ストーリーテキスト/堅固なる異邦の守護者

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目次

堅固なる異邦の守護者[]

堅固なる異邦の守護者 -序-

――異国より届いたひび割れし盾と書状。
助けを必要とする者がいると知った殿たちは、
海の向こうにある未知の地へと向かう。

前半
――所領より遥か遠方の地。

カーナーヴォン城
敵の姿がひとつも見えないところから察するに、
私たちはまた間に合わなかったということか……。

コンウィ城
……どうやらその様ですね。

コンウィ城
各地を荒らして回る不届き者がいるのは間違いないというのに、
未だその姿すら見つけられないなんて……。

コンウィ城
幸いなことに住人たちに被害はないようですが、
それが逆に不可解ですね。

カーナーヴォン城
……ええ。

カーナーヴォン城
人の手では有り得ない程の破壊行動……。

カーナーヴォン城
余ほどの悪心が無ければこうはならない。

コンウィ城
……盗みが目的か、はたまた力の誇示の為か……。

カーナーヴォン城
いずれにせよ、秩序を乱す悪逆を私は許しはしない!

???
――素晴ラシイッ! 実ニ素晴ラシイデース!
ソノ覇気! ソノ勇気! 正ニ騎士ノ誉レダ!

コンウィ城
――ッ!?
そこにいるのは誰ですか!

???
オット、武器ヲ収メテ頂キタイ。
エエ、私ニ敵意ナド在リマセン。

カーナーヴォン城
貴様……いったい何者だ?

???
アナタ達ト同ジク人ナラザル者……ト言エバ、
少シクライハ親シミヲ覚エテクレマスカ……?

コンウィ城
……私たちがどういう存在か、
少なからず理解している様子ですね。

コンウィ城
カーナーヴォン城さん、あの者をどう見ますか?

カーナーヴォン城
今のところは攻撃の意思は感じられない……。
一見した限りでは敵という訳ではなさそうだ……。

カーナーヴォン城
(だが、身体の奥底から沸き立つこの不快さはいったい……?)

???
ソウデスカ……。ヤハリ直グニハ
私ヲ信ジテハ頂ケテナイ様デスネ。

???
イイデショウ! ソレデハ私カラ
トッテオキノ情報ヲ差シ上ゲマス。

カーナーヴォン城
とっておきの情報……?

???
ソウデス……アナタタチガ心底欲シテイル
此ノ地ヲ荒ラシテ回ッテイル者ノ正体デス。

カーナーヴォン城
――なに!?

???
此ノ地ヲ荒ラシテ回ッテイル
者ノ正体、ソレハ…………!

???
日ノ本ト呼バレル地カラ来タ男ト、
其ノ配下デアル城娘タチナノデス。

コンウィ城
日の本……っ!?
それは本当なのですか?

???
真偽ハ直グニ分カル筈デス。

???
何故ナラ私ハ、其ノ者タチガ
次ニ何処ヲ襲撃スルカトイウ
情報モ突キ止メテマスカラネ。

カーナーヴォン城
…………分かった。

カーナーヴォン城
貴方のその言葉を信じよう。

コンウィ城
か、カーナーヴォン城さん!?

コンウィ城
あの者の素性は未だ分かっていないのですよ!
あまりにも早計では……?

カーナーヴォン城
背に腹はかえられない……。
私はこれ以上、此の地が傷つくのを見たくないのだ。

コンウィ城
カーナーヴォン城さん……。

コンウィ城
分かりました。
貴方の決意に私も付き従いましょう。

カーナーヴォン城
ありがとう……。
同じアイアンリングの城娘として貴方を誇りに思う。

コンウィ城
ふふっ、大げさですよ。

コンウィ城
それに、私がついてないと
カーナーヴォン城さんは無茶しますから、
心配で放っておけないんです。

カーナーヴォン城
そ、そんなことは……。

カーナーヴォン城
ちょっとだけ……あるかも……。

コンウィ城
ふふっ、今日のカーナーヴォン城さんは
素直でとっても良いと思います♪

???
ソノ晴レヤカナ表情……!
フム、心ハ決シタ様デスネ。

???
ソレデハ直グニデモ参リマショウ!
私ガ、アナタタチヲ導イテミセマス。

???
……フフフ。

――数日後。

やくも
殿さーーーんっ!

やくも
何か知らんけど
所領の前にこんなものが届いてただに!

殿
…………!

千狐
こ、これは……!?

千狐
どうやら盾のようですね。

千狐
美しい装飾がなされた品ですが、
見たところ異国の……それも西洋のもののようです。

千狐
それに、ところどころが破損していますし、
実際に戦いに使用されたものにも見えますね。

やくも
それにこんな書状も届いていたがや!
ちょっと見て欲しいだに。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
殿、これは……っ!?

千狐
異国の言葉で書いてあるせいで、さっぱり読めませんわ!

柳川城
あのぉ……ちょっと私にも見せて頂けますか?

柳川城
…………ふむふむ。

柳川城
そ、そんな……っ!

柳川城
殿、どうやら差出人は助けを求めているようです!

千狐
――読めるのですかっ!?

柳川城
……え?

柳川城
はい、少しであれば異国の言葉は分かりますよ。

柳川城
けっこう前にですが、南蛮貿易によって
市場に流れてきた書物をたまたま手に入れたので、
いつか殿の役に立てるようにと少しずつ勉強してました。

殿
…………!

柳川城
はい! ありがとうございます、殿!

千狐
…………。

千狐
(……せ、千狐も勉強しなきゃなの……!)

やくも
って、そげなことよりも、
助けを求めてるってどういうことだに!?

柳川城
手紙の全てを理解できた訳ではないのですが、
差出人の故郷が兜の襲撃にあっているようです。

やくも
ならすぐに助けに行くだに!

柳川城
ですが、場所は海を越えた異国の地ですよ?

柳川城
……千狐さんの転移術が上手く機能しますでしょうか?

千狐
それならば恐らく問題ないと思いますわ!

千狐
この壊れた西洋の盾に残る霊気を媒介とすることで、
書状の差出人のいる地に向かうことができるはずです。

やくも
よっしゃ、そういうことならすぐに向かうだに!

殿
…………!

