ブラック・ジャック 劇場版

ページ名:ブラック_ジャック 劇場版

登録日:2022/04/18 Mon 02:10:00
更新日:2024/06/18 Tue 13:34:48NEW!
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その男、メスを握れば"神″となる。




ブラック・ジャック 劇場版』は、全国松竹系劇場において1996年11月30日に公開された手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」の劇場版アニメ。上映時間は93分。
1993年から2011年まで断続的に発表されたOVAシリーズの流れを汲む作品で、原作にはない劇場用オリジナルストーリーとして製作された。
2005年に公開された劇場版『ブラック・ジャック ふたりの黒い医者』は、テレビアニメ版の劇場版であるため接点は無い。
監督はOVA版と同じく出崎統*1
音楽はOVA版第6話より参加した川村栄二が担当、主題歌は山根麻衣『Invisible Love』。




■概要

OVA版の流れを汲む作品であるため、後に制作されたテレビアニメ版とは異なり、劇画的にキャラクターが描かれているのが本作の特徴。
手術や死亡の描写が非常にリアルなので、そのあたりが苦手な人は視聴に注意が必要。
また、キャラクターが極度の興奮状態に陥ったり、死亡する際に、人体描写がサーモグラフィーに切り替わるといった演出も特徴的。
出崎監督特有の「ハーモニー」や「陰影」、「入射光」などで、人間の「生死」や「苦悩」がリアルに演出されている。




■あらすじ

1996年、オリンピックの陸上や競泳競技において、人間の常識を超えた新記録が次々に打ち立てられた。
驚異的な集中力で圧倒的なパフォーマンスを発揮する彼らは、「超人類」と呼ばれるようになり、人類の新たな希望として持て囃される。
一方、天才無免許医ブラック・ジャックは、そんな社会の喧騒に興味を持たず、13歳の少女リサ・シーゲルの手術を淡々とこなしていた。


2年後、超人類の活躍はスポーツだけではなく、芸術や科学の分野にまで及び、日々のニュースを独占し続けていた。
しかし時を同じくして、手術によって完治したはずのリサの病気が再発し、ブラック・ジャックの目の前で死んでしまう。
15歳であるはずのリサの内臓は、90才の老人のように酷使されていた。
そして、ブラック・ジャックは、超人類の多くもリサと同様に謎の奇病に侵されていることを、セント・ジョエル研究センターの主任ドクターであるジョー・キャロルから聞かされる。
ピノコを人質に取られたブラック・ジャックは、超人類やリサの病気の真相を突き止めようとするが、その裏には巨大製薬会社の陰謀が隠されていた…。




■用語

  • 超人類

スポーツ・芸術・科学などの分野において、人間の常識を超えた圧倒的なパフォーマンスを発揮する人々。
全ての超人類が後天的に超人類としての能力を体得しており、その多くは元々平凡な一般人または二流のアスリートであった。
1996年のオリンピックにおいて突如として登場し、その後2年間でブレーン製薬によって1230名が確認されている。


  • エンドルフ・アー

ジョーの開発した新薬。セビア砂漠の「光る砂」から精製される。
服用することによって脳内麻薬であるエンドルフィンの異常分泌を引き起こし、一般人を超人類へ変化させることができる。
ブレーン製薬によって選ばれた153名のモニターに極秘裏に投与され、素晴らしい効果を発揮したことから、
「夢の新薬」とされたが、その副作用としてモイラシンドロームを発症してしまうことになる。
さらに経路不明の感染を始め、前述のようにモニター以外にも1000名以上の超人類を生み出してしまった。


  • モイラシンドローム

超人類が発症した奇病。その名はギリシア神話における運命の女神モイラに由来する。
進行性の多臓器不全を引き起こし、初期症状は大量の発汗・脱水症状・体温上昇など、その後下痢・拒食症・吐血・心臓破裂・心不全などを併発し、死に至る。

セビア砂漠に生息するフルジウムという植物の花粉に生息する未知のウイルスによるもの。
ウイルスが脳下垂体に寄生することで、大量のエンドルフィンが分泌され、超人類としての力が発揮されるが、
肉体の限界を超えてもエンドルフィンが分泌され続けるため、内臓がボロボロになってしまう。
脳下垂体に薄くはりつくように寄生するため、外科手術で取り除くにはブラック・ジャック級の超絶スキルが必要だが、
フルジウムの茎に抗体が存在しており、茎を煎じて飲むことで末期状態からでも快復が可能。


  • セント・ジョエル研究センター

公共への奉仕を第一に考えて作られた医療研究施設…は建前で、実際には業界第一位のブレーン製薬によって出資・運営が成されており、ブレーン製薬の研究施設そのものである。
お抱え医師の多くもブレーン製薬の息がかかっている。
超人類の保護・治療を名目に彼らを世間から隔離していたが、MSJの襲撃を受けて制圧され、その非人道的な実態を白日の下に晒される。


