ウイルスはすべて敵なのか

ページ名:ウイルスはすべて敵なのか

最近コロナウイルスが流行っている、といっても沈静化してきたのかどうか知らないが最近は緊急事態宣言も解除されたりして”流行っていた”というべきかもしれない。

 

多くの人々は「ウイルス=敵」の構図があり、ウイルスというものは我々人類の敵であると無条件に思っているように見える。

もちろん人を殺してしまったり苦痛を与えるコロナウイルスのようなウイルスは敵というべきだろうが、すべてではない。少し学のある人なら当たり前の話だが、知らない人が多く思えたため一応言っておく。

菌=敵の構図を持っている人はめったに見ない。ヨーグルトや納豆など生活に溶け込みすぎてあるからなのだろうが、ウイルスにおいてはことさらに「人類VSウイルス」とかいう過剰な表現がよく用いられ不思議である。

この記事を読めば、ウイルスと人間は基本的には共生関係であるという構図に変わるだろう。

そう変わっていただけることを望む。

 

さて、実は知られてないだけでむしろ菌くらいウイルスも身近なのである。

身近と言うか、もしウイルスがいなければ私たちは生まれてきていない。

実はウイルスの作ったゆりかごの中で私たちは成長して来たのだ。

 

私たちは父親と母親から生まれている。

母親に父親の精子を渡し、受精卵を母親のおなかの中で育てる。

この時注意してほしいのが、この「子供」は母親にとっては半分他人であることである。

我々には免疫システムという素晴らしいシステムがある。

つまり、自分自身以外は徹底的に排除しようとするのである。

そうなると、母親の遺伝子を半分しか持っていない子供は他人とみなされ、排除されてしまう。当たり前の話だ。

しかし実際はそうはならない。哺乳動物には”胎盤”があり、この胎盤を仲介して物質の交換を行うことによって、母体と子供とは言ってみれば”切り離されて”育てられるのだ。

 

しかし、自分じゃないものと物質交換をするには特別な膜を使わなければならない。

明らかにその膜はあるのに、なんでそれができるのかは2000年くらいのごく最近までわかっておらず、人体の不思議とされてきた。

 

実はこの胎盤を作っているのは「内在性レトロウイルス」というウイルス遺伝子だったのだ。なーんだ遺伝子であってウイルスではないじゃん。と言われそうだが、この内在性レトロウイルスは過去に感染したウイルスで、このウイルス遺伝子が元の遺伝子に取り込まれることによってこれらの機能を果たしている。

 

この内在性レトロウイルスは人のゲノムの8%も存在して、さらに判明しているだけでも我々人間の34%のDNAはウイルス由来なのだ。

 

現在では、生物の進化においてウイルス感染は原動力の一つとされている。

我々についていえば、哺乳動物の誕生は外からのレトロウイルスの感染が原動力となったと言える。

 

これだけでウイルスをいいやつだというな!という反論がありそうだが、病原性大腸菌O157の発生や、攻撃するミツバチの誕生もウイルス感染によるものだとわかっている。

 

進化というのはウイルスだけじゃなく様々な要因がある。そういう要因の積み重ねによる種の誕生、そこから絶滅したりしなかったり…などを経て我々がここに存在するのである。

 

大げさに言えば、ウイルス感染無くして我々は次に進めないのだ。

 

ウイルスの炭素量は75億トン、人間の炭素量はたったの4億トンで、世の中には信じられないほど大量のウイルスが存在する。

ウイルスはその数の多さによって感染し、新しい遺伝情報を持ったウイルスを作り、増やす。

我々はこの数から逃れられない(新薬を作ってもウイルスの量はけた違いなので必ず突然変異が起こる)から、ウイルスと共生しなければどうにもならないのだ。

 

ウイルスと生物の共生関係は5000万年とかよりももっと前からの歴史であって奥が深い。

もし、「新人類」が生まれるとしたら人工知能によるものなのか、それともウイルス?

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