こうして、異国の地への遠征を決したのだった。

――所領より遥か遠方の地。

千狐
殿、どうやら無事に転移術は成功したようですわ!

柳川城
見たところ、周囲に人影らしきものはないようですが、
書状の送り主は何処にいるのでしょう……?

やくも
とりあえず、周囲を探してみることにするがや。

柳川城
殿、此処では色々なことが日の本とは異なると思います。
どうか注意は怠らないようにしてくださいね?

やくも
色々と違う、かぁ……。

やくも
確かに景色も空気も日の本とはひと味違うような気がするに。

やくも
――はっ!?

やくも
もしかして、異国の兜も日の本とは異なってたりするんかね……!?

犬形兜
…………。

やくも
ってなーんだ、いつもと同じ動物型兜さんかや。
期待して損しただに。

柳川城
――やくもさん! 逃げてください!
そのままでは兜に食い殺されてしまいます!

やくも
……はぇ?

犬形兜
ガルルルルルルゥ……!

やくも
ひぇーーーっ!!
そ、そうだっただに! 
見慣れてるからって相手は危険な兜さんだったがやぁ!

千狐
殿、すぐにやくもを助けに行きましょう!

後半
やくも

はぁ……はぁ……た、助かっただにぃ……。
殿さん、だんだんね。

千狐
どうやら怪我はしてないようね。
とりあえず、やくもが無事で良かったわ。

柳川城
ですが、やくもさんが予想したように、
先ほどの兜の軍勢の中に見慣れぬ出で立ちの兜がいましたね。

やくも
何だか少しだけ不気味だっただに……。

千狐
日の本とは異なる作りの装備……。
不慣れな相手との戦いは今後も注意が必要ですね。

柳川城
……依然として周囲に人の姿が見えない為、
情報収集も難航しそうですし、不安材料は意外と多いですね……。

千狐
そうですね……。

千狐
――あれ?

柳川城
どうしたのですか、千狐さん?

千狐
あちらを見てください!

犬形兜
クゥゥゥ~~~ン……。

やくも
兜さんがまだ残ってたがや!?

柳川城
どうやら逃げ遅れたようですね。

やくも
ひとりぼっちになってみると、けっこう可哀想にも見えーだに……。

やくも
――あっ!?

やくも
良いこと思いついただに!

千狐
やくも? いったい何をする気なの?

やくも
こうするつもりだにぃっ!!

犬形兜
――ガゥッ!?

やくも
少し可哀想やけど、縄で縛っただに!

やくも
さあ、殿さん!
この兜さんに此の地で起きてることを質問すると良いだに!

殿
…………。

犬形兜
クゥゥゥ~~~ン……。

殿
…………。

犬形兜
…………クゥゥゥ~~~ン。

殿
…………。

千狐
そ、そうですよね。
犬のような言葉しか発しない兜ですから
言葉がよく分からないのは当然かと……。

やくも
なーに言ってるがや?

やくも
異国からの書状の言葉が分かったんやから、
柳川城がきっと何とかしてくれるだに!

柳川城
――え?

柳川城
わ、私……さすがに犬さんの言葉は……。

殿
…………。

柳川城
(あ…………。殿が私に期待してくださってる……!)

柳川城
私、頑張ってみます!

犬形兜
クゥゥゥ~~~ン……。

柳川城
……わ、ワンワンっ!

犬形兜
…………ガウッ!?

柳川城
(は、反応してくれています!? もしかしたら上手くいくかも……!)

柳川城
貴方が知ってることを教えて欲しいワン!

犬形兜
…………。

犬形兜
…………?

柳川城
……あ、だから……その……えっと…………。

柳川城
…………うぅぅ。

柳川城
申し訳ありません、殿。
やはり私には無理です……お役に立てなくてごめんなさい……!

殿
…………。

やくも
むぅ……そうなると八方ふさがりだに。
いったいどうしたらいいがや。

犬形兜
――ッ!?

犬形兜
ガウガウッ!

千狐
あっ――!?
縄を噛み千切って、逃げて行ってしまいましたわ!?

柳川城
いえ、違います千狐さん!
見てください、兜が逃げた先を……。

千狐
……え?

コンウィ城
…………ふふっ。

コンウィ城
ようやくお会い出来ましたね、日の本のお侍さん。

堅固なる異邦の守護者 -破-

微笑みと共に現れたのは異国の城娘だった。
思わぬ出会いを喜ぶ殿たち一行だが、
そんな彼らにコンウィ城の敵意が向けられる。

前半
コンウィ城

ようやくお会い出来ましたね、日の本のお侍さん。

千狐
……貴方はいったい?

千狐
――っ!?

千狐
もしかして、千狐たちに書状を送った方でしょうか?

コンウィ城
書状……?

コンウィ城
何のことか分かりませんが、
質問するのは私の方ですよ。

コンウィ城
……貴方たちが日の本から来た城娘と
それを従える侍で相違ありませんね?

やくも
そうがや! 殿さんと仲間の城娘たちとで、
遠路はるばる異国の地に来ただにぃ!

柳川城
といっても、千狐さんの転移術のおかげで
一瞬で来られたわけですけど……。

コンウィ城
……やはり、貴方たちが日の本の者たちでしたか。

コンウィ城
……これであの御方の言葉が
嘘ではなかったことが証明されましたね。

やくも
……え?

柳川城
――殿、お下がりください!
何か様子がおかしいです!

千狐
そんな……彼女から放たれる輝きは……っ!?

コンウィ城
そうです! 私の名はコンウィ城。
貴方たちと同じ城娘です!

柳川城
……だというのに、
どうしてそれほどまでの敵意を殿に向けるのですか?

コンウィ城
ふふ、理由が分からないと?

コンウィ城
……それはそうでしょうね。何故なら貴方たちは、
此の地に破壊と悲しみを振りまく不逞の輩ですもの。

コンウィ城
善悪の判断もつかぬ狂者には、
我が怒りを理解することなどできないでしょう!

殿
…………。

コンウィ城
此の地を穢した貴方たちの罪、
このコンウィ城の輝きで浄化してみせます!


浄化! 浄化ァッ!

千狐
そんな……兜と城娘が共に攻めてくるなんて……っ!

