トイレット博士

ページ名:トイレット博士

『トイレット博士』(トイレットはかせ)は、とりいかずよしにより1970年から1977年まで『週刊少年ジャンプ』誌上に連載されたギャグ漫画作品。

目次

概要[]

『少年ジャンプ』の創刊2年目から開始された連載は7年間に及び、同誌を数百万部雑誌にのし上げた立て役者にもなった、大ヒット作品である。とりいかずよしの出世作であり代表作の一つ。単行本全30巻は、当時としては記録的な長寿連載であり、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に抜かれるまで『ジャンプ』史上最長だった。部数も1000万部を売り上げた。その一方で、過激な表現・暴力表現で物議を醸し、社会現象になった。

後発誌であった『少年ジャンプ』は赤塚不二夫を起用できず、そのアシスタントでフジオプロの面々を交代連載という形で起用。そのうちの1作がとりいかずよしの「トイレット博士」であり、たちまち人気を得て毎週連載に昇格した。とりい自身もフジオプロからの独立も果たした。テレビアニメ化の話があったものの、タイトルをゴールデンタイムにふさわしいものに変更するよう要請されたため、話がまとまらなかったという[1]

『少年ジャンプ』のモットーである「友情」「努力」「勝利」が初めて作品中で提示された作品と言われる[2]

連載終了後[]

1979年に『ヤングジャンプ』創刊号から続編が描かれた。「一丁目のスナミちゃん」である。団員たちが高校生という設定であり、スナミ先生は奥さんに逃げられた状態で登場する。連載は短期間であった。1981年に集英社漫画文庫で単行本化された。

少年漫画史に不滅の金字塔を打ち立てた本作品のファンは年月を経てもなお多く、1990年代になって大きく動きが始まった。1996年には「ジャンプ コミックス セレクション」傑作集上下巻が発売になり、公式サイトも開設されメタクソバッジの復刻が行われた。ファンクラブのメンバーにだけ郵送された二作品の復活作品が存在している。この復活ファンクラブも現在は休止中。

1997年11月19日には、本作のイメージソングとしてシングルCD「うーん恋した時から…」(歌:うんこちゃん)が発売された。

1999年には太田出版から愛蔵版が発売。全作を収録予定だったが、三冊を刊行したところで発売が止まってしまった。しかし復刊ドットコムにより続刊が発行され、現在では全巻を読むことが出来る。

作品史[]

便宜上、内容にて大きく分けて3部構成になっている。

第1部[]

単行本1 - 5巻。初出は『週刊少年ジャンプ』1969年23号の「赤塚ギャグ笑待席」である。この連載は赤塚不二夫がかなりの売れっ子であったため、『ジャンプ』編集部は週刊連載を依頼する事が出来ず、結局赤塚が一週おきに執筆して、穴埋め分は当時とりいが所属していたフジオプロ作家が持ち回りで掲載する形となったものである。とりいは古谷三敏、長谷邦夫と交互に作品を発表。このとりいの持ち番に掲載されたのが本作であった。この連載が終了した後も、とりいは『ジャンプ』誌上で数回本作を読み切りの形で発表。月1回から月2 - 3回と発表頻度が増え、そのまま自動的に連載漫画となった。定期連載となってからは一度も休載していない。

序盤の徹底したスカトロジー表現は、恩師・赤塚の「お前は顔が汚いからウンコ漫画を描け」という指示を受けてのものだったと、太田出版『愛蔵版トイレット博士』第1巻あとがき・解説に記されている。とりいは「赤塚先生はお金のタブーを破った。永井豪は性のタブーを破ったので、僕に残されたものはうんこのタブーだと考えた」とも語っている。

主役は一応トイレット博士だが、バキュームエンジェル・うんこちゃん、ダラビチ博士などの人気サブキャラクターが続々登場した。また、この第1部はスカトロジスト(いわゆるスカトロ愛好家)の中には「聖典」として扱う者もおり、その方面からの熱烈な支持が今だ根強い。

第2部[]

単行本6 - 11巻。一郎太が登場し、主役に。うんこネタだけではアイデアが枯渇して苦しくなってしまい、方向転換で人情ギャグにした。アンケートの結果が飛躍的に伸び、執筆も楽になったが、主人公トイレット博士の登場回数が無くなってしまった。この事は、『ジャンプ』連載漫画のひとつの特徴として語り草となり、連載後期の作中でも何度もネタにされている。とりいも「トイレット博士はあまりにも不運な主人公であった」と、単行本ならびに愛蔵版にてコメントしている。

