登録日:2010/09/02(木) 01:28:07
更新日:2023/08/10 Thu 14:47:15NEW!
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『Batman: The Dark Knight Returns』は1986年にDCコミックスから出版されたアメコミ(グラフィックノベル)作品。
『Batman: The Dark Knight Returns』#1~#4
発売 1986年2月から
脚本 フランク・ミラー
作画 フランク・ミラー
日本では1998年に小学館集英社プロダクションから邦訳本が発売され、2009年に同じく小学館集英社プロダクションから『バットマン:ダークナイト・ストライクス・アゲイン』を同時収録した邦訳本が発売されている。
アニメ化されており2012年にPart1が2013年にPart2が発売された(バットマンを演じるのは『ロボコップ』のピーター・ウェラー)。
それまで、あくまで子供向けの読み物と考えられていたコミックスの世界に極めてリアルな視点によるドラマを持ち込み、以降のアメリカン・コミックスの有り方に一石を投じる契機となった、コミックス史上でも特に重要な位置を占める作品であり、翌年に発表されたアラン・ムーアの『ウォッチメン』と共に現在に於てもアメコミ史上最高傑作との評価を不動の物としている。
その影響力は、コミックス界のみならず映画や、その他のメディアにも派生しており、89年の映画『バットマン』は本作から始まるムーブメントにより製作された作品である。
更に、一度それまでの設定をリセットされて製作された05年の『バットマン ビギンズ』続編である08年の『ダークナイト』は更に本作の影響が強く、特にビギンズは翌年に発表された姉妹編『バットマン:イヤーワン』を事実上の原作とする事で知られている。
1939年に誕生したバットマンの外伝的作品であり、発表当時からおよそ20年後と想定された近未来を舞台とする。
結果、冷戦真っ只中にあった当時の世相を反映した米ソ二大大国(当時、ソ連の崩壊を予測出来た人間は居なかった)の緊張が極限まで高まった世界大戦間近と云う設定下にあり、更にそこに生きる人々は異常気象や犯罪発生率の増加に脅かされる等、作品全体が黙示的な終末思想のはびこる世界観に支配されており、かつてのヒーロー達もまた、時代と共にその役目を終え姿を消した世界とされている。
本作は、タイトル通りその末世の世界に於けるバットマンの帰還と最後の戦い(まさかの続編があるけど…)を通しヒーローとは何か!?……を、読者に問う漢の物語である。
また、全編を通してフランク・ミラー独自のシニカルな視点で描かれているのが特徴で、最終的にバットマンと対峙する事になる合衆国政府が非常にリアリティーのある風刺により描写されている。
【物語】
かつて、ゴッサムの闇を支配したスーパーヒーロー“バットマン”こと、ブルース・ウェイン……10年前に引退した彼は、現在ではカーレースやワインに没頭することにより、戦士としての使命から逃れようとしていた。
しかしある夜、現在のゴッサムを恐怖で支配するギャング集団ミュータント団に襲われた彼は、自分の使命が未だ終わっていない事を知るのだった。
……そして、かつて自らに啓示を与えた蝙蝠の姿をした古代の獣神との邂逅によりブルースはバットマンとして復活。
犯罪者に対する苛烈な攻撃を開始する。
……僅かの賛同者を得るも、政府の方針により既に社会から追放されていた“スーパーヒーロー”の復活は多くの人々は受け入れらず、バットマンは危険視されて識者も世論を煽るのだった。
しかし、復活したバットマンにより着実にゴッサムの闇は払拭されていき、暴虐を誇っていたミュータント団も壊滅に追い込まれる。
……政府からの直々の忠告を旧友より受けつつも、自らに呼応するように同じく復活した、かつての最大の宿敵との決着をバットマンが付けた頃、遂に一線を超えたソ連は合衆国に対して核攻撃を行ってしまう。
米国の“最大の抑止力”によって、本国へのミサイル到達は回避したものの、砂漠で炸裂した新型核ミサイルの電磁パルスの嵐の影響に晒された米国でも電気の供給が途絶え、ゴッサム・シティも闇に包まれる。
恐慌にかられた市民により混乱の中に陥った無秩序状態のゴッサムを制し、市民に秩序を取り戻したバットマン……。
しかし、安心したのも束の間、