柳川城
……城娘との戦いは気が進みませんが……。

柳川城
それでも殿を死なせる訳にはいきません!

柳川城
異国の地であろうと、私は殿を絶対に守り抜きます!

千狐
殿、柳川城さんに続きましょう!
今はとにかく敵を迎え撃つしかありませんわ!

後半
千狐

兜の撤退を確認しましたわ!
さすがです、殿!

コンウィ城
――そ……そんな。
これほどまでの力を持っているなんて……。

コンウィ城
このままでは、此の地も……世界も……すべて……、
あの侍の手によって壊されてしまう……。

柳川城
無理をしてはいけません、コンウィ城さん!
今すぐに手当をしますので、動かないでください。

コンウィ城
……え?

コンウィ城
どうして、敵であるはずの私の心配を……?

千狐
戦いは終わったのですから、負傷者を気にかけるのは当然ですわ。

やくも
それに戦い方を見てて思ったけど、
コンウィ城は優しそうな城娘やけん、
どうしてもうちは悪人には見えないだに。

柳川城
はい、私も同じように感じました。

コンウィ城
…………。

コンウィ城
(これは……罠、なのでしょうか……?)

コンウィ城
(ですが、この方たちから感じられるのは温かな優しさだけ……)

コンウィ城
(ならばなぜ、此の地の平和を乱すような真似を……?)

殿
…………。

コンウィ城
…………。

殿
…………?

コンウィ城
(――っ!?)

コンウィ城
(だ、だめよ、コンウィ城……!)

コンウィ城
(どれほど優しげな笑みを向けられても……絆されてはいけないわ……)

コンウィ城
そうです……悪が常に醜い姿であるなど、どうして言えるでしょうか……?

コンウィ城
――ハッ!?
まさか、こうした手口で次々と見目麗しき城娘たちを
仲間へと引き込んでいるのでは……っ!

殿
…………!?

コンウィ城
此の地を荒らして回るに飽き足らず、
偽りの微笑で私の心までをも奪おうとするなんて……許せません!

柳川城
待ってください! いったい何を仰っているのですか!?
コンウィ城さん、こちらの話を聞いてくだ――

???
――それ以上コンウィ城に近づくな、悪徒め!

殿
…………っ!?

カーナーヴォン城
後は私に任せて退け、コンウィ城!
此の地の秩序は……必ずや私が取り戻してみせる!

堅固なる異邦の守護者 -急-

勇ましき声音と共に現れた新たな城娘。
彼女が引き連れる遠距離攻撃を得意とする
兜たちの猛攻を退け、何としても勝利せよ!

前半
カーナーヴォン城

後は私に任せて退け、コンウィ城!
此の地の秩序は……必ずや私が取り戻してみせる!

コンウィ城
肝心なところでお力になれず、申し訳ありません。

カーナーヴォン城
気にすることはない。さあ、急ぐのだ!

コンウィ城
はい……どうか、ご武運を……。

カーナーヴォン城
…………ああ。

柳川城
……。

カーナーヴォン城
……。

柳川城
貴方も、城娘なのですね……?

カーナーヴォン城
……然り。

カーナーヴォン城
そして同時に、この地の秩序を守護する者でもある。

千狐
(この異常なまでの威圧感は何なの? 対峙してるだけで気圧されてしまう……)

カーナーヴォン城
まず、告げておく……。

カーナーヴォン城
……城娘たちよ、大人しく投降せよ。

カーナーヴォン城
先ほどのコンウィ城とのやりとりで十分に理解した。

カーナーヴォン城
貴方たちはあの男に騙されているだけ……。

カーナーヴォン城
そう、全てはあの侍の悪意が
此の地の秩序を乱しているのだ!

殿
…………。

千狐
殿が、此の地の秩序を……乱している……?

やくも
そんなのおかしいだに!
殿さんは此処の人々の為に出張ってきたがや!

カーナーヴォン城
……そのような男を擁護するとは。

カーナーヴォン城
心酔しきっているとあっては、言葉も通じぬというわけか……。

カーナーヴォン城
城娘の無垢なる心の隙間に付け込んで欺き、
痛ましき悪事を働かせるとは……断じて許せん!

カーナーヴォン城
アイアンリング最強を誇る我が力で、
必ずや貴方を粛正してみせよう!

カーナーヴォン城
総員、配置に付けっ!

三十二間星形兜
……了解。

烏帽子形兜
任セテクレ……。

砲撃式トッパイ形兜
……派手ニカマスゼ!

柳川城
まずいですね……遠距離攻撃を得意とする兜たちで
一斉に私たちを攻撃するつもりのようです。

やくも
ど、どうしたらいいがやぁ……?

千狐
殿、やるしかありませんわ!
敵の遠距離攻撃に注意しつつ指揮を取ってください!

後半
カーナーヴォン城

まさか、あの包囲網を切り抜けるとは……っ!?

カーナーヴォン城
それほどの力を持ちながら、
どうして悪行を重ねるというのか……。

カーナーヴォン城
もし味方であったのなら……いや、言うまい……。
総員、直ちに負傷者を引き連れ予定地まで撤退するぞ!

柳川城
ま、待ってください!
私たちは貴方たちの敵では……。

カーナーヴォン城
異国の城娘よ……どうか悲しみに満ちた顔をしないでほしい……。
貴方たち城娘をその男から救うため私は必ず戻ってくる!

カーナーヴォン城
さらばだっ!

柳川城
――いや、だからそうではなくてですね!

やくも
……だめがや。
もう、行ってしまっただに。

千狐
とりあえず……危機は去ったようですね、殿。

柳川城
それにしても、どうして彼女たちは
あれ程までに殿を憎むのでしょうか?

柳川城
私たちは、此の地に一度として来たことなど無いというのに……。

やくも
あの二人が、兜に心を囚われているっていう可能性はないかや……?

