ストーリーテキスト/三湖に交わる仮初の絆

ページ名:ストーリーテキスト/三湖に交わる仮初の絆

目次

三湖に交わる仮初の絆[]

三湖に交わる仮初の絆-序-

夢の中で、見知らぬ異国の風景と
助けを求める声を聞いた原城は、
殿と共に未踏の地へ出立することを決意する。

前半
…………。

――けて……だれか……。

誰か……――を……助けて……。

…………。

原城
…………。

原城
今のは……夢?

原城
いや……夢にしてはあまりにも鮮明な声音……。

原城
それに、あの景色は……日の本のものではないようでしたが……?

原城
…………。

原城
愚かな……いったい、何を迷うというのですか、原城……?

原城
そう……助けを求める声あらば、私は迷い無く駆けつけるのみです。

原城
なれば――――

――翌朝・所領。

島原城
ねぇ殿、いつまで寝てるつもり?
さっさと顔洗って朝餉に――

殿
…………。

島原城
って何よ、起きてるなら返事くらいしなさいよね?
せっかく起こしに来てあげた私に失礼じゃないの。

殿
…………!

島原城
……え? 妙な夢を見た?

殿
…………!!

島原城
……ふ~ん。
異国の地の光景に、助けを求める声……ねぇ。

島原城
ま、そんなのどーでもいいわ。
他人の夢の話ほど興味のわかないものもないしね。

島原城
あ、それとも何かしら? 私の気を引きたくて、
そんな変わった夢の話でもしてみたとか?

島原城
ふふっ、それならそうと正直に言えば――

やくも
――殿さ~んっ!
殿さんに会いたいってお客さんが来てるだにぃー!

殿
…………?

原城
殿。お久しゅうございます。
急な来訪にも関わらず、お目通しをお許しいただき感謝の言葉もございません。

島原城
なんだ……誰かと思えば原城のお嬢ちゃまじゃない。

原城
――っ!?
島原城! なぜ貴方が此処に!?

島原城
あら、知らなかったの?
殿は私を助けてくれた恩人であり、同時に私に尽くしてくれる男なのよ。

原城
恩人かつ尽くしてくれる男……?

原城
――またそうやって訳の分からぬことを口にして!
どうせ貴方がむりやり殿の側に居座っているだけなのでしょう!

島原城
ふふっ、なかなか言ってくれるじゃない……。

島原城
アナタがその気なら……、
久しぶりに派手にやり合ってもいいのよ?

原城
……望むところです!

原城
――と、言いたいところですが、
今は貴方に構っている暇はありません。

島原城
あら、つれないわね。
昔だったら、もう少しカッとなって向かってきてくれたのに。

島原城
少しは成長したってことかしらね、お嬢ちゃま?

原城
貴様……言わせておけば!

千狐
ま、まぁまぁ……お二人とも落ちついてください。

千狐
それよりも原城さん。
何か用があって此処に来たのではないのですか?

原城
は、はい……。

原城
それが……実は昨夜、奇妙な夢を見まして……。

島原城
……夢?

島原城
何よ、アナタも殿と同じようなことを言って。
最近は夢の話で誰かの気を引こうってのが流行ってるわけ?

原城
――っ!?
殿も不思議な夢を御覧になったのですか?

殿
…………!

原城
――ほ、本当ですか?
実は私も、誰かが助けを求めるような声を夢の中で聞いたのです!

原城
それも……殿と同じ様に異国の地と思われる景色と共に、
鮮明に、今もなお心象として残っているのです……。

やくも
同時に同じ様な夢を見るなんて……そんな偶然ってあるがや?

原城
やくもさん。今回に関しては、私たちが見た夢を
単なる偶然と断じるのは些か軽率にございます。

原城
神託……というのとは異なりますが、これはきっと、
誰かが私たちに助けを求めていると考えるのが妥当ではないでしょうか?

やくも
う~ん、そげなこと言われても、
その不思議な夢ってのを見てないから何とも言えんだに……。

千狐
千狐も、少々発想が飛躍しているように感じますが……。

島原城
原城のお嬢ちゃまに真面目に取り合うことないわ。
その子、自分の中の神様ってやつにたいそうご執心だからね。

島原城
夢だか神のお告げだかしらないけど、そうやって他人を教唆して
死ぬ様な目に合わせても、殉教の一言で片付けるに決まってるわ。

原城
島原城……今の言葉を取り消せ!

島原城
うふふっ、そうよ……その顔こそ私が見たかった顔だわ。

島原城
ほら、いつもみたいに神の名の下にぃ、とか言って十字を切ってごらんなさいよ。

原城
……貴様ぁ!! 今日という今日は許さんぞ!

やくも
あーもうっ! 今は喧嘩しちょー場合かや!?

千狐
そうですよ、殿の前で無礼ですわ!

殿
…………。

原城
うっ……も、申し訳ありません。

島原城
ふん、アナタのせいで私まで怒られちゃったじゃない。

原城
どうして私のせいになるのですか!
元はといえば貴方のせいでしょう!

柳川城
(どうやら、あのお二人の言い争いをおさめるのは至難のようですね……)

柳川城
それよりも殿。原城さんが見たという夢の件ですが、
こちら……どうなさるおつもりですか?

殿
…………!

柳川城
……え? 夢に出てきた異国の地に向かう?

原城
――さすがは殿にございます!
きっとそう仰ると思っていました!

千狐
で、ですが、どうやって向かうというのですか?
千狐の転移術は過去に行ったことのある地にしか機能しないのですよ?

原城
それに関しては、私に考えがあります。

千狐
……か、考え?

原城
はい。それは、私と殿の中に残る夢によって生じた心象を媒として
転移術を行うことで、目的の地へと向かう、という策にございます。

千狐
……心象を媒にする、ですか。

原城
難しいでしょうか……?

千狐
そう、ですね……確かに理論的には可能ですが、
成功する確率は各々が持つ心象の強度に左右されますので……。

千狐
最悪、全く見当外れの地へと飛んでしまうかもしれませんよ?

原城
それでも……救いを求める声を聞いてしまった以上、捨て置くことはできません!

島原城
やれやれ……こんなふうに言い出し始めたら、
もう原城の考えを曲げることは出来ないわよ。

島原城
殿、どうするのかしら? 別に断ったっていいのよ?
ていうか、この子ひとりだけ転移させればいいような気もするしね。

殿
…………。

殿
…………!

千狐
……分かりました。
では殿、出立の準備をお願いします。

原城
ありがとうございます、殿。
この恩義、いつの日か必ず報いてみせます。

殿
…………!

島原城
はぁ……本当にお人好しというか、何というか……。

島原城
仕方ないわね。私もついて行ってあげるわ。
ありがたく思いなさいよね、殿?

殿
…………!

――半刻後。

千狐
では、準備はよろしいでしょうか?

殿
…………!

原城
はい……お願いします、千狐さん!

やくも
異国の地への転移かぁ……本当に成功するんかや?

柳川城
今は殿と原城さんを信じましょう、やくもさん。

島原城
……信じる、ねぇ。

原城
何か含みのある言い方ですね?

島原城
ふふっ……。

島原城
よく言うでしょ? 信じるものは救われる……。

島原城
そして――。

島原城
信じぬものは、なお救われるってね。

原城
――くっ、いちいち貴方という人は!
どこまで私を愚弄するつもりですか!

やくも
ふたりとも頬を引っ張り合ってる場合じゃないだに!
転移術の時くらい仲良くするがやぁーっ!!

柳川城
千狐さん、と、とにかく……転移術のほう、よろしくお願いします!

千狐
……は、はい。

千狐
では参ります!
コンッ! 秘技・時空転移術なのぉ――っ!!

……………………。

…………。

原城
……。

原城
――はっ!?

原城
こ、此処は……?

殿
…………?

千狐
一応、転移術は成功したようですが、
此の地が殿や原城さんが見たとされる地なのかは千狐には分かりません……。

柳川城
殿、どう……なのでしょうか?
此の地で合っていますか?

殿
…………。

殿
…………!

原城
はい、私も……この風景を夢で見ました。

やくも
なら一先ずは成功っちゅーわけやね?

島原城
で、その助けを求めてるっていう輩は何処にいるっていうのよ?

殿
…………!

原城
あちらから、何か声が聞こえましたね。

原城
もしや救いを求める者の――


――ザザッ!

兜軍団
ザザッ、ザザザッ!!

原城
な、に……!?
どうしてこんなところに兜が!?

島原城
どうしてですって?

島原城
ふふっ……むしろここは納得するところではなくて?

原城
ど、どういうことですか?

島原城
日の本だけじゃなく、此の異国の地にも兜が溢れ始めたから、
無辜の民が助けを求めた……。

島原城
だから、貴方のような真面目腐った城娘にその声が届き、
こうして導かれたと――そういうことでしょう?

原城
なるほど――っ!!

原城
し、しかし……貴方に諭されるのは少々気に入りませんね。

島原城
ふふっ、相も変わらず可愛い反応してくれちゃってまぁ。

島原城
けど、今はそんなことよりも、
目の前の悪を倒すことこそ、貴方の使命ではなくて?

原城
言われなくとも――!

原城
原城……神の名の下に、いざ行かん!

やくも
――と、殿さんっ!! 
敵の中に西洋兜も混じってるみたいだにっ!!

千狐
かつてコンウィ城さんたちと異国で戦った時と同型の兜のようね……。

千狐
殿、嘗ての戦いで学んだことですが、
西洋兜に対しては弓を貫通させることも銃撃による後退も期待できませんわ!

