ヒーローズ・イン・クライシス

ページ名:ヒーローズ_イン_クライシス

登録日:2020/02/26 Wed 21:37:38
更新日:2024/05/16 Thu 12:47:39NEW!
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『Heroes in Crisis』は2018年にDCコミックスから出版されたアメコミ作品。


+ 作品情報-

『Heroes in Crisis』#1~#9
発売 2018年9月から
脚本 トム・キング
作画 クレイ・マン(#1~#7、#9)、トラヴィス・ムーア(#2、#5、#8)、リー・ウィークス(#3)、ミッチ・ゲラッズ(#6~#8)、
   ホルヘ・フォルネス(#7)


日本では2020年に小学館集英社プロダクションから邦訳本が発売されている。


ヒーローの心を癒やす施設『サンクチュアリ』で起きた殺人事件と心の傷との向き合い方を描いた作品。
一見凄惨な殺人事件を描いた『アイデンティティ・クライシス』に似ているが、本作は事件そのものより心の傷というテーマに重点を置いている。


トム・キングはCIA職員としてアフガニスタンやイラクに駐在した経歴を持ち、その中で心に傷を抱えた兵士を数多く見てきた。
本作はその経験を活かし、兵士同様に数多くの戦いを経験してきたヒーローを題材に心の傷について描いている。
人の意思を感じさせない『サンクチュアリ』のシステムや友人との語らいの大切さ、様々な心の傷などを通じて現代の問題を切り取っている。
またヒーローが傷を乗り越える姿ばかり重視される点や傷を抱えた姿を揶揄されることに疑問を呈する内容にもなっている。


本作のタイインとしてバットマンとフラッシュのクロスオーバー『The Price』が展開された他、いくつかの作品に事件の影響が描かれている。




【物語】

激しい戦いの中で心を傷つけたヒーローを治療するための施設『サンクチュアリ』。
一般市民はおろかヴィランさえ知るよしもないその施設でブースターゴールドとハーレイ・クインを除く患者全員が皆殺しにされる事件が発生した。
責任者であるスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンの『トリニティ』が容疑者のブースターとハーレイを追う一方、
ロイス・レーンは『パドラー』を名乗る人物から届けられた『サンクチュアリ』のデータを元に記事を発表する。
世界がヒーローの真の姿を知り動揺する中、ヒーロー自身も真実に向き合うためにスーパーマンは自らの思いを世界に語りかける。
そして時を同じくして容疑者とその協力者たちもある真実にたどり着いていた。



【登場人物】

≪容疑者と協力者≫

事件を生き残った容疑者2人とその協力者。容疑者のブースターとハーレイは互いに犯行を目撃し、互いを犯人と断じている。
事件直後に2人で殺し合いを繰り広げた後、ハーレイは逃走中に、ブースターはヒーローに確保され事件を語った。
その後ハーレイはバットガールの、ブースターはブルービートルの協力でヒーローから逃れ真実を求めていたが、
ある事実に気づいたブースターたちの元にハーレイたちが現れ、互いの思いをぶつけ合った末にその事実を確かめに動き出す。


  • ブースターゴールド(マイケル・カーター)

25世紀の未来からやって来たヒーロー。ハイテク警備ロボット、スキーツを相棒としている。
事件直後の殺し合いで防御システムが作動せず重傷を負うも、スキーツの治療で復活し真実を知るために飛び立った。
バットマンのように事件を解決しようとフラッシュ(バリー・アレン)に接触し確保されてしまうが、親友ブルービートルの協力で脱走した。
その後、あえてありえない行動でスキを突くために再びフラッシュの元に向かい事件のデータを手に入れ、
そのデータと自身のタイムトラベラーとしての知識からある事実にたどり着いた。
『サンクチュアリ』では過去を変えて狂気の世界を生み出した苦しみと向き合おうとして自罰的な行動をとっていた。
初日に事件が起きてしまい治療はほぼ行われず自分に不安を抱いていたが、ブルービートルとの語らいで回復の兆しを見せている。


  • ハーレイ・クイン(ハーリーン・クインゼル)

狂気に堕ちた元精神科医でジョーカーの元愛人。事あるごとに童謡の替え歌を口ずさんでいる。
事件直後にブースターを殺そうとするも失敗、その後はペンギンの力を借りて隠れていた*1
『トリニティ』の追撃を逃れ親友ポイズン・アイビーを弔うも、次に何をすればいいか分からなくなっていたが、
自分のことを理解してくれたバットガールの協力で再びブースターに接触し、戦いの中で互いを理解し協力する事になった。
『サンクチュアリ』ではアイビーの治療に勝手についてきて、ジョーカーへのトラウマと向き合うことになった。
インタビューでは苦しい胸の内を吐露していたが、アイビーやバットガールといった理解者の協力で乗り越えていく。