第3部[]

単行本12巻 - 30巻。一郎太、中学に入学。スナミ先生が次第に主役の座へ。そして13巻でいよいよメタクソ団の結成!団員達の卒業で完結する。

週刊少年ジャンプで「トイレット博士」がほとんど登場せず、実質題名のみとなった後は、『別冊少年ジャンプ』や『少年ジャンプ増刊号』の季刊誌にて、トイレット博士が登場する作品が掲載されていた。従ってこの時期のジャンプ・コミックス単行本には、『週刊少年ジャンプ』本誌に載っていた本編に季刊誌掲載分を挟んで収録されている。なお、一部の号のジャンプ・コミックス単行本では、週刊少年ジャンプ連載の順番とは異なった形で収録されており、前後関係に違和感がみられている。

主な登場人物[]

第1部[]

トイレット博士主人公。人糞を研究する科学者にして医師。実際に主役となった回は数える程しかない。「ジャンプマルチワールド」では「目立たない主人公No1」とレッテルはらされ、中盤以降はスナミや一郎太達に出番を奪われ、全くと言うほど登場しなくなった。バキュームエンジェル・うんこちゃん人糞を愛する謎の美少女。初期は吸クソ鬼という呼称もあった。ダラビチ博士初期の主役。本来は悪徳な科学者でありニセ医師。しかし悪人に徹しきれず人助けをすることもある。語尾は「〜ダラ」。トイレット博士の幼馴染み。タメやんバキュームカーの運転手。人情に厚い。語尾は「やんけ」。

第2部以降[]

スナミ(先生)一郎太達が通う学校(大山小学校→大山一中)の教諭。メタクソ団を結成し、メンバーに同志の証であるバッジ(大きさはメダル大で金属製。「MK」の文字が入る)を配る。シャツの文字は「マ」。最終的な本作の主役。編集者・角南攻がモデル。後にサイボーグ教師になったりタコ型宇宙人になったりしたが、連載終了直前に突如、人間に戻り、メタクソ団を再結成する。一郎太中盤、事実上主役になる少年。メタクソ団メンバー。シャツの文字は「タ」。三日月本名は三日月 半平太。一郎太の仲間でメタクソ団メンバー。シャツの文字は「ン」。チン坊本名は珍念 与八郎。一郎太の仲間でメタクソ団メンバー。シャツの文字は「キ」。スナミママ(静子)&一城(長男)、双葉(長女)スナミ先生の妻子。スナミ先生も自分の家族を大切にしており、しばしばメタクソ団との付き合いと家族サービスとの板ばさみに悩んでいる。ピッピ末期近くに登場。メタクソ団の見習いメンバー。シャツの文字は「ペ」。この文字の根拠はかつてスナミ先生がピッピを疎んでいた時期に「お前はペンコロのぺで十分だっチ」といったことによる。ヘルメットを常にかぶっており、かつ極度の近視。ワイワイ校長一郎太達が通う大山一中の校長。大山小学校の校長とは兄弟関係であり、他に幼稚園の園長をしている兄弟も存在する。語尾は「ワイワイ」。部下のスナミはかつて教え子でもあった。マリちゃん一郎太の小学生時代の同級生。一郎太が密かに恋心を寄せていたが、途中で転校してしまう。アオバナ一郎太の同級生。その名の通り常に鼻水をたらしている。語尾は「〜ズズ」。作者(とりいかづよし)

7年殺し[]

秘技「7年殺し」とは、「臨兵闘者皆陣烈在前!!」と九字を切ったのち相手の肛門へカンチョーの要領で両手を突っ込むというもの。

大元のネタは「空バカ」の語源ともなった原作・梶原一騎/画・つのだじろうの漫画「空手バカ一代」に出てくる「3年殺し」である。

その他[]

  • 同じ『週刊少年ジャンプ』に載っていたギャグ作品とのジョイント企画もあり、元アシスタントでもある柳沢きみおの『女だらけ』や、当時ジャンプ誌上で人気を二分していた吉沢やすみの『ど根性ガエル』、またデビュー間もなく女性を装っていた車田正美の『スケ番あらし』との合体作品がある。
  • ダウンタウンの松本人志がNHK-BSで放送された「松本人志の大人間論〜究極の笑いを求め続けて〜」の中で、子供の頃に好きだった漫画として本作品を挙げている。

出典[]

  1. 『いきなり最終回PART3』JICC出版局、1991年、p.174。
  2. 西村繁男『まんが編集術』白夜書房、1999年、p.115。
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