化け物会合

ページ名:化け物会合

「おっと…ここから先は図書館かぁ…他の道を…」
「あっディアトリマさん、ちょっといいですか?」
「げっ、イエイヌちゃん!」
「『げっ』とは何ですか!…まぁいいでしょう。私が聞きたい事、もう分かってますね?」
「えーっと…どれの事だろう?この前セルリアン蹴った時に地面抉っちゃった事かな?それともリカオンを投げ飛ばした後に手合わせと称してしばいた事?あ、もしかしてテントの骨組み折っちゃった事、博士と助手がまだ怒ってるとか…?」
「すみません、どれも初耳です…。ディアトリマさん、あなた普段からどれだけ問題起こしてるんですか?」
「えー?じゃあなんなのさ…心当たりが多すぎて分かんないよ」
「まぁ、その余罪追及は今度行うとして…」
「あっ…もしかして私、墓穴掘った?」
「えぇ、盛大に。とりあえずついて来てください。図書館で話しましょう」
「えっ?私、図書館は…」
「出入り禁止になっているんでしょう?大丈夫です。博士と助手に話は付けてあります。…くれぐれも物を壊さないようにお願いしますね?」
「…うん、善処するよ」

〜〜〜〜〜〜

「こちらへどうぞ」
「それで、聞きたい事って何?こんなところに連れて来てまで…」
「…本当は分かってるんじゃないですか?」
「いやぁ、全然分かんないなぁ」
「…本当に?」
「………」
「ここは地下にある防音室です。外に声は聞こえません。…それとも、私には言いたくありませんか?」
「…何が目的なの?」
「私が話したいのは『演じているあなた』じゃないんですよ。『本当のあなた』と話がしたいんです」
「それはお互い様じゃないの?」
「!!……いつから…」
「最初から。分かるよ…私と同じなんだもの」
「…分かった。お互い、隠さずに話そっか。…ディアトリマちゃん」
「そうだね、イエイヌ。それで、聞きたい事は何?」
「どうして、わざわざ道化を演じているの?本当のあなたはもっと賢くて、もっともっと強いはず。脳筋思考も鳥頭も全部演技。それに何回か戦っている所を見たんだけど、多分全力の一割も出してないよね?」
「…正解。どうして分かった?」
「考えなしの行動にしては、失敗が少なすぎて不自然に感じるの。それに、あれだけ滅茶苦茶な戦い方をしておいてフレンズへの被害が全く出ないのは奇跡と言っていいよ。…全部あなたの計算の上なんでしょ?」
「計算の上なのは否定しないけど、全て思い通りに出来る訳じゃない。危ない場面も沢山あったし、たまには失敗だってするさ」
「…なんでそれを隠してるの?」
「フレンズになりたいから、かな」
「…?なりたいも何も、あなたは…」
「化け物だよ。本当の私はフレンズなんかじゃない。フレンズに憧れて、フレンズを演じているだけのただの化け物。」
「それは…」
「違うって?どうしてそう思う?イエイヌなら分かるはずだよ。たとえ私が島にいるハンター全員を敵に回したとしても、正々堂々と正面から戦って勝てる。これが化け物じゃないんだったら、何だって言うのさ」
「………」
「それでもね、力を抑えて道化を演じていれば、みんなは私をフレンズとして見てくれる。よく警戒されるしたまにドン引きされるけど、まだ仲間として認めてもらえてる」
「それじゃあ、あなたは…」
「もう分かるだろう?…怖いんだよ。本当の私を知られたら、もう誰も私をフレンズとして見てくれない。ドードーとコンビを組んでからずっと続けてきた努力も、友情も、思い出も…全部水の泡だ」
「………」
「事実、最初の頃の私は手加減も力加減も出来ない、正真正銘の化け物だった。そんな私を導いてくれたドードーには感謝しても仕切れない。私はこの命ある限り、ドードーに恩を返していくつもりだ」
「…だってよ?ドードーちゃん」
「えっ?」
「いやぁ、なんとなくは分かってましたけど…改めて言葉にされると照れるというか、恥ずかしいというか…」
「ちょっ!?えっ!?なぜここに!?イエイヌ!どういう事だ!」
「…確かに『外には聞こえません』とは言ったね。けど…『部屋に誰もいない』とは一度も言ってないよ?」
「…!た、確かに…!いや、そうじゃなくて!部屋に気配は無かったぞ!」
「解散してから私が成長してないとでも思ったんですか〜?そんな事よりも〜…なんで私の事が好きなら、コンビ解散なんてしちゃったんですか〜。ちょっとショックだったんですよ〜」
「それは…ドードーが私に依存しすぎると危ないと思ったから…」
「相変わらずディアトリマさんは嘘が下手っぴですね〜…本当は、自分が怖かったからじゃないですか?」
「………!」
「ディアトリマさんと私は、お世辞無しに世界最強のコンビです。だからこそ、ディアトリマさんは解散したんです。いざという時、ディアトリマさんが世界の敵になった時に、私なら止められる。そう思ったんでしょう?」
「………」
「ディアトリマさんがもし、世界の敵になった時に私が味方になったら…島のフレンズ全員が敵になっても止められない。そう思ったから、距離を置いた方がいいと思ったんでしょう?」
「……やっぱり、バレちゃうか」
「分かりますよ。お互い、フレンズ化直後からの仲じゃないですか」
「私は…」
「ディアトリマさんも、フレンズですよ。私がいる限り、化け物になんてさせません」
「ドードー…!」
「それに戦い方から言えば、ドードーちゃんの方が化け物っぽいもんね」
「イエイヌさん、私が自分で分かってても言わなかった事を…それを言うならイエイヌさんだって化け物じみてますよ〜、目に見えないほど遠い敵に正確に攻撃を当てるなんて、普通は出来ませんよ〜」
「それは…いや、冷静に考えると確かにそうかも…?」
「………あはははは!!なんか、私の悩みが馬鹿馬鹿しくなってきちゃったな!なんでこんな事で悩んでたんだろう!私の周りにはこんなにも頭おかしい化け物達がいるのに!」
「誰が頭おかしいですかー!」
「化け物じゃないよー!」
「あはは、ごめんごめん。なんかもう色々と吹っ切れた!気分もいいし、ちょっとセルリアンでもぶっ飛ばしに行くかー!3人で!」
「「………え?」」