  • MSJ

“Medical Soldiers for Justice”の略。別名「戦う医師団」。
国家的権力、組織的暴力によって蹂躙された医療患者の救済、人権保護、それらの患者に対する公正な治療の続行を目的に組織された医療ボランティアグループ。
きわめて悪質な組織に対しては軍用の小火器や爆発物等を使用して暴力的に組織を制圧することもあり、今回のセント・ジョエル研究センター占拠がその一例と言える。


  • セビア

アフリカにあるとされる架空の国家。
国土に広がるセビア砂漠には、「砂漠の民」と呼ばれる現代文明を拒絶して昔同様の生活を行う遊牧民が暮らしている。
また、セビア砂漠では「セビア横断ラリー」が開催されている。



■登場人物

  • [[ブラック・ジャック>ブラック・ジャック/間黒男]](CV:大塚明夫

ご存じ天才無免許医。詳細は該当項目を参照。
ピノコを人質に取られ、また、自身の患者であったリサの死の真相を探るためにジョーの研究に協力するが、ジョーの手によって超人類とされてしまい、モイラシンドロームを発症してしまう。


  • [[ピノコ>ピノコ]](CV:水谷優子)

ご存じブラック・ジャックの「おくたん」。詳細は該当項目を参照。
今作では人質になっているため、序盤と終盤以外はほとんど登場しない。
それでも先生の「おくたん」らしく、極限状態においても彼の身を一番に案じていた。


  • ジョー・キャロル(CV:涼風真世)

本作のキーパーソン。本名はジョー・キャロル・ブレーン。
セント・ジョエル研究センターの主任ドクターにして、研究センターの実質的な責任者。
ブレーン製薬の後継者を創り出すために集められた優秀な頭脳を持つ精子と卵子から人工授精によって産まれ、幼い頃は「7 1 0 1セブンワンオーワン」とナンバリングされていた。
刑務所のような環境での厳しい教育と競争を勝ち抜き、ブレーン会長の養女として認められるも、
敗北して生死すら分からないまま去っていく友人達を目の当たりにして、心を氷のように固く閉ざしていった。
超人類を産み出す夢の新薬「エンドルフ・アー」を開発するが、経路不明の感染とモイラシンドロームの発症により追い詰められ、起死回生の手段としてブラック・ジャックを研究に引き込む。
セント・ジョエル研究センターがMSJの管理下となった後もニューヨークに潜伏していたが、ブラック・ジャックと密会した際、
エンドルフ・アーの原液を混入させたワインをブラック・ジャックに飲ませて超人類にさせ、研究を続けざるを得ない状況に追い込んだ。
その代償として自身もワインを飲み、超人類となってモイラシンドロームを発症してしまう。

企業の利益ではなく、自分を産み出した合理主義や科学技術の価値観でははかれない、新しい能力こそが未来の人間には必要であると考えたため。


  • エリック・カデリィ(CV:星野充昭)

セント・ジョエル研究センターの脳外科医だが、実はMSJのメンバーであり、スパイとして研究センターに潜伏していた。
当初は、無免許医で高額な報酬を要求するブラック・ジャックを軽蔑していたが、彼の技術と医療に対する姿勢を見て態度を改め、敬意をもって接するようになる。
だが、その辺りの描写がほとんどないので、態度の変化が唐突に感じられる。
父がセビア出身で、ブラック・ジャックをエンドルフ・アーの工場へ案内する。


セント・ジョエル研究センターの麻酔科医だが、彼女もエリックと同じくMSJのメンバー。
ブラック・ジャックやエリックと共にセビアへ行く。


  • ブレーン会長(CV:青森伸)

業界第一位の巨大製薬会社であるブレーン製薬の会長。ジョーの心を歪ませた本作の元凶ともいえる人物。ジョーに対して「何がお前を狂わせた」という台詞を吐いているが、ぶっちゃけ「お前が言うな」の極みである。
モイラシンドロームが明るみに出た後も関わりを否定し、手段を選ばない証拠隠滅で養女であるジョーをも亡き者にしようとする。


  • リサ・シーゲル(CV:近藤玲子)

ブラック・ジャックに心臓房室弁の手術を受けた少女。13歳。
手術により完治したかに見えたが、2年後に再発、「先生は超人類だもの、きっと私を治してくれる」と言い残してブラック・ジャックの目の前で死んでしまう。
彼女の遺体を解剖した結果、内臓が90歳の老人のように使い古されていた。
絵画に特異な才能を発揮した超人類の一人であり、ブラック・ジャックは知らなかったが一枚の絵画が数十万ドルで取引されていた。
リサの死後にその内の一枚が彼女の両親から医療費の代わり*2としてブラック・ジャックに渡された。*3
この事が後述の画商の訪問を招く事になり、リサが超人類であったことをブラック・ジャックが知るきっかけとなった。

