ストーリーテキスト/夜は短し歩けよ妖狸

ページ名:ストーリーテキスト/夜は短し歩けよ妖狸

目次

夜は短し歩けよ妖狸[]

夜は短し歩けよ妖狸 -前-

所領に届いた手紙により、山城国に迫る危機を
知った殿たち。すぐさま現地に転移した一行は
そこで、身の毛がよだつような叫びを聞く……。

前半

――山城国、某所。

この日、ある城娘から助力の要請を受けた殿一行は、
千狐の転移術により現地へと転移を果たしたのだが――

やくも
…………。

やくも
……見つからんだにぃ。

柳川城
……ですね。もうすっかり日も暮れてしまいました。

千狐
妖怪や、兜のものと思しき力は感じられるのですが、
周囲の暗さも相まって、上手く捉えられず……。

柳川城
今、山城国では妖怪の動きが活発化しているとのこと。
事は一刻を争います。慎重に……それでいて早急に、
敵の尻尾を掴まなければ。

殿
…………。

???
ね……さ……ぁぁー……。

殿
…………。

殿
…………?

???
ねえ……さ、……まぁ~~……!

殿
…………!

柳川城
はい……声、ですか?

千狐
ええ、千狐も聞こえました。
遠くから叫びのようなものが、確かに……。

やくも
叫び……もしかして、
誰か襲われたりしてるだにぃ……?

千狐
しっ……静かにして、やくも。また声が聞こえたわ――

???
ねえさまぁ~……どこぉ~……!?

殿
…………!

木幡山伏見城
姉様あああぁぁぁ!?
ボクの声が聞こえたら返事をぉぉぉぉ!!

木幡山伏見城
姉様、姉様ああぁぁぁぁぁぁぁ!??

千狐
…………。

千狐
今のは……木幡山伏見城さん、ですよね?
相当慌てていた様子ですが……。

やくも
だに……。
今後うちは『半狂乱』って言葉を聞いたら、
その度に今の光景を思い出すがや……。

???
ちょ、ちょっと! 姉……姉様ぁ、待ってよぉ~……。

柳川城
……っ! また別の声が……殿、お気をつけて……!

徳川伏見城
はぁ、はぁ……。
もう、木幡山姉様ったら……。
三人バラバラになって、状況が悪化してるじゃない。

柳川城
……っ! あ、あの方は――!

徳川伏見城
あれ……そこに居るのは、殿?
それに、みんなも!?

殿
…………!

柳川城
――徳川伏見城さん!
ようやく合流できました……無事で良かったです。

徳川伏見城
来てくれてありがとう……すっごく心強いよ。

徳川伏見城
まぁ、無事って言っていいかは……ちょっと分かんないんだけど……。

やくも
いったい何があったんだに?
木幡山伏見城の様子……ただ事じゃなかったがや。

徳川伏見城
……うん。えっと……それがね……。

殿
…………。

柳川城
そんなに言い淀んで……深刻な事態なのですか?

徳川伏見城
あ、ううん……殿たちに聞かせるのが、
ちょっと恥ずかしいなーって……。
我が家じゃ日常茶飯事なんだけどね。

徳川伏見城
これは、ついさっきの出来事なんだけど――

――――

指月伏見城
すー……すー……。

指月伏見城
…………。

指月伏見城
(ぱちり)

指月伏見城
…………。

指月伏見城
ふ……なるほどな。

指月伏見城
……どうやら妾は、遭難してしまったらしい。

指月伏見城
しかし……おかしいのう。先程まで、
木幡山伏見城の背中でうとうとしていたはずじゃが。

指月伏見城
それがどうして、こんな森のど真ん中に……?

指月伏見城
もしや……木幡山伏見城の奴が、
ついに妾のことを見限ったか……?

指月伏見城
……うぅ。考えたくないのぅ。

指月伏見城
まぁ……、
見限られても仕方のない振る舞いをしているのは、妾なのじゃが。

指月伏見城
…………はぁ。

指月伏見城
長浜城と墨俣城に侮られ、見返してやる……、
と心に決めたのはいつのことじゃったか。

指月伏見城
明日から始めよう、明日から……と言っているうちに、
随分と長い月日が経過してしまったような気がする……。

指月伏見城
しかし、まぁ……大事はないじゃろ。
木幡山伏見城はもちろん……徳川伏見城も、頼れる奴らじゃ。

指月伏見城
妾は隠居の身じゃし、
切った張ったは妹たちに任せておくべきじゃろ。

指月伏見城
妾のことも……まぁ、心配した誰かが見つけてくれるじゃろう。

指月伏見城
…………。

指月伏見城
見つけて……くれるよな?

