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『バオー来訪者』(バオーらいほうしゃ)は、荒木飛呂彦による日本の少年向け漫画、およびそれを原作とするOVA作品。集英社の少年向け漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)に1984年45号から1985年11号まで17話が連載された。単行本は全2巻。
主人公は、生物兵器「バオー」へと改造された青年「橋沢育朗」と予知能力を持つ少女「スミレ」の2人。バオーの超人的能力を狙う、政府系の秘密組織「ドレス」からの逃避行を中心に、2人の成長と相思を綴った物語。
テンプレート:ネタバレ
「バオー(BAOH)」とは変身した育朗を指す言葉ではなく、正確には彼の体内に宿する40mmほどの寄生虫の名称である。バオーの宿主はヒトである必要はなく、作中では育朗以外にもバオーが寄生したイヌが登場している。この生物を生み出した霞の目博士の弁によれば、バオーを自由に利用することが可能になれば「ドレス」は医学及び軍事的な面で世界的優位に立てるという。バオーという名前は、作者によると当時話題となっていたバイオテクノロジーなどの「バイオ」から来ており[1]、Biological Armament On Help(生物による武装援助)の略というのは『ファンロード』の一コーナーに載ったファンの創作である。バオーは宿主の肉体へ進入したのち脳(動脈の中)に寄生し、寄生した日数にしたがって宿主に対する影響力を強めていく。百数十日で成虫になると宿主に産卵、孵った幼虫は宿主の身体をつき破り、新たな宿主へ寄生する(この設定はOVAでは排除されている)。また宿主の肺呼吸が停止すると仮死状態となり、その場合宿主の肉体は再び目覚めるまで老化することはない。
宿主が生命の危機に瀕すると、体内に分泌されたアドレナリンをバオーが感知し、宿主の精神を無力化させてその支配下におく(ただし、劇中では育朗が戦っている自分を次第に知覚していくようになる描写がある)。次に、血管を使い宿主の全身に分泌液をめぐらせ、宿主の骨・筋肉・腱を何倍にも強化し、強靭な肉体とさまざまな特殊能力を付与する。「ドレス」では、この変身を「バオー武装現象(アームド・フェノメノン)」と称している(詳細は後述)。寄生している日数が進むにしたがって、段階を踏んで徐々に武装現象を発現させていく。
武装現象中のバオーは、宿主の頭部に独自の「触覚」を発現させ、これにより視覚・聴覚・嗅覚などの全感覚をまかなう[2]。バオーは対象をすべて「におい」で感知しており、自身が嫌悪する敵意や悪意などの負の感情が持つ「におい」を放つ者を攻撃対象として認識している。また、これにより攻撃目標として認識された者を無力化することはバオーにとって「においを止める」行為に過ぎない。またそのにおいもいくつかにわけ理解しており「生きることを止められた者の悲しいにおい」、「邪悪なにおい」などを嗅ぎわけ、とりわけバオーが嫌いなのはドレスの刺客たちの「邪悪なにおい」である。また戦闘を通じて敵味方の区別をにおいから学ぶ学習能力も備え、味方を守ったりなどの行動をとり、生物としての進化を遂げていく。
また、武装現象の発現中は「バル」「バルバルバルバル」「ウォォォーーム」といった鳴き声(作中では主に咆吼として表現されている)のみを発し、宿主本来の音声・言語を発音することは基本的に無い。作中「バオーは泣くことが出来ない」といった旨の解説があることから、表情の変化や言葉による感情表現が武装現象の発現によって失われているものと思われる。ただし育朗がバオーの能力を自らの意思で制御できるようになった物語終盤には、武装現象発現中に瞳が現れたり、テレパシーのような言葉を発していると思しき描写がある。
なお、寄生虫バオーは霞の目博士が作り出した生物兵器であるが、劇中後半に変身もせずにバオーの能力が使えたり、攻撃を受け傷ついてもいないのに宿主の意思でバオーに変身したり、変身後に育朗の意識で行動し、しゃべったりと、人間である宿主の育朗がバオーを自在に操作できている。この段階ですでに生み出した親であるドレスに逆らい、歯向かう可能性を多分に持ち、使われる兵器ではなくなっている。寄生虫バオーは高度な知性と人格を持つ人間には無理がありすぎ、人に寄生させる人体実験である今回の霞の目博士の研究実験は、最初の段階から失敗してしまっている。
バオーは宿主の危険を察知すると、宿主の意識・肉体を一時的に支配し、危険から身を守るため宿主に武装現象(バオー・アームド・フェノメノン)を発現させる。武装現象の表記は劇中で一定していない。これらは「高い格調・強烈な描写・長くて覚えにくい名前」ということで、連載当時よく他のマンガなどのネタに使われた。なお、これらの特殊能力や武器は、後年の『ジョジョの奇妙な冒険』に再登場するものが多い。主な能力は以下の通りで、いわゆる必殺技である。
