タサダイ

登録日：2022/08/15 (月曜日) 12:02:16
更新日：2024/03/02 Sat 17:53:04
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フィリピン 原始人 少数民族 詐欺 タサダイ

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タサダイ（タサディ）は、1960年代後半フィリピン・ミンダナオ島で発見された原始人。

デファルの発見

この自分たちのことをタサダイと呼び26人からなる小さな部族は、島の面積のほとんどを熱帯雨林に覆われたフィリピン・ミンダナオ島南部コタバト多雨林のジャングルの奥深くにある洞窟で原始時代そのままの石器を使い、生活していたが、
デファルという地元のハンターが、罠猟のためにジャングルを歩いていて偶然にタサダイに遭遇し、長き孤立に終わりを告げたという。

エリザルデの報告

1971年、彼らに金属のナイフを贈り、猟で使う方法を教えてやり、彼らと交流したデファルが、タサダイの存在を政府の役人に報告し、その報告をもとに、アマチュア人類学者でもあった当時のフィリピンの環境大臣、マニュエル・エリザルデ Jr.がジャングル行きのヘリに飛び乗りタサダイの存在が確認された。
彼らタサダイは、農耕は行わず、カニやおたまじゃくし、ヤムイモなどを食べているといわれ、道具は石斧や穴掘り棒から進歩しておらず、生活様式は旧石器時代そのものであり、ジャングルの中で１万年以上前の生活を送ってきたということだった。
世界中のメディアが現地に取材陣を送り、タサダイの写真がナショナル・ジオグラフィック誌の表紙を飾った。
何よりベトナム戦争の報道に疲れ切った世界中を感動させたのは、タサダイの平和的な生活だった。
彼らは、独自の言語を持ち、「武器」や「敵」といった、争いを意味する単語がないことが判明した。
フォト・ジャーナリストのジョン・ナンスは彼らを題材にベストセラー『ジェントル・タサディー』を著して20回以上にも渡ってタサダイを取材し、彼らのために保護団体を設立し、
ナショナル・ジオグラフィック誌の編集者は彼らを争いを知らぬエデンの祖先になぞらえた。

保護

エリザルデはタサダイを外部の人間の搾取から守るために、彼らの住む洞窟の場所を極秘にし、タサダイを文明に汚染させないため、車や徒歩では決して近づけず、密林に囲まれた丘の頂上のわずかな土地に発着場の作られたヘリコプター(航空機)でしか出入りできなくするなど、彼らの居住区への人の往来を厳重に管理した。
1974年、フィリピン大統領マルコスの命により、タサダイの居住区への立入りが禁止され、タサダイは国で保護されることが決まった。
エリザルデは、その周りを兵士で固めさせ続け、保護区に入ってタサダイに会うことができるのは、エリザルデによって慎重に選ばれた者だけとなった。

創作において

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』において、南部コタバト多雨林（タサダイの居住地）の北東に当たるミンダナオ島最大の都市ダバオに高級ホテル「タサダイ・ホテル」が建っている。
木を使って火をおこし、原始時代そのままの石器を使っていたタサダイの名に高級ホテルは皮肉なネーミングにも思えるが、
作中でも「愛の部族」に似つかわしくない重要な舞台となり、ホテルの客室備品をイメージしたグッズが実際に商品化された。大々的に宣伝されたため「ダサイホテル」と空目した未視聴者もいたとか

追記・修正は、ダサイと間違えないようにお願いします。

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疑惑

ところが、フィリピン政府が国内外から集めたタサダイ保護のための寄付金を実際に動かしていたエリザルデは伐採業者と政敵関係にあり、保護区の設置によって妨害する動機があるという怪しげな背景があった。
またマルコス政権による戒厳令には、国内の管理を強めるためではないかと言う疑惑も絶えなかった。
さらに慎重に選ばれた僅かな学術調査の結果にも、奇妙な報告が混ざるようになる。

• 洞窟やその周辺に、生活痕が残飯ひとつ見つからない。
• 26人と言う少人数の部族で、数千年にも渡って他の部族との交渉がないのでは同系交配が避けられない
• 農耕は行わず、カニやおたまじゃくし、ヤムイモなどを食べているといわれるが、南部コタバト多雨林（タサダイの居住地）では、彼らの生存を支えるのに必要なデンプンが含まれた食物が採取できない
• 保護区に入ってタサダイに会った言語学者が、タサダイの言語の中に「モルタル」「家の屋根」などを表す単語があるのを発見した。
• 同じく人類学者が、警備兵によって調理された米がこっそりと洞窟に運び込まれるのを目撃した。
• 地元民によると、彼らは服を着て時々市場にやってくるしタバコも吸う普通の農民であるという。

