ひとりぼっちと種の記憶

ページ名:ひとりぼっちと種の記憶

私はドードー。
今…結構ピンチです。
『嫌だ…やめて…撃たないで…』
悪夢にうなされて目が覚めたところまではよくある事なので別にいいのですが、ベッドから降りようとした時に体に力が入らず、そのまま床に倒れこんでしまいました。
『やめてよ…私達は何もしてないのに…』
おまけに、悪夢の続きだと言わんばかりに記憶のフラッシュバックが起こって、指一本動かせません。
『どうして…どうして、こんな事に…』
動悸は止まらず、呼吸もままならず、意識は混濁、吐き気と頭痛も酷いです。
『お願いです、殺さないでくださ…』
最近はちょっとマシになったかなぁ…と思いましたけど、全然そんな事はありませんでした。ちょっと一人で眠っただけでこのザマです。
『………お友達…に………な…れると、思ったの…に……』
今見ているのは、遠い遠い昔の思い出。まだ私が動物だった時の…ドードーの『種の記憶』。この記憶が蘇った事は千や二千じゃききません。
『(みんな、ごめんね…全部、全部、無駄になっちゃった…)』
孤島で平和に暮らしていた私達が…唐突に、無残に、理不尽に…かつての『ヒト』に滅ぼされた記憶。見る度に、心を強く抉られます。
『(……私達は…この世界から、いなくなっちゃうんだ…)』
…でも、この記憶は私を蝕むと同時に、私達がかつて存在した証でもあります。
『(………神様…もし、もう一度だけチャンスが貰えるのならば…)』
だから…忘れず、折れず、負ける事なく、乗り越える必要があると…私は思うんです。
『(私達に、ヒトの言葉をください。お話が出来ればきっと、お友達になれると思うんです…)』
『私』は『私達』の使命を背負って、記憶を受け継いで…いつか出会うヒトに、伝えなくちゃいけないんです。
『(お願いします…次こそは…)』
あの悲劇を、繰り返さないために。
「おはよー!きっと暇してるでしょー?一緒にセルリアン狩りに行…」
ちょうどフラッシュバックが一区切りついてまたループに入ろうかという所で、誰かが扉を思いっきり開けて家に入ってきました。
床に伏せているので顔は見えませんが、この声と発言からして、どう考えてもディアトリマさんです。セルリアン狩りへのお誘いなんて、ディアトリマさん以外絶対しません。
ディアトリマさんが一瞬黙ったと思った次の瞬間、私はディアトリマさんに抱きしめられていました。
頭を撫でられ、頬ずりされ…やがて、フラッシュバックが薄れて体の感覚が戻ってきました。
私が抱きしめ返すと、ディアトリマさんは私に話しかけてきます。
「…落ち着いた?」
「……はい」
「また一人でいたんでしょ?呼んでくれればいつでも一緒にいてあげるのに」
「…すみません」
幾度となく繰り返された、お決まりのやり取り…いつも助けてくれて、ありがとうございます。
私はディアトリマさんに抱きしめられたまま、優しく撫でられ続けます。すると、やがてフラッシュバックは完全に収まり、呼吸が楽になってきました。
「…もうそろそろ大丈夫?」
大丈夫ですけど…そうですね。もう少しだけ、甘えさせて貰いましょうか。ディアトリマさんの大きな体は、とても安心しますから。
「…もう少し、こうしててください」
「分かった」
私がディアトリマさんに身を任せると、ディアトリマさんはそれに応えるように抱きしめてくれました。

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