登録日:2023/02/15 (水曜日) 10:08:41
更新日:2024/07/05 Fri 10:46:56NEW!
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歴史の闇に隠された、凶暴な謎が襲いかかる!!
概要
2001年に公開されたフランスのミステリーホラーアクション映画。
フランスの謎多き怪物ジェヴォーダンの獣を題材にしており、前半はほぼ史実通りに、後半からはオリジナル展開に突入する。
グロシーンやあーんなシーンも多いので注意。
あらすじ
18世紀、フランス革命間近のジェヴォーダン地方では、蜂起した群衆が領主の城を取り囲んでいた。
老齢の領主は革命を受け入れており、回顧録を綴りながら静かにその時を待っていた。
この地方より発祥した恐怖の“獣”と、この地を離れた友人達への忘れえぬ想いを胸に…
それは1764年
“獣”がこの土地に初めて姿を現した
登場人物
★は実在した人物
- グレゴワール・ド・フロンサック
演:サミュエル・ル・ビアン/吹き替え:堀内賢雄
主人公。ルイ15世に仕える王室博物学者。
史実で仕留められた“獣”の死骸を鑑定したというビュフォンの弟子で、王の命により“獣”の正体を確かめるためにジェヴォーダン地方を訪れる。
かつて部隊と共に新大陸を訪れ、数多の傷と大尉の称号を得た歴戦兵で、非常に博識で医者の心得も持ち、経歴から荒事も得意など完璧超人。趣味は写生で、こちらも非常に上手い。
夢はアフリカへ渡り、更に見聞を広めること。
ネタバレ
一度は成果を挙げることが出来ずに帰還命令が出され、娼館通いがバレてマリアンヌとも破局してしまったが、トマの頼みと真意を知ったマリアンヌとの逢引きのため、再度ジェヴォーダン地方を訪れる。
マニ、トマと共に数々の罠で“獣”を追い詰めるが、深追いしたマニの変わり果てた姿を発見し慟哭した。
死体を清めている時に何かを見つけて確信を持つと、“獣”の出現ルートからモランジアス家の領地の『人狼』の住処へ殴り込みを掛ける。
しかし領民を殺戮したとして翌日には勾留され、絞首刑を待つ身となるが、ローマ法王の密使に知りすぎたためと毒殺されてしまった…
- マニ
演:マーク・ダカスコス/吹き替え:小山力也
フロンサックの義兄弟。インディアンのモホーク族の最後の生き残り。
強面で寡黙だが意外と表情豊かで、心を許した人間には非常に友好的。
武術の達人であり、徒手空拳で大男を吹き飛ばす、百発百中のトマホーク投擲、劇中で幾度も大立ち回りを演じるなど、本作のアクション担当。
呪いにも長けており、狼や木と会話したり、個人に宿る精霊を視たり、身につけている腕輪には不思議な粉末が入れられている。
ネタバレ
かつて新大陸に上陸したフロンサックの部隊が通訳として雇い、フロンサックとは世話をする中で仲良くなる。
しかし隊の真の目的は部族の皆殺しであり、部隊長は疫病を蔓延させてから弱ったモホーク族を襲った。
マニは部隊長を殺したが、フロンサックはそれを咎めなかったという。
終盤、フロンサック、トマと共に“獣”を追い詰め、流れ出た血を追って『人狼』の住処へ進入。
彼らを蹴散らすが、襲ってきたジャンヌに躊躇った一瞬の隙に銃弾を受けてしまい、そのまま嬲り殺された。
遺体はフロンサックが荼毘に伏し、遺灰を集められている。
★アプシェ侯爵
演:ハンス・メイヤー/吹き替え:麦人
ジェヴォーダン地方の領主。王命を受けたフロンサック達を屋敷へ招き、協力する。
ビュフォンとは旧知の仲らしい。
- トマ・ド・アプシェ
演:ジェレミー・レミエ/吹き替え:宮本充
アプシェ侯爵の孫。啓蒙家。周囲からは若侯爵とも呼ばれている。
