源有朝

源有朝（鎌倉全成）像

源 有朝・鎌倉 全成（みなもと の ありとも/かまくら ぜんじょう/ぜんせい、仁平２年（1152年） - 建仁3年６月23日（1203年８月１日））は、平安時代末期～鎌倉時代初期の武将・僧侶。陽成源氏流河内源氏の嫡流の源姓鎌倉氏（相模源氏/源家）一門の阿野鎌倉家（駿河源氏）の祖。幼名は今若丸。通称は阿野冠者/醍醐禅師[1]。

源義朝（義頼）の子、義平・朝長・頼朝・義門・希義・範頼[2]の異母弟、義成（義円）・義経（鞍馬冠者/九郎）の同母兄、朝家（隆成/隆盛）・頼保・頼高・頼元（全暁/全超/全起）・時元（隆元）・道暁（僧侶）・頼成の父。

概要[]

平治元年（1159年）に、『平治の乱』で父の義朝が敗死したため、８歳で醍醐寺にて出家させられ、全成と名乗った。治承４年（1180年）に、以仁親王の令旨が発されたを知ると、内密で醍醐寺を抜け出して、山伏風の修行僧に変装して東国に下った[3]。

異母兄の頼朝が大庭景親に敗北して（『石橋山の戦い』）、その直後の８月26日に、兄・頼朝の近侍である佐々木定綱兄弟（近江源氏流佐々木氏一門）らを訪ねて、相模国高座郡渋谷荘に匿われた。同年の10月1日、下総国鷺沼の宿所で兄の頼朝と対面を果たした。

頼朝の兄弟の中で最初の合流であり、頼朝は第一として駆けつけた異母弟の志を喜んだ。兄の信任を得た全成は武蔵国長尾寺[4]を与えられ[5]、嫂の北条政子（頼朝の妻）の妹である阿波局を娶った（阿波局は建久３年（1192年）に、外甥でもあり、頼朝の末子の千幡丸（後の実朝）の乳母となった[6]）。

養和元年（1181年）以降、全成は還俗して、有朝と名乗り、駿河国駿東郡阿野荘（現在の静岡県沼津市周辺 ）を与えられた。以降の有朝の動向は、藤原公佐（全成の女婿、藤原北家流阿野家の祖）や阿波局の関連で言及されているだけで[7]、頼朝の時代には一切登場しない[8]。

正治元年（1199年）に兄の頼朝が54歳で死去し、甥の頼家が将軍職を継ぐと、有朝は甥で頼家の同母弟の実朝を擁する岳父の北条時政および、義弟の義時に接近して、頼家の岳父の比企能員[9]を中心とした頼家一派と対立するようになる。建仁３年（1203年）の５月19日の子の刻（深夜０時）に、先手を打った頼家は同族である甲斐国守護の武田信光に命じて、叔父の有朝を頼家自身に呪詛した疑いと、同時に謀反人として捕らえて御所に幽閉させた。有朝は同月25日に常陸国に配流され、６月23日に頼家の命を受けた御家人の八田朝家（知家）[10]によって誅殺された。享年52。７月16日には三男の播磨公（はりまのきみ）の頼高が京都の東山延年寺で源仲章（宇多源氏）によって殺害された。

その後裔[]

子の時元も、相模国の御家人である三浦義村・泰村父子[11]に唆されて、挙兵したが泰時（義時の子）に命を受けた金窪行親に謀殺され、時元の子の義継は、母方系の大叔父＆従父である執権の義時・泰時父子からの咎めはなく、許されて亡父の後を継いで、阿野鎌倉家の当主となった。しかし、阿野鎌倉家は、上記の事件の影響もあって振るわず、地方の武家貴族（軍事貴族）・御家人と成り果てた。この系統は数代を経て、南北朝時代になると頼直の代に嗣子がなく、阿野鎌倉家はついに断絶した。

有朝の墓は、静岡県沼津市の大泉寺に子・時元（隆元）の墓と並んで現存して、沼津市の史跡に指定されている。

脚注[]

1. ↑ 『平治物語』
2. ↑吉見氏（武蔵源氏/伊勢源氏/能登源氏/石見源氏）の祖。
3. ↑ 『吾妻鏡』治承4年10月1日条
4. ↑ 現在の神奈川県川崎市多摩区の妙楽寺
5. ↑ 『吾妻鏡』治承4年11月19日条
6. ↑ 『吾妻鏡』建久３年８月９日条
7. ↑ 『吾妻鏡』文治元年（1185年）12月７日条と建久３年（1192年）８月９日条に所見
8. ↑ 『玉葉』寿永２年（1183年）11月６日条には「能保悪禅師の家に宿すと云々。頼朝の居を去ること一町許りと云々」とあり、鎌倉に亡命してきた頼朝の妹婿・一条能保の滞在先は全成（有朝）の邸であったという。
9. ↑藤原北家秀郷流の比企氏の当主。
10. ↑ 物部姓十市氏流中原氏一門の宇都宮氏の庶家の八田氏の当主。宇都宮兼綱（栗田宗円）の孫、宗綱（八田権守）の子、朝綱の弟。
11. ↑碓井貞光の後裔。

関連項目[]

• 源氏
• 源姓鎌倉氏（源家/相模源氏） ： 源頼義を祖とする河内源氏の嫡流。
• 阿野家 ： 有朝の女婿である阿野公佐が、阿野荘の一部を相続し、公家の阿野家の祖となっている。

先代: -

阿野鎌倉家初代当主1181年 - 1203年

次代:鎌倉時元（隆元）

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