柳川城
となると、いつもと同じ様に戦っては危険ですね……。

柳川城
殿、慎重な采配をお願いいたします!

後半
原城

……これにて、戦闘終了ですね。
お疲れ様です、殿。

島原城
まだ気を抜くには早いわよ、お嬢ちゃま。
こっからが本番なんだから……うふふ。

原城
――っ!?
島原城、貴方いったい何をしてるのですか!

島原城
何って……見れば分かるでしょ?
これから敗者に対する尋問を開始するのよ。

島原城
ほら兜たち! さっさとこっちに来なさい!

兜軍団
――離セェッ! 離セェッ!

原城
兜を連行するとは……貴方らしいやり方ですね。

原城
ですが、人道にもとる遣り方はどうかと……。

島原城
いい子ちゃんぶる癖は未だに抜け切れてないようね。

島原城
いいわ。アナタがいつもみたいに迷うというなら
乱暴かつ端的に言ってあげる。

島原城
私たちはまず人である前に城娘なの。
守るべき道を人の倫理で規定したところで価値なんて無いわ。

島原城
それにね、名も知らぬ異国の地に来たばかりの私たちにとっては、
何でもいいから情報が必要なことくらい、アナタにも分かるでしょ?

島原城
だから私は手っ取り早く、コイツらに話を聞くの。
理解したかしら、原城のお嬢ちゃま?

原城
で、ですが……。

島原城
ふん……別にアナタの答えを待ってあげる義理なんてないわ。
心が定まってないなら、大人しくそこで見ていなさい。

兜軍団
――ヒィッ!?
ボ、ボク達ニ何ヲスル気ダッ!

島原城
うふふ……そう怯えることはないわ。
これからするのはとっても愉しいこと……そう、おもに私がね♪


イ、痛イコト……スル気ダナッ!

兜軍団
コ、コウナッタラ……!

兜軍団
助ケテーッ! ドナン様ァ―ッ!
コノママジャ、ボクラ絶滅シチャウヨォ――ッ!!

???
――なぁ~にぃ~っ!?
そんなヒドイこと、ぜったいに許すもんかぁ~っ!!

島原城
え……な、なによ此の声は……?

原城
――島原城! 彼処です!
城内から少女の姿が――いや、あれは城娘のようです!

アイリーン・ドナン城
こらぁー! 悪党どもぉー!
このアイリーン・ドナンがいる限り、桃っちたちは殺させやしないんだからねぇ!!

三湖に交わる仮初の絆 -破-

助けを求める兜の呼び声に応じるように
突如として姿を現したアイリーン・ドナン城。
果たして彼女は敵なのか、それとも……。

前半
アイリーン・ドナン城

こらぁー! 悪党どもぉー!
このアイリーン・ドナンがいる限り、桃っちたちは殺させやしないんだからねぇ!!

島原城
……桃っち? 殺させない?
何を言ってるの、あの小娘は?

柳川城
異国の城娘のようですが……何か様子が変ですね。

アイリーン・ドナン城
何処の誰だか知らないけど、
今すぐに桃っちたちを解放しなさい!

原城
桃っち……なるほど、どうやら、
桃形兜のことを言ってるようですね。

島原城
ハァ……いかにも頭の軽そうな城娘ね。
どうせいつもみたいに兜の瘴気に毒されておかしくなってるってオチでしょ?

千狐
いえ、あのアイリーン・ドナンという城娘の霊気は正常ですわ。

柳川城
ということは……!?

千狐
はい……彼女は自らの意思で
兜たちを守ろうとしているようです!

島原城
やれやれ……。
また面倒なことになってきたわね。

島原城
ねぇ、アイリーン・ドナン……とかいったかしら?
貴方、こいつら兜が何なのか分かってるの?

アイリーン・ドナン城
そんなの当たり前だよ!

アイリーン・ドナン城
桃っちたちはね、ドナンが見つけた未確認生物の一種なの!

アイリーン・ドナン城
だからね、大切に保護してあげなきゃダメなんだよ!

千狐
……へ?

原城
未確認……生物?

柳川城
大切に、保護……?

島原城
……とんだアホの子ね。

アイリーン・ドナン城
アホの子ちがーうっ!
ドナンは此の地を守る城娘なんだぞぉ!

アイリーン・ドナン城
……って、あれ?
よく見たらお姉ちゃんたちも城娘だよね?

柳川城
はい。私たちは日の本の城娘です。

アイリーン・ドナン城
……日の本?

アイリーン・ドナン城
う~ん、聞いたことないなぁ。


聞イタコトナイノハ、アイツラガ嘘ヲ言ッテルカラダヨ!

兜軍団
ドナン様、騙サレナイデッ!

兜軍団
ボクラヲ守ッテ! コノママジャ絶滅シチャウヨ!

アイリーン・ドナン城
分かってるっ! 
みんなを傷つける悪者なんかに騙されたりしないんだから!

アイリーン・ドナン城
桃っちたち兜が絶滅しないように、
わたしがぜ~ったいに守ってあげるからね!


ヤッター、ヤッターッ!

兜軍団
コレデ絶滅シナクテ済ムゾーッ!

兜軍団
種ノ繁栄ハ目前ダァーッ!

島原城
…………馬鹿ばっかりね。

アイリーン・ドナン城
あ~っ! バカって言ったなぁ!

アイリーン・ドナン城
バカって言う奴がバカなんだからねー!

兜軍団
バーカ、バーカッ!

島原城
この私に向かって……バカ、ですってぇ……?

島原城
ふふ……どうやら彼処にいる奴らは全員
お仕置きが必要みたいね!

島原城
島原城――艶やかに、変身っ!!

アイリーン・ドナン城
――むっ!?

島原城
いいわ……殿、此処は私に任せなさい!
原城とは格が違うってところ、しっかり見せてあげるわ!

アイリーン・ドナン城
武器を構えたってことは、争う気まんまんってことだよね!

アイリーン・ドナン城
こうなったら、こっちも戦闘準備だよ!
みんなー、力を貸してぇーっ!!

椎形兜
任セロ……。

烏帽子形兜
……皆ノ力ヲ合ワセテ
此ノ危機ヲ乗リ越エルンダッ!

アイリーン・ドナン城
よーしっ! それじゃあみんなー!
わたしと一緒に突撃だぁーっ!!

後半
アイリーン・ドナン城

はぅぅぅ……そ、そんなぁ……。
こんなに強いなんて聞いてないよぉ……。

殿
…………。

千狐
殿、厳しい戦いでしたが、何とか勝利することができましたね……。

千狐
(それにしても、あのアイリーン・ドナン城さんの不思議な攻撃手法はいったい?
具足の防御力を殆ど無視して、対象に傷手を負わせていたようだけど……)

千狐
(彼女がこちらの味方であれば、西洋兜への有効な手立てとなりそうだけど――)

千狐
(――って、千狐ったらこんな時になんて打算的な思考を!?)

千狐
(今はドナンさんの手当をするのが先だというのに……もぉ~!! 
千狐のばかばかばかぁ~っ!!)

殿
…………?

アイリーン・ドナン城
うっ、くぅぅ……はぁ、はぁ……。

島原城
ふふっ、這いつくばってる姿がよ~く似合ってるわよ、アイリーン・ドナン。

島原城
ま、次からはケンカを売る相手はよーく見定めることね。

やくも
な、なんか……島原城の方が悪者にみえるのは気のせいかや?

柳川城
わ、私も同意見です……。

原城
島原城……貴方という城娘は相変わらず容赦がありませんね。
他者を思いやるという情はないのですか?

島原城
情? ふふっ、世の凡愚共に私の情を向けてたら、
どれだけあったって足りやしないわ。

島原城
それにね、これは躾なの。
あくまで更生の余地があるからこその施し……。

島原城
そう、これこそ情けというものだわ。
アナタもそう思うでしょ、殿?

殿
…………。

原城
相変わらず口だけはよく回る……。

島原城
うふふっ、アナタの相手をしてあげたいのはやまやまだけど、
今は此の異国の城娘の方をなんとかしなくちゃいけないわ。

島原城
さぁ、アイリーン・ドナン。
あなたが何を勘違いしてるか知らないけど、
その異形たちから離れなさい。

アイリーン・ドナン城
離れろって……桃っちたちに何をする気なの?

島原城
そんなの……。

島原城
すべて討ち果たすに決まってるじゃない♪
そいつらは、歴とした邪悪なんだもの。

アイリーン・ドナン城
…………うぅ。

アイリーン・ドナン城
お願いだよぉ……この子たちだけは、助けてあげて……。

島原城
私にすがったってダメよ。たとえ足を舐められようが、
金を積まれようが、その望みを叶えることはできないもの。

アイリーン・ドナン城
で、でもぉ……うぅぅ……せっかく見つけた未確認生物なんだもん……。
わたしが、守ってあげなくちゃ……絶滅しちゃうよぉ……。

アイリーン・ドナン城
わたしは、どうなったっていいから……ぐすっ……、
何でも……何でもするからぁ……うぅぅ……だから……お願いだよぉ…………。

???
――実ニ素晴ラシイデース!
何トイウ博愛ノ念デショウッ!

島原城
なっ!? 何よ、この気味の悪い声は――!?

原城
あ、あれは……間違いない!
島原城、どうやら巨大兜のようです!

シュテファン
トテモ久シブリデースネー、殿ォ!
コンナ異国ノ地ニマデ兜討伐トハ
イヤハヤー頭ガ下ガリマースネッ!

