ストーリーテキスト/仄暗い川の中から

ページ名:ストーリーテキスト/仄暗い川の中から

目次

仄暗い川の中から[]

仄暗い川の中から -前-

鬼と兜たちの手によって、新たな妖怪・河童
の封印が解かれてしまう。水中から接近する
河童に注意しながら戦いに臨め。

前半
――夜・所領。

この日、
柳川城の古馴染みである久留米城と笹原城は、
所領の一室にて、寝泊まりしていた。

笹原城
……。

笹原城
…………。

笹原城
――――くわっ!?

笹原城
うわぁ~~~~んっ! 
興奮してぜんぜん眠れそうにないよぉ、久留米城お姉ちゃ~ん!

久留米城
もぉ、またそんなこと言ってぇ……。

久留米城
今日は日中、柳川城ちゃんといっぱい遊んだし、
夕餉も食べたし、お風呂だって一緒に入ったじゃないの。

笹原城
でもぉ……近くに柳川城お姉ちゃんがいると思うと、
何だかこのまま寝るのが勿体ないような気がするんだもん……。

久留米城
うっ……確かに、その気持ちはわからなくもないわ……。

久留米城
かく言う私も、全く眠れそうにないので、
こうして意味も無く、利休七哲っぷりを発揮して
さっきから夜通しお茶を点ててるわけだし……。

笹原城
…………。

笹原城
ねぇ……久留米城お姉ちゃん!

久留米城
な、何……?

笹原城
柳川城お姉ちゃんのとこ、行かない?

久留米城
――えっ!?

久留米城
そ、そんな……だめよ……もう夜も遅いし、
きっと柳川城ちゃんは夢の中にいるはず……。

笹原城
いいじゃん! 夢の中なら眠ってるってことでしょ?
ならさっ、そのまま一緒に柳川城お姉ちゃんと寝ちゃおうよ!

久留米城
――いっしょに、寝るっ!?

久留米城
そ、そっ、そそ、それって――
よ、よよ、よばっ……ばばっ……いっ、いぃぃぃっ!?

久留米城
――ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅ……………………。

笹原城
……へ?
く、久留米城お姉ちゃん!?
大丈夫!? 顔がものすごく赤いよ!

久留米城
だ、だだだ、だい、だっ、大丈夫ですともぉっ!!
くるくる久留米城! いたって冷静沈着ですからっ!

笹原城
――何か口調がおかしいよ、お姉ちゃん!
っていうか、何で急に変身してるのっ!?

久留米城
細かいことは気にしないで! 

久留米城
うんっ、そうですよ!
寝られない夜だからこそ、
かつて契りを交わした柳川城ちゃんに助けを求めるは必定!

久留米城
久留米城――! 
愛しの柳川城ちゃんの自室へ、いざ突貫しまーすっ!!

笹原城
わ、ちょ、ちょっと!
夜だから静かにだよ、久留米城お姉ちゃん!
こっそり、忍び足でいかないとダメだよぉ……!!

――そして、久留米城と笹原城は
所領内にある柳川城の部屋へと出向く。

……が。

久留米城
…………うそ。

久留米城
なんで……?

久留米城
何で、柳川城ちゃんが部屋にいないのですかぁぁ!?

笹原城
しぃーっ! 久留米城お姉ちゃん!
静かにしないと殿に怒られちゃうよぉ……。

久留米城
殿に……怒られる?

久留米城
殿……。

久留米城
――はっ!?
ま、まさか……柳川城ちゃん!

久留米城
こんな刻限に、殿の許にいるとでも!?

笹原城
――あっ! ちょっと、久留米城お姉ちゃん!
ちょっとぉ! 何処にいくのぉ~!

久留米城
柳川城ちゃんを何としても探し出すのよ!!
何かがあってからでは遅いわ!

笹原城
何かって何さぁ~っ!
ねえ、お願いだから私のこと置いてかないでよぉ――!

――柳川城を捜索すること、半刻。

久留米城
……おかしい。
城内のどこを探してもいないなんて……。

久留米城
ということは!
既に、外で殿と何かしてるに決まってる!

久留米城
私の柳川城ちゃんを外で独り占めなんて……。

久留米城
――殿ぉ、許すまじ!

笹原城
うわ~んっ! 
なんだか久留米城お姉ちゃんが怖いよぉ……!

久留米城
――あれっ!?
彼処にいるのは……や、柳川城ちゃん!

