ストーリーテキスト/世話焼き娘はメルヘンがお好き?

ページ名:ストーリーテキスト/世話焼き娘はメルヘンがお好き?

目次

世話焼き娘はメルヘンがお好き?[]

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -序-

大高坂山城が開くチョコ教室に招かれた一行。
順調に進んでいるように見えたチョコ作りの最中、
突如、柳川城のチョコに異変が起こる……。

前半

――如月の初旬、土佐国某所。

柳川城
ねりねり、ねりねり……ねりねり~っ!

大高坂山城
そうそう、上手よ柳川城ちゃん。
そのまましばらくひいて生地がなめらかになったら、型に流し込んで良いわ!

大高坂山城主催、プファルツ城講師の『ちょこ作り教室』に招かれた一行は、
目下チョコ作りに励んでいた。

柳川城
ねりねり、ねりねり……あの、なめらかになるまでって……!
あとどれくらい石臼でひけば良いんでしょうかっ……!

プファルツ城
う~ん。
手作業ですと、早くても半日ほどはかかりますね。

殿
…………!?

柳川城
は、半日も!?

プファルツ城
ふっふっふ――と、いうわけで!
じゃーん! 既に出来上がったものがこちらになります!

柳川城
よ、よかった……本当に日が暮れるまで臼をひき続けるのかと思いました……。

大高坂山城
うふふ、柳川城ちゃんったら、素直でかわいいんだから♪

立花山城
ふぅ、ここまでが下ごしらえってこと。
ちょこれいと……噂には聞いていたけど、これほど手間のかかる代物だったとはね。

千狐
かかお豆から作る大高坂山城さんたちが本格派すぎるだけのような気もするの……。

やくも
あぁ~、待ち遠しいがや!
半日も掛かってたら、うちは干上がってまうとこだっただに!

大高坂山城
あら、やくもちゃんは待ってるだけで良いの?
自分で作ったちょこの味は格別よ?

やくも
えっ……。
で、でもうちは食べるのが専門やし――

大高坂山城
作るのも専門になったら、自給自足できるわね♪

千狐
そうよ!
やくもは手先が器用なんだから、たまには自分で作ってみると良いの!

やくも
んなっ、千狐まで――

柳川城
さぁ、ここからが本番ですよね……!
美味しいちょこを作るため、引き続きご指導願います!

プファルツ城
任せて下さい!
この日の為に大高坂山城さんと一緒に練習……こ、こほん!

プファルツ城
もとい、練り上げてきたとっておきのマニュアルがありますので♪

柳川城
まにゅあるだなんて、凄い……本場の城娘さんは、やっぱり頼りになります!

プファルツ城
そ、そうでしょうそうでしょう!

プファルツ城
安心して下さい。
チョコの国の代表として、皆さんをしっかり導いてみせますからっ!

殿
…………?

大高坂山城
それにしても立花山城ちゃんは上手ね、道具の使い方もこなれているし……。
初めてのちょこ作りとは思えないわ!

立花山城
ふふ、それはどうも。

立花山城
……ところで、貴方たちは手伝うだけで良いの?
『ばれんたいん』も近いのだから、自分たちのちょこだって作りたいでしょうに。

大高坂山城
ええ、そこはご心配なく!
あたしたちは準備万端だもの!

大高坂山城
みんなに配るちょこも、ばっちり用意してあるし――

大高坂山城
(あたしは殿にあげるちょこだって、もう完成してるんだから!)

殿
…………!

大高坂山城
(きゃ、目が合っちゃった……!)

殿
…………?

立花山城
そう、なら良いのだけれど。

柳川城
……きゃぁぁあああ!!

殿
…………!

(どっかぁ~ん!……もくもくもく)

大高坂山城
けほっ、けほっ……凄い煙ね……!

立花山城
まったく、何やってるのよあの子は……。

???
…………ラブ。

立花山城
ちょっと柳川城、無事なの?
プファルツ城は――

チョコ?
……エル・オー・ブイ・イー……ラアァアブ!

立花山城
――は?

チョコ??
コノ甘イ想イ……!
 アナタニ伝エタ~イ……!

チョコ???
チョコ、食ベテ……。
 ネエ、食ベテミテ……?
  私ヲ、食ベテミテ……!!

立花山城
なんなの、こいつら……! 兜……?

大高坂山城
違うわ、これは――

プファルツ城
はい!
兜ではなく、柳川城さんが作っていたチョコの成れの果てです!

殿
…………。

殿
…………???

柳川城
けほけほっ……!
すみません……でも、私も何が何だか!

チョコ???
アイ・ラビュー……!
 フフ、ダイスキ……!!
  イッヒ・リーベ・ディッヒ……!!!

大高坂山城
詳しい話はあとで!
とりあえず、あいつらを片付けちゃうわよ!

合戦中

チョコ?
ンゥ~……!
愛シテルゥ……!

立花山城
なんか……気持ち悪いわねこいつら……。

柳川城
わ、私はなぜか、見ているだけで恥ずかしくなってきます……!

殿
…………?

大高坂山城
は~い、お掃除おわり!

柳川城
倒した兜が、ちょこに戻っていきます……これは一体……?

プファルツ城
お騒がせしてしまいすみません、この件は私から説明いたしますね。

殿
…………!

後半

プファルツ城
先程、柳川城さんのボウルに垂らしたこれ……覚えていますか?

柳川城
確か……隠し味のぶらんでえ、でしたよね?

プファルツ城
そうです。
このブランデーは、ご近所のグーテンフェルス城さんから頂いたものなのですが……。

千狐
そういえば、プファルツ城さんの御城があるライン川のほとりは、
わいんや、ぶらんでえの材料になる葡萄が有名でしたね。

やくも
そうそう、みんなでえっぱい集めたのをよーく覚えとるだに!

プファルツ城
ふふ、覚えていてくださったんですね!
嬉しいです!

プファルツ城
しかしながら、こちらのブランデーは地元の特産品とは少し話が違うんですよ。
正確には、彼女に埋もれていたもの――

プファルツ城
グーテンフェルス城さんの御城の隠し戸の中に、ひっそりと保管されていたものなんです。
日の本へ出発する直前になって、彼女から突然渡されまして……。

プファルツ城
(ハイデルベルク様に見つかっていなかったという意味でも、奇跡の一品……。
 あの方がいらっしゃる度、私たちの来賓用に備えてある葡萄酒が全滅するんですっ!
 ……なんていう話とかは、ここでは言わずが花ですね)

立花山城
年代物、って感じよね。
その瓶の様子を見るに。

プファルツ城
ええ……ラベルの文字も掠れてしまってもう読めません。

プファルツ城
そして、ここからが本題なのですが。
こちらのブランデーには妙な力が宿っていて――

大高坂山城
普通に使う分には、最高の香り付けになるんだけど……。
作り手の想いが技量と釣り合っていないと、お菓子が暴走しちゃうのよね……今みたいに。

柳川城
作り手の想い……ですか?

プファルツ城
はい。
つまり先程の事故は、柳川城さんのチョコへ込めた想いが大きすぎた結果、
それが歪んだ形で表に出てきてしまった……といった具合ですね!

大高坂山城
(でも……ぶらんでえのこんなに派手な反応、初めて見たわ……)

大高坂山城
(ちょこ作りの腕はともかく……殿のために作ったとき、
 あたしはあんなに大きな想い、込められていたかしら……?)

立花山城
……まあ、そんなことだろうと思ったけど。

柳川城
…………。

殿
…………。

柳川城
……き、消えてしまいたい。

大高坂山城
ま、まあまあ!
だいぶ誇張されたカタチで出てくるみたいだし、気にしなくて良いわよ!

大高坂山城
それに、暴走したちょこを倒すとお菓子作りの腕がメキメキ上がるみたいだし……!

プファルツ城
私もまさか、柳川城さんがそこまでの想いを秘めていたとは露知らず……うぅ、すみません!

柳川城
……良いんです。
お話によれば、全ては私の技量不足が原因とのこと……。

柳川城
であれば、次こそは想いに釣り合うちょこをつくりあげてみせるまでっ……!

立花山城
……貴方、立ち直るのもずいぶん早くなってきたわね。

やくも
その意気だに、柳川城!
うちもコツを掴んできたけん、手伝えることがあれば何でも言って欲しいがや~!

千狐
やくもが、もう教える立場に……!?

大高坂山城
…………。

プファルツ城
さて、それでは仕切り直しですね!
しっかり皆さんをお手伝いして、
素敵なチョコまでご案内いたしましょう……大高坂山城さん!

大高坂山城
……そ、そうね!
あたしたちの技術、みんなに伝授してあげなきゃ……!

