登録日:2010/12/24 (金) 19:03:56
更新日:2023/09/28 Thu 13:17:13NEW!
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I hear always the admonishment of my friend
私は我が友の忠告を常に聞く
“Bolt her in, and constrain her!”
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」
But who will watch the watchmen?
しかし、誰が見張りを見張るのか?
アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画のアメリカンコミック。2009年に映画化もされた。
“ヒーローが現実に存在した架空の歴史”、いわゆるパラレルワールドを舞台にしており、主にアメリカの1960年代〜80年代を舞台としているが、現実の歴史との類似(相違)点が各所に見られており、
史実ではベトナム戦争ではアメリカが敗北しているが、本作では「ウォッチメン」のメンバーを戦争に参加させた結果、アメリカが勝利するといった点など。
特にスーパーヒーローが国家の道具として扱われるという展開は後の作品にも共通するようなテーマでもあろう。
日本においてもファンは多く、伊藤ヒロの小説『魔法少女禁止法』はまんま本作(とマーベルの『シビル・ウォー』)のパロディである。
.┓あらすじ┏.
1930年代、マフィアやギャングの間で覆面が流行した。素顔が割れず、逮捕されてもすぐに釈放されるからである。
ある一人の男が「ならば同じ事をしよう」と覆面を被り、法を越えた犯罪との闘いを開始した。ヒーローの始まりである。
彼の行動は人々の知るところとなり、絶大な支持を得た。人々は次々に覆面を被り、自らもヒーローとして自警活動を開始。自警集団「ミニッツメン」が結成された。
しかし時代の流れの中で、メンバーの死亡や引退により、ミニッツメンは解散する。
その後、彼らの志を継いだ6人のヒーローにより、「ウォッチメン」が結成されるも、覆面使用者の自警活動を禁止するキーン条例によって、政府が認可したヒーロー以外は引退に追い込まれた。
1985年10月、政府諜報員として活動していたヒーローの「コメディアン」ことエドワード・ブレイクが死んだ。
違法に活動していたヒーローのロールシャッハは、独自にブレイク殺害事件を調査し、これを何者かによるヒーロー狩りと断定する。
強迫観念に駆られた彼は、今や引退して、それぞれの生活を営んでいるかつての同僚達に警告するも、協力は得られない。
しかし、それでもなおたった一人で突き進んでいくロールシャッハの行動は、多くの人間を巻き込み、波紋を広げ、 やがて世界全体の運命を握る恐るべき陰謀と真実、恐怖に迫っていく事になるのだが……。
.┓登場人物┏.
【ウォッチメン】
▼ロールシャッハ/ウォルター・ジョセフ・コバックス
この物語の語り手。キーン条例施行後も違法に活動を続けているヒーロー。
ボロボロのトレンチコートとソフト帽、白地に流動する黒の模様が浮かんだ覆面を着用。
コードネームはこの模様がロールシャッハテストの図像のように見える為。
覆面は黒いインクを超高密度の薄い2枚のゴムで挟み込んだ特殊な生地で出来ており、体温や筋肉の動きにより模様が変化するのが特徴。
かつてはダニエルと共に犯罪者と闘う善良なヒーローであったが、ある事件をきっかけに悪人には一切容赦しない男になった。
ダニエルとは、今でも奇妙な友情が続いている。
▼ナイトオウルⅡ世/ダニエル・ドライバーグ
ミニッツメン創始者であるナイトオウルの座を本人から継いだ男。父親の遺産を元手に装備を整え、悪党に立ち向かう。
現在はキーン条例によって引退しており、平穏な生活を送っているが、ヒーローだった頃の情熱を忘れられずにいる。
▼Dr.マンハッタン/ジョナサン・オスターマン
キーン条例施行後も活動を許されたヒーロー。核実験に巻き込まれた結果、あらゆる原子を操作できる能力を得た世界唯一の超人にして、神に匹敵する力を持つ世界最強の存在。
その力の強大さから、『歩く核抑止力』の異名を持つ。なんと全裸。
▼オジマンディアス/エイドリアン・ヴェイト
キーン条例施行以前に正体を公表し、人気を保ったまま引退したヒーロー。その知名度を生かし企業を立ち上げ、今では巨万の富を持つ大富豪に。
Dr.マンハッタンの発明した品々を実用化し、アメリカの発展に努めている。