幼い頃の自身の面影をリサに見たジョーの指示により、エンドルフ・アーのモニターの血液を輸血されていたため。
モイラシンドロームもまだ確認されておらず、正真正銘人類の希望であった超人類になることがリサの幸せにつながると信じた故の行動だったが、ブラック・ジャックには「本人の意思を無視した人体実験」と断じられた。


  • エレン・シュライア(CV:折笠愛

ポーランド*4出身の女子陸上選手。女子100m走オリンピック金メダリスト。
12歳までかけっこの経験すらなかったにもかかわらず、13歳で突然ジュニア新記録を出し、15歳でオリンピックに出場。100mを男子の記録すら超える9秒61*5で駆け抜け金メダリストとなる。
しかし、2年後にはモイラシンドロームを患い、セント・ジョエル研究センターに収容されていた。
ブラック・ジャックが研究センターに入った夜に病状が悪化して発狂。「まだ走れる」と叫び、その人間離れした走力で病室の壁めがけて疾走し、頭を強く打ち付けて死亡する。


アメリカ出身の男子陸上選手。男子棒高跳オリンピック金メダリスト。
引退目前の中堅選手であったが、オリンピックで7mという驚異的な世界新記録*6を跳び、国民的英雄となる。
しかし、彼もまたモイラシンドロームに体を蝕まれ、研究センターに収容されていた。
ブラック・ジャックの手術により症状は改善されたが、超人類としての力を失ったことで絶望・発狂し、天井めがけてジャンプ。
ベッドに開頭手術直後の頭を強く打ち付け、「エンドルフ・アー」の言葉を残して死亡する。


  • マイケル・ジーン(CV:なし)

レースドライバー。最初に確認された超人類。
元は二流のラリードライバーに過ぎなかったが、セビア横断ラリーで遭難し、奇跡の生還を遂げた後、急速に実力を上げてF1レースの世界チャンピオンとなる。
その変化に目を付けたブレーン製薬と専属契約を結び、彼の身体から大量のエンドルフィンが発見されたことにより、エンドルフ・アーが開発されることになった。
その後、モイラシンドロームを発症したかは不明。


  • チビデブ(CV:安西正弘)、ノッポ(CV:清川元夢)

リサの絵を買い付けに来た画商。リサが超人類であることをブラック・ジャックに伝える。




■余談

  • ピノコが作中で組み立てているジグソーパズルには、手塚作品のキャラクターが描かれている。



追記・修正は超人類となった方にお願いします。


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  • 子供の頃これのテレビ放送見て怖くてなあ -- 名無しさん (2022-04-18 03:22:58)
  • ニコニコ世代だと、この映画は見たことないけどM2の逆襲で台詞だけ知ってる人とかいそう -- 名無しさん (2022-04-18 12:28:22)
  • 頭を強く打つ描写が丁寧 -- 名無しさん (2022-04-18 14:37:18)
  • 確かアトムのジグソーパズルが出てきたよね -- 名無しさん (2022-04-18 16:01:15)
  • 開胸した瞬間心臓パーンとかサーモグラフィーが赤からいきなり青になって死亡描写とか表現がトラウマ級にえぐい -- 名無しさん (2022-04-18 17:53:18)
  • 今にして思うと、よく感染者が1000人程度で済んだものだと思う 感染力自体はそこまででもないのか? -- 名無しさん (2022-04-20 20:17:04)
  • ブレーン会長「7101(ジョー)、何がお前を狂わせた」って台詞、まさしくおまいうとしか言えんのがまた -- 名無しさん (2023-11-07 20:57:11)
  • エンドルフだけに頭がいてぇ -- 名無しさん (2023-11-07 21:17:06)

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*1 OVA版第11話・第12話は監修・シリーズ名誉監督。
*2 実際の医療費は、手術の失敗を理由にブラック・ジャックが全額返金した。
*3 実際には治療を失敗した事を理由に受け取り拒否したので、居合わせて気を利かせたピノコが受け取った。
*4 作中では「東ヨーロッパ」としか説明されないが、陸上のユニフォームに「POL」の文字が確認できる。
*5 公開当時の男子世界記録はドノバン・ベーリーの9秒84。現在の男子世界記録はウサイン・ボルトの9秒58。女子世界記録は公開当時から変わらずフローレンス・グリフィス=ジョイナーの10秒49。
*6 公開当時の世界記録はセルゲイ・ブブカの6m14。現在の記録はアルマンド・デュプランティスの6m20。

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