ライラ・グレーシャーのキャラページ
浸食新種(クラス評価保留中)& ディザレーター
「ライラ・グレーシャーです。PLACEという組織で共同代表をしています。」
「ようこそPLACEへ、他者を脅かさない限り、私たちはあなたを歓迎します。」
「生きる為なら殺し合いだってする。でも、出来る限りそうならないようにするのがココのやり方。」
「メイベル、今日はちょっと甘えさせて……」
「みんな、必ず生きて帰ろうね。」
所属
PLACE 共同代表者/兵務局長官
話し方
【一人称】私
【二人称】目上や他組織の役職・階級持ち:○○さん、○○[階級・役職]
PLACEのメンバーや一般人:(大幅に年上)○○さん、(同年代以下)呼び捨て
指示代名詞:「あなた」が多い。「キミ」も時々使う。怒った時は「お前」も使う。
性格
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元々は正義感が強く、困った人を見ると助けずにいられないタイプだったが、シルベリスから離反した際の厳しい境遇の中で、生きる為に避けられないのであれば悪事にも手を染める覚悟ができた。(実際、逃亡中に空き家から衣服や金品を盗んだことがある。)ただ、そうした行為は最後の手段だと考えており、今も基本的には他者と支え合うことが生存への最適解と信じている。
前向きで明るい性格だが、そこにはこの世界や時代に対する諦め、または覚悟が前提となっている。
この世界は悲しみで溢れているからこそ、幸福を享受することが大事だと、明日が見えない時代だからこそ、今日を大切にしたいと考えている。
経歴
シルベリス皇国武装親衛隊の若手将校だったライラは、浸食新種による襲撃を受け、弟のレイと共に重篤なディザレア汚染を受けてしまう。汚染者への処分を恐れた二人は国外逃亡、逃亡先でメイベルと出会うが、治療が間に合わずレイは浸食新種に変異し、脱走してしまう。
その後、メイベルとPLACEを設立・運営し、その活動中にレイを発見するが…
分類について
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彼女の身体は、以下のように、浸食新種2種とディザレーターの体組織が共存するキメラ的状態にある。
・大型浸食新種によって変異した組織:下半身、翼など、体積比で60%
・浸食新種化した弟(レイ)から移植された組織:心臓、右目、左手など、体積比で15%
・ライラ元来の組織:頭部や中枢神経系、上半身の胴体など、体積比で25%
脳や中枢神経系の浸食を免れたことで、この状態でも自我を維持できている。
そのため、彼女が「ジンルイ」なのか、浸食新種なのかを決めることは難しく、冒頭のような変則的な分類となっている
関係
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メイベル PLACEのもう1人の共同代表にして、ライラの人生の伴侶。ライラが自身の弱さを見せることができる数少ないヒト。
ポラリス 冷静さや歴史への知識を評価して参謀に抜擢した。自分にもしもの事があれば、代表者か代表補佐にしようと考えている。
サイレンス 将来のPLACE代表として育てたいと思っている。
レイ・グレーシャー ライラの弟で、浸食新種化した後、PLACEに保護されるものの、その時にライラが受けた致命的な負傷の治療のために、自ら心臓や左手などを提供し死亡した。
セルヴィッジ シルベリス皇国親衛隊に所属していた頃の上官。ライラとレイがディザレア汚染を受け脱走する際に立ちはだかり、ライラとの決闘の末死亡した。
能力
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能力 | 効果 | 属性 |
---|---|---|
シルベリス式長剣術・槍術 |
一般的な長剣による攻撃。ディザレーター化により筋力が強化されている。 あの頃は自分がディザレーターどころか、浸食新種になるなんて思わなかった。 |