千狐
千狐もそう思って、彼女たちの霊気を探ってみたんだけど……。

千狐
……霊気に異常は見られなかったわ。

やくも
んぅ~。そうなるとさっぱり分からんだにぃ……。

柳川城
……ここで考えていても答えは出そうにないですね。

千狐
ですが、一つだけ確かなことがあります。

千狐
それは、あの方たちが依然として殿を憎んでいるということ……。

柳川城
……そうですね。

柳川城
あの口振りからして、カーナーヴォン城さんたちは、
きっと殿を狙って再び此の地にやってくるはずです。

やくも
なら、すぐにでも此処で陣を張って再来に備えるだに!

千狐
それでは殿、暫しの休息を取った後、
カーナーヴォン城さん達に備えて準備を始めることにしましょう!

堅固なる異邦の守護者 -離-

再び柳川城たちの前に姿を現したコンウィ城。
問答無用で激しい戦いが始まると思いきや、
彼女の思惑は別の所にあった……。

前半
柳川城

……ふぅ。これで何とかそれなりの
陣屋を構えることが出来ましたね。

やくも
うちがえっぱい頑張ったけん、
これくらいは当然だに!

柳川城
やくもさんの手先の器用さは
本当にいつも驚かされます。

柳川城
今度、私にも工作のコツを教えてほしいです。

やくも
ふふ……うちは厳しいだに。
それでも耐えられるかや?

柳川城
殿のお役に立つためです。
どんなことにも耐えてみせますよ、やくも先生!

やくも
――せ、先生!

やくも
いい響きだに!
もっと言ってほしいがやー!

千狐
もう、やくもったらすぐに調子にのるんだから。

やくも
何や、千狐。
うちが柳川城に先生って呼ばれて、嫉妬してるかや?

千狐
べ、別にそんなんじゃないのー!

柳川城
お二人とも、ケンカはいけませんよぉ……。

柳川城
それよりも、今は殿のところへと戻り
陣立てが整ったことを伝えに行きましょう。

千狐
そ、そうでしたね。

千狐
それでは行きましょうか、柳川城さん。

やくも
…………あれ?

千狐
どうしたの、やくも?

やくも
いや、何か今そっちの草陰で何かが動いたような気がして……。

千狐
もしかして兜かしら……!?

柳川城
いえ、待って下さい!

柳川城
あれは……。

柳川城
――コンウィ城さん!?

コンウィ城
あらあら、見つかっちゃいましたね。

やくも
そんな……もうこげに近くまで忍び寄ってたなんて!?

千狐
迂闊だったわ。
再襲撃がこんなに早いなんて……。

柳川城
千狐さん、やくもさん……。
ここは私が時間を稼ぎます。

柳川城
お二人は殿にこのことを報せに行ってください。

やくも
柳川城だけ置いて行けって言うかや?

やくも
そげなこと出来るわけないだに!

柳川城
ですが、今はそうするのが――

コンウィ城
――ちょ、ちょっと待ってください!

コンウィ城
私は貴方たちに危害を加えるつもりはありません!

千狐
……え?

コンウィ城
ほら、見て下さい。
武器だって今は手にしていません。

柳川城
それではいったい、どうしてここに来たのですか?

コンウィ城
それは……。

コンウィ城
貴方たちを保護しに来たのです!

千狐
千狐たちを……?

やくも
保護しに……来た?

柳川城
あの、話が見えないのですが……。

コンウィ城
言葉の通りですよ。

コンウィ城
ご存じの通り、先刻私は貴方たちを統率する者と対面し、
いくつかの言葉を交わし合いました……。

コンウィ城
そして、悟ったのです。

コンウィ城
貴方たちはあの侍の許にいるべきではないと!

柳川城
私たちが、殿といるべきではない……!?

コンウィ城
だって、そうでしょう?

コンウィ城
貴方たちからは邪悪を感じることなどできません。

コンウィ城
だというのに我々の大切な地は、
あの侍によって傷つけられています……。

コンウィ城
それもこれも、
善悪の判断すらつかない年端もいかぬ城娘らをたぶらかし、
悪逆へと駆り立てるあの男が存在しているせいなのです。

千狐
たぶらかすだなんて……殿はそのようなことは――

コンウィ城
――安心してください!

コンウィ城
今ならばあの侍はいません。
もう嘘をつく必要はないのです。

やくも
いや、だから嘘も何も、うちらは――

コンウィ城
――大丈夫です!

コンウィ城
今後の生活が不安になるのも分かりますが、
ちゃーんと私が責任をもって貴方たちを養います。

コンウィ城
こう見えてもけっこう貯金してます!

コンウィ城
料理だって色々と作れちゃいます!

コンウィ城
だから衣食住には困りはしません!

コンウィ城
さあ、いつあの腹黒侍がやってくるか分かりません!
他の城娘たちを連れて、私の許へいらしてください。

柳川城
……あの、心配してくださる
その気持ちは嬉しいのですが……。

柳川城
私たちは、自分の意思で殿のお傍にいるのです。

柳川城
だから、コンウィ城さんの許へは行けません。

コンウィ城
…………。

コンウィ城
……なるほど。

コンウィ城
これほどまでに、心を捕らわれてしまっていては、
自らの判断で助けを求めることもできないと言うことですね。

コンウィ城
ならば――っ!!

柳川城
――えっ!?

柳川城
な、何をするのですかコンウィ城さん!?

コンウィ城
実力行使です!
無理にでも貴方たちを、あの侍から引き離します。

コンウィ城
そうすれば、すぐに目が覚めるはずです!

やくも
……い、痛いがやぁ……っ!
あっ、うぅ……そんなに……ら、乱暴にしないでほしいだにぃ……っ!

千狐
どうしよう……やくもが連れ去られてしまいますわ!

柳川城
仕方ありません、こうなったらこちらも――

殿
…………。

千狐
――って、殿!?

千狐
いつの間にいらしてたのですか!?

コンウィ城
くっ……もう見つかってしまいましたか。

コンウィ城
ですが、貴方の大事なやくもさんは、
私がこの通り保護しました。

コンウィ城
返して欲しかったら、私を倒して……。

コンウィ城
って、あれ?
何だか私の方が悪者みたいになってるような……?

やくも
離してほしいだにぃぃ!
殿さんのとこに帰りたいがやぁぁ!

コンウィ城
――っ!?

コンウィ城
(この反応に偽りはないように見える……)

コンウィ城
(では本当に、あの侍のことを心から慕っているというのですか……?)