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -破-

爆発に導かれ、第二の講師役マチュ・ピチュが合流
する。カカオの故郷、インカ流のチョコを振舞うと
いう彼女だが、一行の反応は果たして――

前半

――時を少し遡って、柳川城のチョコが暴発しはじめた頃。
付近には、ある城娘の姿があった。

(……っかぁ~ん!……もく、もく)

???
むむ……今の爆発……煙と共に微かに漂うのは、カカオの香り!
もしや、ワタシの依頼主はあそこにいるのか?

???
これは……長きにわたる放浪生活に終止符を打つ、インティの導きかもしれないぞ!

――そして、現在。

マチュ・ピチュ
と、いうわけで!
ワタシはチョコレートの伝道師としてインカより参上したマチュ・ピチュだ! よろしく頼む!

殿
…………?

マチュ・ピチュ
おお、オマエが城娘を束ねし王なのだな! 会えて光栄だ!
噂は遥か、アンデスの麓まで届いているとも!

殿
…………!

大高坂山城
まさか、プファルツ城ちゃんの他にも講師役が手引きされていたなんて……。
手配をお願いした近江八幡城ちゃんからは、聞いてないけど……。

プファルツ城
私も、同僚がいるとは聞いていませんでしたね……。

マチュ・ピチュ
おっと、混乱させてしまっているようですまない!
なにぶん、無理を言って、後から任せてもらう手筈になったのでな。

マチュ・ピチュ
それにしても、もう少し余裕をもって辿り着くはずだったのだが……。
平遥古城から貰った日の本の地図を忘れてきたばかりに、
海を渡った後、ずいぶん長く彷徨う羽目になってしまった!

柳川城
それはまた、過酷な旅路でしたね……。

マチュ・ピチュ
なに、インティはワタシがどこにいても見守っていてくれる。
現に、こうして無事に依頼主の元へたどり着けたからな!

立花山城
確かに、ぴんぴんしているという意味では無事よね……。

大高坂山城
なんにせよ、遠くからわざわざ来てもらえたなんて嬉しいわ。
よろしくね、マチュ・ピチュちゃん!

マチュ・ピチュ
依頼主の……大高坂山城といったな!
改めて、よろしく頼むぞ!

プファルツ城
ちなみに……インカのチョコレートとはどういったものなのでしょう。
私の国や、一般的なヨーロッパのチョコとは少し違っていたり……?

マチュ・ピチュ
おぉ、そうだった!
何を隠そう、ワタシもよーろっぱ流のチョコと、
インカ伝統のチョコの違いを確かめたかったのだ!

マチュ・ピチュ
まずは挨拶がてら、我がインカ流のチョコレートを披露しようか。
しばし待っていてくれ!

――――

マチュ・ピチュ
……よーし、できたぞ!
泡立っている間に、ぐいっとやるが良い!

やくも
へっへっへ~、早速いただきますだにぃ~!

やくも
……ん……んおぉ、おぉおっ……!!?

大高坂山城
い、いただきます……んむっ!

殿
…………。

殿
…………っ!!

柳川城
こ、これは中々……刺激的な飲み物ですね……!

立花山城
大量の香辛料と、すり潰したかかおの苦味が……ハチミツと混ざって……。

プファルツ城
お菓子というより、お薬を飲んでいるような感じです……!

千狐
でもなんだか……体が温まって、疲れも取れた気がするの!

マチュ・ピチュ
おぉ、みな鋭いな!
これはカカワトルといってな、高価な嗜好品であると同時に、
万能薬としても重宝されているのだ。

殿
…………!

大高坂山城
お菓子としてはかなり人を選ぶけど……こういうのも、大切な贈り物になりそうね。

マチュ・ピチュ
しかし反応を見るに、やはり万人受けには程遠い味ということだな……貴重な意見感謝する!

マチュ・ピチュ
さてさて、こうなると俄然、ワタシはよーろっぱのチョコが気になってきたぞ。
話に聞けば、なかなかに甘く美味だそうじゃないか!

プファルツ城
あ、では既に出来上がった私のものを……どうぞ!

マチュ・ピチュ
うむ、かたじけない!
なるほど、そちらのチョコは板形なのだな……どれ……もぐ……。

マチュ・ピチュ
むむっ……この頬がとけ落ちるほどの甘さの中に、微かに残るカカオの苦味は……っ!

大高坂山城
苦味は……?

マチュ・ピチュ
――紛うことなく、至上の美味ではないか!!!

プファルツ城
ちなみに、その板チョコはまだ『材料』の段階とも言えるんです。

プファルツ城
溶かして固めることで色々な形に加工もできますし、他のお菓子に使ったりなんかも……。
あ、カカオトルとは違いますけど、ココアのような飲み物にもできますね!

マチュ・ピチュ
おおぉ……よもや我らのカカオがこれほどの進化を遂げていようとはな……!

大高坂山城
あたしたち、ちょうど今こういうちょこを作っている最中なんだけど……。
良かったら、マチュ・ピチュちゃんも一緒にどうかしら?

マチュ・ピチュ
うーむ、講師役でやってきた身としては複雑な申し出……ではあるが――

マチュ・ピチュ
……決めたぞ! 良いものは良い!
カカワトルの布教は一旦諦め、此度はよーろっぱ風チョコの製法を学ぶ機会としよう!

大高坂山城
そう! なら、あたしが作り方を教えて――

マチュ・ピチュ
せっかくだ、このチョコでインティの為の神殿を作り上げたいな!

大高坂山城
えっ……神殿!?

柳川城
それは、ちょこで建造物を象る……という意味でしょうか?

マチュ・ピチュ
ああ!
この菓子は紛うことなく絶品だ、太陽たるインティへの供物にも申し分ない!

マチュ・ピチュ
それならばいっそ、カタチを変えて固定できるチョコの利点を活かし、
インティを讃える神殿そのものを模して、捧げものとしてみたい!

プファルツ城
な、なるほど!
私も御城を描いたチョコは考えてみましたが、モチーフそのものに建物とは大胆です!

プファルツ城
ハイデルベルク様たちにお渡しするチョコ……なにかマチュ・ピチュさんのように、
祖国のトレードマークになるようなものに出来れば……ううん……。

プファルツ城
……そうだ!
私、ドイツのメルヘンをテーマにしたチョコを作ってみます!

やくも
ん? その『めるへん』ってのはなんだに?

プファルツ城
メルヘンは、神秘と空想の童話……日の本で言うと、
御伽噺というものが近いですかね。

やくも
あ~! おむすびころりん、みたいなやつだに!

大高坂山城
で、でもプファルツ城ちゃんはもう……あたしと一緒にちょこを作っちゃったわよね?

プファルツ城
ふふ。
せっかくインスピレーションを頂いたので、また作る側に回ってみたいと思いまして。

プファルツ城
それに、馴染みのメルヘンを題材にしたチョコなら、
きっと祖国の仲間たちも喜んでくれるはずです!

大高坂山城
そ、そうね……! それならやるしかないわね!

プファルツ城
はい♪

やくも
なあなあ、どいつのめるへんには、お菓子や食べ物が沢山出てくる話はあるがや!?

千狐
御伽噺でも、食べ物のほうに食いつくのね……。

マチュ・ピチュ
ワタシもそのメルヘンとやらに興味があるぞ!
異国の寓話を聞くのは、実に楽しいからな♪

殿
…………♪

プファルツ城
そうですね、例えば――

合戦中

プファルツ城
ヘンゼルとグレーテルに出てくる、『お菓子の家』なんてどうでしょう?

やくも
おおぉ! お菓子の!! 家!!!

プファルツ城
マチュ・ピチュさんと同じ建築物ですし、
チョコで作るモチーフとしてもぴったりですよね♪

プファルツ城
――こうして、ヘンゼルとグレーテルは沢山の宝石を持ち帰り、
お父さんと幸せに暮らしましたとさ……!

やくも
うぐぐ、お菓子の家は罠だっただに……。

千狐
やくもは簡単に騙されそうなの!

大高坂山城
…………。

後半

立花山城
でも、ちょこで何かのカタチを作るのは確かに面白いわね。

立花山城
二人みたいに、建造物でなくても……。
想いを伝える贈り物であるなら、象るものの意味も大きいはずだわ。

柳川城
はい!
お二人の話を聞いて、私もちょこで象りたいものが浮かんできました……。

柳川城
(羽を広げた、鶴の姿を殿に……!)

殿
…………?

やくも
うぉおおおおおおっ!!(かんかんかんかんかん!)

千狐
な、何してるのやくも!?

やくも
うちも作りたいちょこのカタチがびびっときたけん、鋳型を作っとるがや!

やくも
うぉおおおおおおおおーーーーっ!!!(かんかんかんかんかんかーん!)

マチュ・ピチュ
さて……ワタシはまず、基本的なチョコの扱いを学ばなければならないな。

マチュ・ピチュ
大高坂山城、早くに立場が反転してしまったが……今度は生徒として、よろしくだ!

大高坂山城
え、ええ……! あたしにどーんと頼ってくれて良いわよ!

