キルギス人

キルギス人の老人

キルギス人（Kirghiz、吉児吉思）とは、北アジア（シベリア）南部～中央アジア南東部に定住するトルコ系民族である。古来は、クルグズ（柯尓克孜）と呼ばれた。同じトルコ系の突厥統治下にあった際につくられたオルホルン渓谷にある『突厥碑文』にはキルギズ(qyrqyz)記された。

総合人口は490万人。現在は、キルギス共和国（キルギススタン）に約260万人が定住し、近年から、漁労・農業にも従事している。言語はキプチャク語群に属するキルギス語を使用する。宗教はイスラム教である。

概要[]

紀元前より、シベリア南部のエニセイ川上流域の森林狩猟民として中国の史書に現れ、堅昆・契骨・黠戛斯（かつかつし）の種族名で伝えられている。

元来は、コーカソイドの古代イラン系とモンゴロイドの古代トルコ系の混合種族であったが、モンゴロイドであるトルコ系のキプチャク諸族をはじめ、ウラル系民族の南サモイェード人とチベット系と混血を繰り返して、唐代の７～８世紀はごろにはモンゴロイドの要素が濃厚なトルコ系として同化していった。

キルギスは古来から牧畜・狩猟に従事したほか、冶金（やきん）・金属加工にも長じていた。

キルギスはおなじトルコ系の匈奴・突厥・回鶻（ウイグル）などの強力な遊牧国家に圧迫されたが、依然として独立性を保って、唐と通交した。

840年ごろ、キルギスのカーンはウイグル帝国を攻撃して、それを倒しウイグル人の南西への移動を決定づけた。

13世紀の初めの1218年に、キルギスの各部族長はモンゴル系のモンゴル部のボルジギン氏族に属するキヤト氏のチンギス・カーンに服属して、モンゴル帝国のなかで色目人として優遇されて部族社会を保持しつつ、牧畜・狩猟・農耕・毛皮生産・金属加工を生業とした。

モンゴル帝国が明などによって崩壊した14世紀以降は、モンゴル化したトルコ系オイラート人の支配を受けて、次第に天山西部地域とフェルガーナ渓谷に移住するようになった。

引き続き、オイラート人や同じトルコ系のキプチャク諸族に属するカザフ人遊牧民の圧迫を受けて、そのためにキルギスはブルート（布魯特）ともよばれた。

17～18世紀以降は、オイラート系のジュンガル人とツングース系の清、およびロシア帝国の間接支配下に置かれた。

当時のことは、キルギスの叙事詩『マナス』には、彼らの移動説話も含まれている。コーカソイドのスラヴ系のロシア人によるソ連が成立すると、その支配下のキルギス人はキルギス社会主義共和国の主要人口となって、近代化の道をたどっている。中国の新彊ウイグル自治区にも一部のキルギス人が定住している。

考古学の加藤晋平は自著『日本人はどこから来たか - 東アジアの旧石器文化』（岩波新書/1988年）によると、キルギス人はチベット系と南サモイェード人の遺伝子が入っていることもあり、ロシア連邦のブリヤート共和国に定住し、キルギス人とほぼ同じ経緯を持つモンゴル化したトルコ系のブリヤート人とともに、日本の大和民族[1]と親近関係にあると述べている（「日本人バイカル湖畔起源説」）。

遺伝子[]

モンゴロイド由来のうちトルコ人種固有のハプログループCが63.5％、チベット人種固有のハプログループDも高頻度～中頻度、ウラル人種固有のハプログループNは中頻度～低頻度で見られ、さらにハプログループYのうちコーカソイド由来のハプログループR1aが中頻度で見られる[2]。

脚注[]

1. ↑オスト・タタールと古墳人も参照のこと。
2. ↑ Wells, Spencer et al. 2001, The Eurasian Heartland: A continental perspective on Y-chromosome diversity.

関連項目[]

• トルコ系民族
• ブリヤート人
• チベット系民族
• 大和民族
• マリ人

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