待っててくださいね~……。 立花山城 (……意気地なし) 柳川城 (うぅ……返す言葉もございません……) 殿 …………! ―――― 甘崎城 ぷかぁ……ぷかぁ~……。 はぁ、い~い気分ですぅ。 甘崎城 悪い奴が倒されて、世の中が平和になったとか……。 各地で行方知れずだった城娘が見つかってるとか……。 細かいことはよく分からねーですけど、平和なのは良いことです。 甘崎城 頑張ってくれた城娘や、 『殿』って人には心から敬意を―― どかあぁぁぁぁん!! 甘崎城 ぎょあぁぁああああっ!? なんですなんです! 砲撃ですぅっ!? ―――― ??? ちぃ、外したか……! ??? こうも的が小さくちゃ、当たりゃしねぇ! 城娘なんだからもっとでかくなりやがれ、でっかくよぉ! ??? ん~、まぁいいや! 数撃ちゃ当たるだろ! 撃って撃って、撃ちまくれ!! ??? 砲撃よーーーーーーい! ―――― 甘崎城 ふ、ふふ……ふふふ……。 ちょっとびっくりしたけど、もう平気です。 甘崎城 水軍城の大先輩である、 このわたしに楯突くとは、良い度胸をしてやがりますね……! 甘崎城 自分の行いの愚かさを、思い知らせてやるですぅ! ??? 放てーーーーーー!! どっかああぁぁぁぁぁぁぁん!!! 甘崎城 のわぁぁぁぁぁああ!!? ―――― 千狐 ふぅ……今日も所領は平和そのものね。 兜の残党も数を減らしつつあり、 決戦で見つけた欠片の調査には、三成さんが励んでくださっている……。 千狐 残った憂いは、 やくもがちゃんと更生するかどうかくらい……。 やくも し、失礼なこと言わんでほしいがや! うちはつまみ食い以上の悪さはしたことないだに! 柳川城 『つまみ食い』と呼べる規模ではありませんよね……。 下手をすれば食料危機に発展します。 殿 …………! やくも そ、それは流石に言い過ぎだに! うちだって少ーしずつ改善できるよう、努力を―― 立花山城 殿ぉ~~~!! 大変よ、大変なの! やくも なんだに……立花山城。 うちは今、所領の食料問題について熱い議論を―― 立花山城 冗談を言ってる場合じゃないの! ――この手紙、救援の要請よ!! 城娘に危機が迫っているって! 殿 …………!? 千狐 そんな……足利義昭を倒した今、 城娘を脅かすような存在なんて……! 立花山城 詳しい話は後回し! とにかく現地へ転移しなきゃ! ……お願い、千狐! 千狐 し、承知しました。……それでは殿! 準備が整い次第、出立いたしましょう! 殿 …………! 柳川城 ええ、もちろん私も同行しますよ。 殿の背中は私がお守りします……今までも、これからも! 殿 …………! 第一部天下統一了 ―――― ……人間、五十年。 下天のうちを比ぶれば……夢幻の如くなり。 一度生を受け、滅せぬもののあるべきか……。 ……鳴くまで待とうか? ……鳴かせてみせるか? それとも―― |