ストーリーテキスト/夏夜に花咲く大輪

夏夜に花咲く大輪[]

夏夜に花咲く大輪を -前-

夏の余暇を楽しむ殿一行の許に、一通の招待状が
届く。その誘いに応じて伊賀国に転移した
殿たちは、思いもよらぬものを目の当たりにする。

前半
――某日、所領近くの海岸。 ざざ～……ざざ～……。 千狐 ふわぁ～……。 打ち寄せる波の音が、とっても心地良いの……。 千狐 横になってると……つい眠気が。 うとうとしてしまいます……。 殿 …………。 柳川城 ふふ、そのまま眠ってしまっても、 誰も咎めたりはしませんよ？ 柳川城 せっかく時間を作って海水浴に来たのです。 今日くらいは、思い切り羽を伸ばしましょう。 殿 …………！ 千狐 そうですね。 やくもから目を離すのは少し心配ですが、 今日くらいは―― 殿 …………？ 千狐 ――あら？ 千狐 そういえば、 さっきからやくもの姿が見えませんね……？ 柳川城 確かに、言われてみれば。 さっきまで傍に居たはずなのですが……。 千狐 …………。 千狐 波に飲まれて、海の中に……。 なんてことはありませんよね。 殿 …………。 柳川城 …………。 柳川城 す、すぐに探しに出かけましょう。 私は海を、千狐さんは浜辺を――！ やくも ぅお～い！ 殿 …………！ やくも 殿さん、殿さーん！ ちょっと聞いてほしいことがあるんやけど～！ 千狐 ……ほっ、良かった。 もう、やくも……千狐たちの許から離れるなら、 ひと声掛けてほしいの……！ やくも ん……まーた千狐はピリピリしとるだに？ せっかく海水浴に来とるっちゅうのに……。 千狐 誰のせいだと思ってるのよ、もー……！ やくも まぁまぁ、落ち着くがや！ 代わりと言っちゃなんやけど、 今日はうちから素敵なお知らせがあるだに！ 殿 …………？ 柳川城 素敵なお知らせ……？ 千狐 そういえばさっき……、 聞いてほしいことがあるって言ってたわね……？ やくも だに！　この手紙を見るがや！ こいつは伊賀国の城娘……千賀地氏城から届いた招待状だに！ 千狐 千賀地氏城さん……？ やくも 実は……前からちょくちょく、 手紙のやり取りをしとったんやけど―― やくも ――んにゃ、 中身を読み上げた方が話が早いだに。ええと……。 千賀地氏城 やっほー、やくもちゃん！　元気してるー？ 千賀地氏城 この前は、武器の整備を手伝ってくれてありがとねー！ やくもちゃんのお陰で、あれ以来調子は最高だよ！ 千賀地氏城 でね、そのお返しに……ちょっとしたお楽しみを用意したんだけど……。 今度、アタシの御城まで来てくんないかな？ 千賀地氏城 実は近々、アタシの御城で花火大会を催すことになったんだ。 異国のお友達も招いて、盛大な奴をドカンとね♪ 千賀地氏城 今は準備を進めてるとこなんだけど……、 異国の最新のうはうを取り入れた、最高の花火が完成しそうな予感！ 千賀地氏城 だから、やくもちゃんたちもアタシの御城に呼んで、 一緒に楽しめたらなーって思って！ 千賀地氏城 忙しいお頭のことだから、難しいかもしれないけど、 もし予定が空いてたら、ぜひ足を運んでくださいな！ 千賀地氏城 ではでは……ご来城いただけることを、 心よりお待ちしておりますので……なにとぞ～♪ ちがちーより。 殿 …………。 やくも 『異国の最新のうはうを取り入れた、最高の花火』 ……どうだに、殿さん？ よう分からんけど、なんだかワクワクしてこないがや？ 殿 …………。 殿 …………！ こうして……一行は準備を整え、 千賀地氏城の御城へと出立することとなった―― ―――― 千狐 コンッ！　転移成功なの～！ 