大高坂山城
…………。

大高坂山城
(みんなそれぞれ、作りたい、伝えたいちょこのカタチがある……)

大高坂山城
(あたし、味には拘ったけど……ちょこのカタチは……。
 プファルツ城ちゃんが持ってきてくれた、型を使っただけ……)

大高坂山城
(こんなんじゃ、渡したいみんなにも……殿にも、気持ちが伝わらないかも……!)

大高坂山城
…………作り、なおさなきゃ!

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -急-

自分のチョコに対して、すっかり自信が無くなって
しまった大高坂山城。夜更けの厨房で迷走を続ける
中、彼女を心配した講師たちが駆け付ける。

前半

――夜明け前、厨房。

大高坂山城
うぅん……土佐名物の鰹節をちょこで表現してみたけど、だめね。
そもそもこれじゃあ、何のカタチか全然分からないじゃない……!

大高坂山城
いっそ、元の鰹を象るのは……でも、殿に渡すのは何か違うような……。

大高坂山城
鰹節で味付けしたちょこは、案の定おいしくないし……って、
なんでまた味付けに手を加えようとしてるのよ!

大高坂山城
……はぁ。
あたし、迷走してるわ……。

???
――らしくないですね、大高坂山城さん。

プファルツ城
右も左もわからないまま、二人でチョコ作りを始めた時すら――
弱音ひとつ零さなかった貴方が、ため息だなんて。

大高坂山城
え、プファルツ城ちゃん……?
どうして――

マチュ・ピチュ
どうというほどのことはない!
チョコ作りの指導をしながらあれほど暗い顔をしていたら、誰でも心配になろうよ。

大高坂山城
マチュ・ピチュちゃんまで……そっか……。

大高坂山城
あたし、すぐ顔にでちゃうみたいね。

プファルツ城
……チョコレートのカタチ、満足いかないのですか?

大高坂山城
うん、それもあるんだけどね――
ほら、お昼に……柳川城ちゃんのちょこがぶらんでえで暴走したでしょ?

大高坂山城
あの時、あたし気付いちゃったの。

大高坂山城
あたしは、上手にちょこを作ることで満足して……そこまでで、終わらせてたってことに。

大高坂山城
確かに、試行錯誤したちょこの味には自信があるわよ?
でも、それだけ……。

大高坂山城
柳川城ちゃんほどの、抑えきれない想いも。
マチュ・ピチュちゃんみたいな、創る目的も。
プファルツ城ちゃんのような、ぴったりくる『もちーふ』も……。

大高坂山城
あたしには、無かったの……!
ただ、自己満足で……美味しく作ることに、必死なだけだったんだわ。

プファルツ城
そんな――

プファルツ城
そんなこと、あるわけないじゃないですかっ!

大高坂山城
え……。

プファルツ城
ただの自己満足でチョコをつくるような方が、
わざわざ異国から講師を呼んで、作り方を勉強して、
そのうえで教室を開いて、皆に教えるなんて……!

プファルツ城
そんな面倒で回りくどいこと……ふつうはしないですよ。

大高坂山城
それは……あたしが、人に教えるのが好きだからってだけで……。

プファルツ城
そうですか?
……私は、覚えていますよ。
出会ったばかりのころ、大高坂山城さんが仰っていた言葉。

プファルツ城
『美味しいちょこで、みんなに好きを伝えたい』……って。

大高坂山城
……っ!

マチュ・ピチュ
うん、ワタシもプファルツ城の言った通りだと思うぞ。

マチュ・ピチュ
そもそも本当に自己満足だったのなら、今の悩みは生じていないはずだ。
……現に、味については既に自信を持てているのだろう?

大高坂山城
う……確かに、そうだわ。

マチュ・ピチュ
今の話を聞くに、目に見える、分かりやすい部分だけを他者と比べてしまったのが迷いの種だな。
それが焦りの蔦を這わせ、オマエの中にあるはずの太陽を遮ってしまっているのだ。

マチュ・ピチュ
(ぶらんでえでチョコが暴走した、とかいう部分だけは……イマイチよく分からないが!)

マチュ・ピチュ
まあ要は、初心に立ち戻れば良い! つまり――

大高坂山城
…………好きを伝えられる、カタチを……あたし自身で、見つけるのね!

プファルツ城
ふふ……それでこそ、大高坂山城さんです。

大高坂山城
ありがとう、プファルツ城ちゃん、マチュ・ピチュちゃん……!
あたし、二人の言う通り……周りと比べて、焦って、大切なことを見失ってたみたい。

大高坂山城
それなのに、いつもみたいに独りでやらなきゃって、抱え込んでますます迷って……。

大高坂山城
でも、二人のおかげでやっと分かったわ。
誰かに助けてもらえるって……こんなに心強くて、嬉しいことなのね。

大高坂山城
……大事なのは、ちょこを渡す相手に伝えたい想い!
それを忘れてちょこのカタチを考えても、上手くいくわけない……。

大高坂山城
(あの子たち……そして、殿に想いを伝えられるカタチ……。
 つまり、みんなの喜んでくれるものを考えれば、おのずと答えは……――)

大高坂山城
……プファルツ城ちゃん、あのぶらんでえをお願いっ!

プファルツ城
はいっ、了解です!

――――…………ポタッ。

(…………ず、ずごごごごごっ!)

マチュ・ピチュ
おおうっ、これは一体……?

プファルツ城
――来ますよっ!

マチュ・ピチュ
な、なにがだ!?

(どっが~んっ!!……もくもくもく!)

チョコ???
……伝エタイノ!
 ……コノ気持チ!!
  ……届イテ、届イテ!!!

マチュ・ピチュ
わわ、何だこやつらは……!?

大高坂山城
この壁を乗り越えて……あたしの胸いっぱいの愛情、きっとカタチにしてみせるわ!

プファルツ城
このプファルツ城も、戦友としてお手伝いいたしますっ!

マチュ・ピチュ
……よく分からないが、正念場だということだけは分かった!
となれば――――

マチュ・ピチュ
夜闇すら照らし返す、内なるの太陽の輝きよ……!
ワタシのサンポーニャで、今こそ高らかに歌うが良い!!

合戦中

マチュ・ピチュ
大高坂山城……オマエの太陽の力強さ、見せてみろ!

チョコ???
スキヨ、スキヨ、スキヨ…………ウッフン♪

大高坂山城
でぇええ~いっ!!
最後の『うっふん』は、余計でしょうがぁー!!!

大高坂山城
……うん。
あたしなりの答え、見つけられた気がするわ!
今なら満足のいくカタチで、ちょこを作れるかも……!

プファルツ城
やりましたね、大高坂山城さん!

マチュ・ピチュ
では、そのチョコづくり……我々も手伝わせてもらおうじゃないか!

大高坂山城
二人とも……本当にありがとうっ……!

後半

時は過ぎ、その日の昼時――

一同は完成したチョコを持ち寄って、茶会の四方山話に華を咲かせていた。

やくも
ふっふっふ……さぁ、うちのちょこをとくと見るが良いだに!
……特に千狐!

千狐
え、なんで私だけ名指しなのよ……。


(ばっ――!)

ヤマタノオロチ?
(きしゃ~~~っ!)

千狐
ひ、ひぃいいいーーっ!!?

やくも
わははははっ、これぞうちの自信作!!
1/10すけーる、『ヤマタノオロチ型チョコ』だにぃ~!!!

殿
…………♪(ぱちぱちぱちぱち!)

大高坂山城
(…………)

大高坂山城
(せっかく納得のいくちょこができても、
 渡すきっかけを掴む勇気が出ないなんて……不覚だったわね……!)

――――

柳川城
それにしても、プファルツ城さんのお話して下さる『めるへん』は面白いですね!

立花山城
えげつない展開も多い分、聞いてるだけでぞくぞくしてくるわね。

プファルツ城
えへへ、お褒めに預かり光栄です!
慣れ親しんだ祖国の童話たちですから、我が事のように嬉しいですね♪

マチュ・ピチュ
ふふん、しかしワタシの『大食い狐が墜落する話』も、中々のものだっただろう?

千狐
うっ……!

プファルツ城
あれは……題名通り、刺激的な結末でしたね……!

立花山城
図々しい獣の自業自得の果てに穀物が大地にもたらされたというのは、
なかなか捻りが効いていたわね……御伽噺というより、神話みたいだったけど。

千狐
神娘とはいえ、同じ狐としては複雑な気分なの……!

プファルツ城
御伽噺ではない、といえば……。
ドイツにはメルヘンではないお話も、沢山あるんですよ?

マチュ・ピチュ
ほほう! もしや、どいつの神々の話か?

プファルツ城
いえ、神話とは少し違っていて……どちらかというと、『伝説』ですね。
代表的なのは、『パルチヴァ―ル』のような壮大な叙事詩です。

プファルツ城
ふふ……良いですよ……『パルチヴァ―ル』は……!