指月伏見城
いや、ここまでにしよう。考えても悩みは増すばかり……。

指月伏見城
妾は今一度、眠り……有事に備えることに……しよう。

指月伏見城
すこー……すこー……。

指月伏見城
…………。

――――ずしーん。

???
グルルルル、グルルル……。

――ずしーん、ずしーん、ずしーん。

???
グルルルルルルルルル……。

指月伏見城
すこー……すこー……。

???
グルルル……グルルルルル……?

指月伏見城
すこー……すこー……! すこー、すこー……!

???
…………。

ずしーん、ずしーん、ずしーん――

指月伏見城
…………。

指月伏見城
(ぱちり)

指月伏見城
……怖ぁ。

指月伏見城
……なんじゃ今の……でかい狸?

指月伏見城
ふむ、妖狸の逸話は此地……、
山城国だけでなく、日の本全土に数多く存在する。
妖しを信じる者たちの恐怖が、奴らに力を与えてしまったのか。

指月伏見城
姿を変える能力に、人を惑わす狸囃子。
……種類も力も様々。これは厄介じゃな。

指月伏見城
先んじて殿たちの助力を仰いでおいたのは、
正しい判断だったわけか。不幸中の幸いじゃな。

指月伏見城
ともあれ……こうなってしまったら、
流石の妾もごろごろしているわけにはいかんのう。

指月伏見城
……見ておれ、お姉ちゃんの底力を見せてやるぞ。

――――

徳川伏見城
――っていうことだったの。

千狐
木幡山伏見城さんが……、
躓いた拍子に、おぶっていたお姉さんを……。

徳川伏見城
うん……それで指月姉様は、
眠ったまま斜面を滑り降りて闇の中へ……。

やくも
普通目覚めそうなもんやと思うけど……。

殿
…………。

徳川伏見城
返事が無かったところを見るに、眠り続けてたみたい。
我が姉ながら恐ろしい城娘だよ……。

柳川城
妖怪たちの退治に……お姉さん方の捜索。
双方を成し遂げなければならないのですね。

やくも
うひぃ……敵の姿も掴めとらんのに、大仕事だに……。

千狐
…………。

千狐
……いえ。そうでもなさそうよ、やくも……。

やくも
…………だに?

――ずしーん、ずしーん、ずしーん。

やくも
足音……?

???
グルルルルルル……。

徳川伏見城
と、獣の唸り声……?

柳川城
それも一つではなく……複数の声が。
私たちを囲うように……!

殿
…………。

殿
…………!

妖狸の長
グルルルルルルル……!

やくも
ああっ、見るだに殿さん!
一番奥に親玉っぽいのがおるがや!

柳川城
妖しの力を宿した狸……妖怪の一味ですか。

徳川伏見城
どこからか歌声みたいなのが聞こえてくるけど、
これも、あの狸たちが……?

千狐
どうやら妖狸の中に……、
周囲を鼓舞する力を有する者が居るようです。

柳川城
此度の戦……妖狸の力には、
充分に注意を払うことにいたしましょう。

殿
…………!

後半

徳川伏見城
喰らえぇぇっ!!

柳川城
……お見事です、徳川伏見城さん!

千狐
妖狸たちは数を減らし、確実に力を弱めています!

やくも
その調子で、あの親玉狸もやっちまうがやー!

徳川伏見城
う、うん……!

徳川伏見城
(だけど、まだ姉様たちの行方が分かってない……)

徳川伏見城
(今考えるべきなのは、妖狸の対処……。
 だけど、姉様たちにもしものことがあったらって考えたら――)

???
――何を不安げな顔をしておるのじゃ、徳川伏見城よ。

徳川伏見城
え……?

指月伏見城
すまぬ、心配を掛けたな。……じゃが安心せい。
今宵の妾は、やる気に満ちあふれておる。

指月伏見城
ここから先は、出し惜しみは無しじゃ。
愛する妹たちを守らねばならぬのでな!

徳川伏見城
……し、指月姉様っ!?