三湖に交わる仮初の絆 -急-

アイリーン・ドナンの窮地を救わんと現れた巨大兜。
だが、その正体が嘗てコンウィ城らの守る地を荒ら
していた相手であると知り、殿は怒りを露わにする。

前半
シュテファン

トテモ久シブリデースネー、殿ォ!
コンナ異国ノ地ニマデ兜討伐トハ
イヤハヤー頭ガ下ガリマースネッ!

殿
…………。

島原城
何よ、あの気味の悪いのは?
殿、アナタもしかして前に会ったことあるわけ?

千狐
あれは、前にコンウィ城さんやカーナーヴォン城さんと共に
異国の地で戦ったことのある巨大兜ですわ!

柳川城
けど、おかしいですね……。

柳川城
此処は、コンウィ城さんたちが守護する地とは異なるはずなのに、
どうして、あの巨大兜が存在しているのでしょうか?

シュテファン
フフフ……実ニ簡単ナ理由デースッ!

シュテファン
アナタタチト、コンウィ城ラノ妨害ニヨッテ地ヲ追ワレテカラ、
安寧ヲ探シ求メテ、我々ハ此ノ地ニ辿リ着イタノデース。


ソウッ! ソシテ、ボクラハ助カッタ!

兜軍団
ダカラ新天地デ楽園ヲ創出スルノダ!

兜軍団
アイリーン・ドナン様ガ、ボクラヲ守ッテクレルッ!
何モ心配スルコトナンテナイッ! 種ノ繁栄ダ!

アイリーン・ドナン城
……で、でも……このままじゃ、みんなを守れそうにない……よぉ……。

シュテファン
ノンノンッ! 心配スルコトハアリマセーンッ!

シュテファン
アナタカラハ多クノ情ヲ受ケ取リマシタ!
言ワバ我等ハ家族モ同然デショウッ!

シュテファン
ナラバ今度ハ我々ガ奮起スル番デースッ!


恩返シッ!

兜軍団
ソウダ! 恩返シダッ!

兜軍団
ドナン様ノ恩義ニ報イルンダッ!

アイリーン・ドナン城
み、みんなぁ……!

原城
…………。

島原城
茶番、此処に極まれりね……。

島原城
原城、一応聞くけど……アナタもしかして、
あれこそが真の博愛――とかって感激してるんじゃないでしょうね?

原城
まさか……。

原城
欺瞞の諸手で無垢なる城娘の魂を粗雑に利用せんとする
ヤツらの醜悪さに言葉を失っていただけのこと……。

島原城
……なら、アナタも武器を執りなさい。

島原城
兜が嫌いなのは言うに及ばずだけどね……、
あの巨大兜は殊更気に入らないわ!

原城
今ばかりは、貴方の言葉を肯定しましょう。

原城
兜の罪は――我ら城娘が裁きます!

シュテファン
残念デースッ、話シ合イスラママナラヌトハ、
ヤハリ城娘ハ野蛮トイウニ値シマスネーッ!

シュテファン
仕方アリマセン……コレモ種ノ繁栄ガ為!
サァ殿、ソシテ城娘タチヨ、勝負デースッ!

後半
シュテファン

ムググ……ヤハリ、アナタタチハ手強イ相手デスネーッ!

シュテファン
アイリーン・ドナン城……此処ハ一度退キマショウッ!

アイリーン・ドナン城
え……で、でも……それじゃあ、わたしのお城を放棄することになっちゃうよぉ!

シュテファン
ナラバ、アナタハ私タチヲ見捨テルトイウノデスカ?

アイリーン・ドナン城
……え?

シュテファン
一度助ケテオイテ、自分ニ不都合ガ訪レレバ早々ニ見捨テル……。

シュテファン
オォ~……コレゾ! コレコソガ悲シキ世界ノ真実デースッ!
慈シミキル心ガナイナラバ最初カラ助ケテホシクナドナカッタ!

アイリーン・ドナン城
……ち、ちが……わたし、そんなつもりじゃ……。

シュテファン
ナラバ! 我々ト共ニ逃ゲテイタダケマスネ?

アイリーン・ドナン城
……う。

シュテファン
モウ一度、アナタヲ信ジテモイイノデスネーッ!?

アイリーン・ドナン城
(し、信じる……)

アイリーン・ドナン城
(そうだ……わたしを頼って、みんな此の地に来たんだ……)

アイリーン・ドナン城
(わたしが見捨てたら、兜たちはみんな絶滅しちゃう……)

アイリーン・ドナン城
(此の地で、ずっと一人きりだったわたしを頼ってくれた守るべき存在……)

アイリーン・ドナン城
(それが――絶滅危惧種たる兜たちなんだっ!! …………たぶん)

アイリーン・ドナン城
うん! わたし、最後までみんなを守ってみせるよ!

シュテファン
スッッバ~ラシィーッ!! ソノ言葉ヲ
待ッテイマシタッ、アイリーン・ドナン城!

シュテファン
ソレデハ、参リマショウ! ナ~ニ心配イリマセーンッ!
早々ニ態勢ヲ整エ、此ノ地ヲ取リ返シテヤリマショウ!

兜軍団
――ソレデハッ! 撤退ッ! 撤退ィッ!!

島原城
ちっ……逃げ足の速いやつらね!
もうあんな所まで退避してるなんて……。

原城
とはいえ、再び此の地に戻ってくる意思があるようでしたし、
危険をおかしてまで追撃することはないかと……。

柳川城
それでは、我々は此の地で陣立てを整えるとしましょう、殿。

千狐
幸い、此処には立派な城がありますから、
敵に備えるための用意はそう難しくなさそうですね。

やくも
よっしゃ、そういうことなら、さっそく取りかかるだにぃ!

殿
…………。

殿
…………!

原城
…………。

島原城
どうしたのよ、原城?
その顔、何か言いたいことがあるって感じだけど?

原城
ええ……どうしても気にかかることがありまして。

島原城
気にかかること……?

原城
はい……。

原城
今この状況を改めて考えた時に浮かぶ疑問……。

原城
それは、我々を此の地に導いた声の主は、誰だったのかという謎です。

島原城
あぁ……すっかり忘れてたけど、
そういえば、そんな夢の話もあったわね。

原城
忘れてたって……あれこそが今回の遠征の起点なのですよ?
気にならない方が不自然ではありませんか……。

島原城
そう言われてもね……殿たちもすっかり忘れてるような感じがするわ。

原城
……むぅ。

島原城
…………。
(はぁ、まーたこの子は深く考えすぎてるようね……)

島原城
(本当は夢のことなんて無視させて、大人しく日の本にいさせるつもりだったのに……)

島原城
(ったく……何だかんだで、この子のことを放っておけないのは、私の業の一つなのね)

島原城
ま、これまでの出来事から考えられるとしたら……、

島原城
兜たちがアイリーン・ドナンに向けた虚言の一つが、
そのままアナタの夢に出てきたってだけなんじゃないのかしら?

島原城
ほら、さっきだって、助けてドナン様ぁ、とかって言ってたじゃない。

原城
…………兜の虚言?

原城
んぅ……そう、なのでしょうか?

島原城
その顔……まったく納得してないって顔ね。

原城
だって……。

原城
夢の中で聞いた声は、切なるものだった……。

原城
もっと強い想いに満ち、心から助けを願う……そんな声だったのです。

島原城
……まぁ、アナタの主観の話だからね。
私からこれ以上は何とも言えないわ。

原城
そう……ですよね。

島原城
でもね、これだけははっきりしてるわ。

島原城
それはね、私も殿も、そしてアナタも、こうして此の地に居るってこと。

島原城
そして、少し頭の悪い城娘が兜たちに騙されて
いいように弄ばれてるっていう現実を知ってしまった。

島原城
なら、やることは一つでしょ?

原城
……そう、ですね。

原城
…………。

原城
島原城……。

島原城
……何よ?

原城
悔しいですが……貴方のそういう豪快さが、
こういう時ばかりは眩しいものに映ってしまう。

原城
いつもは、醜悪な悪癖にしか感じないのに……不思議なものですね。

島原城
憧れるか貶すかどっちかにしなさい。

原城
す、すみません……。

島原城
まぁ、それでこそ原城のお嬢ちゃまらしいけどね。

島原城
アナタが迷う姿は、私にとってはご馳走みたいなものだもの。
信ずる神がいるアナタだからこそ……尚更ね。

原城
本当に貴方は……なんと意地の悪い城娘でしょうか。

島原城
何とでも言いなさい。

島原城
それよりも、アナタも殿の手伝いをしなくていいわけ?
全てを神娘と柳川城にやらせるなんて感心しないわ。

原城
そう言う貴方は、手伝う気など一切ないのでしょう?

島原城
当たり前でしょう?

島原城
だって私は、殿にとってのお姫様ですもの……ふふ♪

三湖に交わる仮初の絆 -絶壱-

――初めての野宿。
闇夜に怯えて寝付けないアイリーン・ドナン城は、
どうしたらいいのかと、兜に相談を持ちかける。

前半
殿一行との戦いに敗れてから数刻後――。
兜たちはようやく落ち着ける場所に辿り着いた。

シュテファン
ソレデハ各自、明日ニ備エテ
シッカリト休ムヨウニデースッ!

兜軍団
――承知ッ! 承知ッ!

シュテファン
ウムウムッ! ソレデハ、オヤスミナサーイッ!