プファルツ城
パルチヴァ―ルとガーヴァーン……二人の英雄の冒険が、
円卓という舞台、聖杯と言うアイテムを軸に複雑に絡み合う様はまさに大河なドラマでして――

プファルツ城
はっ! すみません、つい熱くなってしまって……。

柳川城
いえいえ!
面白そうなお話だということは、十分伝わってきましたよ。

プファルツ城
なにぶん、叙事詩は大長編が多いので、
メルヘンのように口頭でお伝えするのは難しいんですよね――

プファルツ城
あ……そうです!
この後、私の御城に皆さんをご招待するのはどうでしょう?

大高坂山城
(…………!)

プファルツ城
語りつくせないメルヘンや叙事詩も、私の蔵書からお貸しできます!
……もちろん、葡萄やワインもご馳走いたしますよ♪

やくも
おお、どっしりなちょこの後にさっぱりした葡萄は願ったりだに!

マチュ・ピチュ
よもや、どいつにまで足を延ばせるとはな!
インティもチョコを喜んでくれたのだろう……!

プファルツ城
あっ、言うまでもなく、主催の大高坂山城さんさえ良ければですが……!

大高坂山城
ええ、あたしもちょうど気分転換したかったところなの!
もっちろん、大賛成よ!

大高坂山城
(これは、仕切りなおす絶好の機会だわ……!
 プファルツ城ちゃんの御城で、殿と二人きりになれれば……!)

殿
…………!

立花山城
ふぅ。
次はドイツ、ね。

柳川城
ふふっ、プファルツ城さんの御城は、中々かわいらしい見た目をしているんですよ?

立花山城
……私はね、柳川城。
ちょうど今、この忙しない転移に慣れてきてる自分自身に驚いてるとこなのよ。

千狐
ではこれより、プファルツ城さんの御城に参るといたしましょう!

千狐
こんっ、時空転移の術なの――っ!

――――

――――――

――――……

大高坂山城
(到着したら、今度こそ殿にちょこを渡すのよ……大高坂山城!)

マチュ・ピチュ
(異国の『伝承』というのは、どうにも心躍ってしまうな。
 次はどんな物語が待っているだろうか!)

プファルツ城
(うぅ……!
 『パルチヴァ―ル』の紹介をしていたら、自分でも読み返したくなってきてしまいました!)

???
…………。

???
…………うん?

???
…………誰かが……私の領域に、近づいてきている?

???
……あなたたちは……一体……?

???
『あぁ……』

???
『中州に築いた美しい城を見やり、こうして寛ぐ時間は……。
 やはり、良いものだな……』

???
…………?

???
『誰にも邪魔されず……ブランデーと共に、叙事詩を紐解くひととき……。
 余が浮世の喧騒を忘れ……物語に浸れる……唯一の……』

???
……あなたは――――

――――……

――――――

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -絶壱-

バレンタインの準備を秘密裏に進める大高坂山城。
チョコの作り方だけ分かれば良い、と言う彼女に
対し、近江八幡城は『甘い!』と一喝する。

前半

時を遡って。
――鏡開きも終えた頃の、土佐国某所。

大高坂山城
……と、いうわけで!

大高坂山城
この件は、くれぐれも内密にね!

近江八幡城
ええと~……つまるところ、『ばれんたいん』をやりたいってことですよね?

大高坂山城
ちょ、ちゃんと話聞いてたの?
高知城たちが留守のこのひと月の内にこっそりと……ってとこが肝心なのよ!

近江八幡城
ええ、そりゃあもちろんです!
お客様の御要望は、一言一句一音余さずこの耳でとらえておりますとも♪

大高坂山城
(それはそれで怖いんだけど……!)

近江八幡城
しかしながら、『留守の間にちょこづくりを習得、完了、普及させる』目的に対して、
あきんどがお手伝いできるのはせいぜい納期の厳守と――

近江八幡城
あとは、短期で技術教授可能な
優れた講師役の手配くらいじゃないですかね~?

大高坂山城
え、講師……?

近江八幡城
おや。
大高坂山城さんはちょこれーとはおろか、
よーろっぱの飲食物全般、食べたことも作ったこともはおありでない……というお話では?

大高坂山城
そ、そうだけど……先生は頼んでないわよね?
あたしが注文したのは、よーろっぱのお菓子作りの教本だけで――

近江八幡城
あっっまぁ~~~~いっ!!!

大高坂山城
ひゃあっ!?

近江八幡城
その考え!
ちょこよりも甘々ですよ!! 大高坂山城さん!!!

大高坂山城
ど、どうして……?

近江八幡城
大方、料理の腕に自信があるから大丈夫……というお考えでしょうが!
想像してみてもくださいな。

近江八幡城
日の本の食事に一切縁のない方が、
『醤油少々』『味噌適量』などと書かれているのを読んで……
先達なしにスイスイと、自分の山勘だけで正しい分量へたどり着けると思いますか?

大高坂山城
う、それは……!

近江八幡城
ふふ……でしょう?
今回のちょこに関しても、同じこと♪

近江八幡城
『バニラエッセンス少々』や『砂糖適量』辺りが
あなたを容赦なく襲うこと、うけあいなのですよ!

近江八幡城
味の到達点も勘所も分からない素人が、異国の食事に教本だけで挑むのはなーんせんす!
特に今回のように素早い習得がお目当てで、
最終的にご自身が教える側に立つつもりなら、なおさらです!

大高坂山城
う~ん……。

大高坂山城
(でもあたし、教えるのは得意だけど……教えられるのはちょっと苦手だったりするのよね)

大高坂山城
(やり方も自分で模索しないと納得できなかったり……。
 何でも独りでやろうとするの、頑固であまり良くないことだって分かっているけど……)

大高坂山城
先生役が必要なのは分かったけど……一つ、条件を言っても良い?

近江八幡城
はいはい、何でしょう?

大高坂山城
その、あんまり上手すぎない方が良いっていうか……。
一緒に、切磋琢磨できる子の方が、あたしは燃えるっていうか……!

近江八幡城
ん、ん~??

近江八幡城
あのあの……私の話、ちゃんと聞いてました?
その道のぷろじゃないと、短期習得は厳しいですよ~って話だったと思うんですけど!

近江八幡城
それだと、ちょこづくりの先生じゃなくて同級生が来ちゃいませんか???

大高坂山城
うん……分かってる!
でも、多分そのほうがあたしには合ってるのよ……この通りだから、お願いっ!

近江八幡城
(おおぅ、これは不退転の眼ぇ……仕方ありません。
 お客様のぽりしーは尊重するのが、デキるあきんどというもの!)

近江八幡城
……分かりましたっ!
その方向で、講師役の方を探してみましょう♪

大高坂山城
ほんとっ? ありがとう、近江八幡城ちゃん!

近江八幡城
(嘘はつけませんし……契約書上では『講師』ではなく、『留学生』としておきましょうか)

――その数日後、ドイツ西部某所。

平遥古城
……と、いうわけで。

平遥古城
近江八幡城から久しぶりに仕入れの話を受けたは良いものの……。
求人をドイツでやることになったのは、ボクのスケジュール管理がなってなかったなぁ。

平遥古城
フランスなら、これまでも日の本に城娘を斡旋してきたパイプがあったんだけど……。

平遥古城
大体なんだい。
『名目上講師役で同程度の素人、同程度の努力家、ただし舌は肥えていること』
とかいうややこしい注文は……!

平遥古城
ま、今更悩んでもしょうがない。
これも新たな人脈開拓と思って、ワインを仕入れつつ頑張ってみよう!

プファルツ城
……よいしょっと!

プファルツ城
これだけ買い込んでおけば、流石にハイデルベルク様がいらしても大丈夫ですよね……?

平遥古城
おっ……グーテンターク、そこの御嬢さん!
その荷台のワイン樽たちは売り物でしょうか? 少し見せてもらっても?

プファルツ城
あ、すみません!
こちらは全部私が買ったもので、売り物では――

平遥古城
…………!
おや、キミ……もしかして城娘かい?

プファルツ城
ふぇっ……ど、どうして分かったんですか!?

平遥古城
うーん、商人の勘ってやつかな?
……それに何を隠そう、ボクも同族ってやつでね!

プファルツ城
わあ、奇遇とはこのことですね……!

平遥古城
(んん……ピーンときた。
 この子の素直な感じ……もしやあの求人にピッタリの逸材じゃないか?)

平遥古城
……いきなりつかぬことをお伺いするんだけど、
キミ、チョコレートを作るのが得意だったりするかな?

プファルツ城
え、チョコ……ですか?

プファルツ城
食べるのは好きですけど……。
言われてみれば、自分で作ったことはないですね。

平遥古城
なら、チョコ作りに興味とかあったりするかい?

