「……参考にならねえ」
「はぁ?」
「……キャロルが。
意中の人を振り向かせたいなら、お前を参考にしろと」
「出会いからして運命だろお前らよお。なるか参考に」
自ら身の上話をねだっておいて、なんともな言い草だ。
悪態をつきながら、運ばれてきた酒のおかわりに口をつける。
アレスとしても、この態度は見慣れたものだったのだろう。それ自体を気にかけた様子は無い。
「意中の人って……いたのかお前」
「うるせ」
「でも、ずいぶん長く一緒にいた。その結果だと思ってるぞ」
「そういうもんかね……」
つまみを噛み砕く。塩っ辛い。
そんなやり取りをしている男たちの背後、ドアベルが鳴った。
新しい客が入ってきたようだ。……若い女性の二人組。
アレスはその客に目をやる。
……彼の知るウェインなら、間髪を入れず声をかけに行こうと嘯きはじめるところだ。
この二人組は顔がいい。
それを武器に女性客のいるテーブルに邪魔しに行くのは、ウェインの常套手段であった。
「なあウェイン、そう思うなら女癖をな」
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