兜軍団
オヤスミッ! オヤスミッ!

兜軍団
…………。

兜軍団
……。

古桃形兜
フゥ、ヨウヤク行ッタヨウダネ。

蛸形兜
イヤァ、ソレニシテモ久シブリノ野宿カァ。

桃形兜
ダネェ。昨日マデハ、
アイリーン・ドナン様ノ城ノ中ダッタカラ快適ダッタケドサァ……。

桃形兜
枕カワッチャウト、グッスリ寝ラレルカ心配ダナァ。

蛸形兜
アー、ソレ分カルワァ。

蛸形兜
ツーカソモソモ、此処ベッドモ布団モ無イシナー。
コレ絶対アシタ背中イタクナルヤツダワ。

古桃形兜
オイ、無駄口タタイテナイデ早ク寝ロッテ。
明日ハ、物凄ク早クニ出発スルラシイゾ。

桃形兜
ハ~イッ。
ソレジャ、オヤスミナサーイ……。

古桃形兜
ウ~ン……ムニャムニャ……。

古桃形兜
…………。

???
――ねぇねぇ……起きてよぉ……。

古桃形兜
……。

古桃形兜
…………ン?

古桃形兜
イマ……誰カニ呼バレテルヨウナ気ガ……?

古桃形兜
…………?

アイリーン・ドナン城
ねぇねぇ、こもっち……起きてよぉ……。

古桃形兜
……ンァ? アレ? アイリーン・ドナン城……?

古桃形兜
ナンダ? ドーカシタノカ?

アイリーン・ドナン城
えっと……えっとね……。

アイリーン・ドナン城
外で眠るの……怖いの。

古桃形兜
……ハェ?

アイリーン・ドナン城
だからね……こんなに真っ暗なところで寝るのは……怖いの。

アイリーン・ドナン城
……わたし……ぐすっ……野宿とか……したことないから……うぅぅ……。

古桃形兜
アァ……ナルホドネ。

古桃形兜
デモ困ッタナ……。
怖イト言ワレテモ、僕ニハドーシヨーモナイ。

古桃形兜
キミノ為ニ、立派ナ家ヲ建テルコトモ、
マシテヤ城ヲ造ルコトモ出来ヤシナイ。

古桃形兜
スマナイガ……キミノ恐怖ヲ取リ除ク事ハ僕ニハデキナイミタイダ。

アイリーン・ドナン城
そっかぁ……。

古桃形兜
…………。

アイリーン・ドナン城
…………。

アイリーン・ドナン城
じゃ、じゃあさ……。

アイリーン・ドナン城
……いっしょに寝ちゃ、だめ?

古桃形兜
僕ト?

アイリーン・ドナン城
うん……。

アイリーン・ドナン城
……だめ、かな?

古桃形兜
別ニ……好キニスレバイインジャナイ?

古桃形兜
結局ハ草ムラノ上ニ寝テルダケダシ、
場所ノ選択ニ関シテハ、キミノ自由ダ。

アイリーン・ドナン城
えへへ……♪
じゃあ隣で寝るねぇ。

古桃形兜
…………アア。

アイリーン・ドナン城
…………。

古桃形兜
…………。

アイリーン・ドナン城
…………ねぇねぇ。

古桃形兜
何サ……?

アイリーン・ドナン城
何かお話して……?

古桃形兜
……話ッテ?

アイリーン・ドナン城
う~んとね……。

アイリーン・ドナン城
昔話とか?

古桃形兜
昔話ッテ言ワレテモナァ……。

古桃形兜
…………。

アイリーン・ドナン城
…………うぅ。

古桃形兜
分カッタカラ、泣クナ。

アイリーン・ドナン城
…………うん。

古桃形兜
昔話カ……。

古桃形兜
ソウ……ダナ……。

古桃形兜
昔々、アルトコロニ意地悪ナ殿ト、正直モノノ桃形兜ガイマシタ。

アイリーン・ドナン城
うんうん……。

古桃形兜
ヒョンナ事カラ意地悪ナ殿ニ騙サレテ、
国ヲ不当ニ追ワレタ桃形兜ハ、
アル時、強クテ美シイ城娘ニ出会イマシタ。

アイリーン・ドナン城
おぉ、それってもしかして――

古桃形兜
――ソウ皆サン御存知、原城トイウ名ノ信心深イ城娘デシタ。

アイリーン・ドナン城
あ、れ……?

古桃形兜
ソシテ彼女ハ、
神ノ名ノ下ニ悪ノ権化デアル殿ヲ誅殺シヨウゼ、
ト桃形兜ニ言イマシタ――

原城
※兜製幻想形・原城

原城
……いいですか?
これは正義を貫き守らんとする戦いです。

原城
兜たちよ……今こそ立ち上がるのです!
虐政をしき人類を苦しめんとする悪逆の極みたる殿を抹殺するのです!

桃形兜
承知ッ! 承知ッ!

桃形兜
デスガ……ボクラガ、闇雲ニ突ッ込ンデモ
タダヤラレテシマウダケナンジャ……?

原城
案ずることはありません、桃形兜よ。

原城
だって貴方たちには、この原城がついていますから!

原城
故に! 絶対っ! 何があろうと! 貴方たちが負けるはずありません!

桃形兜
……オォォ、何トイウ根拠ナキ自信ッ!!

兜軍団
ソシテ、アノ迷イ無キ瞳ノ美シサタルヤッ!!

兜軍団
ヤッパリ原城ハ、ボクラノ救世主ナンダッ!!

兜軍団
原城ッ! 原城ッ!! 原城ッ!!!
原城ッ! 原城ッ!! 原城ッ!!!
原城ッ! 原城ッ!! 原城ッ!!!

原城
あぁ、感じます……あなたたちの昂ぶりをっ!
強き意志に基づいた――戦意の上昇をっ!

原城
ならばもう……言葉は不要です!

原城
兜たちよ、今こそ参らん――!!
我々の尊厳と信心を賭けた最後の戦いへ!

後半
古桃形兜

……コウシテ、心優シキ兜タチハ
殿ニ敗レハシタモノノ、空ノ上カライツマデモ――

古桃形兜
――ッテ、アレ?

アイリーン・ドナン城
うぅぅぅ……ぐすっ……。

古桃形兜
ドウシタ? ナゼ泣イテイル?

アイリーン・ドナン城
ぐすっ……だってぇ、すっごく悲しいお話だったんだもん……。

古桃形兜
悲シイ……? ドウシテ? 
戦イニ敗レタ兜ハ天国ニ行ケタンダヨ?

アイリーン・ドナン城
でも、戦って死んじゃうのは悲しいよ……。

古桃形兜
ウーン……キミノ言ッテル意味ガヨクワカラナイナ。

古桃形兜
ソレヨリ、話ハ終ワッタンダ。
ソロソロ寝テクレナイカナ?

アイリーン・ドナン城
無理だよぉ……ぐすっ……。
悲しい話のせいで眠気が消えちゃったんだもん……。

古桃形兜
デ、僕ニドウシロト?

アイリーン・ドナン城
今度は……楽しいお話を聞かせてよぉ……。

古桃形兜
今度ハ、ッテ……。

古桃形兜
アノネ、アイリーン・ドナン城。モウ、ミンナ寝テルンダ。
イツマデモ喧シクシテタラ、仲間タチノ迷惑ニナル。

アイリーン・ドナン城
分かってるけどぉ……お願い。
今度で最後にするからぁ……ね?

古桃形兜
ハァ………………仕方ナイナ。
本当ニ次デ最後ダカラナ?

アイリーン・ドナン城
うん! 約束ぅ~!

古桃形兜
ジャア次ハ……。

古桃形兜
馬鹿デカイ桃カラ生マレタ、島原城トイウ名ノ無駄ニ高慢チキナ城娘ガ
吉備団子ヲ資本ニ、ヤクモト千狐ト柳川城ヲ巧ミニ騙クラカシナガラ、
一緒ニ鬼退治ヲシニイクトイウ爆笑必至ノ冒険活劇ヲ話シテアゲヨウ。

アイリーン・ドナン城
わ~っ、パチパチパチ♪

古桃形兜
エ~、昔々アルトコロニ――

そうして此の日、なかなか寝付けないアイリーン・ドナン城にせがまれるまま、
他にも三つほど昔話を語って聞かせてあげる古桃形兜なのであった。

三湖に交わる仮初の絆 -離-

殿一行との再戦を目論む兜たちは、
スパイ活動が得意だというアイリーン・ドナン城に
間諜としての役目を頼むのだが……。

前半
――殿との戦いから数日が経ち、
兜らは再戦に向けて活動を開始していた。

アイリーン・ドナン城
よーし、それじゃあ敵陣視察に行ってくるねー!

シュテファン
本当ニヒトリデ大丈夫デースカ?

アイリーン・ドナン城
まっかせてよ!
こうみえてわたし、スパイ活動は大得意だから!


(ウーン、心配ダナァ……)

兜軍団
(アイリーン・ドナン城ハ抜ケテルカラナー)

兜軍団
(利用シテル手前、アンマリ注文ツケルノモ悪イカラ口ニハ出セナイケドサー)

アイリーン・ドナン城
んー? 何か言いたそうな顔だねぇ、桃っち?
もしかしてぇ、隠し事してるのかなぁ~?


イ、イエ……マサカ……ソンナコトハ……!

兜軍団
ボクラハ仲間ダ! 隠シ事ナンテ! モッテノホカッ!