コンウィ城
……いえ、今は迷っている場合ではありません!

コンウィ城
総員! 戦闘準備です!

柳川城
――殿! コンウィ城さんの周りに兜たちが集まっていきます!

千狐
そんな……兜たちの中には見慣れぬ兜も混ざっていますわ!

柳川城
あの装甲……恐らく銃撃などでは怯みはしないでしょうね……。

千狐
殿、堅固な装甲の兜に注意して城娘たちに指示をしてください!

コンウィ城
……再び剣戟を交えることで、
あの侍の心を見定めてみせる……。

コンウィ城
――さあ行きますよ、日の本の侍!

後半
コンウィ城

――うっ、くぅぅ……。
また、負けてしまうなんて……。

やくも
殿さーん!
ようやく解放してもらえたがやぁ。

やくも
ただいまだにぃ!

千狐
もう何がただいま、よ!
心配したんだからね。

コンウィ城
…………。

柳川城
コンウィ城さん……もう、やめましょう。

柳川城
こんなことをしても、意味がないということを、
既に貴方は分かっているのではないのでしょうか?

コンウィ城
……柳川城さん。

殿
…………。

コンウィ城
…………。

殿
…………!

コンウィ城
また、そのような優しげな笑みを向けるなんて……。

コンウィ城
私にとどめを刺すこともできたのに、
貴方たちはそうはしませんでした……。

コンウィ城
今だって、敵であるはずの私に、
こんなにも優しさを与えてくれる……。

コンウィ城
もう、貴方たちを疑うに足るものが私にはありません……。

柳川城
それでは、私たちが敵ではないことを信じていただけるのですね?

コンウィ城
……はい。

コンウィ城
ですが、そうなるとまた新たな疑問が――

???
――コンウィ城!

やくも
こ、この声は!?

千狐
殿、あちらの方からカーナーヴォン城さんが向かってきますわ!

カーナーヴォン城
今すぐコンウィ城を解放するのだ!
これ以上の蛮行を許しはしない……!

堅固なる異邦の守護者 -結-

コンウィ城に続き姿を現すカーナーヴォン城。
既に場は言葉だけでは収められぬ域に達した。
故に互いの武を以て、その心を通わせるべし。

前半
カーナーヴォン城

今すぐコンウィ城を解放するのだ!
これ以上の蛮行を許しはしない……!

コンウィ城
待って下さい、カーナーヴォン城さん!

コンウィ城
少しだけこの方たちの話を聞いてあげて下さい。
私たちは何か重大な勘違いをしていたのかもしれません!

カーナーヴォン城
……なん、だと?

カーナーヴォン城
その男を庇うとは……。

カーナーヴォン城
さてはコンウィ城、貴様まさか……。

カーナーヴォン城
その侍にたらし込まれてしまったのか!?

コンウィ城
ち、違います! 私は正気ですよ!

コンウィ城
……そりゃあ、このお侍さんの笑顔に
少しときめいてしまったのは否定しませんが……。

カーナーヴォン城
――は?

柳川城
…………え?

殿
…………?

コンウィ城
あ、いえいえ!
今のは聞き逃して下さい。

コンウィ城
それよりも今はカーナーヴォン城さんです!

コンウィ城
私は彼女とは長い付き合いだから
さっきのやり取りだけで分かるのですが……。

コンウィ城
今のカーナーヴォン城さんには、
万の言葉を向けたとて、何も収まりはしないでしょう。

コンウィ城
それだけ私たちは上手く騙されてしまい、
強固なまでの思い込みを形成してしまったのですから。

千狐
騙された……?

コンウィ城
詳しい話は戦いの後です。

コンウィ城
まずはカーナーヴォン城さんを無力化しましょう。

柳川城
ご友人なのに、そんな提案をしていいのですか?

コンウィ城
大丈夫、カーナーヴォン城さんはものすごーく強いので、
討ち取りに行くくらいでちょうどいいはずです。

柳川城
ですが、やはり戦わずに済む道を探るべきではないでしょうか?

コンウィ城
柳川城さん……。

コンウィ城
貴方は心優しき城娘ですね。

コンウィ城
――とはいえ、心配ご無用っ!

コンウィ城
我らは何を隠そう騎士の心を持つ城娘です。
故に戦うことでしか正しさを示すことができない時があることを知っています。

コンウィ城
だからどうか、貴方たちの力をカーナーヴォン城さんに示して下さい。

コンウィ城
今はそれが、おそらく最善の選択なのですから……。

柳川城
……コンウィ城さん。

コンウィ城
……私を、信じて下さい。

柳川城
…………。

柳川城
……分かりました!

柳川城
いきましょう、殿!
私たちの身の潔白を証明する為に!

カーナーヴォン城
……ようやく腹は決まったようだな。

カーナーヴォン城
アイアンリング最強の所以、今こそ知らしめてくれよう!
覚悟しろ、日の本の者たちよ!

後半
カーナーヴォン城

……見事、だ……。
このカーナーヴォン城の進撃を凌ぎきるとは……。

コンウィ城
大丈夫ですか、カーナーヴォン城さん?

カーナーヴォン城
ああ、大事ない……。

カーナーヴォン城
だがこうして再びあの侍と戦えたことで、
分かったことがある。

カーナーヴォン城
……彼らの武には確かな輝きがあった。

コンウィ城
はい。だからこそ理解できるのです。

コンウィ城
あの者たちが、此の地を傷つけたのではないと……。

やくも
なぁ、何度かあんたらが口にしてるその
此の地を傷つけた、ってのはいったいどういうことがや?

やくも
そろそろちゃんと説明してほしいだに!

コンウィ城
実は……数週間ほど前から、此処ら一帯の
地を荒らして回る者たちが現れたのです。

カーナーヴォン城
我々は、その者たちの撃退を目的とし、
共に各所の調査にあたっていたのだが、
犯人を見つけられずにいたのだ……。

コンウィ城
そんな時、私たちの前に現れたある者が、
犯人に関する情報を与えてくれたのです。

コンウィ城
その情報によれば、此の地を荒らして回っていたのは、
日の本と呼ばれる地から来た男と、
その配下である城娘たちだと言うのです。

コンウィ城
そして、情報提供者の指示した日時通りに
この場所で待ち伏せていたら……。

柳川城
私たちが現れた、と……。

カーナーヴォン城
ああ。そういうことだ。

やくも
それにしても迷惑な話がや……。

やくも
いったいその情報提供者っていうのは何者だに!?

