本堂氏

本堂氏（八つ碑）

本堂氏（ほんどうし）は、日本の氏族。武蔵七党であった小野姓横山氏（猪俣氏）一門の中条氏の系統である多田氏の庶家の和賀氏の庶家である[1]。

同族に鬼柳氏・須々孫氏・黒沢尻氏・江釣子氏[2]・大釜氏などがあった。

概要[]

本堂氏は陸奥国和賀郡本堂郷（現在の岩手県北上市本堂大字）を拠点として、地名を苗字としたことからはじまる。

中世～近世初頭にかけて出羽国山本郡（現在の秋田県仙北郡）[3]の小領主であった。江戸時代には常陸国志築を領して、直参旗本となり、代々が交代寄合に属した。

その歴史[]

本堂氏は惣領家の和賀氏同様に源頼朝の長子の忠頼（忠朝/千鶴丸）の後裔と自称して[1]、鎌倉時代前期に和賀郡本堂郷に土着して、南北朝時代の観応３年（1352年）に 和賀基義（薩摩守）が足利尊氏より安本（現在の秋田県横手市）・阿条字（仙北郡美郷町）・雲志賀里（仙北市角館）の３つの郷を与えられたのが出羽国山本郡に進出した契機となった[1]。

当初は、角館を本拠地とする戸沢氏と姻戚関係を結んだものの、安東氏や小野寺氏らが戸沢氏の諸勢力に組み入れられることなく、山城の元本堂城（美郷町）を本拠として、義親 - 頼親 - 朝親 - 忠親と世襲が続いた。義親は戸沢氏と戦って鶯野（大仙市）で、頼親も金沢城主（横手市美郷町）との戦いで野口で戦死し、朝親もまた同じく波岡で戦死している[4]。

戦国時代後期には一帯を支配する小大名に成長して、元本堂城から本堂城（美郷町）に移ったのは天文年間（1532年 - 1555年）と考えられる[5]。1590年（天正18年）に、惣領家の和賀氏と異なって豊臣秀吉の『小田原征伐』に参陣した。

同年9月に上杉景勝の家臣の藤田信吉による『太閤検地』に協力している。同年12月19日に、今までの報酬によって、忠親[6]は秀吉から元本堂・黒沢などの中郡（現在の仙北郡南東部）まど11か村と8,983石余の知行地が本領安堵された[7]。なお、忠親は秀吉の『朝鮮出兵』にあたって肥前国名護屋城におもむき、文禄２年（1593年）に朝鮮の牧使城（現在の大韓民国晋州市）攻撃の派兵が計画された際には、秋田実季などとともにその名が記されており、25人の兵を率いて軍役が割り当てられている[8]。

父・忠親の後を継いだ茂親は、『関ヶ原の戦い』で徳川方につき、惣領家の和賀氏と袂を分かれた。その功で、常陸国志筑藩の8,500石に移封された。。その後裔は代々が江戸幕府の直参旗本として存続した。

『明治維新』による『戊辰戦争』の際には時の当主親久は新政府に与して、その功によって１万110石の諸侯に列せられた。明治17年（1884年）には、男爵を授けられた。

参考文献[]

• 秋元信夫「出羽北部の城館」『中世出羽の領主と城館』（伊藤清郎・山口博之編/高志書院（奥羽史研究叢書）/2002年）150頁
• 鈴木登「豊臣政権下の城下町、六郷周辺」『郷土史事典 秋田県』（国安寛・柴田次雄編/昌平社/1979年）94頁
• 塩谷順耳「本堂城回絵図をよむ」「本堂城と城下町」『図説 秋田県の歴史』（田口勝一郎編/河出書房新社/1987）103 - 107頁

脚注[]

1. ↑ 1.01.11.2 『奥南落穂集』
2. ↑ 『和賀分限録』
3. ↑ 中世にあっては、現在の秋田県雄勝郡・平鹿郡の小野寺氏領を「上浦郡」、戸沢氏領など仙北郡北部を「北浦郡」と呼んだのに対して、本堂氏をはじめ、六郷氏・金沢氏・久米氏（飯詰氏）など中小領主が割拠した仙北郡南東部は通称として「中郡」と呼ばれていた。なお、当時の「仙北（山北）」は雄勝郡・平鹿郡・山本郡全体を指す広域地名であり、「中郡」は通常「仙北（山北）中郡」のように称された。
4. ↑ 『寛政重修諸家譜』
5. ↑ 鈴木94頁
6. ↑ 惣領家の和賀忠親とは別人物。
7. ↑ 朱印状によれば、総高１万1,416石余で、そのうち太閤蔵入地がその21%にあたる2,436石余であった（『本堂宛秀吉知行朱印状』）。
8. ↑ 『浅野家文書』

関連項目[]

• 鎌倉忠頼（忠朝/千鶴丸） ： 本堂氏の遠祖と自称された人物。

特に記載のない限り、コミュニティのコンテンツはCC BY-SAライセンスの下で利用可能です。