ストーリーテキスト/壁の中に瞳がいる

ページ名:ストーリーテキスト/壁の中に瞳がいる

目次

壁の中に瞳がいる[]

壁の中に瞳がいる -前-

行く手を阻む壁の如き怪異に遭遇せり――。
臼杵城なる城娘より報告を受けた殿一行は、
新たな妖怪の登場を予感しつつ当地へ急行する。

前半
殿

…………。

臼杵城
殿、急に押し掛けてしまってすまないと思っている……。

臼杵城
だが、この状況を打破するには貴方の力が必要なんだ!

殿
…………。

殿
…………?

千狐
はい、臼杵城さんの報告によれば、
どうやら新たな妖怪が出現したとのことですわ!

柳川城
新たな妖怪……。

やくも
今度はいったいどんなヤツがや?

臼杵城
名は、ぬりかべ……。

柳川城
たしか、九州北部にいくつかの伝承を残す怪異の名ですね……。

臼杵城
然り……。

臼杵城
既に我が豊後においても、ぬりかべらしき存在に
遭遇したという報告がいくつかあがってきているのだが、

臼杵城
そこに共通するのは、夜道を歩いていた際、
不可視の壁のようなものに阻まれ身動きができなくなった――という点だ。

柳川城
不可視の壁――!?

やくも
ってことは、見えない敵とこれから戦わなきゃいけないってことがや?

臼杵城
うむ……そういうことに、なるな……。

殿
…………?

臼杵城
すまない……。
私の方でも策を講じたのだが、妙案は浮かばなかったのだ。

臼杵城
故に、高名な殿一行ならば何か打開する術を
知っているのではないかと僅かな期待をしていたのだが……。

殿
…………。

柳川城
そう、ですね……。
私たちでは、如何ともし難きことのように思いますが……。

臼杵城
……やはり、無理難題だっただろうか?

千狐
……いえ、待ってください!

臼杵城
……え?

やくも
千狐、なにかいい手があるんかや?

千狐
確証はないけど、何とかできる可能性はあると思うわ!

臼杵城
ほ、本当か!?

千狐
ええ、神娘の矜持に賭けて此度の異事を解決してみせるわ!

殿
…………?

千狐
はい! 必ずや殿の御期待に応えてみせます!

殿
…………。

殿
…………!

千狐
(と、殿が……笑いかけてくださった……!?)

千狐
(よぉし、絶対に成功させてみせるんだから!)

千狐
(久しぶりに神娘として活躍できる機会到来なのー!)

臼杵城
ならば、すぐにぬりかべが現れたという地点に向かおう!

臼杵城
これ以上、奴らに好き勝手させるわけにはいかないからな。

殿
…………!

柳川城
はい! それでは急ぎ仕度をし出立と参りましょう!!

――数刻後。

柳川城
どうやら、この辺りが
ぬりかべが現れたとされる地点のようですね。

やくも
変な感じがや……。
な、何だか怖気が止まらんだに……。

臼杵城
それもそのはず……。

臼杵城
目には見えないだけで、すぐ近くで
ぬりかべは私たちのことを窺っているのだろうからな。

やくも
だにぃ……!
千狐、はやく何とかしてほしいがやぁ!

千狐
分かっているわ……!

千狐
それじゃあ、いくわよ…………!!
はぁぁぁぁあ――――っ!!

殿
…………。

殿
…………!?

柳川城
千狐さんの身体から清浄なる光が――!?

臼杵城
これが神娘の力……なのか!?

千狐
ハァ……ハァ……。

千狐
一時的にですが、此の地に生じていた歪みを正し、
ぬりかべの視認を遮っていた邪気を討ち払いました……。

千狐
これできっと、姿をみることができるはず――

臼杵城
――千狐、危ない!!
既に妖怪たちに取り囲まれているぞ!

千狐
…………え?

ぬりかべ
バアァァァァァ…………アアアアア…………アアアアアアァァッァァ…………!

千狐
きゃあああ――っ!?

やくも
千狐ぉぉぉ!!

柳川城
まずい……!
ここからでは援護が間に合わな――

臼杵城
――否っ! 我が国崩しを甘く見るな!

臼杵城
てぇぇぇぇぇぇ―――――っ!!

ぬりかべ
グゲァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!?

柳川城
すごい……千狐さんを傷つけずに
妖怪たちだけに直撃させるなんて……!