柳川城
…………。

殿
…………。

笹原城
あっ、殿も一緒にいるみたいだねぇ。

久留米城
こうしちゃいられないわ!
すぐに二人の間に割って入る……じゃなくて、声を掛けにいきましょう!

笹原城
おーいっ! 柳川城お姉ちゃ~ん!
そんなところで、何をしてるのぉー?

柳川城
――さ、笹原城さん!
それに、久留米城ちゃんまで!?

柳川城
そんな、お二人は寝ていると思ってたのに……!

久留米城
その驚きよう……もしかして、
私たちが起きてたら不都合なことでもしていたのですか、柳川城ちゃん!

殿
…………。

柳川城
そうですね、殿……。

柳川城
こうして見られてしまったからには、
久留米城ちゃんたちにも
ちゃんと話さなくてはいけないですよね……。

久留米城
話さなくちゃいけないって……まさか!
殿との知られざる関係を、ついに打ち明けるつもりで――

柳川城
――実は妖怪である鬼が付近に出現したとの報告があったのです。

久留米城
……え? 
お、鬼……?

笹原城
あーっ! 私、聞いたことあるよ!
つい最近、兜が封印を解いちゃったんでしょ?

柳川城
はい。その鬼が、再び兜と共に、
この付近で動きを見せ始めているようなのです。

柳川城
斥候の方たちが、そろそろ帰還されるとのことで、
こうして殿と共に外で待っていたのですが……。

柳川城
心配をかけないようにと、静かに動いていたつもりでも、
やはり、久留米城ちゃんにはバレてしまったみたいですね。

久留米城
……え?

久留米城
ああ、うん! そう、そうなんです!
柳川城ちゃんの様子が何かおかしいなぁ、って思って、
こうして寝床から起きて来たのです!

笹原城
(……え? そ、そうだったっけ?)

不来方城
――お~いっ!
殿ぉー! 鬼たちの居る場所がわかったぜ!

柳川城
不来方城さん!
よかった、無事に帰還できたようですね!

不来方城
当ったり前だろ! 
俺が鬼に関してヘマなんかするかってんだ!

不来方城
って、それよりもだ!
兜のやつら、鬼に続いて
またもや危険な妖怪の封印を解こうとしてるみたいなんだ!

不来方城
殿、とにかく急いで現地に向かうぞ!
千狐とやくもは既にあっちにいるから、
出陣できる城娘を集めて、すぐに出発しようぜ!

殿
…………!

笹原城
久留米城お姉ちゃん……。
鬼だって……ど、どうするの?

久留米城
柳川城ちゃんが殿と一緒に戦うと決心してるのです!
私たちだって手伝うに決まってます!

笹原城
そうだね……うん! わかったよ!
私も、今回はちゃんと殿のお役に立ってみせるんだから!

柳川城
久留米城ちゃん、笹原城さん……。

柳川城
ありがとうございます。すごく、心強いです。

柳川城
それでは殿、参りましょう!
鬼と兜たちのいる場所へ!

――数刻後。

やくも
殿さーん! ここだにぃー!
千狐も一緒にいるがやぁー!

千狐
殿、お待ちしておりました。

千狐
既にこの地には、鬼と兜が溢れていますので、
油断せぬようにお願いします。


ンフゥゥゥ…………腹、ヘッタ……。

笹原城
あ、あれが……鬼?
見るからに強そうだね……。

久留米城
だいじょうぶ、笹原城?
怖いなら、後陣として控えていても……。

笹原城
ううん……。
確かにちょっと怖いけど、私、頑張れるよ!

笹原城
殿も、お姉ちゃんたちも傍にいるし、
それに何より、大好きな河童さんのお人形もいるから、
怖いのは我慢できるもん!

不来方城
――おい、少し静かにしろ……。
鬼と兜の様子が何かおかしいぞ!

椎形兜
…………本当ニ、コレデ封印ガ解ケルノダナ?


アア……間違イネェド。
後ハ派手ニブチ壊シテクレレバイイ。

椎形兜
了解シタ……皆ノ者、ヤレッ!

兜軍団
承知ッ! 承知ッ!

柳川城
――っ!?
殿、どうやら兜たちが、
妖怪の封印されている岩を破壊するようです!

やくも
封印の岩を破壊ぃぃっ――!?

やくも
な、なぁ、千狐!
この地に封印されてるのって、確か……。

千狐
ええ、河童よ!