核の冬が続く中で、救世主として新たな秩序を生みつつあったバットマンの存在を快く思わない政府による、バットマン捕獲作戦が開始されようとしていた…。
【登場人物】
- バットマン(ブルース・ウェイン)
55歳。
かつて、バットマンとして悪と戦った億万長者。
10年前に引退していたが、ミュータント団との出会いにより復活を決意する。
加齢とブランクにより全盛期からは見る影もなく力は落ちているが、長年の戦いにより得た経験と戦士としての本能に突き動かされて決断的な行動を見せる。
その行動は、やがてはモラルの捨て去られていた時代に大きな変化を起こすことになるも、新たなる秩序は、支配者(政府)にとっては都合の悪いことであった……。
悪に対して苛烈な攻撃を見せる、冷酷なバットマンの姿は本作以降の物である。
最終決戦では強化装甲服に身を包みスーパーマンに挑んでおり、このシチュエーションは現在までの“バットマンvsスーパーマン”の究極の構図として、幾度もオマージュを捧げられている。
- スーパーマン(クラーク・ケント/カル=エル)
55歳。
地球最強のスーパーヒーローで、バットマンとは旧友。
かつての仲間達が姿を消す中、政府の管理下に入る事で活動を続ける合衆国最大の抑止力。
…しかし、そのことを許せないブルースからは理解を得られないままに互いに年齢を重ねてきた。
戦力に決定的な不均衡をもたらす彼の存在が作中でソ連に一線を越えさせる契機になったのは皮肉である。
終盤、バットマンの捕獲を政府により命じられるが…。
地上に繋がれた《神》と評される。
- ロビン(キャリー・ケリー)
13歳。
本作独自の女の子ロビン。(だった)
バットマンに命を救われた事を契機に2週間分の昼食代を費やしてコスチュームを製作。
自ら志願してやって来た押しかけパートナーだが、なかなかに有能な才気溢れる少女。
- アルフレッド・ペニーワース
95歳。
ウェイン家の執事。
もはや歩くこともままならない程の高齢となったが、得意の皮肉は更に切れ味を増している。
最後の刻まで主人に付き従う。
(本名、年齢不詳)
バットマン最大の宿敵。
道化師の様な姿をした狂人で、自らを悪の道に追いやった世界を憎んでいる。
バットマンの引退後は完全に正気を失い、大人しくアーカムに収容されていたが、バットマンの帰還と共に正気を取り戻す。
「バババ……バババ……ババババットマン……ダーリン」
そして、反バットマンを掲げる主治医の功名心を利用して解放され、いきなりの大量虐殺により復活を遂げた。
バットマンとの再戦に於て、彼に殺される(折られた首を最後に自ら完全に折った)事でバットマンを更なる窮地に陥れ様とする等、そのジョークは最期の時まで徹底している。
- トゥーフェイス(ハービー・デント)
58歳。
かつてのバットマンの宿敵の一人。
元、ゴッサム地方検事だが顔の半分を焼かれた事で狂気に捉われ犯罪者となった。
物語の冒頭で、遂に顔面の完全な治療に成功するが…。
- キャットウーマン(セリーナ・カイル)
52歳。
バットマンの宿敵であった女怪盗。
現在は引退しコンパニオン派遣会社を経営しているが、バットマンへの想いを断ち切れず酒に逃げた結果、かつての美貌は見る影も無くなってしまっている。
計らずも、ジョーカーの復活に利用されてしまう事に…。
- ジェームズ・ゴードン
70歳。
長らくゴッサム市警本部長の座にあるベテラン警官だが、かつては盟友関係にあったバットマンの復活と、それによる暴虐の責任を取らされる形で勇退を余儀なくされる。
本作ではバットマン=ブルースと気付いていた事になっており。ブルースとは酒を飲み交わす等、まともな友人として付き合っていた。
- エレン・インデル
35歳。
ゴードンの後を継いで市警本部長の座に着いた、若いながらも有能な女性警察官。
バットマンの逮捕を公約に掲げるが、最後は器の違いを思い知らされる事になる。
絵柄にクセがあるからだが、眼鏡美人なのだと思われる。
- グリーンアロー(オリバー・クイーン)
63歳。
特殊能力は持たないものの、弓を武器にする“かつて”のスーパーヒーローの一人。
元は億万長者だったが共産主義者に転じた偏屈者。
ブルースの友人で、片腕は失われた物の腕前は健在。
スーパーマンとの最終決戦をサポートする。
本作の影響からか、グリーンアローは以降のDCコミックスでの活躍や、アニメ等でバットマンの相棒としての活躍が増えていった。
- 大統領
(本名・年齢不詳)
恐らくは当時の合衆国大統領ロナルド・レー○ンその人。
