貸しの精算_3

ページ名:貸しの精算_3

「……参考にならねえ」

「はぁ?」

「……キャロルが。
 意中の人を振り向かせたいなら、お前を参考にしろと」

「出会いからして運命だろお前らよお。なるか参考に」

自ら身の上話をねだっておいて、なんともな言い草だ。
悪態をつきながら、運ばれてきた酒のおかわりに口をつける。
アレスとしても、この態度は見慣れたものだったのだろう。それ自体を気にかけた様子は無い。


「意中の人って……いたのかお前」

「うるせ」

「でも、ずいぶん長く一緒にいた。その結果だと思ってるぞ」

「そういうもんかね……」

つまみを噛み砕く。塩っ辛い。

そんなやり取りをしている男たちの背後、ドアベルが鳴った。
新しい客が入ってきたようだ。……若い女性の二人組。

アレスはその客に目をやる。
……彼の知るウェインなら、間髪を入れず声をかけに行こうと嘯きはじめるところだ。

この二人組は顔がいい。
それを武器に女性客のいるテーブルに邪魔しに行くのは、ウェインの常套手段であった。

「なあウェイン、そう思うなら女癖をな」

 

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