笹原城
――え? 河童さん!?
本当に!? 河童さんに会えるの!?

不来方城
ん? 何でそこで笑顔になるんだよ?

笹原城
えへへ♪ だって、河童さんはね、
私や久留米城お姉ちゃんにとって馴染みのある存在なんだよ!

不来方城
おい、それ本当なのか?

笹原城
うん! 昔は泳ぎ方とかも教えてもらったくらいだからね!
ふふっ♪ 河童さんが相手なら、きっと話せばわかってくれるはずだよ!

久留米城
……といっても、私たちが河童に出会ったのはかな~り昔で、
どのような外見や性格だったかは、記憶があやふやですが……。

不来方城
まぁ、いずれにせよ、
まったく知らない相手じゃないってんなら、心強いや。

不来方城
俺は鬼退治専門だからな、
河童のことはあんたら二人に任せるぜ!

笹原城
うん、任せてちょーだいっ!


――サァ、コレデ仕上ゲダデ!
河童ドモ、サッサト目覚メルドォ!

椎形兜
オォ……コレガ河童カ……!

河童
――クッ、クケケケケッ!

河童
……マサカ鬼タチニ起コシテモラエルタァ、思ッテナカッタゼェ。
マタ昔ミテェニ派手ニ遊ビ回ロウジャネェカ……クケケケケッ!

笹原城
…………。

笹原城
…………な、何か記憶の中の河童と違うっ!!

不来方城
はぁっ!? 何いってんだよ!
お前、河童とは仲良しだったんじゃねぇのか!

笹原城
そうだけどぉ! ずっと昔にあった河童さんとアレは、
全然ちがうような気がするよぉ……!

河童
――ンォッ?
オイオイナンダヨ、アノ娘タチハァ!?


アレハ城娘ト呼バレル存在ダデ。
マァ恨ミハネェガ、今ントコ、オデタチノ倒スベキ相手ダド。

河童
クケケケケッ!
ヨクワカンネエガ、鬼ドモガ敵ッテンナラ、
同ジ妖怪ノオイラタチニトッテモ敵ダヨナァ。

河童
キュウリ代ワリニ、食イ散ラカシテヤンゼ!
クキィックケケケケッ――――!

やくも
――だにぃ!?
河童さんが急に水の中に潜り始めただに!

柳川城
水の中から、こちらに向かって攻め込む気ですね!

柳川城
そうはさせません!
近づかれる前に、仕留めてみせます!

柳川城
…………って、あれ?
そんな……!
河童が何処にいるのか……わ、わからない!?

河童
フハハハッ! 馬鹿メ!
河童ハ水中デノ行動ヲ得意トスル妖怪ダ!
潜行シテル間ハ、貴様ラ如キガ動キヲ捉エルコトナド出来ヌワ!

柳川城
そ、そんな……!

千狐
殿、どうやら河童が水中に潜っている間は、
こちらから攻撃することができそうにないみたいですわ!

やくも
けど、見たところ河童さんの方も、
水中にいる間は、攻撃してこれないみたいだに!

不来方城
っち……面倒くせぇ相手だぜ……。

不来方城
殿、妖怪たちはもう目の前まで来てんぞ!
すぐに戦闘の準備をするんだ――!

後半
不来方城

っしゃーー!
これで一先ず、目の前にいる鬼たちはぶっ倒せたみてぇだな!

不来方城
……で、河童の方はどうなってる?

久留米城
何とか、こちらの方も片付きました。

久留米城
けど……。

笹原城
うぅぅ……あんなの、私の知ってる河童さんじゃないよぉ……!

柳川城
笹原城さん……。

椎形兜
――フフフ……馬鹿メ、油断シオッテカラニ……。
封印カラ解放サレタ河童ハ、マダマダ大勢イルノダ!

河童
クケケケケッ!

河童軍団
クケッ、クケケケケッ――!!

不来方城
――な、なにぃ!?
あんな化物がまだまだ出てくるってのか!?

不来方城
殿、再戦まで、そう時間はねぇ!
今のうちに陣を整えるんだ!

仄暗い川の中から -後-

封印から解放された河童たちが次から次へと
姿を現す。此の地における封印を修復するため、
急ぎ出陣し、兜と妖怪の混合軍を撃ち倒せ!