千狐
それなら、既に目星はついているわ。

やくも
――ほ、本当かや!?

千狐
カーナーヴォン城さん、コンウィ城さん。
貴方たちが引き連れていた兵たちは、
元々は貴方たちの仲間ですか?

カーナーヴォン城
……いや。

カーナーヴォン城
あの奇妙な兵たちは、
その情報提供者から貸し与えられたものだ。

千狐
貸し与えた者の出で立ちや雰囲気も、
先ほどの兵に近いものでしたか?

コンウィ城
ええ……引き連れていた兵よりもずっと巨大なその姿は
どこか不気味で、相対しているだけで心がざわつきました。

やくも
兜に似ていて、巨大な姿……それって……。

柳川城
はい……巨大兜と考えて間違いないでしょう。

カーナーヴォン城
巨大兜……?

千狐
千狐たちが日の本で戦っている敵のことですわ。

やくも
殿さんはそんな兜たちを倒す為に、
城娘たちと一緒にいろんな場所で戦ってきたがや。

柳川城
そして此の地に来たのも、兜の蛮行に苦しんでる人々が
殿に書状にて助けを求めてきたからなのです。

やくも
それにな、うちらが此処に到着したのは今日やけん、
時間的にも殿さんが此処らへんを荒らして回るのは不可能だに。

やくも
――ん? あれ?

やくも
ちょっとおかしいだに。

やくも
そもそもうちらに此処に来てほしいって書状を出したのは誰がや?

千狐
初めてコンウィ城さんに会った時に
書状のことを千狐は聞きましたが、
心当たりは無いような反応でしたわ。

コンウィ城
ええ、そもそも日の本がどこにあるのかなど
私もカーナーヴォン城さんも知りませんもの。

コンウィ城
書状を出すなど、考えることすらできませんよ。

カーナーヴォン城
となると、犯人は
我々を教唆したアイツ以外には有り得ないな……。

柳川城
……巨大兜、ですね。

千狐
間違いありませんわ。

千狐
殿とカーナーヴォン城さん達が戦うよう仕向けることで
利を得るのは兜なのですから……。

カーナーヴォン城
……巨大兜め。

カーナーヴォン城
只者ではないと思ってはいたが、
これほどの策士だったとはな……。

カーナーヴォン城
一連の事件の解決を急いでいたとはいえ、
あの様な者を信じてしまった我々の落ち度だ……。

カーナーヴォン城
本当にすまなかった……。

殿
…………。

殿
…………!

カーナーヴォン城
気にしなくていい……か。

カーナーヴォン城
器の大きさでも、負けを認めざるを得ないな。

コンウィ城
……おやおや?

コンウィ城
カーナーヴォン城さんが、乙女の顔をしていますね。

コンウィ城
もしかして、惚れちゃいましたか?

カーナーヴォン城
――なっ!?

カーナーヴォン城
そのようなことはありません!

コンウィ城
ふふっ……口調が素の敬語になっちゃってますよ?

カーナーヴォン城
もう……コンウィ城は時々いじわるです……。

やくも
(なぁ千狐……)

千狐
(な、何よやくも……?)

やくも
(何だかカーナーヴォン城の雰囲気が変わっただに)

千狐
(コンウィ城さんが言うように、
あれが本来のカーナーヴォン城さんなのかもしれないわ)

やくも
(ちょっと怖い城娘かと思ってたけど、優しそうで良かっただに)

コンウィ城
――あ、そうです!

柳川城
どうしたのですか?

コンウィ城
今までたくさん迷惑をかけてしまったのですから、
お詫びの意味を兼ねて、貴方たちを持て成させて下さい。

やくも
持て成し……っ!?

カーナーヴォン城
そうだな。
ウェールズ流の持て成しでもって、
貴方たちと親睦を深めさせてもらえると嬉しい。

やくも
も、もしかして……美味しいもの食べさせてもらえるがや!?

コンウィ城
やくもさんが気に入るように、
腕によりを掛けてパスティを作りますよ!

コンウィ城
カーナーヴォン城さんが。

カーナーヴォン城
わ、私が作るのか!?

コンウィ城
だって、カーナーヴォン城さんお料理得意じゃないですか。

カーナーヴォン城
コンウィ城に比べたら、私なんてまだまだだ……。

コンウィ城
安心して下さい、カーナーヴォン城さん。
私もちゃんとお手伝いしますから。

カーナーヴォン城
そ、そうか。

カーナーヴォン城
うむ、それならばいいのだ。

やくも
何や聞き慣れない料理名も出てきたことやし、
早くもわくわくが止まらんだに!

柳川城
私も、異国の料理というものを食べてみたいです!

やくも
なあなあ千狐、ご馳走に預かってもいいがや?

千狐
そうね。今のところは周囲に兜の霊気は感じないし、
こうして出会えた城娘たちと仲を深めるべきだわ。

カーナーヴォン城
どうやら異存は無いようだな。

コンウィ城
それでは参りましょう、日の本のお侍さん。

コンウィ城
たっぷりとウェールズ流のお持て成しをさせていただきますからね♪

堅固なる異邦の守護者 -絶-

――真に仕えるべき主とは。
自らの問いに答えを見出すべく、
コンウィ城たちは再び殿へと戦いを挑む。

前半
カーナーヴォン城

…………。

コンウィ城
こんな所に居たのですね。
探してしまいましたよ。

カーナーヴォン城
……コンウィ城か。

カーナーヴォン城
日の本の者たちはどうしている?

コンウィ城
皆さん、カーナーヴォン城さんがお作りになった
お料理に舌鼓を打っていますよ。

コンウィ城
ずいぶんと腕を上げましたね、カーナーヴォン城さん。

カーナーヴォン城
よしてくれ。
まだまだコンウィ城には程遠い……。

カーナーヴォン城
――それよりも、だ。

カーナーヴォン城
巨大兜から貸し与えられた残りの兜たちのこと、どうするつもりだ……?