夜は短し歩けよ妖狸 -後-

故郷である山城国のため、そして愛する妹たちの
ために立ち上がった指月伏見城。妖狸の長との
戦が始まるが、彼女の思いは実を結ぶのか――

前半

指月伏見城
妖狸どもの侵攻はこの辺りにまで及んでおったか……。

指月伏見城
じゃが、大事はなかったようで安心したぞ、徳川伏見城。

徳川伏見城
そ、それはこっちの台詞だよ。
どうなっちゃったかと思って、本気で心配してたんだから……。

徳川伏見城
その上、木幡山姉様ともはぐれちゃうし……。

指月伏見城
木幡山伏見城のことは妾に任せておけ。
奴の行方はすでに掴んでおるのでな。

徳川伏見城
え……ほんと!?

指月伏見城
この後すぐ、妾はここを離れ……、
木幡山伏見城との合流を目指す。

指月伏見城
じゃからおぬしは殿の傍で、
妖狸の討伐に尽力するのじゃ……良いな?

徳川伏見城
う、うん……分かった!

殿
…………。

やくも
やたらとハキハキしとるんやけど……、
あの子は、うちの知っとる指月伏見城で……間違いないんよね?

千狐
千狐も……目の前の光景が信じられないの。

指月伏見城
殿……よくぞここまで来てくれた。
助力の求めに応じてくれたこと、感謝するぞ。

殿
…………!

指月伏見城
妹のこと、妾自身のこと……妾の不手際で、
余計な世話を掛けてしまったな……。

指月伏見城
時間が許すなら、
深く詫びたいところだが……今はそうもいかん。

指月伏見城
見ろ……妖狸どもの長が、動き始めるようじゃ。

妖狸の長
……グルルルルルル!!

柳川城
妖狸たちの力が、高まっている……。
あの親玉を中心に……!

指月伏見城
状況は徳川伏見城に話した通り。
妾は木幡山伏見城を連れ戻すため、ここを離れる。

指月伏見城
じゃから、すまぬが……、
此地の守りを、おぬしらに任せても良いじゃろうか?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
承知しました、ここはお任せください!

柳川城
妖狸は、私と徳川伏見城さんで必ず討ち果たします!
指月伏見城さんは、妹さんの捜索を!

指月伏見城
うむ! それでは……頼んだぞ!

後半

妖狸の長
グガアアアアァァァァァ!!?

殿
…………!

妖狸の長
グルル……グルルル……。

妖狸の長
…………。

妖狸の長
ずしーん、ずしーん、ずしーん――

やくも
あぁっ、妖狸たちが退散していくがや……!

千狐
無謀な戦いを避け、退散を選んだ……。
知恵も備えているのですね、彼らは。

柳川城
変化と鼓舞に加えて……城娘たちを惑わす妖しの力。

柳川城
此度は無事に乗り切りましたが、
今後も妖狸たちは、侮れない存在となりそうですね。

殿
…………!

徳川伏見城
……終わった。山城国もこれで安心……だね。

徳川伏見城
……あっ、そうだっ! 姉様たちは――

指月伏見城
――妾ならここに居るぞ、徳川伏見城。

指月伏見城
どうやら、妖狸の方は無事に片付いたようじゃな。

徳川伏見城
指月姉様……戻ってたんだ……。

指月伏見城
木幡山の奴も無事じゃぞ……ほれ、この通りじゃ。

木幡山伏見城
すぅ……すぅ……。

徳川伏見城
木幡山姉様が、
指月姉様の背中で眠る日が来るなんて……。
これ、夢じゃないよね……?

指月伏見城
ふふ、何を言うか。……まぁ、
いつもの妾を見ているおぬしには、
信じられんのも無理はない。

指月伏見城
じゃが、此度の一件でおぬしも理解したじゃろ?
妾もやる時はやる、ということをな♪

徳川伏見城
うん……そうだね。
姉様のこと、見直したかも……ちょっとだけ。

指月伏見城
そうかそうか♪ いやー、
おぬしにも見せてやりたかったぞ!
木幡山伏見城を救い出す際の、妾の働き!

指月伏見城
あれを目の当たりにしていれば、
妾のことをさらに尊敬していたじゃろうに♪

指月伏見城
(いやはや……焦ったのぅ……)

指月伏見城
(狸囃子にしてやられたり、
 木幡山伏見城に化けた狸にまんまと騙されたり……)

指月伏見城
(何事もなかったのは正に奇跡……)

指月伏見城
(ま、細かいことは置いておこう。今は、
 徳川伏見城から注がれるこの眼差しが、ただただ心地良い!)

