ナラトース

ページ名:ナラトース

登録日:2021/04/20 (火曜日) 02:22:00
更新日:2024/05/27 Mon 10:41:06NEW!
所要時間:約 5 分で読めます



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クトゥルー神話 クトゥルフ神話 ナラトース ナラトゥース narrathoth ロバート・シルヴァーバーグ クトゥルーの眷属



「ナラトースの眠りを乱す性急なるものは誰ぞ」




ナラトース(Narrathoth)はクトゥルフ神話の神性の一柱。
宇宙の戸口に潜むものの1人である。


【概要】

ナラトースはロバート・シルヴァーバーグにより執筆された「クトゥルーの眷属」(『クトゥルー10』収)にて初めて言及される。


………そしてそれ以外の言及は極めて少ない。
確かにクトゥルー神話の神性は名前だけが言及される者や、詳細の分からない曖昧な者も少なくない。
しかしナラトースに関しては

  • 短編とはいえ主題となる神性である。
  • 外見、召喚方法、能力などが詳細に描写されている。
  • 実際に召喚され人間と交流までしている。

と、かなり特徴の掴みやすい描かれ方をしているのだ。
ましてや『クトゥルー』(青山社)といえば当神話を知る上で必読とも言うべき基本のシリーズと言えるだろう。では何故そこまで言及が少ないのか…?その点も本項を読めば納得できるかもしれない。


なおその性質上、当項目では「クトゥルーの眷属」のあらすじも紹介していく。


【出自/外見/能力】


ナラトースはネクロノミコンにその存在が語られており、オラウス・ウォルミウスのラテン語版からの翻訳にも召喚方法を含めた詳細な記述が残されている。
そして本人が語った所によれば、遥か永劫の太古に大いなるクトゥルーが世界を支配したときの仲間であるとの事。召喚されていない時は外世界の闇で眠りに就いている。


その外見は「人間よりも大きく、全身が真っ白で忌まわしく、ぞっとするほど膨れ上がった頭に三つに割れた単眼が有り、それが憎しみに燃えている。全身がざらざらとした鱗に覆われ、長年を生きた生物の悪臭を放つ」と描写されている。
悍ましい姿ではあるが、直視しただけで狂気に陥る神性もザラに居るクトゥルー界隈ではマシなほうかもしれない。


ネクロノミコンには「ナラトースを支配する者は世界の富に近づける」と記述されている。
作中では時間と空間の繊維からあらゆる物を作り出し、召喚者の望む情報を与えていた。


【召喚方法】

ネクロノミコンにも
「最も軽きはナラトースの眠りにして…」
「ナラトースを目覚めさせるは術に未熟なる者にも可能なり」
と書かれる程で、その召喚は非常に容易。


必要な物品は女物の下着や牡猫の血を含む1ダースほどであり、その2つの入手だけが懸念されていた事から、墓の中から持ち出した冒涜的な何かであるとか、厳かな霊薬であるとかは一切必要ないものと思われる。


必要なものを揃え、チョークで五芒星と円を描き、以下のだいぶ雑な一節を含む呪文を唱えることで召喚が行われる。


ふんぐるい・むぐうなふ・くとぅるふ・るるいえ・うがふなぐる・ふたぐん。
いあ、いあ、しゅぶ・にぐらす。ならとーす、ならとーす、ならとーす。


また、召喚後に適切な呪文を唱えることでナラトースは召喚師に危害を加えることはできなくなる。


【作中での活躍】

ミスカトニック大学附属図書館の整理係を務める17歳の青年マーティは、上司であるヴォーリスの依頼を受け10ドルで禁断の書物を持ち出す手伝いをすることになった。
しかしマーティはたった10ドルで本を渡すのが馬鹿らしくなり、そのまま家に持ち帰る。
そして予想とは違う下らない内容にがっかりしつつもネクロノミコンを読み進める内に、ナラトースについての記述を見つけ召喚を試みる。


召喚に必要な女性物の下着として同居している伯母(70代目前)のスリップを拝借し、牡猫の血のために裏庭で煩く鳴く猫を捕まえると、彼は召喚の呪文を唱え始めた。
すると空には稲妻が走り、悍ましきナラトースがその姿を現したのだった。


呪文により自身に服従するナラトースにマーティが命じたのは…。
「シャンペンと分厚いステーキを持ってこい」
「踊り子を出してくれ」
「これ(食事の跡)片付けといてくれ」
という即物的極まりないもので、ナラトースも
「わかった、たわけ者め」
「お前の浅はかさは救いがたいが、それはお前の望みなら、われは従うまでだ」
と呆れつつも律儀に叶えてくれるのだった。


その後、十分に食事と踊りを楽しみ、悍ましい話もたくさん聞かせてもらって満足したマーティはナラトースを眠りにつかせる呪文を唱えるのだが…。
何故かナラトースは更に明るく輝き、オゾン臭も強くなる。
そして部屋に飛び込んできたヴォーリスは驚いて叫ぶ、
「このページじゃない。君はヨグ・ソトースを召喚する呪文を読んでいたんだ」