プファルツ城
ええと……まあ……。
自分で作れたら良いな……とは思いますけど……?

平遥古城
(ビンゴ! これぞ天運……!)

平遥古城
ねえねえキミ、良い話があるんだけどぉ……!
ちょっと、話だけでも……聞いていかないかい……?

プファルツ城
え、な、何ですか急に……!
ひっ……じりじりと距離を詰めないでくださいっ……!

平遥古城
ふ、ふふふふ……!

プファルツ城
(うっ、荷台が重すぎて……逃げるに逃げられない……!)

プファルツ城
(ハ、ハイデルベルク様ぁ……!!)

――――

平遥古城
それでは、後のことはよしなに!
ご契約とお取引、ありがとうございました~♪

買い取られた荷台
(ガタ、ガタガタ……)

プファルツ城
…………ふぁ、ふぁい……。

プファルツ城
(……いつの間にやら、チョコ作り講師兼留学生とかいう謎の枠で、
 日の本に行くことが確定してしまった……)

プファルツ城
(諸経費の交渉については、私の名に懸けてもきっちりかっきりやり遂げたつもりですが……)

プファルツ城
(どうみても怪しいのに、『切磋琢磨できる素晴らしい環境』とか『特注の制服支給』とか、
 妙に刺さる謳い文句に惹かれてしまったことは否めませんね……)

プファルツ城
まぁ、多気城さんにまた会えるなら悪くないかもとか、
口を滑らせた私も悪いんですけど――

――更にその数日後、土佐国某所。

プファルツ城
……と、いうわけで!

プファルツ城
ドイツより参上いたしました、チョコ作りの……一応……講師役!
プファルツ城と申します。
以後、宜しくお願いいたしますね!

プファルツ城
あ、こちらはお土産です! どうぞお納めください!

大高坂山城
わぁ、わざわざありがとう! 
…………。

大高坂山城
…………??

お土産たち
『白ワイン』
 『れんこん』
  『納豆』

大高坂山城
どいつって、れんこんとか納豆も作ってるのね……なんか、意外だわ……。

プファルツ城
ああ、すみません。
ワイン以外は、こちらへ参る前に常陸国に寄ってきたお土産で……えへへ♪

大高坂山城
そ、そうよね!
れんこんがどいつ産だったら、
ちょこって実はようかんみたいなものなんじゃないかって思えてくるもの!

大高坂山城
(……あたし今、意味の分からないこと言った気がするわ!)

プファルツ城
大高坂山城さん……早速、一緒にチョコづくりをやってみませんか?
私も教本にざっと目を通しただけで、いまいちよく分かってないですが!

プファルツ城
何はともあれ、バレンタインまであまり時間がないことだけは事実ですから!

大高坂山城
そうだったわ、急がなくちゃ……。
二人で頑張りましょうね!

プファルツ城
ええとまず、この『カカオから作る、本格チョコレートレシピ』によるとですね――

合戦中

プファルツ城
カカオ豆をロースト……つまり煎るところからスタートです!

大高坂山城
むむぅ、熱加減は絶妙なのね……いきなり難しいわ!

プファルツ城
その後は、豆を砕いて、種皮を取り除いて……――

大高坂山城
ふぅ……これでやっと、試作品一号の完成ね……!
まさか、丸二日もかかるなんて……。

プファルツ城
味見は私にお任せを……はむっ!

大高坂山城
ど、どうかしら?

プファルツ城
くっ……我々の道のりはまだまだ険しそうですよ、大高坂山城さんっ。

後半

そうして、二人がチョコづくりに奮闘していたとある日……。
アンデス山脈はウルバンバ谷、某所。

平遥古城
……と、いうわけだったのさ!

マチュ・ピチュ
うむ、やはり平遥古城の話は面白い!
地を踏んだことのない異国の冒険譚は、まっこと興味の尽きぬものだ!

平遥古城
いや~なになに、貴重なカカオを取引してもらえる身としては、
世間話なんかで喜んでもらえるのは、むしろ気が引けるぐらいだよ。

平遥古城
……この樽は、いつもご贔屓にしてもらってるお礼に。
ラインライントの白ワインは中々に美味でね!

マチュ・ピチュ
かたじけない。
各地の特産品というのも、中々手に入らぬものだからな!

マチュ・ピチュ
……しかし、オマエから外の話を聞くたびに、
異国への憧れというものが否応なしに募っていく。

マチュ・ピチュ
いずれワタシも、大鷲のように空を飛び……今の話にあった日の本やどいつ、
そしてもっと多くの、様々な国へ出かけてみたいものだ。

平遥古城
そうだねえ……いや待てよ?
空は飛べないけれど、海を渡っては行けるよ……キミ!

マチュ・ピチュ
なぬ、それは一体どういう意味だ?

平遥古城
普段ならこのままぐるっと大陸沿岸に沿って帰るんだけどね。
今年は、バレンタイン特需に沸く日の本へこのまま商船で直行するつもりなのさ。

平遥古城
港で下りた後の面倒までは見れないけど……如月の終わりごろ、
再び日の本へ寄る予定だからそこでピックもできる。帰路も確約しようじゃないか!

マチュ・ピチュ
ふむ、これぞまさに千載一遇というやつか……!
この機を逃す手はないとみた……その話、乗ったぞ!

平遥古城
ちなみに、キミの名義だが……どうしようか。
ただの遊覧客でも良いけど、せっかくなら今し方の話にも『乗っかって』みるかい?

マチュ・ピチュ
む……名義、というと?

平遥古城
幸い、近江八幡城から請け負った助っ人募集に人数制限はなかったからね。
キミは大高坂山城にとって二人目の、講師兼……留学生になるってことさ!

この後、無事に船で日の本までたどり着いたマチュ・ピチュだった、が……。
地図をなくして数日放浪する羽目になるのは、また別のお話。

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -離-

ドイツまで転移したはずの一行。しかし目を開けて
みれば、そこは見知らぬ御城の門前。困惑する一行
の前に、新たなエプロン姿の城娘が現れる。

前半

『ブランデーと共に……を紐解くひととき……。
 余が浮世……を忘れ…………に浸れる……唯一の……』

――――――

――――……

千狐
こんっ!
転移完了なの~……って、あれっ……!?

殿
…………!?

大高坂山城
ここが、プファルツ城ちゃんの御城なの……?

マチュ・ピチュ
む……話に聞いていた中洲の御城とは、少し趣が違うようだな?

柳川城
い、いえ! 少しどころか――

プファルツ城
全然違いますよっ!
ここ、一体どこなんでしょうか……?

???
まあ……やはり客人でしたか。
珍しいこともあるものですね。

立花山城
あら、此処の主がお出ましみたいね。

???
どうやら皆様も、城娘のようですね……ということは――

殿
…………?

???
なるほど。
あなたがラピュータさんの言っていた、城娘たちの王ですか。

殿
…………!

キャメロット城
失礼、ご挨拶が遅れましたね。
物語に依りし城……我が名は、キャメロット城と申します。

プファルツ城
――え、ええっ!?
キャメロットって……あのキャメロット城さんですか!?

キャメロット城
おや、私のことをご存じの方もいらっしゃるのですね。
光栄です。

大高坂山城
そ、そんなに凄い城娘さんなの? プファルツ城ちゃん?

プファルツ城
それはもう……!
さきほどお話した『パルチヴァ―ル』に出てくる円卓の騎士たち、
覚えていますか?

プファルツ城
彼らの源流である『アーサー王伝説』、その円卓の本拠地こそ、
キャメロット城さんなんですよっ……!

殿
…………!

マチュ・ピチュ
ほう……だから『物語に依りし城』と名乗ったのか。
よもや、伝承を求めて伝承そのものに行きついてしまうとは……!

キャメロット城
(やはり、あのプファルツ城という御方が、
 あちらとこちらを繋いだ方なのでしょうか?)

キャメロット城
(……しかしあの時確かに聞こえた、遠い声も気にかかります。
 単純に、一つの縁だけではないような……?)

桃形兜
――……アレッ? ……ナンダココ?

キャメロット城
…………っ!

兜軍団
オカシイナ……。
 ボクタチ、大高坂山城ノ御城に忍ビコンダト思ッタンダケド……?

やくも
はええ、物語の世界にも兜さんたちはおるんやねぇ……!

柳川城
い、いえ!
彼らは私たちと一緒に飛ばされてきただけのような……!

キャメロット城
どうやら、招かざる客も巻き込まれてきてしまった様子……客人たちよ、
申し訳ないですが、少しだけお掃除の時間を下さいますか?

殿
…………!

合戦中

マチュ・ピチュ
ふふん、こういうときは遠慮しなくてよいのだ!
ワタシたちのことも頼れ、物語の城よ!

プファルツ城
ええ!
貴方と肩を並べて戦える誉れなんて、むしろ光栄の極みです!

キャメロット城
皆様……!