コンウィ城
……そうでしたね。

コンウィ城
まだ、かなりの数の兜たちが
私たちの次の命令を待っています。

コンウィ城
今となっては、過ぎたる武力……。
いえ、私たちが触れてはいけない悪しき力の群です。

カーナーヴォン城
そうだ。

カーナーヴォン城
そして、いずれは討たねばならぬ敵でもある。

カーナーヴォン城
今にして思うが……。

カーナーヴォン城
巨大兜に出会った時に感じた不穏さは、
私たちが城娘だったからこそ持ち得た、
本能的な恐怖や敵対心だったのだろう。

カーナーヴォン城
…………。

カーナーヴォン城
私たちだけで、討つべきだろうか?

コンウィ城
……それでも私は構いませんよ?

コンウィ城
まだ日の本の者たちに見せていない
カーナーヴォン城さんの本当の力を発揮しさえすれば、
あの程度の敵など取るに足らない雑兵ですからね。

カーナーヴォン城
……だが、本当にそれでいいのだろうか。

コンウィ城
と、言うと……?

カーナーヴォン城
日の本の勇士たちは確かに強い。

カーナーヴォン城
迷惑をかけてしまったという負い目もある。

カーナーヴォン城
少なくない恩だって感じている。

カーナーヴォン城
――しかし、それだけだ。

コンウィ城
先ほどの千狐さんの申し出であるところの、
殿と共に兜を倒す為に歩みを揃えるのは嫌だと……?

カーナーヴォン城
……嫌というわけではない。

カーナーヴォン城
ただ、私は納得したいだけ……。

カーナーヴォン城
……そう。

カーナーヴォン城
誇り高きアイアンリングの城娘として、
真に仕えるに足る主君を見定めたいのだ。

コンウィ城
……なるほど。

コンウィ城
カーナーヴォン城さんの魂胆が分かりましたよ。

コンウィ城
あの兜を利用するのですね。

カーナーヴォン城
……あまり、こういったやり方は好きではないがな。

コンウィ城
そうですね……。

コンウィ城
ですが、こんな混沌たる世の中です。

コンウィ城
望ましいことではありませんが、
許されざる事柄ではないでしょう。

コンウィ城
私たちだって、兜に利用されたのですから……、

コンウィ城
なんて言うと少し子供っぽいですが。

コンウィ城
意趣晴らしを以てこの戦いに終止符を打ち、
進むべき道を示す標を見つけるべきだと、私は思います。

カーナーヴォン城
コンウィ城……。

カーナーヴォン城
……わがままに付き合わせてすまないな。

コンウィ城
気にしないで下さい、カーナーヴォン城さん。

コンウィ城
我々にとって聞き慣れた言葉の一つにも、こうあります……。

コンウィ城
……歩けるようになる前には、這わなくてはいけない……。

カーナーヴォン城
……。

コンウィ城
我々はまだ、城娘としては赤子も同然……。

コンウィ城
時には、月美しき闇夜を当てなく彷徨うことも必要なのですよ。

カーナーヴォン城
……詩人だな、コンウィ城は。

コンウィ城
夢見がちなだけですよ。

――そうして、
二人の城娘は森の中へと消えていった。

――半刻後。

やくも
殿さーん! た、大変だにっ!

やくも
また兜が攻め込んできたがや!

千狐
それだけじゃありませんわ、殿!

千狐
……兜たちと共に、再びカーナーヴォン城さんたちまで、
此処に向かって攻め込んできているのです……。

殿
…………。

柳川城
そんな、どうして……!?

やくも
――っ!?
殿さん、もうすぐそこまで来てるみたいだに!


――ザザッ!


――ザザッ、ザザザッ!!

カーナーヴォン城
…………。

殿
…………。

やくも
もしかして、今度こそ本当に兜に操られてしまったんじゃ……!

千狐
…………っ!

千狐
いえ、彼女たちの霊気は正常だわ……。

やくも
じゃあどうして二人は殿さんと敵対するがや!?

千狐
千狐に聞かれたって分からないわよ!

柳川城
コンウィ城さん……これはいったいどういうことなのですか?

コンウィ城
驚かせてごめんなさい、柳川城さん。

コンウィ城
ですがこれは、私たちの意思による
交戦であることは間違いありません。

コンウィ城
貴方たちとこれからの日々を共にするか否か……。

コンウィ城
それを決する為の、
私とカーナーヴォン城さんなりの選定の儀だとお含みおきください。

やくも
選定の儀……!?

やくも
何言ってるかぜんぜん分からないだにぃ!

柳川城
私には……コンウィ城さんが言おうと
することが何となく分かる気がします……。

柳川城
私たちと真に分かり合うために、そして本当に
心から殿に仕える為に全ての力を出して戦いたい……。

柳川城
……きっと、そういうことなんだと思います。

やくも
けど、少し前に二人は全力を出して戦ったはずじゃ……。

柳川城
それは違います。

柳川城
先の戦いでコンウィ城さんたちは、
戦いの途中で私たちが敵でないことを悟っていました。

柳川城
だからこそ、本当の力を出すことはできていなかったのだと思います。

コンウィ城
……やはり、柳川城さんは分かっていたようですね。

コンウィ城
自分で言うと負け惜しみっぽくて言えませんでしたが、
実は私たち、全力を出してはいなかったのです。

コンウィ城
――あ、やっぱり何だか言い訳みたいです。
ん~、困ったものですねぇ……。

殿
…………。

柳川城
殿……本当に、お二人と戦うのですね?

殿
…………!

柳川城
……分かりました。ならば私も覚悟を決めます。

カーナーヴォン城
……すまないな。

カーナーヴォン城
だが、この不器用さもまた……私なのだ。

コンウィ城
(不器用……ですか)

コンウィ城
(そんなことを言っていても、カーナーヴォン城さんは
ちゃんと西洋甲冑に身を包んだ兜らには、ある程度
力を抑えるようにとの指示をしていたのを私は知っています……)

コンウィ城
(そう……これは殺し合いではないのだから……)

コンウィ城
(とはいえ、兜らの数は膨大……。
互いに無事では済まないでしょうね)

カーナーヴォン城
さあ、剣を構えよ!