兜軍団
モシカシテ……ボクラヲ信ジラレナクナッタ?

アイリーン・ドナン城
う~ん……そりゃあ、きみたちを信じたいとは思うんだけどさぁ……。

アイリーン・ドナン城
でも、あの『殿』って人たちが言ってたように、
実は桃っちたちが悪い奴らだったらどーしよーって
少しだけ……ほんとに少しだけ考えちゃうんだよねぇ。

兜軍団
…………。

アイリーン・ドナン城
ちょ、ちょっと何でそこで黙るのさぁ!
何か怖いんだけどぉ!

シュテファン
オ~、イケマセンネー、アイリーン・ドナン城!

シュテファン
根拠ナク疑ワレテシマッテハ、桃形兜タチモ
言葉ヲ失ッテシマウノハ当然ノコトデースッ!

シュテファン
イイデスカ、アイリーン・ドナン城?

シュテファン
善悪トイウ価値観ハ時ト場所デ
コロコロ変ワル不確カナモノデース!

シュテファン
アナタガ、善ダト思ウ全テノモノヲ、
世界ハ悪ト断ズルカモシレナーイ。

兜軍団
逆モマタ然リッ! 逆モマタ然リッ!

アイリーン・ドナン城
う、う~ん……何だかよく分からないよぉ。

シュテファン
理解スル必要ハア~リマセン。
大事ナノハ感ジルコトデ~ス。

アイリーン・ドナン城
……感じる?

シュテファン
ソウ、アナタガ理由ナク善ダト感ジルノナーラバ、
ソレガアナタニトッテノ絶対的ナ善ナノデースッ!

アイリーン・ドナン城
な、なるほどぉ……。

アイリーン・ドナン城
…………。
(と言ったものの、正直なに言ってるのかチンプンカンプンだよ……)

アイリーン・ドナン城
まぁ、よく分からないけどさ、
信じてっていうなら、わたしは桃っちたちを信じるよ!

アイリーン・ドナン城
だって、疑うよりも信じる方が気持ちいいからね♪

シュテファン
フフフ……素晴ラシイ答エデース!

シュテファン
ナラバ、モウ何モ言ウコトハアーリマセーンッ!
私モアナタヲ信ジマス! シッカリ頼ミマース!

アイリーン・ドナン城
うん! 頑張ってくるよぉ~!!

アイリーン・ドナン城
ただ、さすがに一人きりだと心許ないからね、
蟹っちにも協力してもらうからね!

蟹形兜
エ? 俺?

アイリーン・ドナン城
そうそう! キミだよ、キミ! 暇してるならさ、
わたしと一緒に湖からざっぱぱ~んとスパイっちゃおうよ!

蟹形兜
イヤ、別ニ暇ナワケジャネーンダケド……。

蟹形兜
マッ、俺ノ泳ギガ必要ッテンナラ拒ミハシナイゼッ! 
ホラ背中ニノリヤガレ、ドナンッ!!

アイリーン・ドナン城
ほい、きたーっ!

アイリーン・ドナン城
ってことで! 蟹っちと一緒にスパイ活動してくるからー、
みんなも順次敵陣に接近して、わたしからの合図を待っててね!

兜軍団
了解ッ! 了解ッ!!

シュテファン
…………フム。

シュテファン
(純粋サモ、アソコマデ行クト逆ニ恐怖ヲ感ジマスネェ……)

シュテファン
(トハイエ、利用デキルウチハ利用サセテモライマスケドネ……フフフ)

――半刻後・殿陣営。

島原城
はぁ~ぁ……。

原城
どうしたのですか、島原城?

島原城
よく考えてみたらさ、私……待つのって大嫌いなのよねぇ。

島原城
ほらぁ、私ってお姫様な訳じゃない?

原城
(自称ですけどね……)

島原城
……何か言った?

原城
いえ、別に。

島原城
…………。

島原城
まぁ、何はともあれ、私こと島原城は紛う事なきお姫様なわけよ。

島原城
で、お姫様ってのは待たせることはあっても
待つことなんて有り得ない至高なる存在……、

島原城
だから、今みたいに、
敵の襲来に備えての見張り役なんてのはやってられないのよ。

原城
そう言いたくなる気持ちは分かりますが……、
千狐さんや、やくもさんだけに任せるわけにもいかないでしょう?

原城
というより、さっきから貴方は私にばかり見張りをさせて、
ほとんど何もしてないじゃないですか!

島原城
でも、アナタって抱えてる業的には籠城大好き城娘でしょ?
だから、心優しい私はわざわざ雑務を譲ってあげてるってわけ。

原城
……そろそろ本気でぶん殴りますよ?

島原城
ふふっ、アナタのそういう怒った顔、やっぱり嫌いじゃないわ。

原城
そうやってまたからかう……本当に貴方という城娘は――

原城
――ん?

島原城
どうしたの? 急に湖の方なんて見て――

島原城
――って、うそ……何よあれ!?

アイリーン・ドナン城
ふっふっふぅ……蟹っちぃ、イイ感じだよぉ~!
このまま、ドナンと一緒に潜入調査だぁ~!!

アイリーン・ドナン城
――って、おやおや? ねえねえ、蟹っちぃ!
あそこ――いま珍しい魚がいなかった? もしかして未確認生物とか?

蟹形兜
バ~カ、アリャ流木ダヨ。魚デスラネーシ。
ソレヨカ余所見シテット落チルゾ? シッカリ掴マッテロッテ!

アイリーン・ドナン城
うわわっ!? ちょ、ちょっと……いきなり激しすぎるってばぁ!
もっとゆっくり――って、きゃぁぁ~~~っ!!

島原城
…………。

原城
…………。

島原城
もしかして、あいつら……、
あれで私たちの陣に潜入しようって腹積もりなのかしら?

原城
それにしては……あまりにも杜撰すぎる気がしますが……。

島原城
となるとあれは陽動……。

島原城
原城! 逆方向からの敵の侵攻の確認をお願い!

原城
言われなくとも、もうやってます――!

原城
――むっ!? 見てください、島原城!
どうやら既に桃形をはじめとした徒兵が草陰に潜んでるようです!

島原城
ったく……私をこれだけ待たせておいて、
あの程度の攻め方しか出来ないとか――ほんと舐めてくれたものね!

島原城
殿――っ! 敵襲よ!
柳川城といちゃついてないで、さっさと戦う準備をしなさい!

殿
――っ!?

柳川城
へ、へんな言い方しないでください、島原城さん!
私はただ、殿の具足の調整をしていただけです!

島原城
いいからさっさと準備する! 陸からだけじゃなく、
湖からもアイリーン・ドナンが迫ってきてるから注意しなさい!

アイリーン・ドナン城
――ええっ!?
な、なんでバレてるのぉ!?

蟹形兜
ソリャ、アンダケ騒イデレバ当然ダロウガ……!

蟹形兜
ダガ見ツカッチマッタモンハ仕方ネェッ!
ドナン、俺ト一緒ニ玉砕シヨーゼッ!!

アイリーン・ドナン城
砕けちゃだめでしょ――っ!?

アイリーン・ドナン城
まったく蟹っちは思考が極端なんだからぁ~!

アイリーン・ドナン城
陸地のみんなもー! 一斉に攻めちゃってぇーっ!
力を合わせてわたしたちのお城を取り戻すよぉーっ!!

兜軍団
――了解ッ! 了解ッ!!

アイリーン・ドナン城
よーしっ! 今度は絶対に勝つぞぉーっ!
悪党どもぉ~、覚悟しろぉーっ!!

後半
アイリーン・ドナン城

ハァ……ハァ、ぁ……も、もう、らめぇ……。
あ、あんなのに……勝てるわけ、ないよぉ……うぅぅ。

兜軍団
ソンナ……ドナン様ッ!
コノママジャ、ボクタチヤラレチャウヨ!

アイリーン・ドナン城
でもぉ……もう、力が出ないんだよぉ……はぅぅぅ……。

熊形兜
…………。

熊形兜
…………ッチ。
使エナイ城娘ダ。

突撃式トッパイ形兜
少シデモ期待シタ俺タチガ馬鹿ダッタゼ!

アイリーン・ドナン城
……え? ちょ、ちょっと……みんな、どういうこと?

突撃式トッパイ形兜
――コウイウコトダヨ! オラオラオラァッ!

アイリーン・ドナン城
きゃぁっ!? そ、そんな!
なんでわたしに攻撃するの――!?

突撃式トッパイ形兜
オマエガ、殿タチニ寝返ッタ時ノコトヲ考エテ、
イマ此処デ始末スルッテコトダヨ!

兜軍団
リスク管理! リスク管理!

アイリーン・ドナン城
そ、そんなぁ……みんなのこと、信じてたのに……ぐすっ……うわ~~~んっ!!

島原城
ほらね――信じぬ者はなお救われるってのが、やっぱり真理じゃない!

突撃式トッパイ形兜
――グァァアッ!? シ、島原城……メェッ!!

島原城
利用するなら最後まで利用しなさいよ!
中途半端なヤツって見てて反吐が出るわ。

アイリーン・ドナン城
……ど、どうして……?
敵、だったのに……なんで、わたしを助けてくれるの?

島原城
別に、私はアナタなんてどーでもいいんだけどね……。
こうでもしないと、原城のお嬢ちゃまがうるさいのよ。

原城
相変わらず素直じゃありませんね、島原城。
貴方だってドナンさんを心配していたじゃないですか。

島原城
ふん……。

原城
ですが、ドナンさん。
これで、兜が危険な存在であることは分かったでしょう?

