和賀氏

和賀氏（立合雲に石畳）

和賀氏（立合雲）

和賀氏（石畳）

和賀氏（わがし）は、日本の氏族。鎌倉時代～戦国時代にかけて陸奥国和賀郡（現在の岩手県北上市周辺）の豪族である。

同族に出羽国の小田島氏[1]があり、庶家に本堂氏・鬼柳氏・須々孫氏・黒沢尻氏・江釣子氏[2]・大釜氏などがあった。

出自[]

和賀氏の出自及び系譜に関しては諸説があり、『奥南落穂集』[3]では源頼朝の長子である忠頼（忠朝/千鶴丸）を遠祖と自称した。

『源姓和賀系図』によると、和賀氏の祖で、忠頼の子とされる忠明（式部大輔）が建久２年（1191年）に陸奥国刈田郡から更木梅ヶ沢に移り、のちに二子飛勢森に移ったとある。実際は後世の仮冒である。

実際は、和賀氏の遠祖は武蔵国の武蔵七党であった小野姓横山氏（猪俣氏）一門の中条氏流の多田氏の庶家で、頼朝に仕えた御家人の中条義勝[4]（法橋成尋/式部大輔忠明）の次子の成季（義季/入道西念）と記されている。成季は母方の叔父である相模国の和田義盛（碓井貞光の後裔で三浦氏（御浦氏）一門）の養子となって、和田義季と改めた[5]。

義季は行賞によって陸奧国刈田郡を与えられて、刈田三郎左衛門尉とを名乗り、その子の義行も当初は刈田三郎左衛門尉と称した[6]が、承久年間(1219年～1222年)に和賀郡に下って、郡半分の地頭として義行以降は和賀氏と称して（『鬼柳文書』所収系図）、その惣領家となり、黒岩（現在の北上市）の岩崎を本拠とした[7]。また、同じころ、義行の弟の義春も分家して和賀郡を与えられ、初めは更木の梅ヶ沢を拠点として、後に二子城に移ったものと考えられている[7]。

歴史[]

この頃に、奥大道に夜盗が蜂起したため、北条得宗家の命を受けて奥州の地頭人らは警護を命じられたが、その中に和賀三郎兵衛尉と同五郎右衛尉がみえる[8]。

南北朝時代に、暦応３年（1340年）には、和賀氏は南朝・北朝側にそれぞれ一族が分かれて、庶家の中でも有力な鬼柳氏らとともに足利氏（下野源氏）を中心とする北朝方として戦い、南朝方に属した庶家の須々孫氏らを攻めており、応永８年(1401年)に、関東管領の上杉氏から、一族の鬼柳時義（下総入道）が和賀一族の惣領権と和賀郡一円の支配権を認める辞令を得て、時義は和賀姓に復姓した[5]。そのために、和賀惣領家の本拠は二子城に置かれ、天正年間まで地方大名としての体制を維持し続けた。

永享７年（1435年）に、和賀惣領家と庶家の須々孫義躬・義村父子と同じく黒沢尻氏との間で一族内の確執が表面化すると、須々孫父子と黒沢尻側が稗貫氏の加勢を得て争いが近隣へ波及した。甲斐源氏の南部守行が子の義政に３万余の軍勢を率いさせて惣領家側で参戦して、葛西氏（秩父姓豊島氏の庶家）や奥州大崎氏（足利氏一門斯波氏（奥州源氏）の庶家）も南部氏に加担して、翌永享８年（1436年）まで続く『和賀の大乱』までに発展した。この争乱の結果、和賀氏は加美郡や志田郡と栗原郡方面にあった間接的統治の飛地領を手放すこととなり、須々孫氏は義村の次々代の義和から没落して、黒沢尻氏に至っては実質的に滅亡していた。

安土桃山時代の天正18年（1590年）に、和賀氏が小田原の陣に参陣しなかったことで、激怒した豊臣秀吉によって所領を没収されて、城地追放の処分がなされ、和賀郡は秀吉の蔵入地（直轄領）となった。

同年秋に旧・二子城城主の和賀義忠（義治）らが蜂起した『和賀・稗貫一揆』が発生したが一揆勢は敗北して、義忠は西和賀方面に敗走した。翌天正19年に和賀郡・稗貫郡は南部氏が領有することになった。

慶長５年（1600年）に、義忠の子の忠親が２回目の旧領争奪一揆を起こして、南部氏が徳川家康の『会津上杉征伐』に従軍中に忠親は伊達政宗の支援を受けて挙兵し、花巻城を攻めたが失敗して、岩崎城に籠城したが、翌慶長６年（1601年）春に、岩崎城は陥落した（『岩崎一揆』）。

和賀忠親は何とか逃げ延びたが、一揆の通報を受けた家康は忠親の召喚を命じたが、護送の途中に、忠親は仙台国分尼寺で自害した[9][10]。

忠親の子の義弘・忠弘は政宗の庇護を受けた。義弘は後に政宗により120石を賜わり、忠弘は岩崎城落城の折に旧臣の岩淵大炊の手引きで落ち延びて、磐井郡摺沢村（現在の岩手県一関市）の奥州小原氏に養われて、小原氏と改姓した（『姓氏歴史人物大辞典』）。

脚注[]

1. ↑ 出羽国村山郡小田島庄（現在の山形県東根市小但嶋大字）を本拠地とした。
2. ↑ 『和賀分限録』
3. ↑『（近世こもんじょ館） 奥南落穂集改題 一、和賀家之次第』
4. ↑ 中条忠頼の子。
5. ↑ 5.05.1 『鬼柳文書』
6. ↑ 『吾妻鏡』貞永３年正月１日条
7. ↑ 7.07.1 『北上市史２』
8. ↑ 『吾妻鏡』建長８年（1256年）６月２日条
9. ↑ 『伊達治家記録』
10. ↑ 異説では、忠親は政宗に葬られたともされる。

関連項目[]

• 忠頼（忠朝/千鶴丸） ： 和賀氏の遠祖と自称された人物。

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