臼杵城
今だ、やくも!
千狐と共に安全な場所へと下がるのだ!

やくも
わ、分かったがや!

やくも
ほら、千狐……!
しっかりするだに! うちと一緒に逃げるがや!!

千狐
え、ええ……!

千狐
ごめん……迷惑かけて……。

やくも
いっつもうちが迷惑かけちょーけん、お相子だに!

やくも
分かったら、はやーするがや!

千狐
うん……!!

殿
…………!

ぬりかべ
ニィィ……ガァァ……サァァ……ナァァ……イィィィ……。

臼杵城
馬鹿め……それはこっちの台詞だ!

臼杵城
姿を隠せぬ貴様らに負ける道理はない!

臼杵城
さぁ、覚悟してもらうぞ! 妖怪ぬりかべ!!

臼杵城
百戦錬磨の戦術、今こそ見せてやろう!

後半
臼杵城

手加減無しだッ!!
国崩し、発射ぁぁ――ッ!!

ぬりかべ
ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!?

柳川城
ぬりかべの沈黙を確認……!

柳川城
やりましたね、臼杵城さん!

臼杵城
ああ。

臼杵城
だが、依然として邪なる気配が周囲に点在している……。

臼杵城
なればこそ――このまま一気に蹴散らすぞ、柳川城!

柳川城
……え?

柳川城
ま、待ってください!
此の状況……無闇に先行しては危険です!

臼杵城
馬鹿な……何を恐れることがある?

臼杵城
既にぬりかべは総て可視化されているのだぞ!

臼杵城
後は只、速やかに敵を討ち払えばいいだけのこと――

臼杵城
――って、あ、あれ?

臼杵城
おかしい……どうして、進むことができない……のだ?

臼杵城
それにあたりも急に真っ暗になって…………。

臼杵城
…………これではまるで――

やくも
――臼杵城! 後ろっ、後ろぉぉっ!!

臼杵城
……え?

ぬりかべ
バアァァァァァ…………カァァァァ…………メェェェェェ…………!!

臼杵城
やぁっ、ぁ……そん、な…………っ!
……この、ままでは……い、息が……でき、な…………んんんっ!!

壁の中に瞳がいる -後-

絹を裂くような城娘の悲鳴が闇を貫く――。
四方を完全に包囲された臼杵城を
ぬりかべ達の魔手より救い出す術や如何に。

前半
臼杵城

やぁっ、ぁ……そん、な…………っ!
……この、ままでは……い、息が……でき、な…………んんんっ!!

柳川城
臼杵城さんの四方にぬりかべが!
いったい、いつの間に……!?

やくも
千狐、妖怪は視覚化できたはずじゃなかったんかや?

千狐
くっ……術の権能を越えて不可視の様相を維持するなんて!

千狐
……きっと先刻のモノたちよりも、強力な個体という証左だわ!

やくも
ど、どうにかならんのかや!?

千狐
何とかしたいけど、既に見えてる敵に術を行使しても意味がない……。

千狐
うぅぅ……このままでは臼杵城さんが……臼杵城さんがぁ……!!

臼杵城
んぐ……ンンンッ! ぷ、ぁ……や、めろ……っ!
私に……ちか……よるなぁァァ―――――ッ!!

ぬりかべ
オォォォォォ……………………シィィィィィィ………………、

ぬりかべ
…………クゥゥゥゥゥ……………………ラァァアァァァ…………、

ぬりかべ
……マァァァァ……………………ンンン………………ジュウゥゥゥゥ…………!

臼杵城
んんんんんん―――っ!!

臼杵城
ハァ……ハァ…………だめ、だ…………こ、これ以上はもう……――――、

???
――あら、もう諦めちゃうの、臼杵?

臼杵城
…………なっ!?

臼杵城
い、今の声は……まさか!?

ぬりかべ
――――ッ!?

???
そう、そのまさかよ!

???
はぁぁぁぁああああ――っ!!

ぬりかべ
――グギャアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!

千狐
す、すごい……!
包囲していたぬりかべたちを一瞬で!?

やくも
けど、あげな城娘さん……見たことないがや!

柳川城
……いや、たしか……あの方は――

臼杵城
――府内……どうして、貴方がここに?

府内城
それはこっちの台詞よ。

府内城
まったく、久しぶりに『とり天』をお裾分けしに行ったら貴方は留守だし……。

府内城
で、あちこち探し回ってみれば、
私に黙って危険な妖怪退治にあたってるんだもの。

府内城
臼杵……どうして最初に私を頼ってくれないのよ?

