イスメト・イノニュ

イスメト・イノニュ

出生名

Mustafa İsmet İnönü

生誕

1884

死没

1973

役職

大統領

国家

トルコ共和国

民族

トルコ人

イデオロギー

権威民主主義

政党

CHP（権威民主主義派）

階級

大将

イスメト・イノニュとは、トルコ共和国の元大統領である。1884年にスミルナで誕生した。

第一次世界大戦、希土戦争を戦い、ケマルの右腕として首相を務めていた。1937年にケマルと対立して一度解任されたが、1938年のケマルの死去、そして国民議会の後継指名を受けて共和国二代目の大統領に就任した。

就任後の1939年に始まった第二次世界大戦において、イノニュは絶対的な中立を宣言した。しかしながらその地政学上、トルコが大国からの干渉を受けないでいるということは不可能であった。大戦の勃発直後には連合、枢軸両陣営からの極秘裏での加入要請を受けた。1941年にはソ連がこれに加わった。イノニュは粘り強い外交でこれを切り抜けようとした。

1943年の「イミア島の戦い」が、その後のトルコとイノニュの運命を決定づけた。この戦いに巻き込まれたことで、トルコは大国同士の戦争外交に否応が無しに引きずり込まれ始める。苦肉の策で結ばれた連合、枢軸とのそれぞれの秘密協定は第三の陣営であるコミンテルンに察知され、鋼鉄の書記長の猜疑心を大いに刺激した。

1947年のクルディスタン紛争におけるイノニュの一時の激情が、彼自身と祖国にとって唯一にして確実な一撃となったと考えられている。28人の死を看過しえずに反撃命令を出したことによって勝利を得たが、最終的な勝者はソ連であった。マハバード・クルディスタン自治区の成立はトルコ人の誇りを大いに傷つけた。大衆の怒りの矛先はイノニュに向けられた。そして1950年にソ連からの要求によってトルコ共産党（TKP）がアンカラに帰還した時、イノニュは彼の政治生命を失った。

現在、イノニュは前大統領として共和人民党（CHP）に隠然たる権力を持つ。しかしながら彼自身は最早表舞台に立とうとすることはない。荒波に揉まれる出来立ての帆船の舵取りに疲れ、たった一つの過ちで赤旗の海賊たちが船を乗っ取ってしまった。老いた船長は虚脱感と、ある種の安堵感と共に日々を送っている。

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