原城
ヤツらは我々の国・日の本においても悪逆の限りを尽くしている邪なる存在なのです。

アイリーン・ドナン城
やっぱり……そうだったんだね……。

アイリーン・ドナン城
少し前から、なんとなくそんな気はしてたけど……。
ハァ…………こうして、騙されてたって知ると、けっこうショックだよぉ……。

???
――オォ~、騙ストハ人聞キ悪イデスネー。

原城
むっ……此の鼻持ちならない声は――!?

島原城
ようやく元凶のお出ましってわけね。

シュテファン
フフフ……殿ォ、マタ会エテ嬉シイデ~スッ!

三湖に交わる仮初の絆 -結-

――騙される方が悪いのか、騙す方が悪いのか。
巨大兜へと向かう怒りの感情と共に、島原城と
原城は決着を付けんがため、それぞれに武器を執る。

前半
シュテファン

フフフ……殿ォ、マタ会エテ嬉シイデ~スッ!

殿
…………。

島原城
あの様子だと、か弱い城娘を騙したことに関しては、
罪悪感の欠片すら感じてないようね……。

シュテファン
罪悪感? ンー、先ホドカラ
私ガ、アイリーン・ドナン城ヲ
騙シタナドト仰ッテマスガ……、

シュテファン
我々兜ハ、アイリーン・ドナン城ニ対シ、助ケヲ求メコソスレド
何モ自分タチガ善ナル存在ダトハ一度モクチニシテイマセーン!

シュテファン
光ニツクカ……闇ニツクカッ!
全テハ、アイリーン・ドナン城ノ
自由意志ガ導イタ結果デース。

シュテファン
トナルト~、ソウシタ結果スベテヲ我々兜ノセイダト
責任転嫁スル様コソ悪トイウモノデハアリマセンカ?

アイリーン・ドナン城
……うっ。

島原城
…………。

島原城
そうね、今回に関してはアイリーン・ドナンにも非があるのかもしれない。

島原城
勝手に信じて、勝手に騙されて、勝手に暴走してたわけだし。

アイリーン・ドナン城
うぅぅ……ぐすっ……。

島原城
でもね……、

島原城
騙されるより、騙す方がずっと悪いなんてのは阿呆にも分かる理屈よ。

島原城
結果として騙されたって感じた奴がいるんだから、
巨大兜がいくら詭弁を吐こうが、
このコの純真さをもてあそんだ罪は消えないわ。

千狐
加えて、あの巨大兜にはコンウィ城さんたちとの一件における前科がありますからね、
今さら何を言おうが我々が騙されるなんてことは期待しない方がいいですわ!

シュテファン
ムム……ッ!!

原城
そして、貴様の罪は……贖われるべき悪であることは明白たる事実……。

原城
然らば潔く立ち会いなさい、巨大兜!
この原城が――今より、あなたの罪を裁いて差しあげます!

シュテファン
ヤレヤレ……城娘トイウ存在ハ、
ドウシテコウモ自分タチヲ完全ナル
善ダト信ジテ疑ワナイノデショウカ。

シュテファン
コウナッテハ致シ方アリマセンネーッ!
ソノ思イ上ガリヲ正シテアゲマショウ!

柳川城
殿……巨大兜が戦闘態勢に入りました。
すぐに出陣の準備を――!!

後半
シュテファン

ヤリ、マスネェ……グッ…………フゥ……ゥゥゥ……、
マサカ此処マデ圧倒サレルトハ……予想外デース。

シュテファン
デスガ……コンナ所デヤラレルワケニハ……イカナイノデース!
私ニハ……マダマダヤルベキコトガ……アルノデスカラーッ!!

兜軍団
――撤退ッ! 撤退ッ!!

原城
……くっ、またしても逃げられてしまいましたか。

島原城
まぁ、いいわ。かなりの痛手を与えてやったからね、
当分はしょうもない悪事を働くことはできないはずよ。

島原城
てなわけで、やることはやったし、
そろそろ帰るとしましょうか、殿。

アイリーン・ドナン城
…………ま、待って……。

島原城
ん?

アイリーン・ドナン城
待って、よぉ……まだわたし、おねえちゃんたちに、何にもお礼……できてない。

島原城
別にアナタからの礼なんて期待してないわよ。

島原城
それよりも、二度と兜に騙されないよう気をつけることね。

アイリーン・ドナン城
うん……。

アイリーン・ドナン城
――って、そうじゃなくて!

アイリーン・ドナン城
おねえちゃんたち、これからも兜たちと戦うんでしょ?

島原城
だったら、何だっていうのよ?

アイリーン・ドナン城
わ、わたしも……みんなと一緒に、戦いたい……。

島原城
戦いたいって、あのね……これはお遊びじゃないのよ?
アナタみたいなお子様は――

アイリーン・ドナン城
――冗談で言ってるんじゃないもん!

アイリーン・ドナン城
わ、わたし……もう、ひとりで此処に閉じこもってるのはいやだよ……。

アイリーン・ドナン城
おねえちゃんたちは……兜たちといっぱい戦ってきたんでしょ?
これからも……たくさんの悪者と戦うんでしょ?

原城
ええ、それが我ら城娘の使命ですからね。

アイリーン・ドナン城
じゃあ、わたしも行く!
国は違っても、わたしもおねえちゃんたちと同じ城娘だもん!

アイリーン・ドナン城
それにね! わたしみたいに、
兜たちに騙される城娘が他の国にもいるかもしれないし!

アイリーン・ドナン城
そういう城娘たちを救うためにも……。

アイリーン・ドナン城
ううん! 他にもたっくさんの人々を救うためにも、
わたし……みんなと一緒に悪いヤツらと戦う!

島原城
……だってよ?
どうするの、殿?

殿
…………。

アイリーン・ドナン城
…………。

殿
…………。

殿
…………!

アイリーン・ドナン城
うん! ありがとう!
これから一生懸命がんばるからねぇ♪

殿
…………。

柳川城
それでは、殿。
我々の所領へと戻るとしましょう。

アイリーン・ドナン城
――え? 所領って?
もしかして日の本ってとこにあるみんなのお家?

やくも
そうだに! 千狐の時空転移術があれば、
一気に海だって越えられるだにぃ!

アイリーン・ドナン城
そ、そんな便利な術があるんだねぇ……!

アイリーン・ドナン城
――って! そ、それじゃあわたし……、
今すぐ異国の地にいくってことぉ!?

島原城
私たちの仲間になるんだから、当然でしょう?

アイリーン・ドナン城
ほほぉ……となると!
いよいよ、わたしも海外デビューってことだね!

アイリーン・ドナン城
きっと日の本には、わたしの知らないような、
未確認生物がいっぱいいるんだろうなぁ……。

アイリーン・ドナン城
うわぁっ、ど~しよぉ!
何だかワクワクしてきちゃったよぉ!!

アイリーン・ドナン城
よぉーし、それじゃさっそく出発の準備してくるねーっ!
この城にもお別れ言わなきゃだし、忙しくなるぞー!

原城
(この城? お別れを言う……?)

原城
(――っ!?)

島原城
まったく、コロコロと表情変えちゃって、まるっきり子供ね。

島原城
……って、原城?
どうしたのよ、さっきから黙り込んじゃって?

原城
…………。

原城
ふふ…………。

原城
…………そう。

原城
そうだったのですね……。

島原城
ちょっと、何ひとりでニヤついてるのよ?
もしや……また訳の分からぬ天の声と会話してるんじゃないでしょうね?

原城
誰がいつそのようなことをしてましたか、失敬な!

島原城
じゃあ、何を勝手に納得してたのよ?

原城
我々に助けを求めた声の主が、ようやく分かったのです。

島原城
助けを求めるって……あの、夢で聞いたってやつ?

島原城
アナタ、まだあんなものを気にしてたのね。

原城
あんなものとは何ですか!
前にも言いましたが、夢で聞いた声こそが今回の――

島原城
――ああ、はいはい、分かったから。
それよりもほら、その声の主ってのが誰なのか早く教えなさいよ。

原城
……むぅ。
そういう言われ方すると言いたくなくなるのですが……。

島原城
じゃあ、聞かない方がいいかしら?

原城
いえ、誰にも言えないのはスッキリしないので、
ちゃんと聞いていきなさい、島原城!

島原城
相変わらず素直じゃないんだから……。

島原城
……で、結局誰だったの?

原城
それは…………。

原城
此の地にある――そう、
我らの目の前にある、この御城だったのです。

島原城
…………へ?

原城
いや、だから御城……。

島原城
…………。

島原城
…………何か、微妙なオチね。

原城
何てことを言うのですか、貴方は!

島原城
でもまぁ、なるほどね……御城が、縁在る城娘のことを心配して、
異国の私たちに助けを求めたって言うのは、可能性としては零じゃないわ。

原城
そう思えばこそ、我々とドナンさんが出会えたことは、
奇跡と言うに価するかけがえのないものだと私は強く思います。

島原城
奇跡ねぇ……。

島原城
ま、こうしてアナタと私が同じ戦場に立ってること自体、
昔を考えれば奇跡みたいなものだし――

島原城
案外、奇跡なんてものは、そこらへんにゴロゴロ転がってるのかもね?

原城
…………。

島原城
な、なによ急に黙っちゃって……。

原城
いえ、たまには貴方も良いこと言うんだな……と思いまして。

島原城
……ケンカ売ってるのかしら?