▼シルク・スペクターⅡ/ローレル・ジェーン・ジュスペクツィク
ミニッツメンの一員、シルク・スペクターことサリー・ジュピターの娘。彼女からヒーローの座を継いだが、現在はキーン条例によって引退している。
Dr.マンハッタンと恋人関係にあるが、人間離れしていく彼を受け入れられず、関係は悪化している。
▼コメディアン/エドワード・モーガン・ブレイク
キーン条例施行後も活動を許されたもう一人のヒーロー。ミニッツメン、ウォッチメンの両方に参加していた唯一のメンバー。物語の冒頭で、何者かに殺害される。
およそヒーローとは思えないほどの過激で暴力的な人物で、その姿はあらゆる人物に大きな影響を与えた。
……そして、世界の真実に逸早く気付いた(気付いていた)男でもある。
【ミニッツメン】
▼フーデッド・ジャスティス
世界で最初のヒーロー。
ミニッツメンの一員だったが、50年代半ばに失踪(死亡)しており、その陰にはコメディアンが関わっているとも言われる。
その正体は、公式では不明のまま。
▼初代ナイトオウル/ホリス・メイソン
警官であったが、フーデッド・ジャスティスの登場を受けてヒーローになる事を決意した。
映画版では、ミニッツメンの全員がフーデッド・ジャスティスに触発されてヒーローになった設定となっている。
Dr.マンハッタンの登場と時代の変化を感じ引退、老境に差し掛かった現在では自動車修理工場を営む一方でダンとの交流を深めているようだ。
引退後に記した自伝『仮面の下で』は、原作に挿入された資料の中でも特に重要な位置を占める。
▼初代シルク・スペクター/サリー・ジュピター
フーデッド・ジャスティスに憧れ、彼に近付くべくヒーローとなった。
セックスシンボルとしても知られ、その人気は年代物のポルノ漫画の題材になったほど。
その一方で過去の栄光にすがる一面もあり、娘とはヒーローになる事を強要した件を始めとした数々の軋轢でやや疎遠となっている。
かつてコメディアンことエドワード・ブレイクにレイプされかけた経験があり、この事は半世紀近くが過ぎた現在でもスキャンダルとして扱われている。
▼キャプテン・メトロポリス/ネルソン・ガードナー
ミニッツメン時代から活躍するベテランヒーローで表の職業は軍人。
クライムバスターズ(後のウォッチメン)の結成を提唱した一人でもある。
1974年に交通事故で死亡。
▼ダラー・ビル/ビル・ブラディ
元はカンザスの花形スポーツ選手で、善良な性格。大手の銀行に雇われ専属のヒーローとなった。
回転ドアにマントが挟まり、動けなくなった所を射殺されると云う末路を迎える。
▼モスマン/バイロン・ルイス
その名の通り蛾をモチーフとするコスチュームを纏っていた。
精神を病み、1962年にメイン州の精神病院に収容される。
▼シルエット/ウルスラ・ザント
ボブカット、黒いコスチュームの女性ヒーロー。
レズビアンである事を公表していたが、世間には受け入れられず、引退させられた上に仇敵達によりパートナー共々殺害される。
死後、その遺体は辱めを受けていたらしい。
【その他】
▼ローレンス・シュクスナイダー
初代シルク・スペクターのマネージャーで、1947年に彼女と結婚するも1956年には離婚している。
▼モーロック/エドガー・ウィリアム・ジャコビ
かつては裏社会で名を馳せた悪党だったが、現在は改心。癌と戦いつつ静かな余生を送っている。
ある意味、劇中で一番不遇な人物。
▼ビッグフィギュア
本名不詳。
ロールシャッハとナイトオウルⅡ世のコンビに投獄されたギャングのボス。名前に反して小人症。
ロールシャッハへの復讐を企むが……。
▼ジェイニー・スレーター
Dr.マンハッタンの元恋人。
▼ダグ・ロス
ノヴァ・エクスプレスの記者。
▼マルコム・ロング
ロールシャッハ担当の精神科医。
映画ではチョイ役だが、原作では非常に重要な役回りにある。
▼スティーブ・ファイン、ジョー・ボークン
ニューヨーク市警の刑事。ちょくちょく出て来る。
▼リチャード・ニクソン
第37代合衆国大統領。
タカ派の代表格として知られ、正負の評価を一身に受ける人物。
現実ではウォーターゲート事件の疑惑を追及された事により、任期の途中で退陣した唯一の大統領なのだが、
作中ではベトナム戦争の勝利を呼び込んだ事やその後の反対意見の封殺により、5期目の当選を果たす等、合衆国を意のままにしている。
▼ジェラルド・フォード、ヘンリー・キッシンジャー、ゴードン・リディ
ニクソン政権の重要人物。気になったらググれ。
▼リー・アイアコッカ
映画で社長に責められてた米経済界の伝説的人物。
特にアメ車好きには有名な人物でもあるので、気になる人はこちらもググれ。
.┓原作終了後の展開┏.