キャメロット城
うぅ、本来饗応すべき客人方にここまでして頂いてしまって、
なんとお詫び申し上げれば良いか……!

大高坂山城
気にしなくて良いのよ!
伝説や、物語の中の御城でも……あたしたちは、同じ城娘じゃない。

殿
…………!

後半

キャメロット城
――なるほど。
ドイツへ転移しようとしたものの、
何故か此処にたどり着いてしまったと。

柳川城
はい、突然押しかけるような形になってしまい申し訳ありません……。

キャメロット城
いえいえ。
同じ空想の城仲間を除けば、普段は訪れる者も稀な場所ですから。
賑やかなのは、むしろ願ってもないことですよ。

やくも
ところで、そのカッコ……。
もしかして、あんたもちょこを作っとっただに?

キャメロット城
はっ……!
そ、そうでした!

殿
…………?

キャメロット城
申し訳ありません、客人の皆様方……!

キャメロット城
本来であれば、このようなお茶だけでない、
正式なもてなしをすべきところなのですが――

キャメロット城
その為にも、私にはまだ為すべきことがあるのです……。
こちらが片付くまで……しばしお待ち頂きたく……それでは、失敬!

立花山城
……行ってしまったわね。

千狐
なんだか、とっても焦ってるみたいだったの……!

大高坂山城
(あの子の今の表情……よく分かるわ。
 昨日の夜、独りで厨房に籠ってた……あたしにそっくりだもの……!)

大高坂山城
――あたし、ちょっと行ってくるわね。

プファルツ城
あ、待ってください大高坂山城さん!
でしたら私も……。

マチュ・ピチュ
おおっと!
ここは一旦、大高坂山城に任せておこうじゃないか! 我が同僚よ!

プファルツ城
えっでも……助っ人なら多い方が良くないですか?

マチュ・ピチュ
ふふ、ところが今回はそうでもなさそうだ。
……太陽が月へ寄り添うのに、他の星が出ていっては野暮だろう?

プファルツ城
へ……太陽と、月……ですか?

――厨房。

キャメロット城
うぅ、参りました……満足いくものが完成する前に、
渡すべき相手が現れるだなんて……!

キャメロット城
今から作っても、また失敗するのが関の山……。
しかしここで諦めてしまっては、
バレンタインの準備をしてきたことが水の泡に……――

大高坂山城
……何か、あたしに手伝えることはあるかしら。
キャメロット城ちゃん。

キャメロット城
あ……あなたは、確か――

大高坂山城
大高坂山城よ。改めてよろしくね!

キャメロット城
大高坂山城さん……あぁ、いけません!
このようなバックヤードに、客人をお招きするわけにはっ……!

大高坂山城
もぉ、そんなこと気にしなくて良いんだってば!
お客様になったつもりなんてないし……そもそもそれ以前に、
あたしたちは『同じ城娘』だって言ったでしょ!

大高坂山城
だから遠慮はナシよ! ね?

キャメロット城
……そうですね、ありがとうございます。
その言葉だけで、肩の荷が少し降りたような気がします。

キャメロット城
……実はですね、バレンタインのチョコレートづくりが、その……。
上手くいっていないのです……!

キャメロット城
はぁ……。
我ながら、これ程手先が不器用だとは思いもよりませんでした……!

大高坂山城
この……ええっと、
ちょこらしきものの塊は――何かの形を作ろうとしてるのかしら?

キャメロット城
はい、私の御城……キャメロット城そのものを模した、
立体のチョコを作りたくて……。

大高坂山城
……!
その理由、聞いても良いかしら?

キャメロット城
…………例えば、此度の大高坂山城さんたちの来訪。

キャメロット城
これは、何かしらの『私』という物語の縁によって導かれた出会い、
と考えることが最も自然で、分かりやすいでしょう。

キャメロット城
しかし……『私』という空想の存在は同時に、
『貴方たちがこうして訪れたから、存在している』という逆説的な
自己証明も孕んでいるのです。

大高坂山城
あたしたちが来たから……キャメロット城ちゃんが居る?
んん……でもそれって、おかしくないかしら?

キャメロット城
ふふ、大高坂山城さんがそう思われるのも無理はありません。
……ですが、私は『物語』に依った空想の御城。

キャメロット城
実在の御城よりもずっと不確かな、
物語への『願い』に全てを頼っている存在――

キャメロット城
もしも、この来訪がなかったらならば。
そしてそのまま外界から隔たれ続け、誰も訪れず、
誰も思い出さないようになったら……。

キャメロット城
私は、次の瞬間……世界から忽然と消え去り、
存在しないことになっても、何ら不思議ではないのです。

大高坂山城
…………。

キャメロット城
だからこそ、こうして私を訪れ、私を思い出してくれる方……。

キャメロット城
即ちあなたたちのような、『願いを証明してくれる』客人に
感謝を伝え、出来ることならもっともっと覚えていてもらいたい……。
そう願って、自身の御城を象ろうと思い立ちました。

キャメロット城
……しかしながら、実際には御覧の有様です。

キャメロット城
不器用な手で、確固たるカタチの無い不確かなチョコに向き合う度……。
自身の脆弱な存在を見せつけられているようで、苦しくて……。

大高坂山城
……あなたは凄いわ、キャメロット城ちゃん。

キャメロット城
え……なぜ、ですか?

大高坂山城
だって、作りたいちょこの形……想いのカタチが、
最初からはっきりしているんだもの。

大高坂山城
あたしなんて、それを見つけるまで、散々迷って、遠回りして……。
最初なんか、見失っていることすら気づいてなかったわ。

大高坂山城
だから……不確かだなんて、脆弱だなんて言わないで!
あなたは立派に……誰かに伝えたいと願えるような、
確かな想いのカタチを持っているんだから!

キャメロット城
大高坂山城さん……。

大高坂山城
……さて! そうと分かれば、あたしがやることはひとつね!

大高坂山城
キャメロット城ちゃん……貴方の想いのカタチ、
ばっちり現実に刻み付けてやりましょう!
……二人で、一緒に!

キャメロット城
……はいっ……!

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -結-

順調にチョコを作り上げていく、キャメロット城と
大高坂山城たち。ところが、いよいよ仕上げという
段で、突然キャメロット城が変身しだし……?

前半

大高坂山城
よぉ~し!
これで尖塔部分も完成ね! うん、カンペキじゃない!

キャメロット城
ふふ……大高坂山城さんは、小さな魔法使いなのですね。

大高坂山城
ふぇっ? あ、あたしがマホウ使い……?

キャメロット城
ええ、そうですとも。
面妖なチョコの特性を完璧に理解し、
的確に操作して在るべきカタチにしてしまう――

キャメロット城
まるで円卓の騎士を導く、偉大な魔法使いのようです。

大高坂山城
もう、キャメロット城ちゃんたら大げさよ……!

キャメロット城
あら、そうでしょうか。
私は誇張ではなく、本当に魔法の如き技術だと思っているのですよ?

キャメロット城
(でも、これは決して魔法ではない……。
 あなたはきっと、沢山努力したのでしょうね)

大高坂山城
…………?

プファルツ城
――しっ……失礼しまーす!
進捗、どうですかーっ!

大高坂山城
わ、プファルツ城ちゃんに……マチュ・ピチュちゃんまで!?

マチュ・ピチュ
すまない、大高坂山城よ!
プファルツ城がどうしても心配だと言って、きかないものでな。

プファルツ城
だ、だって……もう結構時間も経ってますし、気になるじゃないですか!

マチュ・ピチュ
そういうわけだ……どうだろう、物語の城よ。
我らにもそのチョコ作り、手伝わせてはもらえないか?

キャメロット城
皆様……。

大高坂山城
うん……二人が手助けしてくれるのなら、百人力だわ!

そして――

キャメロット城
ふぅ……あとは、大屋根をかければ!

プファルツ城
完成ですね!
お疲れ様です、キャメロット城さん!

マチュ・ピチュ
ほれぼれするような石造り……いや、チョコ造りの建築だな……!

キャメロット城
はい、おかげさまで完成も間近……!

キャメロット城
つまり……そろそろ『仕上げ』の支度をしないといけませんね。

大高坂山城
仕上げって、あとは屋根のちょこを載せるだけで――
ちょ、なんで変身してるの……?

キャメロット城
何故って……。
まだ、体力と膂力を一番使う作業が残っているではないですか。

大高坂山城
……え?

クッキーの城壁へ……キャメロット城が下ろした
チョコ製の大屋根が接したその瞬間――

(びかぁ――――っ!どっかぁああああん!!!)

大高坂山城
ひゃああああ!?

キャメロット城
これ程の発光と爆発とは……!
やはり素晴らしい仕上がりであることは間違いなさそうですね!

大高坂山城
えええ、どういうことーっ!?
プファルツ城ちゃん、ぶらんでえ入れ過ぎじゃない??

