貸しの精算_4

ページ名:貸しの精算_4

「……」

一方、ウェインは微動だにしなかった。
信じられないものを見たような顔をしたアレス。

「…………ほんとか?お前」

その言葉を受け、ウェインはアレスをじろりと睨めつけた。

「……悪いかよ」

言い捨てて、グラスを呷る。
運ばれて来たばかりの酒が、早速にその喉に消えていく。

「俺が本気になっちゃ!悪いかよ!!」

口から離すなり、グラスの底がやかましくテーブルに叩きつく。
周囲の客の注目を集めながら、「もう一杯!」と手近いウェイターを捕まえて注文を通した。


「おい、飲み過ぎだって」

コレを介抱しなきゃならないのか?
漂いはじめた嫌な予感をため息に乗せる。

「わかったわかった……お前の覚悟は伝わったよ。
 まさかお前の"病気"が治るなんてな」

「うるせ」

「……な、今日はここまでにしようぜ。久しぶりに飲めて楽しかった」

「なーに勝手にお開きにしようとしてんだ、大人ぶりやがって」
 

絡み酒。
こうなると面倒臭いことも、アレスにとってはよく知るところだ。
嫌な予感は諦めに変わり始める。

「ほら付き合えよ、二軒目行くぞ」

「はー……。
 言っとくが、奢りはこの店だけだぞ」

「わーってら」


宴は夜通し。
とっぷりと更けてから、ウェインは前後不覚に陥ってメリンダのところに転がり込んだり、
翌朝ひどい頭痛に襲われたりするだろうが……それはまた、別の話。

 

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