イテンの発見

1986年、マルコス政権の崩壊に紛れ、スイス人ジャーナリストのオズワルド・イテンと現地ジャーナリストのジョーイ・ロザノが無許可で保護区に潜入した。
イテンは、タサダイが洞窟ではなく普通の家に住み、Tシャツにジーンズを着て、都会的ではないにせよ現代人の生活をしていたのを目撃した。
ロザノを通訳として彼らに質問すると、何人かのタサダイが、エリザルデとの共謀を認めた。
エリザルデと出会うまで、彼らは山の反対側にある小屋に住んでいた普通の農民で、
エリサルデが、もっと原始人らしく見えるようにと、強制的に洞窟の中に住まわせたといい、
国からの補助金と、付近の村との紛争から守ってくれるという約束で、協力していたという。

二人は、最初からタサダイなど存在していなかったとアメリカのニュース番組で発表した。
このスクープを巡り、再び世界中のテレビ局がミンダナオ島に押しかけた。
ドイツのジャーナリストのグループがイテンから数日後に到着した時、布の下着の上に葉っぱの服を着て洞窟にいるタサダイを取材した。
アメリカ人類学会が開いた討論でも、複数の不審な点が指摘された。

• タサダイの洞窟は、一番近い村から徒歩３時間の場所にあるのに、 彼らが食物を捜している間に、1000年間一度もこの村の住人と遭遇しなかったというのか?
• 打製石器をこん棒にツルで結びつけた石斧は、本当に実用的か?
• そのこん棒やツルが、石器ではなく鋼の刃物で切断されたように見えるのはなぜ?

タサダイ自身の自白もあり、イテンはこれを、エリサルデが私利のために行った捏造／でっち上げだと結論付け、「世紀の詐欺事件」として世界的に有名となった。

リードの調査

マルコス政権崩壊後もフィリピンで影響力を持っていたエリザルデは、フィリピン議会にタサダイは実在すると政治的および法的圧力を加えた。
1987年、これは政治家ではなく科学者に委ねるべき問題だと判断したフィリピン政府が、4ヶ月にも渡る再調査を行った結果、フィリピン政府は最終的に「タサダイは実在する」と結論を出した。
1988年にはタサダイのメンバーがマニラに飛びタサダイ非実在説を唱えていた教授を訴え、同年アキノ大統領はタサダイを正統な原住民であると宣言した
1990年代を通じて長期にわたってタサダイと暮らしフィールドワークを行ったハワイ大学のローレンス・A・リードは、彼らの言語が創作でもなければ最寄りの村とも違い、単語の８５％以上がコタバト・マノボ（ロザノの出身部族）に実在する方言であることを突き止めた。
リードはタサダイが約150 ～ 200年前にコタバト・マノボ社会から分裂し、おそらく疫病から逃れるためにジャングルに逃げ込んだと推測した。
さらにこの頃、エリザルデとの共謀を認めたタサダイが、通訳から賄賂を受け取った虚偽の自白を告白した。
ミンダナオの森林伐採を求める勢力にとっては、1986年に高まった反マルコス感情を追い風に、マルコスの設置した保護区を撤廃する動機があった、とナンスの設立した保護団体は考えている。

ヘッドランドの仮説

長期に渡ってタサダイの調査を行った人類学博士のトーマス・ヘッドランドは、リード分析の妥当性を認め、タサダイは19世紀のある時期に農業を行っていたコタバト・マノボから分離し、近くの南コタバトの熱帯雨林の奥深くに移動し、その後、主に採集で生活し、たまに近隣の農民と山の幸と農産物を交易する半狩猟採集生活へ移行したという仮説を立てた。
エリザルデがもっと原始人らしく見えるように演技を依頼し、マルコスが海外向けに石器時代人発見を宣伝したのは明白なところだろう。
一方で、タサダイの方には会う人々が求める役割を忠実に演じていたようにも見える。
エリザルデが求めれば原始人を　―　
イテンが求めれば告発者を　―　
ドイツのジャーナリストが求めればパフォーマーを　―　
保護団体の設立にもかかわらず、エドゥサ革命後のタサダイ保護区の法的位置づけは曖昧なものとなっていた。1995年、外国の鉱業会社に土地の領域を探査、開発することを許す鉱業法が成立し、タサダイの土地は危機に陥った。
2001年、タサダイをはじめ、ミンダナオ島の少数民族は先祖代々の土地認定証を求めるための申請をフィリピン政府に提出するため、土地の測量を開始した。

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