プファルツ城
い、いえ!
それが、まだ使ってすらいなくて……!

キャメロット城
む……その反応……もしや、
現実世界では想いを込めたモノの魂落としをしないのですか?

大高坂山城
たま……なんですって?

キャメロット城
古の聖剣をはじめ……強き想いで作り上げられた一握りの傑作には、
モノであっても命が宿るとマーリンから伝え聞いております。

キャメロット城
それらを使用可能な物質に落とし込むためには、
宿った魂を祓う必要があるのらしいのですが――

キャメロット城
……え。
もしかして、これってこの領域だけの話だったりしますか?

大高坂山城
た、たぶん……。

チョコの騎士
――グググ、コノ感謝……伝エ残ス!

チョコの姫
ワタシノコト……憶エテイテ……!

キャメロット城
……来ましたね!

大高坂山城
なんか、この流れ……!
プファルツ城ちゃんのぶらんでえの暴走にそっくりだわ……!

キャメロット城
……ブランデー、ですか……?

チョコの鏡
コノ想イ……アタシモ、チャント伝エタイ~ッ……!

大高坂山城
…………っ!

キャメロット城
さあ、仕上げと参りましょう!
小さな魔法使いさんたち!

キャメロット城
甘き幻想を、甘美なる現実とするために――
 厨房の騎士が、皆様を御守りいたします!

合戦中

大高坂山城
守ってもらうなんて性に合わないわ、あたしは守ってあげる側だもの!
ちゃーんと戦えるってとこ、見せてあげる!

キャメロット城
ふふふ、頼もしい魔法使いさんですね……♪

キャメロット城
これで、本当の本当に――完成です!

大高坂山城
やったわね、キャメロット城ちゃん!
ほらほら、早速、みんなにお披露目しにいきましょ♪

キャメロット城
はい……ありがとうございます、大高坂山城さん!
……厨房の小さき魔法使いよ!

後半

――広間。

大高坂山城
みんな~……っ!

柳川城
あ、皆さんが帰ってきましたよ……!

殿
…………!

キャメロット城
大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした……!

キャメロット城
しかしながら、大高坂山城さんたちの御助力のおかげで……
皆様に、満足のいくおもてなしができそうです!

プファルツ城
マチュ・ピチュさん、すみませんでした。
無理をいって、私のわがままに付き合わせてしまって……。

マチュ・ピチュ
なに、気にするな! ワタシも楽しかったしな!

マチュ・ピチュ
……だが、我が見立てもあながち間違いではなかったろう?
大高坂山城はたとえ一人でも、物語の城を支えられていたさ。

プファルツ城
ええ、本当に……。
迷いを振り払って、自分のカタチを見つけた大高坂山城さんに、
もう講師役は必要ないのかもしれません。

プファルツ城
なんだか、ちょっと寂しい気もしますが……。

マチュ・ピチュ
そうか?
なにも我々の役割は、チョコ作りの指導役だけではあるまい?

プファルツ城
と、言いますと……?

マチュ・ピチュ
当然! 講師以前に、共にチョコ作りに励んだ仲間……
いわゆる、トモダチというものだ!

プファルツ城
そっか……! そう、ですよね……!

やくも
おぉおお、これはちょこの御城っ!
細部まで凝った意匠、かぁああ……勉強になるだに……!

千狐
(やくもが食べ物としてではなく、造形に惹かれるほどの一品……!?)

立花山城
でも、本当に良くできているわ。
……これは、ここの御城を象ったのかしら。

キャメロット城
はい、私は空想の城として……皆様に、
自分のカタチを知ってもらいたかったのです。

キャメロット城
この造形は、今の私は確かにこうして此処に在るという――
自己証明のようなものかもしれませんね……。

柳川城
目にも味覚にも、キャメロット城さんの思い出が残るちょこ……。
素敵だと思います!

殿
…………♪

キャメロット城
……何よりこの作品は、私一人では到底完成まで至れなかったモノ。

キャメロット城
大高坂山城さんたちには、なんとお礼を言えばよいか……!

大高坂山城
あら、あたしたちは想いをカタチにするお手伝いをしただけよ?
ここまで素敵なちょこになったのは、設計図がちゃんとしていたから。

大高坂山城
キャメロット城ちゃんが、
しっかり心にカタチを思い描いていたからだわ!

キャメロット城
まぁ……ふふ、魔法使いさんにはかないませんね……!

マチュ・ピチュ
カカオ豆の行き着きしこの姿には、さしものインティもきっと驚く……!
ワタシも負けていられないな!

マチュ・ピチュ
そうだな、せっかく伝承の舞台そのものまでたどり着いたことだし、
インティに捧げるカタチも増やしてみるか……!?

マチュ・ピチュ
(それにしても、日の本を遊覧するだけのつもりが、
 これほどの体験を得られるとは……!
 ふふん、ワタシの土産話を楽しみにしているが良い! 平遥古城よ!)

プファルツ城
あぁ、夢にまで見たキャメロット城さんの、
しかもそのお手製チョコを頂けるなんて……ごくり!

キャメロット城
あぁ、そうでした……プファルツ城さん!

プファルツ城
は、はい?

キャメロット城
何やら、不思議なブランデーをお持ちだとか……。
よろしければ、私に見せていただけませんか?

プファルツ城
もちろんです……こちらで良ければ、どうぞ!
ラベルも剥げていて、情報は全く残っていないんですけど……。

キャメロット城
いえ、十分ですよ……――――

プファルツ城
…………?

キャメロット城
…………なるほど、良き品ですね。

プファルツ城
あ、あの……そのブランデーが何なのか、分かるんですか?

キャメロット城
……微かですが……このお酒からは、
私と縁深い円卓の物語や、数多くの叙事詩の香りがします。

プファルツ城
物語の、香り……?

キャメロット城
はい。
紐解かれた、物語への想いも一緒になって……。

キャメロット城
(あの時聴こえた声は、おそらくこの記憶の主のもの。
 プファルツ城さんに縁深い、高貴な方の……)

キャメロット城
此度の私たちの縁は、どうやら
このブランデーの寄与するところが大きかったようです。
……大切になさってくださいね。

プファルツ城
はい! ありがとうございます……!

プファルツ城
(不思議な力があったとはいえ、そんなに凄いお酒だったの……?
 帰ったら、グーテンフェルツ城さんに聞いてみないと!)

プファルツ城
(でもあの人、そこまで考えていたのかなぁ……?
 『戸棚の奥から出てきたけど、これ要る?』って感じだったし……)

大高坂山城
…………っ。

殿
…………?

大高坂山城
ひう……!

大高坂山城
(や、やっぱりだめ……面と向かうと言葉が出ない……!)

キャメロット城
大高坂山城さん、どうかしましたか?

大高坂山城
な、何でもないわ! 大丈夫!
緊張してるとかちょこを渡せないとか、そういうんじゃないから!

キャメロット城
ふふ……。

キャメロット城
先程の『仕上げ』のとき……。
あなたの想いもチョコに混じっていたこと、私は気づいていましたよ。

大高坂山城
うっ……!

キャメロット城
その手に持ったチョコのカタチに寄せて……。
『ちゃんと伝えたい想い』が、あなたにはあるんじゃないですか?

大高坂山城
はぁ……まだ殿に渡せていないこと、あそこでバレちゃってたのね。

大高坂山城
……ねえ厨房の騎士さん、頼みがあるんだけど。

キャメロット城
はい、何なりと。

大高坂山城
ちょっとの間……あたしの背中、支えていてくれる?

キャメロット城
ええ、喜んで……!
厨房の……小さな魔法使いさん♪

――――

大高坂山城
――と、殿!

殿
…………!

大高坂山城
実は……あなたに渡したいものがあって……!
…………………………っ。

殿
…………?

大高坂山城
…………は、はい! これ……ちょこよ!
恥ずかしいから……早く受け取って!

殿
…………。

殿
…………!

大高坂山城
……あたし、あなたのにっこり笑う顔が、す、好きだから……!

大高坂山城
笑顔のカタチをしたちょこを食べて、
同じように、笑顔になってもらいたいなって思ったの……!

殿
…………。(もぐ……)

殿
…………♪(ぱぁああ……!)

大高坂山城
そう、その表情……!
ふふふっ、良かったわ……! 喜んで、もらえたのね……!

殿
…………♪(なでなで)

大高坂山城
ひゃう……!?
も、もう、なでなではあたしがしてあげる側なのにっ……!

大高坂山城
(でも……今は、とっても嬉しい……!)

キャメロット城
ふふ、良かったですね……大高坂山城さん……!