フロンサック達の捜査に協力する傍ら世話係となり、その大らかな性格やウマが合って二人とすぐに打ち解けている。
ネタバレ
フロンサック、マニと“獣”を討伐中に左腕を食いつかれ、何とか無事だったものの戦線離脱した。
- ジャン=フランソワ・ド・モランジアス
演:ヴァンサン・カッセル/吹き替え:山路和弘
ジェヴォーダン地方の名士であるモランジアス家の長男。
享楽的で酒癖が悪く、また教会のお祈りに顔を出さないなど、素行の悪さが目立つ。
かつて海軍で世界を回っている時にアフリカへ上陸し、ライオン狩りで右腕を失っている。
獣狩りの際は隻腕でも使える特注銃と、獣を仕留めた時に分かるように銀の弾丸を込めていた。
ややシスコンの気があり、マリアンヌを傷付けたフロンサックに静かな怒りを滲ませる場面も。
ネタバレ
マリアンヌに倒錯的な想いを募らせている。
終盤、我慢できなくなった彼は自らの秘密を打ち明けると共にマリアンヌへ瀕死の重傷を負わせた。シスコンのヤンデレ
- マリアンヌ・ド・モランジアス
演:エミリー・ドゥケンヌ/吹き替え:岡寛恵
モランジアス家の長女。
高嶺の花で、美しい美貌に寄せられて振られた男は星の数ほど。
やや奔放な性格をしており、淑女たる教育や家系や義務に雁字搦めの現状にうんざりしている。
フロンサックのアプローチで次第に懇意になっていくが…
ネタバレ
娼館に通っていたフロンサックに愛想を尽かすものの、シルヴィアの言葉から真意を知り、彼との逃避行を決意。
下町の乳母の家で秘密裏の再会を果たすが、そこへ“獣”が乱入。しかし鼻先まで迫った“獣”は何かを察してマリアンヌを襲わずに逃げ去った。
フロンサックが謀殺された時は死体を見て嘆き、翌日にはフランソワから恐ろしい告白を受けて暴行されてしまう…
★モランジアス伯爵
演:ジャン・ヤンヌ/吹き替え:宝亀克寿
モランジアス家当主。
たまに湯治で家を留守にしている。
- ジュヌヴィエーヴ・ド・モランジアス(モランジアス伯爵夫人)
演:エディット・スコブ
こちらは熱心な教徒で、“獣”には祈りを捧げるべきだという。
ネタバレ
フランソワを溺愛しており、罪に耐えかねた彼のために虜となっているマリアンヌの毒殺を黙認した。
- サルディス神父
演:ジャン=フランソワ・ステヴナン/吹き替え:稲垣隆史
サンタルバンの司祭。
温厚だが、“獣”のことを神が与えた罰と律している。
ネタバレ
本作の黒幕。
隠れプロテスタントであるユグノーであり、後述する『神の狼』の司祭でもある。
★ラフォン地方長官
ジェヴォーダン地方の長官。「インディアンは黒人と同じ」という差別主義者。
- マキシム・デ・フォレ
劇作家。名士達に取り入ろうとしている。
フロンサックの口八丁であっさり騙されたり、晩餐会で自信満々に朗読した詩を一同に失笑されるなど、不憫な人柄。
- デュアメル
“獣”退治のために派遣された騎兵連隊の大尉。
部下達は村人に狼藉を働き、オープニングでマニに無双され、目立った成果も挙げられず無能と呼ばわれ、中盤で王命が来たことで解任された。
★ジャン・シャステル
演:フィリップ・ナオン
モランジアス家の領地と、『人狼』という野蛮なアウトロー達の管理者。
史実では地元の亭主で猟師。彼が仕留めた巨大な狼が“獣”の正体だった説あり。
ネタバレ
『人狼』は『神の狼』の一員であり、聖典を製造している。
★ジョルジュ
シャステル家長男。『人狼』のリーダー格。
ほぼやられ役。
なお、実在したシャステル家の長男はピエール。
- マリー・ジャンヌ
シャステル家長女。持病の発作が『獣憑き』に見えることから魔女とも呼ばれている。
マニは彼女にどこか惹かれているが…