原城
さて……どうでしょうね。

原城
いずれにせよ、殿が待ってます……。
私たちも手早く帰る仕度をしましょう。

島原城
そうね……何だか妙に疲れたし、
今日はたっぷり殿に肩でも揉んでもらうとするわ。

殿
…………。

殿
…………!

アイリーン・ドナン城
――みんなぁ~っ! お待たせ~っ!!
日の本に行く準備はばっちりだよぉ~♪

千狐
それでは、殿。そして城娘のみなさん!
そろそろ所領へと帰還しましょう!

千狐
殿、此度の遠征も誠にお疲れ様でした。

三湖に交わる仮初の絆 -絶弐-

――其の城娘の名は、原城。強さと美しさを
兼ねた心優しき者として知られる城娘だが、
旧知である島原城に言わせれば彼女は……。

前半
――アイリーン・ドナン城が日の本に来てから数日が経っていた。

アイリーン・ドナン城
王様ぁ~! ねえねえ!
今日はどこかにお出かけしないのぉ?

殿
…………。

アイリーン・ドナン城
え~! やだやだぁ~!
所領でじっとしてるなんてやだよぉ~!

アイリーン・ドナン城
せっかく日の本に来たんだから、
いろんな所に、未確認生物を探しに行きたいよぉ~!

島原城
はぁ……今日も相変わらずアイリーン・ドナンはうるさいわね。

千狐
いいじゃないですか、賑やかな方が千狐は好きですよ。

やくも
とか言って、うちが遊びまくってると怒るだにぃ……。

千狐
やくもは常軌を逸してはしゃぐからよ。
ものには限度があるってことを知りなさい。

やくも
だにぃ……。

コンウィ城
……ふふ。

島原城
って、それよりも……。

島原城
さっきからそこにいる城娘は誰なのよ?

コンウィ城
……え? 私ですか?

コンウィ城
王様から聞いていませんか?
私、コンウィ城という者なのですが?

島原城
聞いてないし、いつの間にさらっと私たちの談話に混じってるのよ?

コンウィ城
いえ、それがですね……話せば長くなるのでかなり簡略に説明しますが……。

コンウィ城
先日、異国の地で戦った巨大兜についての話がしたいからと
王様に呼び出されて、はるばる故郷ウェールズの地から此処までやってきたのです。

島原城
いや、ぜんぜん簡略じゃないし!
そもそも、そんなに長い話でもないじゃない!

コンウィ城
もぉ、そんなふうに怒らないでくださいって……私、
わざわざ遠い異国の地からはるばる来たのですよぉ?

島原城
そ、そう言われると……返しづらいじゃないの。

コンウィ城
……といっても、千狐さんの転移術による
お迎えのおかげで一瞬で着きましたけどね♪

島原城
(こいつ……っ!!)

柳川城
あれ? でもコンウィ城さん。
今日はカーナーヴォン城さんは一緒ではないのですか?

コンウィ城
彼女はお留守番です。
根拠の守りを手薄にしては兜たちに攻め込まれてしまいますからね。

コンウィ城
……って、そんなことより、
どうしてアイリーン・ドナン城さんと兜の一件において、
我々ウェールズの城娘を呼んでくれなかったのですか!

千狐
い、いえ……あの時はまさか、アイリーン・ドナン城さんの居た場所と、
コンウィ城さんたちの根拠が、そこそこ近い距離になるなんて知らなかったもので……。

島原城
というより、むしろ近くにいたんなら、
アナタたちが自ら気づいて助けにくるのが筋ってものでしょ?

コンウィ城
そ、それは……。

コンウィ城
…………。

コンウィ城
……えへへ♪

島原城
あからさまに、笑って誤魔化そうとしてんじゃないわよ!

コンウィ城
もう、だからそんなにかっかしないでくださいって。

島原城
今のに関しては、アナタが最初に怒り出したんでしょうが!

島原城
ったく……ねぇ、柳川城。海外の城娘ってのは
みんなコンウィやアイリーン・ドナンみたいにヘンなやつばかりなの?

柳川城
さ、さぁ……私からは何とも……。

コンウィ城
まぁ、何はともあれ、
王様を含め城娘の皆さんが無事でよかったです。

コンウィ城
今回の一件で、あの正体不明の巨大兜が未だに
我々の住む地の周辺に潜伏していることも分かりましたし、

コンウィ城
よりいっそう防衛体制の強化を図るとともに、
アイリーン・ドナン城さんの住処も併せて
ウェールズの城娘一同で守り抜いていく所存です!

コンウィ城
……って、カーナーヴォン城さんなら言いそうですよね。

やくも
あんたの言葉じゃなかったんがや!?

コンウィ城
堅苦しいのはカーナーヴォン城さん担当ですから♪

コンウィ城
あ、それよりも、この梅昆布茶おいしいですねぇ。
やっぱり日の本文化はたまらないですぅ~♪

やくも
な、なんだか今日のコンウィ城ははっちゃけすぎてる気がするだに……。

柳川城
聞くところによると、最近はウェールズでの兜討伐が
かなり過酷なものとなってるようで、恐らくは過労に因るところが大きいのかと……。

島原城
どこもかしこも、兜たちの相手で疲弊しきっちゃってるってことね……。

島原城
…………にしても、

島原城
いま思えばだけど、先日の異国での戦いにおいて、
兜側に加勢したのがアイリーン・ドナンだけで本当によかったわね。

柳川城
え? どういうことですか、島原城さん?

島原城
ほら、考えてみてごらんなさいよ。

島原城
もしもよ? 原城が『あの夢』の話を殿にしないで、
異国の地で誰かが助けを求めてるー、とか言って、

島原城
そのまま自分で大木を切り刻んだ末に
しょうもない小舟を作って、異国の地に単身渡航したとする。

コンウィ城
ふむふむ……。

島原城
そうして、異国の地に立った原城の前に、
助けを求める桃形兜らが現れたりなんかして、
何やかんやと原城のお嬢ちゃまの信仰心につけ込み――

島原城
オォ、神ヨォ……我ラノ救イヲ求メル声ガ、
日ノ本ノ城娘ニマデ届イタノデスネェ――!!

島原城
とかって言って、原城を味方に取り込んでたら、
きっと大変なことになってたわよ。

コンウィ城
た、大変なこととは……?

島原城
そうね……とりあえず、こんな感じになってたんじゃないかしら?

後半
コンウィ城

あ、あの……原城さんって、そんなに怖い方なのですか?

やくも
いつもはすごく礼儀正しくて、優しい城娘にしか見えないだに……。

島原城
そうね、それが彼女を構成する一要素であることは認めるわ。

島原城
けど……あの子が抱える信心ってのは、
私たちの想像を遙かに凌駕する類いのものなの。

コンウィ城
……というと?

島原城
あれはもう、呪いね。

島原城
彼女が抱える城娘としての業の一つに、
困窮するものたちの救済、というものがあるの。

島原城
その対象が人類に向いている間はいいけど、
何かの弾みで逆転でもしてごらんなさい。

島原城
原城のやつ、兜のような悪しきモノたちのために、
首だけになっても、血みどろで戦おうとするわよ。

コンウィ城
…………首だけって……。

やくも
……じょ、冗談きついだに……。

柳川城
…………。(ごくり)

原城
いや、あの……島原城の戯言を真に受けないでいただけますか?

やくも
――ひぃっ!?

柳川城
は、原城さん……い、いらしてたのですか?

コンウィ城
あわわわわわっ…………。

原城
ハァ……もう、その反応だけで
島原城の言うことを信じてしまってるのが分かりますね。

原城
いいですか? 私は自らの業に屈してしまうほど弱い城娘ではありません。

原城
勿論、此の世界には業に流される城娘もいれば、
あえて逆らわないという城娘がいるのは知っています。

原城
現に私もかつては己の業に振り回されたことがありますが、
それでも、こうして殿の力となって日々を過ごすことができています。

柳川城
ほ、本当ですか?

コンウィ城
じゃあ、首だけで襲いかかるってのは……。

原城
するわけありません!
ていうか、どうやるんですか、それっ!?

島原城
ふふっ……まぁ、今の柳川城たちの反応を見るに、
原城なら、それくらいしそうだって少しは思ってるってことね。

原城
くっ……何だか、泣いてしまいそうなほどに傷ついています、私……。

コンウィ城
ごめんなさい、ちょっと面白くて島原城さんの話に乗っかっちゃっただけですから、
本気で怯えていた訳ではありませんよ?

コンウィ城
ですから、そのような悲しい顔はなさらないでください、原城さん。

原城
とか言いながら、一定距離を保ってるのはどうしてですか?

コンウィ城
……。

コンウィ城
……えへへ♪

原城
まったく……皆さんはいったい、私をどんな城娘だと思ってるのやら……。

アイリーン・ドナン城
――ねぇねぇ、おねえちゃんたちぃ~! 
さっきから楽しそうに何の話してるのぉー?

島原城
大人の話よ。

アイリーン・ドナン城
ってことは、えっちな話?

島原城
見方によってはね。

アイリーン・ドナン城
おぉ~! えっちな話!?

原城
ドナンさん、島原城の冗談をいちいち信じないでください。

アイリーン・ドナン城
――えっ!?
島原城おねえちゃん、また嘘ついたの!?

島原城
これもアナタのためよ。
また誰かに騙されないようにっていう修行みたいなものかしら。

原城
(絶対ウソだ……)

アイリーン・ドナン城
ん~。そうやって島原城おねえちゃんが
気を使ってくれるのは嬉しいけどさぁ、

アイリーン・ドナン城
でもね、わたしは疑うより、信じることを続けたいって思うの!