  • ブルービートル(テッド・コード)

様々なガジェットを駆使して戦うヒーロー。ブースターの親友で彼を信じ、拘束された彼を強引に脱出させ協力する。
『サンクチュアリ』では自分が困難に見舞われた時は親友のブースターを頼ると語った。


  • バットガール(バーバラ・ゴードン)

ゴッサム市警本部長ジェームズ・ゴードンの娘で初代ロビンと同期のベテラン。
過去にジョーカーに傷つけられ、バットマンに在り方を決めつけられた共通点からハーレイを助けようとする。
『サンクチュアリ』ではジョーカーにつけられた傷を見せつけた。


  • スキーツ

ブースターゴールドの相棒を務める25世紀の警備ロボット。ブースターにアドバイスや解説、ツッコミを行う。
ブースターに無茶をしないよう言っていたが無視され、彼がヒーローに確保されるとバットマンにデータを調査された。
その後ブースターの行方を捜すハーレイとバットガールに脅されて、ブースターの居場所を教えてしまった。



≪ヒーロー≫

『サンクチュアリ』で起きた事件を前に動揺が広がる中、責任者だった『トリニティ』を中心に捜査を進め容疑者2人を追う。
しかし『トリニティ』の間でも考え方や『サンクチュアリ』の捉え方が異なり上手く連携が取れずにいる。


メトロポリスを守る鋼鉄の男。『サンクチュアリ』の責任者の1人。真っ先に現場に駆けつけ初動捜査を行った。
ロイスが『サンクチュアリ』のデータを手に入れたことに悩んでいたが、記者として全てを公表することにした*2
その後ヒーローが心に不安を抱えていることを知り困惑する世界に対し、深く考え抜いた上でスピーチを行った。
『サンクチュアリ』では自分の本質が記者クラーク・ケントなのか、英雄スーパーマンなのかという問題を打ち明けていた。


ゴッサムを守る闇の騎士。『サンクチュアリ』の責任者の1人。遺体の司法解剖を担当するも、有力な証拠は見つからなかった。
その後もハーレイにしてやられ『クリプトナイト』を隠していたことをスーパーマンにばらされる、フラッシュと意見が食い違う、
自分を棚に上げロイスのことを秘密にしていたスーパーマンを非難するなど空回りを続け、容疑者たちが動くまで何も出来なかった。
『サンクチュアリ』では鍛え上げた家族が傷つき死んでいく苦しみを吐露していた。


超人的力を持つアマゾン族の王女。『サンクチュアリ』の責任者の1人。容疑者2人の尋問を行った。
証言の食い違いや捜査が進まないことに苛立ちをつのらせながらも、スーパーマンの記者会見に同席し彼を支えた。
『サンクチュアリ』では幼少期の辛い出来事を語るも、そこから耐えることの大切さを学んだとも語った。


超スピードを操る鑑識官。サムロイドとの戦いの最中に大切な存在のウォリーの死をブースターから知り、危うく彼を殺しかけた。
これをきっかけにブースターを犯人と決めつけており、再び現れた彼を捕まえようとするも逆に倒されデータを盗まれてしまった。
その後はぶつかり合っていたバットマンと協力してブースターの行方を追う。


  • テンペスト(ガース)、ドナ・トロイ

魔術に長けたアトランティスの戦士とアマゾン族に生み出された女戦士。『タイタンズ』のメンバー。
『タイタンズ』で活動を共にしたアーセナルとフラッシュ(ウォリー・ウェスト)の死にショックを受け酔いつぶれたテンペストをドナが回収した。
ドナは『サンクチュアリ』では神話と歴史の不一致について語っていた*3


  • グリーンアロー(オリバー・クイーン)、ブラックキャナリー(ダイナ・ランス)

シアトルを守るエメラルドの射手と超音波ボイスを放つ女格闘家。家族も同然だったアーセナルの死に犯人の死で報いようと考えてしまう*4
ブラックキャナリーは『サンクチュアリ』では何も語らなかった。



≪サンクチュアリ≫

傷ついたヒーローの心を治療するための施設。惑星クリプトンの技術をベースに作られた。ネブラスカ州にある。
ケント家に似た建物*5やケント夫妻とラナ・ラングを模したロボットなど、雰囲気はスーパーマンの思い出が元になっている。
治療は患者とシステムだけで行い、インタビューは患者が必要とするものを再現する部屋で行われる。
利用者は仮面と外套をつけ素性を隠し、データはすぐに廃棄されるため、誰が利用したかは管理者たちですら知りようがない。
ブースターとハーレイを除く患者全員が皆殺しにされ、現場には『パドラーはみんな死んだ』という言葉が残されていた。