〜〜〜〜〜〜

「あはははは!セルリアン待て待てー!お姉さんが蹴り砕いてあげよう!」
「…結局、いつものディアトリマさんに戻りましたね。良いんだか悪いんだか…」
「イエイヌさんだって、元の口調に戻ったじゃないですか。それに、今のディアトリマさんは心から笑ってます。心配いりませんよ」
「全く…『もうすぐディアトリマさんが通りますんで、地下室で本音を聞き出してください』なんて急に言われるもんだから、何事かと思いましたよ。まぁ、私も気になってたので乗りましたけど」
「助かりました。私はそんなに頭が良いわけじゃないので、どう聞き出してもはぐらかされるだろうなって思ったんです。イエイヌさんに頼んで正解でしたね〜」
「素の私を既に知ってるドードーさんじゃ無ければ断ってましたよ」
「あはは、やっぱり持つべきものはお友達ですね。ありがとうございます〜」
「…どういたしまして」
「とりゃー!おりゃー!まだまだー!」
「…ところでドードーさん、ここに私達が付いてきた意味ってあります?全部ディアトリマさんが倒してますけど…」
「ディアトリマさんが取り零したセルリアンを決して逃がさないのが私の役割ですよ〜…こんな風に!」
「うわぁ…ちょうどディアトリマさんの蹴りやすい位置に拘束しますか…相変わらずいいアシストしますね」
「ディアトリマさんから遠いセルリアンを片っ端からフリスビーで撃ち抜いてるイエイヌさんこそ凄いと思います〜」
「いや…だって今、これ以外やる事全く無いですし…暇なんですもん…」
「よーし!この辺は粗方終わったね!次はあっち行くよ!」
「えぇ…まだやるんですか…?」
「イエイヌさん、諦めましょう?ああなったディアトリマさんは止められませんから〜」

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