虞_(春秋)

曖昧さ回避

この項目では、春秋時代の姫姓の虞について記述しています。その他の国については「虞」をご覧ください。

虞侯（去斉）を激しく諌めた百里奚

虞（ぐ、紀元前11世紀ごろ - 紀元前655年）は、中国の春秋時代の国名。姓は姫（姫姓）。現在の山西省運城市平陸県の東北部にある。

概要[]

もともとは殷＝商の時代に存在した小国で、一説に殷（好姓）の王族系。君主は虞君と呼ばれ、隣接する芮君と領地問題で悶着を起こし、双方ともを西伯昌[1]に裁くように赴いたが後に和解した。

虞君の孫である丁公奕・夨父子の代に周（岐）の康王釗[2]の南方遠征に従軍し、荊邑[3]を中心とした宜侯に封じられた[4]ために、虞君の領地は後釜を要した。

康王の曾祖父の文王（伯昌）の伯父・仲雍[5]を家祖とし、紀元前1028年に殷を滅ぼした祖父の武王仲発が仲雍の曾孫である従子[6]の仲章を虞の一部を封地として賜った。仲章の子・羆遂の代となり、その最晩年に康王から爵位が空いた虞侯として封じられた[7]。以降も春秋時代にまで歴代の虞の君主が世襲した。

紀元前655年に最後の君主の虞侯（去斉）の代に、晋[8]の献公（詭諸）[9]が、去斉に対して虞の同族である虢・霍と壊滅するために街道の通過を要請した。

これを聞いた大夫の宮之奇と五羖大夫[10]は激しく抵抗し、両人は去斉に晋の要請に猛反対する旨の上奏をした。

このことに対して、虞侯の去斉は「晋は母系（唐）が周王室に連なる家系で同宗筋にあたる。われらに危害を与えないであろう」といった。しかし、宮之奇は、五羖大夫とともに「晋は野蛮な国です。晋は周王室に連なる国家と申しますが、周王室の代々の帝王が北方遊牧民族の翟族の酋長の娘と婚姻関係を結んでる間柄ですぞ。また、献公の父･武公称は宗家である湣侯緡を弑し、その一族を惨殺して、分家の分際で宗家を簒奪した問題のある国家ですぞ。つまり晋自体が周王室の王族化した翟族そのものですぞ。絶対に街道を通過させてはなりませんぞ！」と激しく抗議するも、去斉は聞き容れずに、献公の要求を快く応じた。

そのために、宮之奇は後難をおそれて家族とともに虞を出奔してしまった。去る際に「虞は年末までには保つまい。これで晋は度重なる出兵の手間を省けたようなものだ」と述べた。

はたして、同年冬12月[11]に虢・霍を滅ぼした晋の献公はの帰還の最中に駐屯して、そのまま虞もまとめて滅ぼしてしまい、去斉は太子去樵と五羖大夫（百里奚）は捕虜となった[12]。

歴代君主[]

1. 仲雍
2. 叔達
3. 季簡（季康/季夏）
4. 仲章
5. 羆遂（羆贇）
6. 柯相
7. 彊鳩夷（疆鳩夷）
8. 余橋疑吾（政）
9. 柯盧（柯廬/柏廬）
10. 仲繇
11. 屈羽
12. 夷吾
13. 禽処
14. 柯転（柏転）
15. 頗高（頗髙）
16. 去斉
17. 去樵 ： 虞の太子

脚注[]

1. ↑ 後の周（岐）の文王。
2. ↑ 成王・季誦の子。
3. ↑ 現在の江蘇省無錫市宜興県
4. ↑ 春秋時代の南方の蛮族である呉は丁公奕・夨父子の末裔と自称した。
5. ↑ 古公亶父（武成王）の次男、泰伯の弟、季歴（平霊王、文王の父）の兄。
6. ↑ 武王の又従兄・季簡の子。
7. ↑ なお、虞の代々君主の諡号は不詳である。
8. ↑ 周王室より、特例として母方の｢姫姓｣（あるいは嬛姓）を賜った古代トルコ系翟族の狐氏出身という。
9. ↑ 文公・重耳の父。
10. ↑ または百里奚/百里傒/井伯とも呼ばれ、孟明視の父。
11. ↑ 10月の説もある。
12. ↑ しかし、特例として献公は虞の祭祀を許可したという。

関連項目[]

• 虞
• 唐
• 呉

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