「……馴れ初め」
「は?」
「お前がキャロルとくっつくまでの話、聞かせろ」
その意図をアレスは掴みかねた。
鳩が豆鉄砲を食らうとはこういう心地か、とも。
「どういう風の吹き回しか、全く分からねえ」
「いいから」
「…………いいけどよ。
本当にいいんだな?お前への対価だってわかってるか?」
最大限の困惑を抱えたまま、言葉を切り出す。
平行世界で通信を介して出会った話から始まり、エリンディルで再会を果たしたこと、冒険を重ねたこと。
魔族との戦争に、クラダーリング。
そして、彼女の声を取り戻したオルゴール。
思い出話という名の惚気話を、酒の肴に奢ってやった。
「…………ふぅ」
聞くウェインは、ここに至るまでに何杯飲んだやら。
ああ、なんとも運命的な話だと、すっかり赤ら顔になって腹の中で独りごちる。
同じ量を飲んでいるのに顔色ひとつ変わらない目の前の男に、この点はあちらのアレスと同じだなと感想を抱く。
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