そして窓を突き破って侵入した巨大な触腕に五芒星は破壊され、ナラトースは自由の身となった。
マーティは悍ましき何者かに貪り食われ、後には廃墟と化した二階と完全に狂ってしまったヴォーリスだけが残るのだった。


【余談】

…以上がナラトースの全てである。

  • おばさんのパンツで召喚できる。
  • 呼び出されて要求されたのが食事と踊り子。
  • ツンデレめいた文句を言いつつも律儀に対応してくれる。
  • 「眠いから帰してくれ(意訳)」と頼むも面白い話をせがまれる。
  • マーティが勝手に呪文を間違えただけでナラトースは何も危害を加えていない。
  • そもそも「クトゥルーの眷属」なのに最後に出てきたのがヨグ・ソトース。

と、クトゥルー神話の神性としては非常にへっぽこな親しみやすい神性*1なのだ。


しかしその雰囲気があまりにコズミック・ホラーらしくないためか、出演作は非常に少ない。
分かりやすい属性(ツンデレ/奉仕系)を持っているにもかかわらず、日本において神話生物の擬人化/擬女化(所謂萌えクトゥルフ)が市民権を得てからも言及されることは稀だった。


しかし昨今ではいくつかのゲームにその名前が見られる。
ナラトースの本格的な躍進はこれから始まる…のかもしれない。




追記・修正はWikiはシャンペンとステーキを堪能してからお願いします。

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  • ちょっとアレなのが、召喚に必要なネコの血くらいか。恐らく記述そのままなんだろうけど単眼×3ではなく単眼÷3という表現が気になるな。 -- 名無しさん (2021-04-20 11:28:24)
  • 原作読んでないから詳しくは知らないけど、悪臭漂う悍ましい見た目の化け物相手にステーキだの雑用だのを任せるこの少年も大概おかしくない? -- 名無しさん (2021-04-20 12:34:15)
  • 女性モノの下着が使用済みか否かも問わないなら今の世の中ならコスト軽いな… -- 名無しさん (2021-04-20 12:42:38)
  • 超越的なイメージばかり先行されがちだけど、スミス製の旧支配者筆頭に意外と話通じるというか人間臭い邪神多いのよね ヨグにしても銀の鍵の門を超えてでは別の姿でカーターを案内してる -- 名無しさん (2021-04-20 18:24:24)
  • ナラトゥースの召喚方法初めて考案した奴、どういう経緯で女性の下着なんて入れたんだ……? 別にこいつだけに限らないが、クトゥルフ神話の旧支配者は儀式の成立経緯が全く分からん奴が多い。 -- 名無しさん (2021-04-20 20:08:13)
  • なんやかんや罵倒しながらも受けた命令はきっちりこなしてるあたり、真面目なのか、それとも慣れてるのか…… -- 名無しさん (2021-04-20 20:09:42)
  • ↑(魔法陣で抑えるという部分は必要だが)憎しみに燃えている割には、妙な所で真面目なのかもしれない。あるいはどんな奴でも、願いの内容がどんなものであっても、契約自体は尊重しているのでちゃんと実行するタイプか。 -- 名無しさん (2021-04-20 20:18:12)
  • へっぽこと言うよりむしろまともすぎるんだろうね。仕事はやるし末路も報復とかですらなく単に召喚事故で勝手に死んだだけだし。 -- 名無しさん (2021-04-20 20:30:15)
  • 呪文間違えパターンは、ナラトースとは関係無いけど。別の短編(確かこの作者とは別)だかで裁判官「被害者を冒涜的な死体にしたのはどういう事情があったのですか?」容疑者「ページ間違えて別の呪文唱えちゃったんです・・・」(本来なら旧支配者をお互いの所に行き来さけせるだけの実験のはずが、呪文間違えたせいで片方をSATUGAIしちゃったっていう) -- 名無しさん (2021-04-21 00:01:13)
  • ↑なにそれ気になる。どんなタイトルか教えて。 -- 名無しさん (2021-04-21 02:03:52)
  • ナラトースもヨグヨグも裏で困惑してそうなオチだ -- 名無しさん (2021-04-21 15:31:16)
  • 糖類の名前かと思った -- 名無しさん (2021-04-22 17:47:30)
  • 本当にこの子クトゥルフ様の眷属なんだろうか… -- 名無しさん (2021-06-18 07:27:16)
  • >時間と空間の繊維からあらゆる物を作り出し -- 名無しさん (2021-12-26 19:31:17)
  • ↑ミスった。地味に凄まじいことやってないかこの神…… -- 名無しさん (2021-12-26 19:31:59)

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*1 東雅夫は『クトゥルー神話辞典』において「寓話風」「ランプの魔人のエピソードを彷彿とさせる」と語っている

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