OVAではこうした武装現象名を育朗が叫ぶことはなく、その多くは字幕で処理されている。
バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン体外に排出されると強力な酸に変わる体液を、主に掌から放出して金属などを溶解することができる。作中の解説では、強力な酸によって自らの体組織も溶解しているが、酸を出すと同時に特殊なカスを作り出しており、このカスが新たな皮膚となって溶解部分を再生するため、事実上ダメージは無いとされている。バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン前腕側部の皮膚組織を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする。「セイバー オフ!」の掛け声で切り離して飛ばすことも可能。OVAでは掛け声なしで切り離している。バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン毛髪を硬質化して射出する。標的に刺さり、体温の伝導などで一定温度に達すると発火する。連載時はかなりの確率で誤植された。バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン体細胞から発生される電気を直列にして放出する。デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なため、60000ボルトの高圧電流となる。その他、治癒能力・代謝能力の活性化や体液の変質などにより、宿主の体の一部が切断されても貼り合わせるだけで元通りに接合したり、瀕死の生物に血を飲ませることでその命を救うことができるようになる。
OVAに登場したキャラクターは、声優も併せて記載している。
霞の目による「人工進化」の実験を経て誕生した、過酷な環境にも適応した体を持った動物達のこと。いずれも動物兵器として開発されたもので、寄生虫バオーやノッツォなどもドレスの新生物である。
ここでは、バオーの敵として登場した動物達を挙げる。OVAにはいずれも未登場。
マーチンドレスによって種の改良と戦闘用の訓練を施された、非常に大型のマンドリル。高度な知能と残忍な性格を併せ持ち、強靱な四肢から発揮される跳躍力はバオーを上回る。相手の動きを鈍らせる無臭の毒ガスや攻撃用のワイヤーなど様々な武器を体内に隠し持っている。包帯で顔を覆った専属の戦闘員により調教が行われ、彼が使用するムチの風を切る音による命令でバオーと戦う。このマーチンの主人ともいえる戦闘員が顔を包帯で覆っているのは、訓練中マーチンに「じゃれつかれ」重傷を負ったためである。名前の由来は『集英社ジャンプリミックス 魔少年ビーティー対バオー来訪者』にて、アメリカの俳優「Dean Martin」ではないかと推測されている[4]。芳香蝙蝠(アロマ・バット)ドルドが育朗を暗殺するために使用したコウモリで、その名の通り特殊な芳香を放つ。ドルドの義手から出る超音波で操られている。その芳香でバオーに変身した育朗の触覚を麻痺させ、劇中では体の自由を奪っている。液グモタランチュラを巨大化させたようなクモ。体内に特殊な酵素を持っているため、ドレスが開発した食虫植物が持つネペンテス液の消化酵素を強化した液体の中でも自由に動くことが可能。口から伸びた管を相手の体に突き刺しその体液を吸い尽くすとされていたが、バオーには通用しなかった模様。OVAにはいずれも未登場。
六助じいさん育朗たちが逃避行中に立ち寄った民家の住人。山奥で猟師(マタギ)として生活している。息子がいるが都会に出て行ってしまったため、現在は妻と2人暮らし。はじめは育朗たちを怪しんでいたが、育朗の紳士的な態度を信頼し、先祖代々のマタギのしきたりに沿い、一夜の宿を貸す。後にスミレを引き取り面倒を見ている。おばあさん六助じいさんの妻。逃避行中の育朗とスミレを怪しみ、育朗たちに冷たく接していた。六助じいさんがドルドによって負傷させられたことで育朗を責めるが、六助じいさんに諭され自分の行為を反省。スミレを取り戻そうとする育朗に、息子が残していったバイクと旅費を手渡す。綾道を尋ねられた育朗に一目惚れする女性。線路に足を挟まれ列車事故に逢うところを育朗に命を助けられ、地図を探す道案内をする。彼女とのアクシデントがきっかけで、育朗は次第にバオーの潜在能力を意識的にコントロールできるようになってゆく。一緒に居続けることでドレスの刺客の追っ手の巻き添えにさせないため、育朗は彼女の前から姿を消した。1989年に製作され、同年9月16日にテアトル池袋と大阪の2館のみであるが、OVAとして発売される前に東宝で劇場公開もされた。併映は『ザ・ボーグマン ラストバトル』。
スタッフまた1989年10月11日に、OVAで使用されたBGM全19曲を収録した音楽集がCDとテープで発売されている。
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