臼杵城
そ、それは……その……。

ぬりかべ
オォォォォ……マァァァァァァ……エェェェェ……ラァァァァァァァ……、

ぬりかべ
ムゥゥゥゥゥ……シィィィィィ……スゥゥゥゥ……ルゥゥゥゥゥ……、

ぬりかべ
ナァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

府内城
っと……どうやら呑気に話をしている場合じゃないようね。

府内城
臼杵、私の霊力を分けてあげる……。
立って、最後まで自分の務めを果たしなさい。

臼杵城
言われ、なくても…………っ!

府内城
ふふ、それだけの威勢があれば充分だわ。

府内城
さぁ、いくわよ……臼杵!

府内城
豊後の城娘の矜持――今こそ我等が武勇にて示さんっ!!

後半
府内城

――勝機っ!!
臼杵、すこぶるど派手に決めるわよ!

臼杵城
ああ! この一撃で終わりにしてくれる!

ぬりかべ
グギャアァアアァァアアアアアアアアアアアアアアアォォオオオオオオオッッ!!

千狐
ぬりかべたちの霊力、完全消失……ですわ!

柳川城
ということは……!

やくも
臼杵城たちの大勝利だにぃーっ!!

殿
…………!

府内城
ふぅ、これで一件落着……といったところね。

府内城
それにしても、まさかあの人見知りの臼杵が、
貴方のように有名な人に協力を依頼するなんてねぇ。

殿
…………?

臼杵城
こ、こら……!
人聞きの悪いことをいうな、府内!

府内城
えー? でも事実でしょう?

臼杵城
単に人付き合いが苦手なだけだ! ぜんぜん違うぞ!

府内城
いや……そんなにドヤれるようなことじゃないと思うんだけどぉ。

臼杵城
う、うるさい……!

臼杵城
だいたい、お前はいつもいつもそうやって……。

府内城
あら、迷惑だったかしら?

臼杵城
べ、別にそこまでは言ってな――

臼杵城
――くっ、ぅ……っ!!

府内城
っと……!
まったく、立ってるのもやっとだって状態でよくもまぁ強がれるものね。

府内城
仕方ない……今日は私が担いでいってあげるから、ありがたく思いなさいよ?

臼杵城
え? 担ぐっていったい――

臼杵城
――きゃぁぁっ!?

府内城
んしょ――っと。

府内城
あれ? 臼杵、ちょっと太った?

臼杵城
うるさいっ! 大人しく担がれてあげるんだから、黙って運べ!

府内城
はいはーい♪

殿
…………。

府内城
っと、ごめんね、殿。
初対面だってのに何だか慌ただしくてさ。

府内城
まぁ、臼杵を助けてくれた恩人なわけだし、
そう遠くないうちにお土産でも持って改めて挨拶しにいくから許して。ね?

臼杵城
お、おい! 何を勝手に決めてるんだ!
そういうことは私の都合も考えてだな――

臼杵城
――って、だから人の話を聞かぬか! おい、府内! ちょ、ちょっと! 

臼杵城
この恰好では下襲が丸見えになってしまうだろぉ…………――――。

殿
…………。

殿
…………。

柳川城
行って、しまいましたね……。

やくも
仲がいいのか悪いのか、よくわからん二人だにぃ。

千狐
いずれにせよ、府内城さんのおかげで、
無事に妖怪の討伐を終えることができたことに変わりはないわ。

殿
…………。

千狐
はい、それでは我々も帰還するとしましょう。

千狐
殿、此度の遠征も誠にお疲れ様でした!

壁の中に瞳がいる -絶-

――ぬりかべ討伐から数日後。
府内城と臼杵城は互いに持参した土産と共に、
殿たちとの歓談に興じるのだが…………。

前半
――ぬりかべとの戦いから数日後。

府内城
へぇ~っ、ここが所領なのね。
なかなか良いところじゃない……はむっ、はむ、んぐんぐ♪

臼杵城
……おい、そろそろ食べるのを止めないと
殿たちへの土産が無くなってしまうんじゃないか?

府内城
ふふ、御心配なくー。

府内城
いま食べてるのは自分用だもの。
殿たちには揚げたてのを食べてもらうよ・て・い♪

臼杵城
まったく……。

臼杵城
よくもまぁ、そうとり天ばかり食べていて飽きないものだ。

府内城
そういう臼杵は何をお土産に持ってきたの?