ネタバレ
『神の狼』が騎士連隊に追い回される中、立ち塞がったシルヴィアに襲いかかるが、扇に仕込んだ暗器で瞬殺された。
★アントワーヌ
シャステル家次男。ジョルジュ共々やられ役。
史実では、彼が連れてきたハイエナ等が“獣”の正体だった説あり。
- シルヴィア
演:モニカ・ベルッチ/吹き替え:勝生真沙子
高級娼館『テシエ館』でフロンサックが出会った娼婦。ミステリアスなイタリア系の美女で、トランプ占いが得意。
フロンサックと幾度も繋がった。
ネタバレ
その正体はローマ法王の密使。
捕まったフロンサックを薬を使って仮死状態にすることで刑の執行を取りやめて埋葬させ、『神の狼』達の油断を誘った後に蘇生させた。
フロンサックに惚れていたが、彼はマリアンヌに想いを寄せているので自ら身を引いている。
- セシル
兄と放牧中に“獣”に襲われた少女。
生き延び、マニの腕輪の粉末で意識を取り戻した彼女は、“獣”を操る何者かを見たというが…
ネタバレ
その後はトマの小間使いになった。
エピローグで意味深に登場した侍女が彼女である。
★“獣”
ジェヴォーダン地方を恐怖に陥れている生物。
パリでも話題になり歌まで作られ、正体は悪魔の使いではないかとローマ法王すら密使を送って調べているとの専らの噂。
襲われた被害者は獣の仕業とは思えぬ様相で食らわれ、僅かな生存者は「狼より巨大だった」「銃を恐れない」「悪魔」と口を揃えて証言している。
しかしフロンサックの調査で鉄製の牙を持つなど普通の生物ではないこと、セシルの証言から何者かが使役していることが明らかとなる。
※その他、詳細は項目参照
ネタバレ
正体は巨大な獣が装甲を纏っている姿。
目元や猫パンチ、後述のネタバレから中身は察せられるが、製作陣はあえて『謎』と暈している。
- “獣”を操る者
セシルの証言で浮上した者。
奇妙な仮面に悍ましい右腕を携え、犬笛のようなもので“獣”をペットのように扱っている。
ネタバレ
正体はジャン=フランソワ。
傷だらけなものの右腕は健在であり、普段は特殊なコルセットで隠し、隻腕を装っていた。この事を知っているのはサルディス神父のみ。
マリアンヌが“獣”に襲われなかったのは、フランソワと似た匂いがしたから。
- 『神の狼』
謎の秘密結社。
当時のフランスでは弾圧されていたプロテスタントの過激派であり、「啓蒙主義に寛容な王を“獣”が罰しに来る」という聖典を各地にばら撒いている。
神に忠実な同盟を自称し、その目的は「神の言葉を狂信的なまでに守り広める」こと。
最終目的は“獣”によって民衆の恐怖を高め、王が屈服しないのならフランス全土に“獣”を解き放つというが…
結末
ネタバレ注意
邪魔者がいなくなった事で森の遺跡に集まる『神の狼』の一団。
司祭は新生フランス時代を宣言するが、そこへ蘇生したフロンサックが登場。
黒幕たるサルディス神父、ラフォン、マキシム、モランジアス伯爵夫人、そしてジャン=フランソワを糾弾し、二刀流で『人狼』達を叩きのめす。
更にシルヴィアの手引きによるデュアメル大尉率いる騎士連隊が彼らを追い回す中、ガリアンソードを持ち出したフランソワと対峙するフロンサック。
マニの遺体から摘出した銀の弾丸から仇と見初めており、二人は激しい剣戟を展開、一進一退の攻防の末にフランソワに引導を渡す。
『神の狼』も全員捕らえられ、逃走したサルディスは森の中で今までの報いを受けるかのように狼の群れに食い殺された。
その後、“獣”にトドメを刺すべくフランソワの隠れ家へ乗り込んだフロンサックとトマだったが、既に“獣”は先の戦いで死に体であった。