殿 …………！ 柳川城 あちらに見えるのが、千賀地氏城さんの御城でしょうか。 それでは、まずご挨拶に―― 柳川城 ――いえ、待ってください。 この辺り……何やら、 おかしな匂いがしませんか……？ やくも だに……確かに、 何かが焼けたような……焦げくささを感じるがや。 ？？？ う、うぅ……。 千賀地氏城 そ、そこにいるのは……やくもちゃん？　それにお頭たち……？ ノイシュヴァンシュタイン城 うう……ひどい目にあいました……。 ペテルゴフ宮殿 ええ……まさか、こんなことになるなんて……。 殿 …………！ 千狐 貴方は……千賀地氏城さん？ それに異国の城娘たち……？ 柳川城 ひどい有様……ここでいったい、何が起こったのです？ もしや、兜の襲撃でも受けたのですか……？ 千賀地氏城 えと……話せば長ーくなるんだけどね、 順を追って説明すると――
後半
――数刻前。千賀地氏城の御城。 ノイシュヴァンシュタイン城 よし……大会で打ち上げる花火玉はこれで完成、ですね。 千賀地氏城 ふぃ～、つっかれたぁ～……。色合いの調整に、火薬の配合……。 花火玉を作るのがこんなに大変だったなんて、アタシ知らなかったよ。 ペテルゴフ宮殿 ふふっ。けどその分、 時間を掛けただけの出来にはなっているはずよ♪ 千賀地氏城 ほんとにありがとねー、ペテちゃん！ ペテちゃんが居なかったら、 こんなこと絶対実現させられなかったもん！ ノイシュヴァンシュタイン城 ええ、ペテルゴフ宮殿さんが持つ知識のお陰ですね。 ペテルゴフ宮殿 いえいえ、どういたしまして♪ けど、凄いのは私じゃなくてかつての主……ピョートル大帝よ。 大の花火好きだった彼が積み重ねた研究の賜物ね！ ペテルゴフ宮殿 ということで、皆……ここは一つ、 花火の完成を祝して……花火を打ち上げることにしない？ ノイシュヴァンシュタイン城 花火の完成を、花火で……ふふ、 ペテルゴフ宮殿さんは本当に花火がお好きなのですね。 千賀地氏城 さんせーさんせー！ 花火玉の出来栄えも確認したかったとこだし、 一発打ち上げてみようよ、ね！ ペテルゴフ宮殿 ちょっと待ってね、今準備するから……。 ここに、こうして――こう、と。 ペテルゴフ宮殿 ……千賀地氏城ちゃん、秒読みをお願いできる？ 千賀地氏城 承知いたしたっ！ 千賀地氏城 ……それじゃいくよー！ さん、にー、いち―― ペテルゴフ宮殿 ――点火っ♪ ノイシュヴァンシュタイン城 …………。 ペテルゴフ宮殿 …………。 千賀地氏城 …………。 ノイシュヴァンシュタイン城 何も起こりませんね……？ ペテルゴフ宮殿 あっらー、おかしいわね……どこかに不備があったかしら？ 筒の方か、それとも―― ノイシュヴァンシュタイン城 …………。 ノイシュヴァンシュタイン城 待ってください、ペテルゴフ宮殿さん。 私、なんだか嫌な予感が―― どかあああぁぁぁぁん！ きゃあぁぁぁぁーーーっ！！ 千賀地氏城 ――で、今に至る……みたいな。 殿 …………。 柳川城 なるほど……。 つまり、花火の扱いを誤って暴発させてしまった……と。 千賀地氏城 そ、そのとーり……面目ないでございますぅ……。 千賀地氏城 えへへ……でも嬉しいなぁ。お頭たちに来てもらえて。 アタシたちが作った花火をね、 絶対見てほしいって、思ってたから……。 やくも ち、千賀地氏城が……遺言みたいなことを言い始めただに……。 千狐 縁起でもないことを言うのはやめなさい……！ 千狐 とにかく……今はお喋りよりも手当てが先よ！ ほら、やくもも手伝って！ やくも だにっ！　了解したがや！ 柳川城 私もお手伝いします！

