ひとりぼっちの凸凹コンビ

ページ名:ひとりぼっちの凸凹コンビ

私はディアトリマ。

今日は朝から森を駆け抜けている。

風を切る感覚がとても心地いい。

差し込む木漏れ日も、キラキラ輝いてる。

私は軽い足取りで獣道を進み、崖を駆け上がり、川を飛び越える。

…やがて、今回の目的の場所にたどり着く。

森の中の少し開けた場所にある小さな家だ。

「おはよー!きっと暇してるでしょー?一緒にセルリアン狩りに行…」

勢い良く扉を開けた私の前に、私が会う予定だった子が倒れている。

私はこの状況を察して、すぐ行動に移す。

私はその子を持ち上げ抱きしめて、頭を撫でる。ついでに頬ずりする。

するとその子がぎゅっと抱きついてきたので、私はそのまま話しかける。

「…落ち着いた?」

「……はい」

「また一人でいたんでしょ?呼んでくれればいつでも一緒にいてあげるのに」

「…すみません」

この子の名前はドードー。

少し前まで、私とコンビを組んでいた子だ。

この子は長い時間一人でいると昔の辛い記憶が蘇ってくるみたいで…いつもは誰か他の子と一緒にいる事が多いんだけど、周りに誰もいない状況が続くと、さっきみたいに倒れちゃうらしい。

そのままドードーをなでなでしていると、少し昔を思い出す。

フレンズになって日が浅かった頃、私は自分が怖かった。

ちょっと走るだけで抉れる地面、指先で弾いただけで倒れる木々、軽く蹴ったら砕ける岩…

身体は小さくなっているのに、パワーは動物だった頃と変わらないどころか、むしろ桁外れに強くなっている。

こんなの普通じゃない、私は化け物になってしまったんだと、そう思った。

だから私は、他のフレンズとの接触を避けた。誰にも見つからないように、森の奥の奥に隠れるように暮らした。他のフレンズのみんなを壊したくなかったから。

だけどある日、1人のフレンズが私の目の前に現れた。触っただけで壊れてしまうのではないかと思うほど、その子は小さくて…

けど、その子は私と同じ目をしていた。

その子は何故か、私から離れようとしなかった。私がどれだけ近付くなと言っても聞かなかったし、どれだけ逃げても必死に追いかけてきた。

ある日、私はその子にこう言った。「なんで私についてくるの?私は化け物だから、いつか君を壊してしまうかもしれない。お願いだからひとりにして!」

すると、その子は今にも消えそうな声で言った。「化け物でもいいです。壊されてもいいです。だから…ひとりにしないでください」

それから私はその子が動物だった頃の話を聞いた。

平和に暮らしていた所に新しい動物が突然現れ…住処を奪われ、仲間を奪われ、最後のひとりになって…話も通じず、何の抵抗も出来ず、逃げる事すら出来ず、最後には命まで奪われた…と。

私は誰かといる事が怖いけど、この子は周りに誰もいない事が何より怖いんだ…

その日から私とその子は、一緒に行動するようになった。一緒に起きて、一緒にご飯を食べて、一緒にセルリアンを消し飛ばし、一緒に眠った。

そうして日々を過ごしていくうちに、私はいつのまにか力加減を覚えていた。今では怖がる事も無く、こうして誰かを抱きしめる事も出来るようになった。

ドードーは私を命の恩人だって言うけど、私だってドードーに救われているんだ。

「…もうそろそろ大丈夫?」

「…もう少し、こうしててください」

「分かった」

私は再びドードーを抱きしめると、ドードーの頭を優しく撫でた。

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