前半
河童

――クケケケケッ!
城娘カァ……人間以上ニ手応エガアッテ面白イジャネェカ!
ホラ、早ク戦ウゾ……クケケケッ、サッキヤラレタ仲間ノ分マデ楽シモウゼェ!


ネ、ネェ……戦ヲ楽シムノハイインダケドサ、
チャント勝ツコトモ意識シテモラワナイト困ルヨォ……。

河童
ハァッ? 
ツーカァ、オメェラ先刻カラ居ッケド何者ナワケ? 
鬼トドウイウ関係ナンダヨ、アァン?


――ヒィッ!
キュ、急ニ凄ムトカ、ヤメテヨォ!


河童……一応、コイツラハ、オデタチ妖怪トハ、
協力関係ニアル……ブン殴ッタリスルノハ止メルド。

河童
相撲フッカケンノモ駄目カ?


駄目ダド。

河童
尻子玉ヌクノモ駄目カ?


アア、ソレモ駄目ダド。

河童
……仕方ネェ。
ンナラ、ヤッパアノ城娘ッテヤツラノ尻子玉ヌクシカネェナァ、クケケケケッ!

河童
ソウダナァ……トリアエズハ、オメェカライッテミッカァ?
クケケケケッケケケケッ――!!

笹原城
――わ、私!?

河童
オイオイオイ、逃ゲンジャネェヨ城娘ェ!

河童
ナァ、イイジャネェカ……オイラト相撲ヤロウゼェ?
オメェガ負ケタ瞬間、イッキニ尻子玉ブッコ抜イテヤッカラヨォ、クケケケケッ!

笹原城
あっ……あぁ……そん、な……こ、来ない、で……うぅぅ……。

河童
オラァッ! マズハ突ッ張リジャィッ! 
クケケケケェッ――!!

笹原城
ひぅっ――!?
や、めて……河童さん……私、わた、し……こんなの、やだよぉ……ぐすっ……。

久留米城
笹原城! 何をしてるの!!
戦う意志が無いのなら、私の後ろに隠れてなさい!

笹原城
久留米城お姉ちゃぁん……うぅぅぅ……。

河童
……アァ? ナンダ、次ハオメェカ?
イイゼ、下手投ゲヲ決メテカラ、尻子玉ヲ抜キ取ッテヤンゼ、クケケケケッ!!

久留米城
なめないでよね……私は、容赦なんかしない……。
やれるものなら、やってみなさいっ!

やくも
…………。

やくも
なぁ、千狐。
尻子玉ってなんや?

千狐
……え?
尻子玉……?

千狐
えっと……おもに河童が人の身体から取り出して、
食べたり、上位の存在に納めたりするものって聞いてるけど……。

やくも
人の身体から取るって……どっから取るがや?

千狐
それは、尻子玉っていうくらいだから……。

千狐
…………。

千狐
…………あ、後で所領に帰ったら妖怪の本、
貸してあげるから……今は聞かないで。

やくも
……え?

不来方城
――どっから何を抜かれるか知らねぇけど、
この不来方城さまは鬼にも河童にも負けるつもりはないぜ!

不来方城
さぁ、かかってこい妖怪ども!
鬼退治だけじゃなく、河童退治のコツも、
今日の戦いでさくっと掴んでみせるぜ!

河童
クケケケケッ!
威勢ノ良イ娘ダァ……。

河童軍団
アアイウ奴ホド尻子玉ヌク時ニャ可愛ラシク鳴イテクレンダヨナァ……。
クケケケケッ! イイゼ! ヤロウゼ、城娘! 相撲ダ! 相撲デ勝負ダァ!

鬼軍団
オデタチモ行クゾ! 一気ニ叩キ潰セェッ!

兜軍団
――突撃ッ! 突撃ッ!

柳川城
殿、先刻以上の数と勢いで妖怪と兜たちがこちらに向かってきてます!
慎重な采配を、お願いします!

後半
笹原城

もぉーっ!いい加減にしてぇっ!!

河童軍団
クケェェッ――!?

久留米城
怯んだ――!?
よし、私も畳みかけるわよ!

河童
グゲケェェェェッッ――!!

不来方城
やるじゃねぇか! 久留米城に笹原城!

不来方城
っしゃ、俺もこいつで決めてやる!
おらぁっ! 鬼は外だぜぇっ――!!

鬼軍団
――ングググァアッ!