島原城
あれだけ兜に騙されたのに?

アイリーン・ドナン城
う~ん。確かに、あの時はすごく悲しかったけどさぁ……。

アイリーン・ドナン城
でも、最初から誰かを疑っちゃうよりも、
信じて裏切られる方が、わたしはいいような気がするの。

島原城
…………。

島原城
…………アナタ、どうしようもないバカね。

アイリーン・ドナン城
うん、そうかも!

アイリーン・ドナン城
でも、この世界にはさ、善いこと悪いことに関係なく、
信じられないようなことが毎日のように起きてるでしょ?

アイリーン・ドナン城
だからね、わたしはそれらぜ~んぶを善い方のことだって
信じながら、一つでも多くの素敵を現実にしたいの!

島原城
…………。

島原城
(なるほどね、これがこの子にとっての業の一つってことなのか……)

島原城
(未確認生物を探し求めるのも、そういった部分に因るのかもしれないわね……)

島原城
…………ふふ。

アイリーン・ドナン城
あれ? どうしたの、おねえちゃん?

島原城
別に。アナタの青臭さに鼻をつまみそうになったってだけよ。

アイリーン・ドナン城
……あっ、ちょっと何処いくのぉ!
島原城おねーちゃーんっ!!

柳川城
……行ってしまいましたね。

コンウィ城
お腹でもすいたのでしょうか?

やくも
いや、きっと厠に決まってるだに。

アイリーン・ドナン城
カワヤ……カワヤ……。

アイリーン・ドナン城
ああーっ! トイレのことかっ! なるほどぉー!

原城
…………島原城の名誉のために言うわけではありませんが、

原城
彼女は……きっとドナンさんの言葉に感銘を受けたのですよ。

アイリーン・ドナン城
カンメイ?

原城
ええ。

原城
貴方の純粋さは、人を動かすに足る力強さがある……。

原城
信心……言葉にするのは容易いけれど、
思い描いた通りに実践するのは至難の業……。

原城
その点で言えば、アイリーン・ドナン城という城娘は、
私にとっては奇跡にも似た輝かしい存在にも映るのです。

アイリーン・ドナン城
……ん? もしかしてわたし、褒められてる?

原城
ええ、これ以上ないくらいに褒めちぎってます。

原城
だからどうか、その純粋さをいつまでも大切にしてください。

原城
この乱世にあっては……きっとそれが、
途方もなく美しいものの一つと成り得るのですから。

アイリーン・ドナン城
ん~?

アイリーン・ドナン城
まぁ、何だかよく分からないけど、
誉められてるのなら、これからもドナンは自分を貫き通すよ!

コンウィ城
うっ……うぅぅぅ……。

やくも
――なっ!? 何でいきなり泣いてるだに!?

コンウィ城
だって……アイリーン・ドナン城さんがあまりにも純粋無垢なんですもの……。

コンウィ城
ダメですね……凄惨な戦い続きで、
やっぱり私……ちょっと疲れてるみたいです……ぐすっ……。

アイリーン・ドナン城
コンウィ城おねえちゃん、そんなに疲れてるのぉ?

コンウィ城
……そうですね。おもに心が。

アイリーン・ドナン城
むぅぅ……大人の悩みってやつだね?

アイリーン・ドナン城
ならさ、ドナンと一緒に所領の周囲を探検しようよ!

アイリーン・ドナン城
きっと良い気分転換になると思うし!
近くにある湖にどでかいドラゴンみたいなのもいるっぽいし、
きっと楽しいはずだよ♪

コンウィ城
……どらごん?

やくも
きっと、浮木か何かを見間違えただけに決まってるだに。

柳川城
でも、なんだか楽しそうですね!
コンウィ城さん、行ってみませんか?

コンウィ城
賛成です! 久しぶりに日の本に来たのですから、
ちょっとくらい遊んでみても、王様に怒られたりはしないですよね?

アイリーン・ドナン城
そうそう、たまには大人だって、しっかり遊ばなくちゃダメなんだからね!

やくも
のわっ!? いつの間にか変身までして、やる気満々だにぃ!?

コンウィ城
そしてさり気なく私も変身しちゃってまーす♪

柳川城
ということで、私もです!

原城
え? わ、私もですか!?

アイリーン・ドナン城
うんうん、みんな準備はばっちりみたいだね♪

アイリーン・ドナン城
よ~しっ! それじゃあ未確認生物を探しに出発だよぉ~!
みんなー、遅れずに着いてきてね~♪

こうして、アイリーン・ドナン城の元気な掛け声と共に、
原城たちは所領近くの湖へと探索に出掛けたのだった――。



特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。


最近更新されたページ

左メニュー

左メニューサンプル左メニューはヘッダーメニューの【編集】>【左メニューを編集する】をクリックすると編集できます。ご自由に編集してください。掲示板雑談・質問・相談掲示板更新履歴最近のコメントカウン...

[裏]真田丸

裏]真田丸(チャリン……チャリン……チャリン……)……貴殿か。今日は、話をしたい気分じゃない。足を運んでくれたのに、すまない。一文……二文……三文……四文……五文……六文……銭を数えていなければ、一瞬...

[裏]淀城

]淀城あ~……。あ゛ぁ~……きもちわる。夢見は悪いし、頭はズキズキ痛むし……。ほんっとに最悪な日よ、今日は。誰でも良いから……。どつき回して、ぐちゃぐちゃにしたい気分。…………。……で、なに?そこに突...

[裏]桜尾城

]桜尾城殿……どうかしましたか?……ふふ、今回は間違えませんでしたよ。あなたの安らぐ顔もまた、私の喜びなのですから。私は今……海を見ていました。このどこまでも凪ゆく、厳島の海を……。厳島周辺は神域とい...

[裏]川越城

]川越城お客様かしら……どうぞ。貴方は、確か……ちょっと待ってね……。うん……たぶん、『殿』よね……?やっぱり……人違いでなくて、良かったわ。ふふ。今丁度、過去の私が遺した日記を読み返していたのよ……...

[裏]小田原城

]小田原城…………。……あら、殿。ようこそいらっしゃいました。ああ……いえ、ご心配なく。少し考え事をしていただけですから。今、ちょうど……。昔の出来事に思いを馳せていました。今の私を形作る、原点とも呼...

[裏]小牧山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 所持特技1.4 [改壱]所持特技1.5 計略1.6 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3...

[裏]室町第

裏]室町第殿……ふふふ。どうせまた来るって、そんな気はしていたわ。私がどんなに忠告をしても、貴方は自分の信念を曲げない。本当に……つくづく、強い人ね、殿は。私のせいで、どれほど悪いことが起こっても殿は...

[裏]大宰府

]大宰府おお、殿か。よく来てくれたな。今な、手紙を整理しておったのじゃ。最近は毎日、誰かしらから届くのでな……。この手紙は……、『大宰府ちゃん親衛隊』を自称する者たちからじゃな。大野城、鞠智城、基肄城...

[裏]坂本城

]坂本城大殿様……また来たのね。ふふ……別に、追い返したりしないわよ。というより……私も今ね、大殿様と話せたら、って考えてたところだったの。だから……少しの間、私の話し相手になってくれるかしら?……ふ...

[裏]佐和山城

]佐和山城……また来たのね、あなた。足を運んでくれたところ悪いけど、面白いものは何も見れないわよ?相変わらず、大坂城様のらいぶに向けて、準備をしているだけだもの。……ん、なに?『なぜ、そこまで大坂城様...

[裏]伊勢長島城

]伊勢長島城も~、なんなのあいつら!信じらんない!寄ってたかってライブの邪魔をして!いったいどこから情報が漏れたの?もしかして、殿じゃないでしょうね……!?……そんなわけないか。あたしは、あんたにな~...

[花嫁衣装]鹿児島城

目次1 性能1.1 特技1.2 計略1.3 [改壱]計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< ロケト城 - [花嫁衣装]シャンティイ城 >[花嫁衣...

[花嫁衣装]鮫ヶ尾城

]鮫ヶ尾城はあ……春日山城サマの祝言、想像するだけでドキドキしてしまうっす!ね、ちびサマ~♪……ん?どうしたっすか、トノ?えっ、『主城のことより自分はどうなのか』っすか……?うぐ……これは痛いことを言...

[花嫁衣装]許昌城

]許昌城うーん……。ううーん……。……おや、殿か?すまない、考え事をしていて来訪に気づいていなかった。この間、殿と話してから、結婚に関して城娘達と話をしたのだ。繁栄という目的へ至る手段としての婚姻……...

[花嫁衣装]萩城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]チャンドラ・マハル - [花嫁衣装]新田...

[花嫁衣装]秋田城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< 延岡城 - [花嫁衣装]ロンドン塔 >[花嫁衣装]秋...

[花嫁衣装]春日山城

]春日山城うーん……。……うーん? ……うん?……殿?すみません! お越しいただいていたのに、今の今まで気づかずにいて!実は先日、坂戸城と謙信公の昔話をしてたのですが、その際、跡継ぎの話題が出たのです...

[花嫁衣装]新田金山城

目次1 性能1.1 特技1.2 [改壱]特技1.3 計略2 画像3 ボイス4 イベント4.1 イベント14.2 イベント24.3 イベント3性能< [花嫁衣装]萩城 - [花嫁衣装]アイリーン・ドナン...