夏夜に花咲く大輪を -後-

夏気分を満喫するべく、花火大会の準備に
勤しむ城娘たち。だがその時、辺りに響き渡る
爆発音が異変の発生を一同に告げる……！

前半
―――― 千賀地氏城 ……いやぁー。 千賀地氏城 あれは死んだと思ったよね、流石に。あははっ！ ペテルゴフ宮殿 でも……この身で花火の威力を味わって理解したわ。 あれならきっと、夜空のど真ん中でも、 大きな花を咲かせられるはずよ！ やくも ぽじてぃぶ過ぎるにも程があるだに……。 ノイシュヴァンシュタイン城 手当てしていただき、ありがとうございます。 その上、王にも心配を掛けてしまって……。 やくも まぁまぁ、過ぎたことやしそんなに凹むことはないだに。 うちだって、千狐に叱られたことを振り返っていたらキリがないがや。 千狐 やくもにはもう少し凹んでほしいところだけど……。 柳川城 何にせよ、それほど傷が深くなくて安心しました……。 千賀地氏城 だね～。これなら、 花火大会の開催にも差し障りはないっぽいし―― 千賀地氏城 ――ってあれ？　柳川城ちゃん、 いつの間にか水着に着替えてるじゃん！　かわい～♪ 柳川城 はい。皆さんも水着をまとっていらしたので、 一緒に海水浴を楽しめるように……と思いまして。 千賀地氏城 あー、なるほどね。確かに確かに。 千賀地氏城 ――ん？　ちょっと待って柳川城ちゃん。 今……一緒に海水浴する、って言った？ 柳川城 はい……千賀地氏城さんたちも、 そのつもりで着替えていたのでは……？ 千賀地氏城 あははっ、違うよぉ。 アタシの御城の近くには、海なんて無いもん。 ノイシュヴァンシュタイン城 ええ……言ってしまえばこれは、単なる水着の見せあいっこです。 せっかく持ってきたのに着ないでおくのはもったいない、ということで。 柳川城 そ、そうだったのですか！？ 柳川城 ――となると私、 急に今の格好が恥ずかしくなってきたのですが……。 ペテルゴフ宮殿 ふふ、どうしてかしら？ 場所が海岸ではないだけで、格好は同じでしょう？ 柳川城 それは……その通りなのですが、 水着を着る理由が無いのならそれはもう、 ただ露出を増やしているだけになっていると言いますか……！ 千賀地氏城 何言ってんの、どんな時に着たって水着は水着っしょ。それにさ―― 千賀地氏城 （柳川城ちゃんが水着を着たままの方が、 　お頭も喜んでくれるはずだよ？） 柳川城 …………っ！！ 柳川城 （そ、そうでしょうか……？） 千賀地氏城 （あったり前じゃん！　いつもと違う、 　特別な柳川城ちゃんを見られた方が、 　お頭だって嬉しいに決まってるって♪） 柳川城 …………。 柳川城 （ちら） 殿 …………？ 柳川城 …………。 柳川城 ……わ、分かりました。それでは私もしばらく、 水着のままでいようと思います……。 殿 …………。 やくも にしても……なんだか、 この集まりは意外な取り合わせやね。 