椎形兜
ソ、ソンナ……コレダケノ数ノ妖怪タチヲ圧倒スルナンテ……!

河童
ク、キェケケケ……マダ封印カラ解放サレタバカリデ、
本調子ジャネェダケッチャ……オイ、鬼! ト、トリアエズ逃ゲヨウゼ!


オ、オウゥ……マタ封印サレチャ意味ガネエド!

兜軍団
――アァァアッ! 
コラァ、僕タチヲ置イテ、自分タチダケ逃ゲルナァ!

笹原城
はぁ……はぁ……。
な、なんとか……勝てたみたい……だね?

不来方城
ああ……まぁ、数匹逃がしちまったけど、
今回はこれで良しとした方がいいだろう。

不来方城
にしても、まさか鬼だけじゃなく、
河童まで出てくるとはな……。

笹原城
うぅぅ……あんなの、私の知ってる河童さんじゃないよぉ。

久留米城
人や城娘にも、様々な方がいるように、
河童にも色々な気性のものがいる……そういうことなのでしょう。

久留米城
だから、私たちがかつて出会った河童と、
先刻の河童とは、ほとんど別物と考えた方がいいと思うわ。

笹原城
ぐすっ……うん。
あれは悪い河童……そう考えることにするよぉ……うぅぅ。

柳川城
……殿。
これからは兜や鬼だけでなく、
河童への対抗策も考えなくてはいけませんね。

やくも
だに! うちはまず、尻子玉が何なのか、
所領へ帰ったら、すぐに調べることにするがや!

殿
…………!

千狐
それでは、この地の封印の修復を行った後、
所領へと帰還することにしましょう。

千狐
殿、此度の戦も、本当にお疲れ様でした。

仄暗い川の中から -絶-

河童との戦いから所領へ戻ってきた笹原城は、
興奮から寝つけずにいた。そんな彼女に対し、
久留米城は、とある方法を教えるのだが――。

前半
――河童たちとの戦いから数刻後。
殿一行は所領へと無事帰還していた。

笹原城
……。

笹原城
…………。

笹原城
――くわっ!?

笹原城
やっぱり眠れないよぉ、久留米城お姉ちゃーん!

久留米城
あんなに激しい戦いがあったばかりだもの……。
すぐに心を落ち着かせるというのも難しいわよね。

久留米城
それに……河童のこともありましたし……。

笹原城
……うん。

笹原城
昔に川で泳ぎを教えてくれた河童さんは、
この人形みたいに可愛くて、優しかったのに……。

笹原城
…………うぅぅ。

久留米城
笹原城……。

久留米城
……あ、そうです!
眠れない時のとっておきの方法を教えてあげましょうか?

笹原城
……え?
とっておきの方法?

笹原城
なにそれぇ! 知りたい知りた~い!

久留米城
前に旅先で出会った城娘から聞いた話なんだけどね。

久留米城
目を閉じた状態で、好きなものを頭に思い浮かべて、
次々に個数を増やして、その数を数えていく、という方法なの。

久留米城
猫が好きなら、猫が一匹、猫が二匹、猫が三匹……という具合に、
目を閉じた先に、好きなものを思い浮かべていっぱいにすることで、
幸せな気持ちのまま、夢の中へと向かうことができるそうよ。

笹原城
なるほどぉ!
うん、わかった! やってみるよぉ!

笹原城
……えっと、まずは目を閉じるぅ。

笹原城
で、好きなものは……。

笹原城
(……えっと、やっぱり私が好きなのは河童さんだからぁ……、
抱っこしてる人形みたいに可愛い河童を……)

笹原城
河童さんが一匹……。

笹原城
河童さんが二匹……。

笹原城
…………河童さんが三匹……。

笹原城
河童さん……がぁ…………うーん…………。

笹原城
…………………………むにゃむにゃ……。

後半
笹原城

――うわ~んっ! 
大好きな河童さんの数を数えてたら、
わる~い河童さんと鬼と兜がいっぱい出てくる、変な夢みちゃったよぉ!

久留米城
うなされてると思って様子を見てたけど、
やはりそうだったのね……。

久留米城
はぁ……でも、確かに……今日の戦いでの、
河童の印象は強烈すぎたからね……
私もこのままじゃ、きっと眠れそうにないわ……。

笹原城
……ねぇ、久留米城お姉ちゃん。

久留米城
……なに、笹原城?

笹原城
やっぱり……行こうよ!
柳川城お姉ちゃんのとこ!