1988年の『Question Vol.1』#17においてウォッチメンのコミックが登場。
それを読んだクエスチョンがロールシャッハに影響を受ける姿が描かれた。
2009年に『300 -スリーハンドレッド-』のザック・スナイダー監督で実写映画化。
それに合わせてゲーム化や劇中コミック『黒の船~海賊船ブラック・フレイターの物語』のアニメ化が行われた。
なお、アメリカ本国では映画本編に約24分の未公開シーンを追加したディレクターズ・カット版、
及びディレクターズ・カット版に上記のアニメ作品『黒の船』を要所要所に挿入したアルティメット・カット版が発売されている。
日本では長いこと劇場公開版のみがリリースされていたが、映画公開から丁度10年目となる2019年にディレクターズ・カット版をすっ飛ばしてアルティメット・カット版が発売された。
もっとも、原作者のアラン・ムーアは映画化には猛反対しており、許可を出した版元のDCコミックスとの間に深い遺恨を残すこととなった。
2012年に登場人物の過去を描いたシリーズ『Before Watchmen Vol.1』が発売。
豪華クリエイターで展開された。
2016年の『DCユニバース:リバース』でDr.マンハッタンや象徴的なボタンが登場。
その後、様々なコミックでDr.マンハッタンの存在をにおわせていた。
2017年に『ドゥームズデイ・クロック』がスタート。日本では2020年に邦訳版が刊行された。
ウォッチメンのその後が『DCユニバース』を舞台に描かれた。
2019年にHBOで実写ドラマ化。原作のテーマを新たな角度で描いた。
翌20年にはドラマと同じ世界で繰り広げられる外伝作『ロールシャッハ』刊行。
「私は正しい追記・修正をしたのだろうか。それが最後にはうまくいくように」
最後には?
何も最後ではないぞ、エイドリアン
何事にも最後などないのだ
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▷ コメント欄
- 映画の改変って評判いいけど大分解釈が違ってくるよね -- 名無しさん (2016-03-21 23:01:35)
- ↑今まで自分達が散々拝んでたもんが敵になった!だからね。原作に比べて合衆国への風当たりが強くなりそうな気はする。 -- 名無しさん (2016-04-04 21:20:08)
- 映画見た......ロールシャッハすげぇ -- 名無しさん (2016-10-21 15:29:45)
- クッソ好きなんで、日本でも完全版頼みます… -- 名無しさん (2016-10-31 18:37:14)
- DCユニバースリバース楽しみだわ -- 名無しさん (2017-02-14 01:18:42)
- 「僕のヒーローアカデミア」に一番影響を与えているのは実はコレだと思う -- 名無しさん (2019-02-19 23:10:10)
- ドラマ楽しみやわあ -- 名無しさん (2019-09-11 10:37:37)
- 最近の作品だと「共通の大敵が出たからって人類協力しあったりしないよ。国同士で責任擦り付け合うし少しでも有利な位置に立とうと醜い身内争いするよ」って感じのノリが増えたけど、何とは言わんが現実もそんな感じなんだなぁと -- 名無しさん (2020-04-15 13:56:40)
- それ最近じゃなくて昔からだぞ。内部抗争のない組織が出てくる作品なんて聞いたことない。SW、スタートレック、コードギアス、ガンダム、ワンピースと挙げればキリがないほど。 -- 名無しさん (2021-02-11 14:49:40)
- 「人外が敵の作品で人間同士の争いになることがおかしい」って意見を良く見るけど、"天敵が現れた瞬間に人間同士では絶対に争わなくなる"ってことは論理的に有り得ない。人間は初めからそうプログラムされているロボットや価値観の統一された種族ではないから、全員が同じ考え・行動を取るとは限らない -- 名無しさん (2021-04-07 11:02:19)
- ↑ 現実はパシフィックリムにもバイオハザードにもなれない、今の世がそう証明している -- 名無しさん (2021-07-17 01:04:11)
- ロールシャッハの精神とマンハッタンの能力を抱き合わせたらちょうどいいんだなぁ -- 名無しさん (2021-08-07 15:20:49)
- しかし、誰が見張りを見張るのか? という問いかけに対して「スーパーマンのような完璧超人を見張る必要なんてないやん!」という答えを出してしまった続編ドゥームズデイクロックェ…… -- 名無しさん (2021-08-23 14:19:52)
- 作者はDCと完全に断絶状態だから関連商品は全部二次創作であることに注意しないと。 -- 名無しさん (2022-11-10 19:47:29)
- 本作の世界観における2020年を描いたロールシャッハの表題作が最近邦訳されたけど、ドゥームズデイクロックとはまた別の世界線なのかしら -- 名無しさん (2023-01-29 18:51:59)
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