日の本、どいつ、ろしあ、って国もバラバラやし……。 千賀地氏城 ふふ、だよね～。元々アタシたち、 御城としては何の縁も持ってないし。 ペテルゴフ宮殿 だから……私たちを引き合わせてくれたシノン城ちゃんには、 深く感謝しないといけないわね♪ 千狐 シノン城さん……ああ、ふらんすの……。 千賀地氏城 ヨーロッパだとめちゃくちゃ顔の広いシノン城ちゃんだけど、 あの子、日の本にも前から、 興味を持ってくれていたみたいなんだよね～。 千賀地氏城 アタシと始めて会った時なんて、 『シノビ！　クノイチ！』って繰り返しながら、 体中まさぐってきてさ……。 ノイシュヴァンシュタイン城 知識に若干偏りはありますが……、 日の本をとっても愛していることが伝わってきますね。 お陰で私は、その恩恵に預かって友達の輪を広げることができました。 やくも 縁の無い城娘同士を結びつけて……。 はぇ～、シノン城がそんなことを。 やくも ――って、話が逸れてしまったんやけど……千賀地氏城、 手紙にあった花火大会っていうのはいつ始めるつもりだに？ 千賀地氏城 あー、そうだった。 花火玉の準備は整ったから……後は、 どこからどんな風に打ち上げるかっていう策を練らなきゃだけど……。 ノイシュヴァンシュタイン城 となると……もう数日は待っていただくことになるでしょうか。 千賀地氏城 ん～……そうなっちゃうかな。 お待たせしちゃってごめんね、お頭。 千賀地氏城 でも楽しみにしてて！ お頭に来てもらったからには絶対に成功させてみせるし！ 殿 …………！ 千賀地氏城 うん、期待してくれていいよ！ ここら一帯を豪快に使って、 花火をいっぱい打ち上げちゃうから♪ 千賀地氏城 もちろん……花火だけに集中できるように、 オジャマ虫の登場も対策済みだし―― どかあぁぁぁーん……！ ？？？ ギャアアアァァァァ！？ ペテルゴフ宮殿 あら……言っている傍から掛かったみたいね？ 柳川城 今の音は……それに叫び声のようなものも……？ 千賀地氏城 ふっふっふー、御城の周囲に罠を張り巡らせておいたんだ！ 招かれざるお客様の侵入を、 見逃さないようにね！ やくも ま、また花火が暴発したかと思ったがや……。 千賀地氏城 ってなわけで、準備よりも先にまずは兜退治だね！ 罠に掛かった奴をとっちめなきゃ！ 千賀地氏城 じゃーみんなっ！　アタシに付いてきて！
後半
千狐 兜の気配の消失を確認……皆様、お疲れ様でした！ 千賀地氏城 皆、力を貸してくれてありがとう！ これで憂いも晴れたし、 後は花火大会に向けて猛進するのみ、だね！ 殿 …………！ 千賀地氏城 うん！　花火の打ち上げまでは、 アタシの御城でゆっくりしてっていいからね。 千賀地氏城 アタシにできるおもてなしなら、幾らでもするよ！ 花火以外にも、沢山素敵な思い出を持って帰ってほしいもんね。 ってことでお頭……めいっぱい楽しんでいってね♪