臼杵城
うむ、よくぞ聞いてくれた。実はな――

府内城
あ、ちょっと待って。なんか持ってきた器的になんか分かっちゃったかも。

府内城
けど、個人的にはソレはオススメできないなぁ……。

臼杵城
な……なにを言う!
コレは私の故郷の名産で――

府内城
――いや、美味しいことは美味しいのよ?

府内城
けどなんていうか……ほら、食べるには勇気が要るじゃない?

臼杵城
ほう。ならば勝負するか?

府内城
勝負って、なんの?

臼杵城
……決まっているだろう?

臼杵城
お前のとり天と私のふぐ料理、
どちらがより殿たちに気に入られるか――勝負だっ!

――四半刻後。

臼杵城
うぅぅ……どうして、みんなもっと食べてくれないんだぁぁ……!?

千狐
そ、それは……。

柳川城
その……なんと言いますか、一度に大量のふぐを食べるのは、
やはり少し気後れしてしまうと言いますか……。

臼杵城
くっ……やはり毒か? 毒が怖いのかっ!?

府内城
いや、そりゃあふぐの毒は怖いでしょうよ。

殿
…………。

千狐
分かりました。それでは千狐は、お茶を淹れてきますね?

千狐
臼杵城さんのお土産には、他に『かすてーら』なるお菓子もあることですし。

府内城
え、かすてーらあるの?

府内城
もう。臼杵ってば、そういうことは早く言ってよね?

臼杵城
……待て、府内。

府内城
な、なによ……急に腕を掴んだりして?

臼杵城
今日のかすてーらは高級品なんだ。
気軽に食べられては困る。

臼杵城
かすてーらを食べる時はな……、
異国の風を感じながら、上品に、かつ大胆に頬張らないと駄目なんだ。

府内城
……なによ、意識高そうなこと言っちゃって。

府内城
じゃあ、そうねぇ……。

府内城
臼杵、取引しよっか?

臼杵城
は……?

府内城
私が臼杵についてタダでひとつ占うかわりに、

府内城
臼杵はかすてーらをひと切れ私にくれるっていうのはどう?

臼杵城
……それじゃあ取引にならないだろうに。
そもそも占いはお前の趣味じゃないか。

府内城
まぁまぁ、そう堅いこと言わずにぃ。

柳川城
えっと……もしかして府内城さんは占いが得意なのですか?

府内城
ええ。こう見えて手相占いにはちょっとした自信があるの。

府内城
というわけで、さっそく臼杵のすべすべなお手々を拝借~っ!

臼杵城
――ひゃっ!?

臼杵城
こ、こら、勝手に私の手を握るなぁっ……!

府内城
いいじゃない、減るもんじゃないし。
久しぶりになにか占わせてよー。

臼杵城
うぅぅ……断っても、どうせ無理矢理するんだろ?

府内城
ふふ、さっすが臼杵。分かってるじゃない。

府内城
……で、何を占ってほしい?

臼杵城
特にない!

府内城
あー、もう絶対それ言うと思ったー。

府内城
んぅ、じゃあ、そうだなぁ……。

府内城
あ――っ!

府内城
せっかくだから、恩人の殿と臼杵の相性を占っちゃおうかしら♪

臼杵城
なん……だと!?

殿
…………?

柳川城
(相性占い……!)

柳川城
(そんなこともできるなんて……!?)

臼杵城
う、ぅぅ…………。

府内城
おやおやぁ~? 臼杵、もしかして緊張してる?
……うっすらと手汗がにじんできちゃってるわよ?

臼杵城
そ、そんな……ことは……っ!

府内城
ふふ、口では嫌がってても、
占いの結果に結構な期待をしてるって証拠ねぇ?

臼杵城
な、なにを馬鹿な……!

臼杵城
いい加減にしないと怒るぞ!?

柳川城
(……いいなぁ)

柳川城
(私も……殿との相性が、気になる……)

府内城
――おっ!?
おほぉ……あれあれー?

臼杵城
な、何だ!? いったいどんな結果が出たんだ?

府内城
いや、まだハッキリとは分かってないけどー。

府内城
あー、もしかしたら殿と臼杵って……。

臼杵城
…………。(ごくり)

府内城
ああ、そっかぁ……なるほどねー。

府内城
ふーん、

府内城
へぇ……。

府内城
ほーんっ。

臼杵城
…………うぅぅ!!