世話をしていたジャン・シャステルから「かつてフランソワがアフリカから連れてきて生き残った一匹を育て上げた」事を聞かされ、フロンサックは“獣”を撫でると、一思いに介錯した。
そして瀕死のマリアンヌの元へ駆けつけるフロンサック。
もう助からない彼女に、フロンサックはマニの腕輪に残っていた粉末を塗す…
それらの一部始終を見ていたトマ・ド・アプシェは年老いた現在、ジェヴォーダン地方の領主となり、フランス革命を受け入れていた。
フロンサックからアフリカへ行こうと誘われたが領主の責務から断ったという彼は、歴史の闇に葬られたジェヴォーダンの獣を胸に仕舞い、抵抗することもなく群衆に捕縛された。
そして
フロンサックは奇跡的に助かったマリアンヌと共にアフリカ行きの船の中で、マニの遺灰を海へ散骨するのだった…
余談
フロムソフトウェアが作ったBloodborneは本作のオマージュらしきものが多い。
服装、獣狩り、精霊、啓蒙、娼婦、丸太トラップ、ガリアンソードなど。
和月伸宏作の武装錬金に登場するシルバースキン、ヴィクターのデザインモチーフは本作であり、
単行本のライナーノーツでは「『ジェヴォーダンの獣』に登場する衣装はウットリする程カッコ良いです」とコメントされている。
追記・修正は歴史の闇を明るみにしてからお願いします。
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▷ コメント欄
- 服装がもう完全にBloodborne、まぁ元ネタはこっちの方だけど、あっちはコズミックホラーだけど -- 名無しさん (2023-02-15 10:14:48)
- 今は離婚しちゃったけど共演作が矢鱈と倒錯的なヴァンサン・カッセルとモニカ・ベルッチ。インテリ主人公と超人的相棒のコンビ物と思ってたら終盤の主人公も相棒に負けず劣らずの超人でビックリした思い出。 -- 名無しさん (2023-02-15 11:32:37)
- 蛇腹剣が唐突に出てきたのはどういう意図なんだろうか。日本アニメの影響? -- 名無しさん (2023-02-15 12:24:13)
- タイトル聞いたらマニとジャンを真っ先に思い出した。この映画は彼らのための映画。逆に主人公は今でも顔を思い出せない。衣装デザインはブラボへの影響を例に挙げるまでもなくカッコいんだけど、主人公は魅力的な脇役どころかその衣装にまで存在を食われちゃってる。 -- 名無しさん (2023-02-15 19:43:19)
- まぁ・・・フロンサックよりマニとジャンの暴れぶりが凄まじいから・・・ -- 名無しさん (2023-02-15 20:34:39)
- 余談の通り『武装錬金』のシルバースキンとヴィクターはそれぞれ単行本にてモチーフを「『ジェヴォーダンの獣』の衣装」、「『ジェヴォーダンの獣』の登場人物の一人であるインディアンの戦士、マニ」と明言されていたけれど……アニメ版のヴィクターの担当声優さんに吹き替え版でのマニ役を担当されていた小山力也さんだったのかよ?!「配役を合わせ、モチーフ元と同じ方に演じて頂く」とはスタッフなんとも心憎い計らいを……w -- 名無しさん (2023-02-15 21:15:23)
- 骨ガリアンソードは唐突過ぎて最早ギャグレベル -- 名無しさん (2023-02-15 22:07:14)
- とにかく理屈抜きにかっこいいので中二病が刺激される映画 -- 名無しさん (2023-02-16 02:21:36)
- ヴィドックとかもだけど当時のフランス映画はビジュアル特化が多い -- 名無しさん (2023-02-19 00:48:42)
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