夏夜に花咲く大輪を -絶-

花火の打ち上げを目前に控えた城娘たちの準備は
いよいよ大詰めに差し掛かる。果たして彼女らは
花火大会を成功に導くことができるのか……？

前半
千賀地氏城 お、これは……どれどれ……。 ノイシュヴァンシュタイン城 ん……？　どうしたのです、千賀地氏城さん？ 千賀地氏城 んー。なんかね、手紙が届いてたみたいで。 おお、差出人は三原城ちゃんか……。 千賀地氏城 この時期の手紙ってことは……。 うん、やっぱり！　夏祭りのお誘いだ♪ ノイシュヴァンシュタイン城 夏祭りのお誘い、ですか？ 千賀地氏城 三原城ちゃんは昔っから、夏祭りに強い思い入れがあってね。 毎年毎年、夏が来る度に城娘を集めて、 盛大なお祭りを催してるんだよ！ 千賀地氏城 三原城ちゃんが小早川隆景の御城で、 アタシが徳川家康の家臣・服部半蔵の御城……。 千賀地氏城 隆景と家康は、五大老として政に携わってた時期があったから、 その縁で誘ってくれたってわけ。 千賀地氏城 ってことで……どう、ノイシュちゃん？ 花火大会が終わったら、ペテちゃんやお頭たちにも声を掛けて、 一緒に三原城ちゃんのとこに行かない？ ノイシュヴァンシュタイン城 なんと……私もご一緒しても良いのですか、 三原城さんのお祭りに？ 千賀地氏城 もちろん！　少しでも多くの人に夏祭りを楽しんでほしい、 って気概の持ち主だからね、三原城ちゃんは。 皆を連れて行ったら、絶対喜んでくれるはずだよ♪ ノイシュヴァンシュタイン城 そうですか。ではお言葉に甘えて……。 私もそのお祭り、参加させていただきますね。 ノイシュヴァンシュタイン城 花火大会の準備もまもなく完了し……明日の夜には開催を迎えます。 それが終わってからも、まだまだ日の本の夏を楽しむことができるのですね。 千賀地氏城 ふふ、そうだね！　……よっし、 そんじゃペテちゃんやお頭たちにも、 このことを知らせて―― ペテルゴフ宮殿 ちがちーちゃん、ちがちーちゃーん！　大変よー！ 千賀地氏城 ん……ペテちゃん？　そんなに慌ててどうかしたの？ ペテルゴフ宮殿 それが……。どうやら今、 この御城に向けて雨雲が近づいているみたいなの！ ペテルゴフ宮殿 明日の朝……早ければ今夜未明には、 強い雨に見舞われることになりそうで……！ 千賀地氏城 強い雨……！　それは間違いないの、ペテちゃん？ ペテルゴフ宮殿 ええ、雨天は花火の天敵だから、 気圧や湿度の変化はこまめに確認してたの！ 千賀地氏城 そっか、ありがとね。……にしても、 このタイミングで雨かぁ。まいったね……。 ノイシュヴァンシュタイン城 御城の周囲には、すでにいくつもの花火が設置されています。 雨に濡れることを防ぐためには、降り出す前にその対策をしなければ……。 千賀地氏城 …………。 千賀地氏城 ……いっそのこと、今夜決行しちゃおっか？　花火大会。 ノイシュヴァンシュタイン城 こ、今夜ですか……急いで準備を進めれば、 実現できるかと思いますが……。 ペテルゴフ宮殿 そうね……少し忙しくなっちゃうけど、そっちの方が利口かも。 この雨をやり過ごしたとしても、その先は分からないことだし……。 千賀地氏城 うん……それじゃ決定！　花火大会の開催は今夜！ ノイシュヴァンシュタイン城 では早速……準備を始めることにいたしましょう！
後半
―――― ――日没後。 千狐 いよいよ始まるのですね……！ やくも （わくわく、わくわく……！） 柳川城 どのような花火が打ち上がるのか……楽しみですね。 殿 …………！ 千賀地氏城 それじゃいくよ……ノイシュちゃん、心の準備はいい？ ノイシュヴァンシュタイン城 （こくり） 千賀地氏城 さん、にー、いち……！ ペテルゴフ宮殿 ――点火っ！ どんっ……ひゅるるるるるる―― ――――どおぉぉん……！ 殿 …………！ やくも おお～っ！ 千狐 これは……！ 柳川城 わぁ……♪ 夜空の真ん中で咲き誇り、 世界を煌々と照らす……大輪の花。 直上に向けて放たれた後……、 一瞬の静けさを置いて響き渡る、大きな破裂音。 そしてまた、しばしの静寂を挟み……光の種が空を昇る。 次々と打ち上げられていく花火は色を変え、 形を変えながら……暗闇を飾っていく。 殿一行はもちろんのこと……、 花火大会の主催にあたる城娘たちも皆、 その美しさに心を奪われる。 千賀地氏城 …………。 ペテルゴフ宮殿 私たちの積み重ねてきた全てが、あの……、 花を咲かせる一瞬に詰まってる。 ペテルゴフ宮殿 心を揺さぶる美しさに説明なんて要らない。 ……筆舌に尽くしがたいとは、正にこのことよね。 ノイシュヴァンシュタイン城 …………。 ノイシュヴァンシュタイン城 なんて、美しい……。 ノイシュヴァンシュタイン城 私は……感謝したいです。城娘としての生を与えられた、この定めに。 そして……ここに来るまでに出会ってきた、全てのものに。 千賀地氏城 ノイシュちゃん……。 やくも たーまやー！ ノイシュヴァンシュタイン城 ――っ！？ ノイシュヴァンシュタイン城 たま……！？　き、急に何ですか？ 千賀地氏城 そっか……ノイシュちゃんには、 大事なことを伝え忘れちゃってたよ。 千賀地氏城 ノイシュちゃん……日の本ではね、 花火の見事さを称える時にはああやって叫ぶんだよ。 ノイシュヴァンシュタイン城 なるほど。そうだったのですね……それでは―― ペテルゴフ宮殿 皆で声を合わせて―― 千賀地氏城 せぇーのっ―― たぁーーまやぁーーーーー！！！ ――この夜に見た光景は、此地に居た者たち全てにとって、 決して忘れられることのない、大切な思い出になったのだった……。

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