ディザレーター |
ディザレアスラスター |
左手から濃縮されたディザレアを出力する。銃のように射出したり、剣を形成したりする。 レイはまだ生きてる。私が生きている限り、この腕と右目と心臓がある限り。 |
ディザレーター & 浸食新種 |
アブソプション |
左手からディザレアを吸収する。吸収したディザレアは彼女の体内で分解される他、アンセルによる補助によりさらに高速で分解可能。 レイは浸食新種になった後、他の個体のディザレア汚染を肩代わりしようとした。 |
浸食新種 |
相互浸食 |
2つの浸食新種組織の拮抗作用を利用し、双方の組織同士で過剰な浸食を行わせる。これにより、脳や中枢神経系の浸食を受けずに、一時的に身体を劇的に変異させることができる。 レイ……。少しの間だけでいいから、あなたの力を貸して。 |
浸食新種 |
ストーリー
【注意】文章による過激な表現を含みます。ご了承の上お楽しみください。 |
Chapter1:沈黙+クリックで開く-クリックで閉じる
シルベリス皇国武装親衛隊の若手将校、ライラ・グレーシャー少尉は「ロンリー・プリンセス」と名付けられた浸食新種についての報告書を受け取った。 今彼女がいるのは国境近くのモノヴェーラという街だが、そこを北西にずっと行った先には局所的にディザレア汚染が強く残る「止まない雨の森」という地域があり、時折そこで危険度の高い浸食新種が発見されている。 彼女に報告書を渡したのは、彼女の指導役のセルヴィッジ大尉である。彼はもともと一般兵だったが長年の貢献により下士官登用され、さらにそこから昇進して見せた人物であり、上位の将校にも一目置かれるような存在であった。今は後進の育成に注力しており、ライラの他にも何人かの若手将校の面倒を見ている。 ライラが資料を読み終わる頃合いを見計ってセルヴィッジは語りかける。 「この浸食新種だが、先ほどクラスがDGに引き上げられた。最近の観測で凶暴化の兆候が見られたらしい。さらに悪いことに、ヤツの移動能力は極めて高いことも分かった。今ヤツがその気になれば、雨の森から少なくとも20分でここまで飛んでくるだろうとさ。」 ライラにはDGクラス、つまり高危険度の浸食新種の討伐任務の経験はなかったが、彼女は迷うことなく答えた。 「はい。市民のため、そして生命を賭して戦ってくれる兵のために、全力を尽くします。」 「そうだ、よく言ってくれた。」 セルヴィッジは満足そうに微笑み、そして去っていった。他の将校たちにも同じ話をするのだろう。
その日の夜、ライラは明日が休暇になっていたので家に帰っていた。 その後ライラは、ベッドに横になりながら、3日後の任務について考えていた。
ライラの目を覚ましたのは、朝の日差しでもレイの呼び声でもなく、建物が崩れる轟音と振動だった。 飛び起きた彼女は、まず氷魔法で生成した即席の短剣を構え、様子を伺う。音は近くで起きたが、この家の中ではない。 そこで2階にある彼女の部屋の窓から、外を見ると、広がる暗闇の中で、崩れた家屋から出る火、そして松明と照明が人々を照らしていた。 まずはレイを避難させ、自分は親衛隊に合流せねば。 「よく聞いて、浸食新種が直ぐ近くにいる。避難誘導の人まで送るから、そのあとは親衛隊の人たちの言う通りに逃げて。」 レイは頷いたが、その顔から恐怖が読み取れる。とっさにライラはレイを抱きしめた。お互いの不安や恐怖が落ち着こうとしていた時、凄まじい轟音と衝撃が二人に襲い掛かった。 とっさにレイを庇っていたライラが振り返ると、家が半分吹き飛ばされていることに気がついた。そして、触腕の鞭を振るう浸食新種が目の前に迫っていた。 「逃げて!」 レイを逃がし、ライラ自身も立ち上がり、距離を取るために後退してゆく。 レイが家に一番奥の玄関に差し掛かるのを横目に見ながら、ライラは手元に氷の刃を構えた。 一人で勝てる相手ではない、レイが逃げる最低限の時間を稼ぎ、それまでに親衛隊が来なければ逃げるしかない。 