久留米城
…………。

久留米城
…………そうね!

久留米城
私たちがこの夜を越えるには、
どう考えても柳川城ちゃんが必要だわ!

笹原城
それじゃあ――!

久留米城
――ええ!
柳川城ちゃんのお部屋に突撃よ!

笹原城
って、何でまた変身してるの、久留米城お姉ちゃん!?

久留米城
細かいことは気にしないの!
さぁ善は急げよ、笹原城!

――そうして、柳川城の自室へ向かう久留米城たち。

柳川城
……え? あれ?
ど、どうしたのですか、久留米城ちゃんに笹原城さん?

笹原城
柳川城お姉ちゃーんっ!

笹原城
あのね! 私も久留米城お姉ちゃんもね!
今日の戦いでいっぱい怖い思いをしたせいか、
ぜんぜん眠れそうにないんだよぉ……!

笹原城
だからね……。
柳川城お姉ちゃんと一緒に寝たいのぉ……。

柳川城
……わ、私と一緒に寝たい……ですか!?

久留米城
あの……だめ、でしょうか?

柳川城
駄目だなんて……。

柳川城
そんなこと、思うはずがありません。

柳川城
実は私も、今日の妖怪との戦いで、
色々と思うところがあって……寝付けずにいたのです。

久留米城
そ、それじゃあ――。

柳川城
――はい!
むしろ、私もお二人が来てくれて、とっても嬉しいです!

笹原城
えへへ、それじゃあ私、柳川城お姉ちゃんの右隣で寝るぅ♪

久留米城
それじゃあ、私は左ですねぇ♪

柳川城
わ、私が真ん中ですか!?

笹原城
むぎゅ~♪ 
えへへ、柳川城お姉ちゃん、あったかくて良い匂いぃ~。

柳川城
ふふっ……何だか昔を思い出しますね。

久留米城
昔というと……私と柳川城ちゃんが契りを結んだ、あの…………!

柳川城
……え?

久留米城
あっ、ううん!
何でもないから、気にしないで柳川城ちゃん!

柳川城
…………?

柳川城
それでは、灯りを消しますねぇ?

笹原城
は~い♪

久留米城
(あ、真っ暗になっちゃった……)

久留米城
(でも、暗闇だからこそ、柳川城ちゃんの温もりを強く意識できる……)

久留米城
(はぅぅ……どうしよう、胸のどきどきが……どんどん、大きくなってく…………)

久留米城
私……やっぱり、柳川城ちゃんのこと……大好きなんだなぁ。

柳川城
え? 何かいいましたか、久留米城ちゃん?

久留米城
う、うん……! 柳川城ちゃんが傍にいるから、
これなら安心してぐっすり眠れそうって……そ、そう言ったのです!

柳川城
そう言ってもらえると、私も嬉しいです。

笹原城
――あ、柳川城お姉ちゃん!
そういえば、さっきね! 久留米城お姉ちゃんから、
眠れない時のとっておきの方法を教えてもらったんだけどぉ、

笹原城
柳川城お姉ちゃんも、知りたい~?

柳川城
そのようなすごい方法があるのですね……!

柳川城
はい、ぜひとも知りたいです!

笹原城
えっとね……。

柳川城
……ふむふむ。
なるほど、好きなものを頭に浮かべて……数をかぞえる……ですか。

柳川城
…………えっと。

柳川城
(好きなものを、頭に思い浮かべ……数を、かぞえる……)

柳川城
…………。

柳川城
殿が、ひとり……。

柳川城
……殿が、ふたり……。

柳川城
…………殿が、さんにん……。

柳川城
……………………。

柳川城
――はっ!!

柳川城
ど、どうしよう……笹原城さんから教わった方法を試したら、
どきどきして逆に眠れなくなってしまいました!?

笹原城
…………すやすや。

久留米城
…………柳川城ちゃぁん……むにゃむにゃ……。

柳川城
――って!
二人とも、もう寝ちゃってる!?

柳川城
そ、そんなぁ……!
二人してずるいですよぉ……。

柳川城
……はぁ。

柳川城
仕方ありません……。
こうなれば、笹原城さんから教えてもらった方法で、
意地でも眠りについてみせます!

こうして、柳川城は空が白むまで、
殿を数え続けることになるのだった――。



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[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

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[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

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[花嫁衣装]秋田城

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[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...