ガチガチの保守派というか国粋主義者で、正義の名の下に無茶苦茶をやる人。その覇権主義により世界に混乱をもたらす、ある意味一番悪い人。
合衆国大統領は2期8年しか務められない筈だが彼ならやりかねない…と、記述される等、
正義の合衆国の傲慢と矛盾を象徴する人物。
- ミュータント団
ゴッサム・シティを恐怖で支配するギャング集団。
メンバーは十代の少年が殆どで、お向かいのミュータント団リーダーの様なバイザーが共通のトレードマーク。
“ミュータント”というのは、あくまでも自称に過ぎず、大半は無軌道な若年ギャング(半グレ)達だが、
カリスマ的な影響力を持つリーダーのみは本当にその可能性もある怪力と巨体の持ち主。
リーダーは圧倒的な身体能力差でバットマンを一度は退けるも、再戦に於て老獪な攻めを見せたバットマンによりリーダーは手足の全てをへし折られる等、メンバーの眼前で再起不能にさせられ、チームは崩壊。
後に分派のバットマンの息子と共にバットマンの軍門に下る。 なお彼らはドラマゴッサムにも登場している。
- バットマンの息子
ミュータント団の分派。
暴力でゴッサムを支配していたリーダーを更なる更なる暴力で破ったバットマンを崇拝する私刑集団で、犯罪者に対してミュータント団だった頃の暴力性向が転じただけの過激な制裁を加えていた。
蝙蝠のペイントがトレードマーク。
核の冬の到来の際にバットマンの軍門に下り、真のバットマンの息子となり市民を助ける。
【余談】
本作の成功により、フランク・ミラーは現代最高のライターとしての地位を確立した。
この作品以降、如何なる超自然的存在と絡んでもバットマンに負けフラグが立たなくなった。
スーパーマンをも超えるバットマンのカリスマ性を決定付けた作品と言える。
本作中で、当時の現役ロビンであったジェイソンの名前やコスチュームについて不幸な出来事があったとも取れる描写があり、このことが後のジェイソンの死を決める読者投票に大きな影響を与えたと言われる。
『バットマン:ジ・アニメイテッドシリーズ』の「ダークナイトの伝説(Legends of The Dark Knight)」という回では、
バットマンに憧れる子供たちの空想という形式で、ミュータント団リーダーとの殴り合いが再現された
(OVA『バットマン:ゴッサムナイト』の特典映像に収録)。
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- 文字化けしてんな -- 名無しさん (2013-12-12 14:33:35)
- 後になってネットの評価だとか解説だとか見た後に読み返してみたら名作だと思えたけど、最初読んだときは読みづらいし、意味が分かんなかったりで正直いまいちだった。なんでバットマンとスーパーマン戦ってるのか本当に分かんなかった。 -- 名無しさん (2016-04-09 15:19:03)
- 個人的に名作ではあるけど、話がわからなかった当時の幼い俺はアーマー着たバットマンカッケェで十分楽しんだな -- 名無しさん (2016-04-16 01:40:08)
- シビル・ウォーも本作の対立構造にクロスオーバーを落とし込んだものだし、30年前のコミックにも関わらず影響力は絶大だな。 -- 名無しさん (2016-04-24 11:30:51)
- 確かに最初読んだ時は名作なのかこれ?ってなった。でもアニメで見直したら本当に面白かったよ -- 名無しさん (2016-04-27 23:42:03)
- アニメで見たが素晴らしいスーパーマンが好きになったよ逆に -- 名無しさん (2016-08-12 14:59:18)
- ↑ちょっと解釈が違ってる部分もあるので、アニメを気に入ったら原作も読んでみて欲しい。アニメも素晴らしかったが、欲を言えばモノローグまで再現して欲しかった。 -- 名無しさん (2016-08-12 17:15:01)
- 原作が読みにくい分、アニメはスッキリしてて面白い。何より歳くったバッツの渋さと正義に憑りつかれた生き様に痺れる。 -- 名無しさん (2016-10-11 13:37:32)
- フランク・ミラーの心理描写はアメコミライターの中でも群を抜いてる。 アラン・ムーアもそうだけど、トップライターは文章のセンスが素晴らしい。 そこが画力重視の日本の漫画と文化的な違いがハッキリと表れてる。 -- 名無しさん (2020-01-25 11:11:08)
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