ライラは右腕を振り上げる。手元の氷の刃を投げようとしたのだ。しかし、腕を振り下ろす途中で強い力を受け、体制を崩し床に倒れてしまった。なぜか無限に感じられた一瞬の時間の後、ライラは彼女の脇腹に突き刺さる触腕に気がついた。 「あぁぁっ……!!、…………!!」 この時ライラは確かに、触腕からライラの体内にディザレアが注ぎ込まれ、それが身体の中を駆け巡るのを知覚した。 触腕の主は満足そうな表情を浮かべ、ライラに突き刺した触腕を引き抜く。傷口からは生暖かな赤色が広がり、口の中に鉄の味が満ちていった。 そしてこの時やっと、ライラは自身に刺された触腕の他に、もう一つの触腕が後ろに伸びていたのに気がつく。 「レイ!!」 それはライラの最愛の弟の肩を突き刺していた。 「レイ……!レイっ……!……!」 ライラはレイに近づいていくが、進むたびに体は重く、レイは遠ざかるように感じられ、いつしか平衡感覚が無くなり、足が動かなくなった。視界は彩度を失い、意識が明滅する。
過去の記憶がふと蘇る。 将校になって最初の任務、そして初めてヒトの命を奪った日。 モノヴェーラのはずれの農地でのCTクラス討伐任務。浸食新種の討伐は問題なく完了したが、浸食被害でディザレーターになってしまった農家の男が親衛隊による捕縛を拒み、セルヴィッジやライラたちに攻撃を仕掛けてきた。 一般兵たちの奮戦の甲斐もあり、重傷者や追加の浸食被害者を出すことは無く男は制圧された。しかし、その交戦の最中に男はディザレアによる攻撃を会得しつつあり、危険度が高いとして、本部から即時処分の命令がライラへ下された。 当時のライラは、その判断は止むを得ない物だと考えていた。収容施設に移送する途中で脱走したら、兵士や他の市民に危険が及ぶ。 今ここで終わらせることが、最もリスクが少ない方法だった。 「ライラ、行けるか?」 セルヴィッジは確かめるように尋ねた。 「はい、やります。」 ライラはそう答えると、サーベルを引き抜き、男へ構えた。 男の表情には恐怖が浮かび、最後の抵抗と言わんばかりに一般兵の拘束から抜け出そうともがく。 「シルベリス皇国武装親衛隊、少尉のライラ・グレーシャーです。ディザレア除染法に基づき、あなたの処分を行います。」 男は何も言わなかった、いや、言葉を発する余裕もなかったのだろう。ただ息を切らし震えていた。 ライラは男に歩み寄り、そしてサーベルを彼の胸の中央に突き立てる。手元に生暖かい感覚が降り注ぐ。剣を引き抜くと、鮮やかな赤の奔流が彼女の足元を染めていった。 恐怖とも、罪悪感とも言えないものが、彼女の喉の奥に灼き付いた。
むせ返るような熱気の中、ライラは目覚めた。燃え盛る炎の色彩が目に突き刺さる。 レイは? 彼のことが真っ先に思い浮かんだ。 「レイっ!聞こえる?!」 彼女はレイを抱えながら呼び掛けた。 「うん……ライラ……っ、聞こえてるよ。」 レイの声は弱々しかったが、それでもライラを安堵させるには十分だった。 「良かった……。歩けそう?」 「うん、何とか……。」 ライラはレイに肩を貸し、二人はゆっくりと立ち上がる。 「これからどうするの?」 レイは不安そうな顔でライラに尋ねた。 「この街から逃げよう、親衛隊に見つからないようにね。」
ロンリープリンセスによる浸食を受けた二人に待つ命運は、良くてディザレーター化、悪ければ浸食新種化だった。いずれにしてもシルベリスでは生きていけないだろう。 それどころか、今の時点でさえ、浸食を受けた事を親衛隊に知られれば、その場で「処分」される事は目に見えていた。 「姿勢を低くして、足元に気をつけてね。」 ライラはレイの手を引き、崩れた壁の隙間を、破片で怪我をしないように慎重に通りぬける。その先は細い道になっており、まだ火が来ていない方向に向かった。 家屋や瓦礫の陰に隠れ、親衛隊はもちろん、他の住民の目にも極力留まらぬように進んでゆく。夜の闇と炎のコントラストを味方につけ、予想以上に順調に進むことができた。 