指月伏見城
正に、終わり良ければ全て良し、という奴じゃな!
はーはっはっは♪

殿
…………。

指月伏見城
――と。すまぬな、殿よ。
何よりも先にまず、おぬしに礼を言うべきじゃった。

指月伏見城
おぬしらの助けがあったお陰で、
あの狸どもをこらしめることができた。
ありがとう……心より感謝するぞ。

徳川伏見城
あたしからも言わせて! ありがとう、殿♪

殿
…………!

指月伏見城
して、この後じゃが……良ければ、
妾たちの御城に寄っていかんか?

指月伏見城
此度の礼はもちろんのこと、久方ぶりの再会でもある。
腰を落ち着けて話せたら嬉しいのじゃが。

千狐
……よろしいのですか?
皆さんも、お疲れのはずなのに……。

徳川伏見城
もちろん! みんなにも休息が必要でしょ?

徳川伏見城
それに、お礼もせずにお別れしちゃうだなんて、絶対イヤだもん!
木幡山姉様も、殿にありがとうって言いたいだろうし……ね?

殿
…………。

殿
…………!

柳川城
ありがとうございます。指月伏見城さん、徳川伏見城さん。
それではお言葉に甘えて、皆さんの御城にお邪魔させていただきます。

指月伏見城
うむ! 好きなだけ寛いでいくとよいぞ♪

やくも
だに! 勝利を祝して、思いっきり盛り上がるがや~♪

夜は短し歩けよ妖狸 -絶-

山城国に平穏が訪れ、元通りのぐうたらになって
しまった指月伏見城。だが、ここで徳川伏見城が
彼女に変化を促そうと、一計を案じる……。

前半

殿一行が、妖狸の襲撃を退けてから数週間後――

指月伏見城
…………ふぃ~。

指月伏見城
暇じゃのー……。

指月伏見城
山城国には再び、平和が戻り……、
殿たちも所領へと帰還した。

指月伏見城
その後も狸どもの再来に備え、繰り返し巡回をしているが……、
異変も特に起きていない。平和そのものじゃ。

指月伏見城
喜ばしいことなのじゃが……、
やることが無くなると、それはそれじゃのう。

指月伏見城
にしても、妹たちはまだ帰らんのか?
今日は随分と遅い……。
いつもならとっくに戻ってきているはずの時刻じゃが。

指月伏見城
おーーーい。木幡山伏見城~……?

(しーーーん)

指月伏見城
おーーーーーい! 徳川伏見城、居らぬのか~……?

(しーーーん)

指月伏見城
…………。

指月伏見城
腹が減ってきたのぅ……。

――――

木幡山伏見城
ね、ねぇ徳川伏見城……そろそろ終わりにしない?
姉様も困ってるみたいだしさ……。

徳川伏見城
ダメダメっ! まだ始まったばっかりだよ?
もっと指月姉様を……追い詰めなきゃ。

木幡山伏見城
追い詰めるって、いったいどうしてそんなことを……。

徳川伏見城
あたしはただ、
指月姉様に健やかでいてほしいだけだよ。
心も身体も……いつまでもね。

徳川伏見城
この前の戦でね……あたし、びっくりしちゃったの。
指月姉様って、こんなにデキる城娘だったんだ……って。

徳川伏見城
日頃、木幡山姉様や、
従者の城娘たちに支えられてる姿しか、
見たことがなかったから……。

木幡山伏見城
……おお、キミもやっと気付いたんだね!
姉様が隠していた真の力に!

徳川伏見城
そう……問題はそこ。
指月姉様が、その力を隠しっぱなしってところ……。
その原因は、今の環境にあると思うの。

徳川伏見城
指月姉様みたいな子は……、
甘えられる場所に居ると、際限なく甘え続けちゃうんだよ。

木幡山伏見城
……それは確かに、キミの言う通りかもしれない。

木幡山伏見城
けどさ、徳川伏見城?
姉様のさ、ボクなしじゃ生きられないとこって……、
可愛いと思わない?

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
(本当に危ないのは、木幡山姉様なのかもしれない……)

――――

指月伏見城
おかしい……流石に遅すぎるぞ……!

指月伏見城
どこに行ったのじゃ、妹たちよ!
また妾を一人にするつもりかー!?

指月伏見城
このままだと妾、本気で餓死してしまうぞー!
早う戻ってまいれー!

――――

木幡山伏見城
――聞いたかい、徳川伏見城!?
姉様が餓死しそうだって!

徳川伏見城
こ、木幡山姉様はどうして、
いつでも全力で指月姉様を信じられるの……?

徳川伏見城
木幡山姉様も辛いと思うけど、
ここで止めちゃうのは勿体ないよ……。

徳川伏見城
だからもう少しだけ、続けてみよ……ね?

