ユリウス・ネポス

ユリウス・ネポスの肖像

フラウィウス・ユリウス・ネポス（Julius Nepos、Flavius Julius Nepos、430年？ - 480年）とは、ローマ帝国最後の西方正帝（在位：475年〜480年）。東方正帝レオ１世の支持を受け即位した。

しかしゲルマン族出身の軍師のオレステスに帝位を奪われ、ダルマティアで復位し、イタリア奪還を狙うがオドアケルにより殺害される事になる。彼の死により西方帝位は永遠に失われる事になった。

略歴[]

ダルマティアに基盤を持つ貴族の家に生まれる。彼以前にもダルマティアからは彼の父ネポティアヌスなどの有力者が出ており、当時のローマ帝国宮廷ではそれなりの影響力を持っていたと考えるのが妥当であろう[1]。皇帝レオ１世の義理の姪と結婚しており、「ネポス」と言うイグノーメンも甥を意味すると言われている。

一方の西ローマ帝国は、有能な権力者だったリキメルの死後、帝位を巡る争いで混乱しており、グリケリウス帝が即位してもその混乱は収まる事なく、ゴート族やフランク族などが国境を荒らしていた。

レオ１世としてはこのままでは西ローマ帝国が滅亡する事は時間の問題であり、そうなれば東ローマ帝国にそれらの蛮族が流れて来るのは目に見えており、何としてでも防がねばならなかった。しかし、レオ自身には東西両方を統治する程の力はなく、結果として血縁者で尚且つ西側とも繋がりの深いネポスを統治の為派遣したと思われる。

レオ帝の読みは見事に当たった。今までの西方帝に比べて遥かに正当性の高いネポスの存在は大きかった。慌てたグリケリウスは講和を申し込み、グリケリウスはダルマティアに引退した。

皇帝になったネポスは、西ゴート王国 の独立を承認したりと、一定の政務活動を行ったものの、西帝国での支持は高くなく、間も無く軍師オレステスによりイタリアを追われる。しかし東帝国のゼノは依然として彼を支持しており、彼自身もダルマティアで復位を宣言した。一方のオレステスは息子ロムルス・アウグストゥスを皇帝として即位させた。

しかし翌年に、オレステスが蛮族出身の傭兵隊長オドアケル（オドワクレ）により殺害され、皇帝は退位させられた。オドアケルは元老院の権力を強化し、議員達にゼノ帝と交渉する事を命じた。ゼノ帝はオドアケルをイタリア王と認めつつ、ネポスの臣下として振る舞う事を要求した。オドアケルは要求を呑み、ネポスに忠誠を誓った。

しかし、実権はオドアケルが握っており、ネポスは所詮形式上の存在でしかなく、ネポス自身はこれに満足しなかった。またダルマティアにはグリケリウスもいた。

480年、宮殿にいたネポスは突然殺害された[2]。暗殺の主犯とされた将軍オヴィダは間もなくオドアケルにより殺害されるが、グリケリウスはこの後オドアケルに取り立てられており、彼が殺害したとも言われるが真相は不明である。

彼の死後の西ローマ帝国[]

彼の死によってローマ帝国は再び統一されたが、西欧領土の回復はユスティニアヌス１世の再征服活動まで待たねばならない[3]。

彼の死はローマ帝国による西欧支配の終焉とも取ることが出来、中世の始まりと考えられる。彼の死とソアソン陥落で西欧からはローマ文明は完全に失われ、ローマ帝国滅亡によるルネッサンス期まで西欧の文明は低迷を続ける事になる。

脚注[]

1. ↑ またこの一族にネポスを名乗る者が多く、ネポスの名もここに由来するという説もある
2. ↑ 彼も暗殺には気を付けており護衛兵を付けていたが、皮肉にもその護衛兵に殺害された。
3. ↑ ただしガリアではソアソンのシアグリウスが486年まで抵抗を続けていた。

関連項目[]

• ローマ帝国
• ゼノ
• レオ１世
• オドアケル
• ロムルス・アウグストゥス

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