臼杵城
い……。

臼杵城
いい加減にしろ――――っ!!!!

府内城
うわぁっ!? う、臼杵!? き、急にどうしたのよ!?

臼杵城
しらばっくれるな!
どう見たって私の反応を見て遊んでるだろ!

臼杵城
先日の恩がある手前おとなしくしていたが……、

臼杵城
……私を怒らせたらどうなるか、思い出させてやる!

府内城
あっ、ちょ、ちょっと……!

府内城
ダメだって、臼杵……っ!
殿が見ている前で、そんなこと――きゃぁぁぁあああっ!?

殿
…………!?

後半
府内城

は、うぅ……ぐすっ……なにも、ここまでしなくたっていいじゃんかぁ……。

臼杵城
黙れ、府内……。

臼杵城
だいたいお前は、昔から甘やかすとすぐ調子に乗って…………(ぐちぐち)

府内城
わ、悪かったから機嫌直してよぉ……。

臼杵城
口でなら何とでも言える……。

府内城
うぅぅ……臼杵のいじわるぅ……。

殿
…………。

千狐
皆さん、お茶が入りまし――

千狐
――って、あの……これは一体?

臼杵城
気にしないでくれ、千狐。
茶とかすてーらは私が皆に配ろう。

千狐
は、はい……お願いします。

府内城
………………(じぃぃ)

臼杵城
………………。

臼杵城
……はぁ。分かったよ。
さっさと変身を解いて、お前も座につけ。

府内城
……え?

臼杵城
かすてーら、食べたかったんだろう?

府内城
で、でも、私のこと許してなかったんじゃ……?

臼杵城
……とっくに怒りは静まっている。

臼杵城
それぐらい友達ならば気づけ、ばか。

府内城
ぐすっ……。

府内城
うわ~んっ、臼杵ぃぃ……!!

臼杵城
あーもう、みっともなく泣くな。
手拭いが乾く暇もない……。

殿
…………。

殿
…………。

千狐
ふふ、喧嘩するほど何とやら……ということですね。

柳川城
…………。

府内城
…………?

府内城
どうしたの、柳川城ちゃん? さっきからじぃ~っと見つめて。

柳川城
あ、いや……その……。

柳川城
お二人は、今日……所領に泊まられるのかなぁ、と思いまして。

府内城
ええ、そのつもりだけど……、

府内城
もしかして、迷惑だったかしら?

柳川城
い、いえ!
そんなことはありません!

柳川城
というより……はい、ぜひともっ!!

殿
…………?

千狐
(……どうしたのでしょうか、柳川城さん?)

千狐
(なんだかやけに嬉しそうですが……)

府内城
…………。

府内城
…………。
(ふむふむ、なるほどなー)

――その夜。

府内城
…………。

府内城
ふふ、そろそろ来る頃だと思っていたわ。

???
…………。

府内城
もう、コソコソしなくたっていいから。
ほら、こっちにおいでよ。

柳川城
……え、えっと。

柳川城
あの、実は府内城さんに頼みたいことがありまして……。

府内城
ええ、分かってるわ。

府内城
殿との相性を占ってほしいのでしょう?

柳川城
ど、どうしてそれを……!?

府内城
驚くことじゃないわよ。

府内城
臼杵と殿のことを占おうとしてた時、
一番動揺してたのは柳川城ちゃんだったからね。

柳川城
お、お恥ずかしい……。

柳川城
自分では顔に出さないよう気をつけていたつもりだったのですが……。

府内城
大丈夫よ、柳川城ちゃん。

府内城
私は占いを嗜む城娘だから、
そういう機微に敏感ってだけだから。

府内城
それよりもほら、もっと近くにおいで。

府内城
みんなに内緒で、特別にお姉さんが占ってあげるから……さ♪

柳川城
――きゃっ!?

柳川城
あ、あの……。

柳川城
ここまで密着しないと……占えないものなのでしょうか?

府内城
月明かりの下での行為なんだから、これぐらいは我慢しなきゃ。

柳川城
な、なるほど……。

府内城
そ・れ・に――、

府内城
柳川城ちゃんと殿の相性占いだものね。

府内城
お姉さん、今夜はいつも以上に張り切っちゃうわよぉ~♪

そう言って柳川城の嫋やかな手を取った府内城は、
掌に刻まれた相をゆっくりと読み取り始めるのだった。



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