中村の弥右衛門

曖昧さ回避

この項目では、豊臣秀吉の父について記述しています。江戸時代初期の安房国の代官である弥右衛門尉の中村吉照・吉繁父子については「中村弥右衛門」をご覧ください。

秀吉の父・中村の弥右衛門（竹阿弥）像（右側の人物）

中村の弥右衛門[1][2]（なかむら の やえもん、？ - 1543年２月５日（天文12年１月２日））は、日本の戦国時代の人物で、豊臣秀吉[3]の実父である。『太閤素生記』[4]では木下弥右衛門とするが、具体的な確証はない。

妻は於仲（大政所/天瑞院春岩）[5]で、その間に於智[6]（日秀尼/村雲尼/瑞龍院）・秀吉（小松/木綿藤吉[7]）・秀長（小竹/小一郎長秀）・朝日[8]（旭/末津/駿河御前）らを儲けた。

概要[]

尾張国愛知郡中村郷[9]で生まれ、父母は不詳である[10][11]。

彼の出自は諸説があり、名字を持たない被差別部落による最下層の賤民・大工・鍛冶などの技術者集団・針売り商人・漂流民の山窩（広義的な傀儡子/道々の集団/旅芸人）の出身など、さまざまな説がある。少なくとも名字を持たない被差別部落系とされる賤民層であり、弥右衛門自身が中村郷出身のために実際は「中村の弥右衛門」が正しいとされる。

後に尾張国北部の土豪で、悪党である南朝方の楠氏の庶家である蜂須賀正利（小六郎正勝の父）に下僕として仕えたという[12]。その後、正利の命で織田信秀（信長の父）が美濃国の斎藤道三と戦うときに、雑兵として従軍して戦った。

しかし、戦いの最中に膝やあるいは足の裏を切断して負傷したために、主人の正利に暇を乞い故郷に戻って出家して、法名を「竹阿弥（筑阿弥）」と称して養生した[12]。だが、間もなく発病して、秀吉が８歳の時に逝去した[13]。戒名は妙雲院殿栄本虚儀である。

弥右衛門の長男の秀吉は商売が巧みで、人々の利害による心理を読み取り、立身出世した事項を見ると、弥右衛門は貧しい商人かあるいは漂流民の傀儡子の出自が有力だという。後に秀吉が天下統一すると、亡父に対して「羽柴定吉」「豊臣定吉」として諱を贈ったという[14]。

脚注[]

1. ↑ 『太閤記』などの伝記では、子の秀吉が仕えた今川氏（駿河源氏）の家臣である松下之綱（加兵衛、秦氏の系統である三河西條氏の庶家）が烏帽子親となって元服させ、最初は故郷の地名を取って「中村藤吉郎」と名乗り、後に木下に改姓したと書かれている。なお、加兵衛もしくは信長と最初に会った時に「木の下」に立っていたのでこれを名字としたとする俗説は極めて信憑性が薄く、事実ではないと伝わられている。また、『尾張群書系図部集』には「昌吉」との諱が載せられているが、信憑性はあまり高くない。
2. ↑ 同時に、『中興武家諸系図』では「中村弥右衛門昌吉」、天野信景（源蔵）著『塩尻』「豊臣秀吉」では、「中村弥助昌吉」とされているが、これも信憑性はあまり高くない。
3. ↑ 羽柴秀吉/木下藤一郎とも呼ばれる。
4. ↑ 幕臣の土屋知貞の著作。なお、尾張木下氏は尾張杉原氏の一族であり、秀吉の妻の於禰の方（寧々/北政所/高台院）の姓である。
5. ↑ 美濃国武儀郡関郷（現在の岐阜県関市）にいた鍛冶屋の弥五郎の娘。
6. ↑ 三好吉房（弥助）に嫁ぎ、秀次・秀勝・秀保らを儲ける。
7. ↑ 小瀬甫庵著『太閤記』では、秀吉の幼名は日吉丸、通称は木下藤吉郎とするが、後世の創作であろうという見方が有力である。
8. ↑ 兄・秀吉の政略結婚による命で、徳川家康の後妻となる。
9. ↑ 現在の愛知県名古屋市中村区
10. ↑ 竹中重門（重治（半兵衛）の子）著『豊鑑』より。
11. ↑ 異説では、織田達勝（信長の族祖父）に仕えた中村吉高（比叡山還俗僧・中村国吉（浅井重政の子の氏政と同人物とする説がある）の玄孫）の子とされている（『尾張群書系図部集』３巻、P634-637）。
12. ↑ 12.012.1 小和田哲男著『豊臣秀吉』より。
13. ↑ 『京都瑞竜寺過去帳』『木下家系図』
14. ↑ 信長の祖父である信定の一字を肖（あやか）ったという。

関連項目[]

• 豊臣秀吉
• 織田氏
• 蜂須賀氏

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