「……」
一方、ウェインは微動だにしなかった。
信じられないものを見たような顔をしたアレス。
「…………ほんとか?お前」
その言葉を受け、ウェインはアレスをじろりと睨めつけた。
「……悪いかよ」
言い捨てて、グラスを呷る。
運ばれて来たばかりの酒が、早速にその喉に消えていく。
「俺が本気になっちゃ!悪いかよ!!」
口から離すなり、グラスの底がやかましくテーブルに叩きつく。
周囲の客の注目を集めながら、「もう一杯!」と手近いウェイターを捕まえて注文を通した。
「おい、飲み過ぎだって」
コレを介抱しなきゃならないのか?
漂いはじめた嫌な予感をため息に乗せる。
「わかったわかった……お前の覚悟は伝わったよ。
まさかお前の"病気"が治るなんてな」
「うるせ」
「……な、今日はここまでにしようぜ。久しぶりに飲めて楽しかった」
「なーに勝手にお開きにしようとしてんだ、大人ぶりやがって」
絡み酒。
こうなると面倒臭いことも、アレスにとってはよく知るところだ。
嫌な予感は諦めに変わり始める。
「ほら付き合えよ、二軒目行くぞ」
「はー……。
言っとくが、奢りはこの店だけだぞ」
「わーってら」
宴は夜通し。
とっぷりと更けてから、ウェインは前後不覚に陥ってメリンダのところに転がり込んだり、
翌朝ひどい頭痛に襲われたりするだろうが……それはまた、別の話。
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