木幡山伏見城
うう……ううう……!

木幡山伏見城
ごめんね、姉様……全ては姉様のためなんだ……!

徳川伏見城
(木幡山姉様……指月姉様より苦しそう……)

――――

指月伏見城
まさか、あやつら……、
妾を置いて御城へ帰ったのではあるまいな……?

指月伏見城
それとも……巡回の最中に、何かが起きたか……。

指月伏見城
ありえん話でもない……直近の妖狸のこともあるからな。

指月伏見城
…………。

指月伏見城
むぅ、致し方ない! 他ならぬ妹たちのためじゃ!

――――

木幡山伏見城
あっ、見て! 姉様が歩き出したよ!
ふらふらとした足取りで、どこかへと……。

木幡山伏見城
ボクたちのことを心配してくれてるみたいだ……!

徳川伏見城
このまま、こっそり追いかけてみよう。
指月姉様が変わるきっかけが、掴めるかもしれない……!

後半

指月伏見城
ど、どこにも居らん……じゃと……?

指月伏見城
参った……腹が本格的に減ってきたぞ。
ああ、ついでに眠くなってきた気もする……。

指月伏見城
……部屋に戻って、何か食うか。
いやしかし、ゴロゴロ欲も相当なもの。
一度横になって考えるか……しかし、そうすると空腹が――

徳川伏見城
(怠惰と怠惰の間で葛藤してる……)

指月伏見城
木幡山伏見城が必要じゃ。
あやつに甘味を食べさせてもらいながら、
膝枕を……ついでに耳かきも一緒に――

――――

木幡山伏見城
…………。

木幡山伏見城
ごめん、徳川伏見城……。

徳川伏見城
……え?

木幡山伏見城
もう我慢できないよ……。
弱っていく姉様を、
これ以上黙って見ていることなんて……!

徳川伏見城
あ、待ってよ木幡山姉様っ……姉様ぁっ!

――――

木幡山伏見城
姉様あああぁぁぁ!

指月伏見城
む……?

木幡山伏見城
ごめんね、ごめんね……いっぱい待たせちゃって……!

指月伏見城
なんじゃ、おぬし……やはり近くに居ったのか。
まったく、意地の悪い奴め……。

木幡山伏見城
本当にごめん……お詫びならなんでもするから……。

指月伏見城
ならば妾は、甘味を所望するぞ……とびきり甘いやつを……。

木幡山伏見城
う、うん分かった! すぐに用意するよ!
いつものみたらし団子でいいかな?

指月伏見城
いや、それよりも……妾が興味を惹かれているのは――

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
そっか……指月姉様だけじゃなかったんだ。

徳川伏見城
木幡山姉様の気持ちも、あたしは考えるべきだったんだよね……。

徳川伏見城
(でも……だとしたら、
 無理に更生してもらう必要なんて無いのかも……)

徳川伏見城
(支えて、支えられて……二人とも満足してる。
 それに……今更、木幡山姉様が指月姉様を見捨てちゃうとこなんて、
 考えられないもん……)

徳川伏見城
(そして木幡山姉様が深く、
 指月姉様のことを尊敬しているから……、
 指月姉様もそれに応えようとするんだ。この前みたいに)

徳川伏見城
…………。

徳川伏見城
ごめんね……指月姉様。

指月伏見城
む、徳川伏見城か……どうして謝るのじゃ?

徳川伏見城
独り相撲というか、お節介というか……。
あたし、余計な茶々を入れちゃってたのかな、って。

指月伏見城
いや、お前の気持ちはよく分かる。
妾も、怠けがちな自分について考えることはあるのでな。
……ごくごく稀にじゃが。

徳川伏見城
(ごくごく稀に……なんだ)

指月伏見城
じゃが……おぬしが健やかさばかりに囚われて、
視野が狭まっているきらいがあることも、また確かじゃ。

徳川伏見城
…………。

指月伏見城
妾は一応、今の自分を気に入っているのじゃ。それなりにな。

指月伏見城
妾のようになれ、と言うつもりは無いが……、
時には何も考えずに遊び呆ける時間も、
おぬしには必要じゃと思うぞ?

徳川伏見城
うん……確かにそうかも。

徳川伏見城
(なんだか、うまく丸め込まれちゃったような気もするけど……)

徳川伏見城
でも……そっか。何も考えずに遊び呆ける時間……か。

徳川伏見城
よし……しばらく、適当に旅行でもしてみよっかなぁ。



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