しかし、ここモノヴェーラは城壁に囲まれており、その出入り口は決して多くはない。当然ながら親衛隊の見張りがそれぞれの出入り口を固めている。 その出入り口のうち、ライラたちが辿り着いたのは北側の林道に通じる門だった。見通しの良くない林道は逃亡にうってつけであったが、皮肉にも、そこではライラが率いるはずだった第3防衛部隊 第2班と、ライラの代理で現場に出てきたセルヴィッジが検問を敷いていた。 ライラは迂回を考えたが、不運にも先ほど通ってきた道に親衛隊が立ち止まり、何かを調べ始めため断念した。 そうなると、残されたのは検問の突破だが、検問にはセルヴィッジ含め少なくとも6人の戦闘員がいる。ただ無策で突っ込んでも勝ち目はない。 そこでライラは、賭けに出ることにした。 その前に彼女は、レイに向き合って語りかける。 「ここからは、いいって言うまで絶対に私から離れないで。だけど、私が歩けなくなったら、走って逃げて、少しでもシルベリスの外に向かって。」 「ライラを置いていけない!」 レイは反論する。 「いいから、とにかく生き残ることだけを考えるの。」 ライラがそう諭すと、レイは弱々しく「わかった。」とだけ言った。 本当は彼もライラのために最後まで戦いたいのだろう。しかし、戦いの心得のない彼がそうしたところで、どうにもならない事は分かりきっていた。 ライラはレイを抱きしめて、なだめる様に語りかける。 「大丈夫、ちゃんと最後まで守るから。」 そして、ライラは振り返り、レイの手を握る。 「じゃあ、行こう。」 二人は隠れることなく堂々と検問に向かう。血のついた服装の二人は周りの注目、と言うよりは警戒を集めたが、片方が将校のライラである事に周囲が気がつくと、それはある程度和らいだ。 「ライラか!何があった!」 セルヴィッジが二人に駆け寄る。 「瓦礫の破片を受けてしまいました。しかし、それよりもお話が。」 ライラはセルヴィッジに近づき……そして、セルヴィッジの後ろに回り込み、手に隠した氷の刃を彼の首元に突き付けた! 「動かないで!!大尉を殺したくはない!」 他の隊員に叫びながら、ライラはセルヴィッジの"後の先"を警戒する。しかし、彼は反撃の様子を見せないどころか、両手を挙げ無抵抗の意思を示した。 「慌てるな、彼女の話を聞け」 セルヴィッジも他の隊員に言い聞かせる。 そして、他の隊員に聞こえないよう、静かにライラへ語りかけた。 「何か事情があるんだな?その様子だと、浸食を受けたのか?」 「ここでは話せません、壁の外の森までついてきてください。」 ライラはセルヴィッジへ刃を突き付けたまま、後退りするように門へと向かう。レイもその隣を離れることなくついて行く。 親衛隊員たちは一定の間合いを保ったまま、3人についてくるが、セルヴィッジが彼らを制止した。 ライラ達は門の外の林道へと歩き出し、言葉を交わす事なく国境側へと向かってゆく。
モノヴェーラの市街が見えなくなった頃、セルヴィッジがライラに問いかけた。 「やはり……浸食を受けたんだな?お前か?それとも弟か?」 「二人ともです。シルベリスを抜け出して、外で治療してくれる人を探します。」 「そうか。」 そしてライラが切り出す。 「大尉、見逃してくれませんか?目隠しをされて置いて行かれた等と言っておけば、あまり咎められない筈です。」 「それは出来ない。君たち二人は離反行為で捕縛されてもらう。浸食検査の結果次第だが、命だけは助かるように取り計ろう。」 「大尉……あなたこそ分かっているはずです。私はもう引き返せない……。」 「そうか、残念だ。」 その時、セルヴィッジはライラのわずかな隙をつき、彼女の拘束から抜け出した。 ライラはセルヴィッジを再び押さえつけようとするが、それよりも早くセルヴィッジが彼女を突きとばし、間合いを確保する。 「剣を取れ、もはやこれ以上の言葉は必要ないだろう。」 ライラは息を吸い、レイに下がるよう言ってから、静かにサーベルを引き抜く。 「ええ、生きる為ならお相手します。大尉、ご覚悟を。」 二人は剣を向け合ったまま静止する。両者を包み込む緊張感は、森の木々や鳥たちに沈黙を強要した。
