古くから魔導術を使えない者のために、何かに封じ込め、いつでもそれを使えるようにすることはできないか。
その命題には、多くの魔導学者が挑んできた。
その命題に答えを出したのは、ディアドラ・メッツァというエルフの魔導学者である。
ディアドラは水晶樹の結晶構造が魔導術を一時的に閉じ込める檻の役割を果たすことを発見し、魔導術を閉じ込めることに成功したのである。
魔導石の発明により、魔導術は複雑な儀式や呪文の詠唱から解き放たれ、いつでも、誰でも使えるようになるかと思われた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
水晶樹の結晶は衝撃に弱く、すぐに砕けてしまうため、魔導石には保管に慎重さが求められた。
しかし、ひどい時には馬車で輸送する間に半分程度の魔導石が破損してしまうというほど、安定性に問題があった。
しかも強力な魔術ほど、大きな水晶樹を必要とし、手ごろな価格の物は実用性のない魔術を閉じ込めることしかできないという問題もあった。
結局ディアドラの発明は、大枚をはたいて魔導石を買うよりも、腕利きの魔導師を雇う方がよい、と評価され、実用には向かない失敗作扱いをされた。
しかし、ディアドラの研究はその他の魔導学者に引き継がれ、様々な改良を重ねられた現在では、場合によってはどうにか実用に足る、というくらいまで研究が進んできていると言われている。
近い将来、ディアドラの目指した、誰でも自由に魔導術が使える世界が来るかもしれない。
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