カーナーヴォン城
この戦いを以て、貴様が真に仕えるべき男かどうかを見定めさせてもらうぞ!

後半
カーナーヴォン城

引き連れていた兜は全て討ち取られた、か……。

カーナーヴォン城
……完敗だな。

カーナーヴォン城
全てを出し切ってもなお、これだけの
力の差があるとは本当に大した者たちだ。

コンウィ城
ええ、悔しさや腹立たしさを通り超していっそ清々しいほどです。

コンウィ城
とはいえ……思っていた三倍くらい痛めつけられてしまったので、
正直なところもう立ってられないです……。

カーナーヴォン城
……奇遇だな。

カーナーヴォン城
実は、私もなんだ。

コンウィ城
それでは、二人仲良く気絶しちゃいましょうか。

コンウィ城
後のことは柳川城さんたちに……お任せ…………して……………………。(ぱたん)

千狐
だ、大丈夫ですかカーナーヴォン城さん! コンウィ城さん!

柳川城
ダメです、意識がありません!

やくも
ど、どうするがや!?

千狐
ここではちゃんとした手当なんか無理だわ。
所領にお二人を連れて行くしか……。

やくも
こっから所領までって、かなり距離があるはずやけん、
大丈夫なんかや……!?

千狐
やるしかないでしょ!

殿
…………!

柳川城
はい、お二人は私と殿で抱えます!

やくも
微々たるもんやけど、うちの力も
転移術の足しにしてほしいだに!

千狐
ありがとう、やくも!

千狐
それじゃあ、いくわよ!
コンッ! 秘技、時空……転移術なの―――っ!!

こうして、清浄なる光と共に、
殿たちは千狐の転移術によって異国の地より姿を消した。

――だが。

そんな一連の出来事を遠方より見据えている者がいたことを、
殿たちは知らなかった。

???
…………。

???
――素晴ラシイッ! 実ニ素晴ラシイデース!

???
争イ合ウ心ガ、アレホドマデニ美シク
調和シテイクダナンテ信ジラレマセン。

???
アア、次ニ会ウ時ガ楽シミデスネ……。

???
……フフフ。

――夜、所領。

既に所領の者達は皆、深き眠りについていた。

殿と、ふたりの城娘を除いて――。

コンウィ城
危ないところをありがとうございました、殿。

コンウィ城
あ、違いますね……えーっと、王様……そうです!
今から殿のことは王様と呼ばせていただきますね。

コンウィ城
ということで、改めてありがとうございました、王様。

コンウィ城
王様をはじめ、千狐さんにやくもさん、
それに柳川城さんら城娘のおかげで、
私もカーナーヴォン城さんも何とか――。

コンウィ城
――って、どうしたのですかカーナーヴォン城さん?
そんな端っこにいないで、こっちに来たらいいのに……?

カーナーヴォン城
いや、何というか……急に恥ずかしくなってきて……。

コンウィ城
ああ、私服姿は王様に初めて見せるのでしたね。

コンウィ城
戦場での勇ましき姿も、平時にあっては形無しな
カーナーヴォン城さんはやっぱり可愛いですねぇ。

カーナーヴォン城
そ、そんな……可愛いとか……言わないでほしい……。

カーナーヴォン城
コンウィ城の言いつけに従って、
威厳のある城娘に見えるようにと、
癖になってた敬語も使わないようにしていたのだから……。

コンウィ城
それでしたら、今はもう我慢しなくて大丈夫ですよ。

コンウィ城
私たちはようやくお仕えするに足る、立派な王様に
こうして出会うことができたのですから、
今だけはありのままの自分を見て貰うべきではありませんか?

カーナーヴォン城
……で、では……。

カーナーヴォン城
失礼します、殿下……。

コンウィ城
ふふっ……恥じらうカーナーヴォン城さんの何と可憐なこと。

カーナーヴォン城
またそんな意地悪を言って……。

カーナーヴォン城
それはそうと、殿下。

カーナーヴォン城
私からも改めて、これまでの非礼をお許しください……。

カーナーヴォン城
いくら兜の存在を知らなかったとはいえ、
その策謀にはまり、無実の貴方たちを傷つけしまったことは、
私にとって償いきれない罪です……。

コンウィ城
でも、兜のそうした小賢しさが、
私たちと王様を引き合わせてくれたのですから、
感謝すべき点が無いといえば嘘になりますね。

コンウィ城
まあ、だからと言って、
兜を許すつもりなど毛頭ありませんが……。

カーナーヴォン城
コンウィ城……表情、すごく怖くなってますよ。

コンウィ城
――にっこり♪

カーナーヴォン城
ええ、そっちの方がいいです。

コンウィ城
――兜許すまじっ!

カーナーヴォン城
何でまた戻るのですかっ!?

コンウィ城
――にこーん♪

カーナーヴォン城
……あの、もしかして私で遊んでます?

コンウィ城
バレてしまいましたか。

コンウィ城
……というのは冗談で、やはり兜のしたことを
許せないというのが正直なところなのです。

コンウィ城
結局のところ、私たちを騙した巨大兜の正体は分かっていません。

コンウィ城
あの巨大兜が未だに私たちの大切な場所に潜んでいるのかと思うと、
こうして休んでいる場合ではないと心が急いてしまいます。

カーナーヴォン城
だからこそ、殿下の仲間の城娘たちが、
残って警備しているのではないですか。

コンウィ城
はい、そのことに関してはとても感謝しています。

コンウィ城
だからこそ、王様には全力で恩返しをさせていただきたいのです。

カーナーヴォン城
もちろん、私もです。

カーナーヴォン城
再度の戦いを通して、
私たちは貴方を生涯の主として仕えると決心しました。

カーナーヴォン城
共にアイアンリングの城娘……。
その誇りに賭けて、この身が朽ちるまで貴方をお守りします。

コンウィ城
異国の城娘なので、色々と迷惑をかけるかもしれませんが、
末永くよろしくお願いしますね、王様。

カーナーヴォン城
それでは私たちはこれにて失礼します。

カーナーヴォン城
殿下も、あまり夜更かしなどされぬように……。

コンウィ城
おやすみなさい、王様♪



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