最初に仕掛けたのはセルヴィッジだった。大きく踏み込み斬り払いを放つ。ライラはサーベルでこれをなんとか受け止めた。 すかさずライラが反撃に移る、左下からの斬り上げに、魔法で生成した無数の氷塊を追従させた。 セルヴィッジは斬り上げを受け流すと、後ろに飛び退き、氷塊の勢いを殺して受け止めた。 「覚悟を決めるのはお前のほうだ。俺を生かそうなどと甘い考えは捨てろ。……さもなければ、俺がお前を殺す。」
セルヴィッジはもう一度踏み込み間合いを詰める。そして気がついたときには、刃が彼女の左肩に食い込んでいた。 ライラの絶叫が森に広がってゆく。 セルヴィッジはそこからさらに彼女を切り裂こうとしたが、ライラがほぼ無意識的に放った氷の刃を避ける為、剣を引き抜いて間合いを取り直した。 ライラの左肩から血が流れ出す。慌てて氷で傷を塞ぎ、間に合わせの止血をする。
彼は本気だ、死にたくない。 痛みが、恐怖が、彼女の生存本能の引き金を引いた。 息が荒くなり、目の奥が錐で刺されたように痛む。 夜明け前の森は先ほどにも増して暗くなり、踏み込めば剣が届く間合いにいるセルヴィッジの姿が何とか見えるほどになっていた。 「嫌だ……!近づくな!!」 ライラは力任せにサーベルを振り払う、セルヴィッジの身体は両断され、紫の砂塵となって吹き飛んでゆく。 しかし、安心しかけた瞬間、彼女の体をどこからともなく現れた無数の剣が串刺しにする。そして目の前の暗闇から、切り裂いたはずのセルヴィッジがまた現れる。 それがディザレアと流血の精神的動揺による幻覚である事に、この時のライラが気付けるはずもなかった。
「やめろおお!!」 ライラは叫びながらサーベルを振り回し、彼女の視界に張り付いたセルヴィッジの幻影を幾度となく切り裂く。しかし、何度やっても幻影は取り除かれる事は無く、それどころか、幻影は逆にライラの身体を切り裂き、砕いていった。
「ライラ、もういい!もう終わったんだ!」 聴き慣れた声が、ライラを現実に引き戻した。 ライラはレイ抱きしめられたまま、呆然と立ち尽くしていた。 手に持っていたサーベルは捻じ曲がり、赤黒くなった血に塗り固められていた。 「レイ……大尉は?」 「覚えていないなら見ない方がいい。」 その言葉で、ライラの予感は確信になった。 「ありがとう。でも、向き合わないと……」 レイを優しく退かし、セルヴィッジの元に向かう。
ちょうど木の影に隠れて倒れていた彼の身体が視界に入ると、ライラは声を上げ泣き崩れた。 セルヴィッジの遺体は左腕を欠いており、胴体も執拗に切り裂かれた結果、ほとんど原型を留めていなかった。
本当にこれが自分のした事なのか?自分のしたかった事だったのか?後悔と自責の念は涙と共に溢れ出す。
避けられぬ戦いだったからこそ、結果よりも過程が大切だったはずだ。 どちらかが死んだとしても、その信念は遺され、もう片方が背負うべきだったはずだ。 なのに、セルヴィッジの最期の言葉を聴くことは叶わず、結果として、ライラは彼の遺志までも、殺してしまったのだ。
責めてもの償いとして、彼女は誓いを立てた。 「レイを……弟を守ります。命に変えても……。」
そして、セルヴィッジを落ち葉の中に埋め、側に彼の剣を立てた。 「ここに置いて行く事をお許しください。そして、どうか、親衛隊かモノヴェーラの人が見つけて、仲間や家族の元に帰れますように。」 ライラはそう言い残すと、二人はその場を後にし、夜明け過ぎの林道を国境に向かって歩き始めた。
血塗れの少女とその弟の悲しみを、物言わぬ森の静けさだけが慰める。
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Chapter2:越境[作成中] |
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