都と名は付いているが、南海マーフォークの都のような華やかな姿はどこにもない。
北海マーフォークが、ただ身を寄せ合って暮らす生活拠点という意味合いが強いボウルガンド。
ここは日の光もうっすらとしか届かない深い海の底に作られた街で、ここに住むマーフォークも一様に暗い体色で、水上に上がらずに暮らす者もしばしばで、建物にも華美なところはない。
そもそも南海のマーフォークと異なり、北海は他の種族と交わって暮らそうという意識など欠片も持ち合わせていない。
まれに帝国領の海辺まで出ていって、漁の獲物と真鍮などの金属を交換する程度である。
主に漁をして暮らす北海マーフォークだが、その暮らしは非常に質素で、漁具や武器は水棲竜種や水竜種の骨や牙を加工したものに、革と鱗を用いた鎧などを使っており、槍の穂先や鏃には東海で採れる黒曜石なども使われる。
北海のマーフォークはそのすべてが龍信仰の民であり、自分たちを絶海の双頭蛇アルトイコンの末裔であると信じている。
そのため、北海のマーフォークは例外なく排他的で他の人種を信じない。
帝国周辺での物々交換も、同じく龍信仰の民である北方ドワーフやノーム、あるいは犯罪者として表社会を追われた者たちに対してだけである。
北海はアルトイコンの嘆きの嵐が常に吹き荒れ、西方諸島の勇敢な船乗りや南海のマーフォークですら避けて通る難所である。
その海面には大渦が逆巻き、激しい雷鳴と波しぶきが常に船を襲う。
こうした環境で何故北海のマーフォークはこの地を生活の場に選んでいるのか、それは未だに謎に包まれている。
また、古くから他との交わりを絶っている北海のマーフォークには、今では使う者も絶えてしまった神話の時代の魔術が残っている、という者もいる。
空を自在に飛び、影の中に潜る。
水を呼び、氷を走らせる。
それらの魔術が何故彼らの中に残っているのかも大きな謎とされている。
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