  • ブルージェイ(ジェイ・エイブラムス)

Marvelの『Earth-616』に似た世界『Earth-8』出身の縮小能力を持ったヒーロー。最近まで『Earth-0』の極小宇宙で暮らしていた。
友人シルバーソーサレスを1ヶ月前のある事件*6で失ってから縮小能力が暴走していた。


  • ホットスポット(アイザイア・クロケット)

発火能力を持ったアフリカ系青年。普段はコスチューム姿だが、インタビューではキャップにフードを被っていた*7
恐怖を乗り越え誰かの記憶に残るための決め台詞をインタビューで語っていたが、スーパーマンは決め台詞を覚えていなかった。


  • アーセナル(ロイ・ハーパー)

赤いコスチュームに身を包んだ弓の名手。長年薬物中毒に苦しんでいた。


  • ポイズン・アイビー(パメラ・アイズリー)

植物を操る力と人を操る毒を体に宿す女性。大事件を起こす原因にもなったトラウマを解消しようとしていた。
治療では勝手についてきたハーレイの治療に付き合う形で行い、ジョーカーへのトラウマを乗り越える手助けをしていく中で自分も回復していった。


  • ラグーンボーイ

海底王国アトランティス出身の海棲人。多くの『タイタンズ』メンバーが犠牲となった事件*8に苦しんでいた。
治療ではその時の出来事を何度も再現しいつか笑い飛ばそうと考えており、殺された際には実際に笑っていた。


超スピードを操るもう1人のフラッシュ。妻や双子の子供が存在する別のタイムラインの記憶や周囲の人間に希望として扱われることに苦しんでいた。
治療では家族との生活や友人たちとの日々を再現していたが、まだ回復の兆しが見えない内に事件が起きてしまった。
ブースターはハーレイが、ハーレイはブースターがウォリーを殺す瞬間を目撃し、互いを犯人と思っている。


  • コマンダー・スティール(ヘンリー・ヘイウッド)

改造によって鋼鉄の肉体を得たヒーロー。死と復活を繰り返す自身の存在を不安に思っていた*9


  • ガンファイヤー(アンドリュー・ヴァン・ホーン)

物体を銃火器に変化させる能力を持つヒーロー。


  • タトゥードマン(マーク・リチャーズ)

入れ墨を実体化して操る元ヴィラン。


  • グナーク

現代に生きるクロマニヨン人。生きる時代のギャップに苦しんでいた。
普段は口下手だが、当時を再現した治療の間は饒舌で過去の詩人や哲学者の言葉を引用するなど教養も見せている。
過去の日々を再現する中で当時と現在の長所と短所を受け入れ、治療を終えようとした直後に事件が起きてしまった。


  • レッドデビル(エドワード・ブルームバーグ)

ブルーデビルに憧れ本当に悪魔になってしまった青年。


  • プロテクター(ジェイソン・ハート)

薬物との戦いに挑むヒーロー*10。その戦いの中で薬に飲み込まれてしまい苦しんでいた。


  • ソルスティス(キラン・シング)

光を操る力と光を吸収する肉体を持つヒーロー。力を制御できず常に黒い異形の姿でいることに苦しんでいた。


  • ネメシス(トム・トレッサー)

変装を得意とするエージェント。



≪その他≫

  • ペンギン(オズワルド・コブルポット)

鉤鼻と小柄な体格が特徴的なギャング。ヒーローから逃走していたハーレイに保護を依頼され、隠れ場所を用意した。


  • ロイス・レーン

美人記者でスーパーマンの妻。事件の直後に『パドラー』を名乗る人物から『サンクチュアリ』のデータを受け取った。
スーパーマンの許可を得て個人名を伏せた上で記事を世界に公表した。




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*1 この際にコスチュームを赤と黒のクラシックなものに変更している。
*2 その時の様子は『ウォッチメン』のオジマンディアスのパロディになっている。
*3 ドナも複雑な歴史の持ち主とし知られている。
*4 『Green Arrow Vol.6』#45ではアーセナルの葬式の様子が描かれた。
*5 トム・キングの祖母の家もモデルになっている。
*6 1991年の『Justice League: Breakdowns』での出来事。
*7 2012年2月のトレイボン・マーティン射殺事件を意識している。
*8 2008年の『Titans East Special』での出来事。
*9 名前は1978年に初登場したコマンダー・スティールだが設定は彼の孫で1984年に初登場したスティールのもの
*10 元々は薬物撲滅のキャンペーンでロビンの代役として生み出された。

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