『円卓の舞台を訪れし、小さき魔法使いのこと』――

この日……とある物語に、人知れず新たな一節が刻まれたのだった。

世話焼き娘はメルヘンがお好き? -絶弐-

訪れた友人たちへチョコを振舞う、空想の城娘。
チョコで日頃の感謝を伝える、日の本の城娘。
それぞれの場所で実る、それぞれの想いのカタチ。

前半

――バレンタイン、当日。

バベルの塔
もぐ、もぐ…………ごくり。

バベルの塔
……うむ、旨い! 予想外だ!

ラピュータ
そんな馬鹿な……あら、ヘンね……?
……美味しい。

ラピュータ
これ、本当にキャメロット城が作ったの?

キャメロット城
…………二人とも、私の腕に信用がなさすぎませんか?

ラピュータ
逆の方向で、とても信用していたのだけれど。

バベルの塔
あぁ、私も剣術の腕には相当の信頼を置いているぞ!

キャメロット城
いえあの、そういう意味ではなく……。

ラピュータ
大方……王様たちに手伝ってもらったってところ?

キャメロット城
……ふう。
流石に、お見通しですよね。

バベルの塔
これだけ何者かの置き土産がひしめいていればな。
うん……この頭が九つある蛇のチョコは実に趣味が良いぞ……!

ラピュータ
私はこの空を舞う鳥のカタチが気に入ったわ。

キャメロット城
皆様、私の為に一つずつチョコを残していってくださったんですよ。
おかげさまで、大切な宝物が増えてしまいました♪

バベルの塔
しかし、宝石のようにいつまでも保存できるものでもないだろう。
どれ、私が食すのを手伝ってやろうか?

キャメロット城
あ、やめてください。
余計なお世話ですぅ!

バベルの塔
まあそう言うな!
そなたのことだ、どうせ大事にし過ぎて腐らせるに決まっている!

キャメロット城
そんなことありませーん! しっかり食べきりますー!

ラピュータ
でも不思議ね。
何が縁になって、王様たちはキャメロットの御城まで来たのかしら。

ラピュータ
今聞いた話だと、イギリスくんだりの縁ある城娘がいたわけでもなし。
……寝際に、聖杯伝説の本でも読んできたとか?

キャメロット城
流石ラピュータさん、鋭いですね。
当たらずと言えども遠からず……実は……――

合戦中

キャメロット城
チョコ作りに行き詰っていたあの日、
午睡の最中に、私はある声を聴いたんです。

バベルの塔
なんだ、寝しなはキャメロット城の方ではないか。

キャメロット城
まあ、そうなんですけど……そこは割とどうでも良くてですね……。

キャメロット城
……と、いう次第でした。

バベルの塔
ほう……そのぶらんでえとやら、気になるじゃないか。

ラピュータ
結局、その遺物の正体は分かったの?

キャメロット城
一応、香りと瓶に残った思念から大体のところは……。

後半

キャメロット城
……どうやら、かつてのプファルツ城さんと縁深い高貴な方が、
あのブランデーを舐めながら、円卓の叙事詩をはじめ、
多くの物語を紐解いていたようなのです。

ラピュータ
へえ……築城者の領主とか、王様辺りかしらね。

バベルの塔
なるほど、なるほど。
つまりそなたは、その酒が今回の顛末の原因と言いたいのだな?

キャメロット城
え、ええ……今の話の流れとしては、
そうとしか言えなくありませんか……?

バベルの塔
だ、そうだが……そなたはどう思う、ラピュータよ?

ラピュータ
あら、奇遇ね。
多分……私も同じことを考えているわ、バベルの塔。

キャメロット城
え……?

バベルの塔
その酒や、プファルツ城の存在……彼らの側に強い要因があったのも、
間違いはないだろう。だが――

ラピュータ
今回、主体的に彼らを呼んだのは……貴方の方かもしれないわよ。
キャメロット城。

キャメロット城
…………!

バベルの塔
王たちが到着する前の窮状、心細さ……。

バベルの塔
ただでさえ、慢性的に孤独を耐えている我らだ。
午睡の内に、無意識に助けや仲間を求めていてもおかしくはない。

ラピュータ
第一、チョコに向き合いながら『自分の不確かさを見せつけられてる』
とか思うの、相当追い詰められているわよ?

キャメロット城
う……言われてみると、そうかもしれないですね……!

バベルの塔
まあ結果として上手くまとまった訳だが。
……次は潰れてしまう前に、ちゃんと我らを頼るのだぞ?

キャメロット城
はい……ありがとうございます……。

ラピュータ
半分は私たちの為に頑張ってくれていたのも、分かってる。
でも、貴方が苦しむだけの結末では……結局、誰も幸せにならないもの。

キャメロット城
お二人とも……。

キャメロット城
(そうですね……幸いにも私には、
 ちゃんと『こちら側』で支えてくれる仲間がいる)

キャメロット城
(厨房の、小さき魔法使いよ……。
 私は、次にあなたと会える日を……末永く、
 そして楽しみに待つことができそうです……!)

――同じ頃、土佐国某所。

大高坂山城
……っくちゅん!

岡豊城
わわ……大高坂山城ちゃん、風邪?
大丈夫~?

大高坂山城
ええ大丈夫、平気よ……!
ふふ、誰かがあたしの噂でもしていたみたいねっ!

大高坂山城
でね、今回集まってもらったのは他でもな――

高知城
まだまだ、冷える日が続きますからね。
暖かくして寝ないと風邪をひいてしまいますよ。

大高坂山城
う、うん……大丈夫だってば……。
で、本題なんだけど――

岡豊城
ふぅ……くー……。

鷹城
も~、言ってる側からそのまま寝ちゃうんだから!
高知城ちゃん、何か掛けてあげられるものあるー?

岡豊城
むぅ……邪魔。
今は掛け布団要らないもん。

大高坂山城
ちょ、ちょっとぉ! 話を聞きなさいよぉー!

高知城
あ、すみませんついつい……。

鷹城
久しぶりに一堂に会すと、ついついね~!

岡豊城
つい……ぐう、ぐう……。

大高坂山城
岡豊城ちゃんはまだ寝てるし……まぁ良いわ!

大高坂山城
今回、みんなが留守にしている間に……じゃあん♪
日頃の感謝を込めて、特別な贈り物を用意してみたの!

鷹城
あ! これって噂に聞く、ちょこれいとじゃない!?
アタシ一度食べてみたかったのよねー♪

鷹城
そして、この美しい紡錘形……鰹を象るなんて、流石に分かってるわね♪

高知城
私のものは、駿馬を象ったちょこれいとですね。

高知城
凄い、今にも駆けだしそうな躍動感……。
大高坂山城さん、いつの間にこのような技術を……?

大高坂山城
みんなが用事で頑張っている間、
留守番のあたしにも出来ることはないかって探してて……

大高坂山城
ちょうど『ばれんたいん』の事を知ったから、
いつもありがとうって……そんな気持ちを伝える機会にしたかったのよ。

岡豊城
むにゅ……あ、ごめん……寝ちゃってた?

大高坂山城
はい、おねむな岡豊城ちゃんにはこれ!
召し上がれ♪

岡豊城
わ……クジラちゃんの形の茶色い、お菓子?

岡豊城
はむ……んっ!

岡豊城
わあぁ、甘くてちょっと苦くて……でも美味しい!
眼が冴えるような気がするよぉ~!

大高坂山城
岡豊城ちゃんのちょこは砂糖もかかおも特にいっぱい入れたから、
眠気覚ましにちょうど良いと思うわ!

岡豊城
お~、ありがとぉ…………すやぁ…………!

大高坂山城
くっ、まだ足りなかったみたいね……!

高知城
……なぜでしょう。留守の間に、
大高坂山城さんが少し変わったような気がしますね。

大高坂山城
へ? そ、そうかしら?

鷹城
確かに! すっかり素直になっちゃった気がする!
前はこんなはっきり『感謝を伝えたい』とか言わない子だったわよねー?

大高坂山城
ちょ……あたしそんなに捻くれてたつもりはないんだけど……!

鷹城
ん~……捻くれてはなかったけど……素直じゃない、
素直になれないところもあったかなって。

鷹城
まぁ、そんなとこも可愛かったんだけど♪

高知城
ふふ……留守の間、何か良い経験をなされたようですね。

大高坂山城
良い経験……そうね。
あたしが素直になれたのは……良い出会い、のおかげかもしれないわ。

大高坂山城
(御伽の国で、空想の御城と仲良しになった……なんて言ったら、
 ふふっ……この子たちは信じるかしら?)

鷹城
あ、なによ~その含み笑い! 気になるー!

大高坂山城
うふふ、それじゃあちょこを摘まみながらお話してあげるわ。

大高坂山城
あたしたちの、かかおと不思議に満ちた御伽噺をね……♪

大高坂山城の話した経験談は、
どこまでが現実でどこからが御伽噺なのか……?

しばらく、高知城たちの話題は尽きなかったという―――……

岡豊城
むにゃ……きゃめろっと城……大高坂山城ちゃん、呼んでる……?



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