ヤン艦隊(銀河英雄伝説)

ページ名:ヤン艦隊_銀河英雄伝説_

登録日:2019/11/04 Mon 03:26:22
更新日:2024/05/13 Mon 10:49:30NEW!
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ヤン・ウェンリー イゼルローン要塞 イゼルローン共和政府 最強 適材適所 理想の職場 スパロボ新規参戦予備軍 不敗の魔術師 ペテン師 自由惑星同盟 第三勢力 エル・ファシルの英雄 銀河英雄伝説 民主主義 軍隊 組織 銀英伝 軍閥 架空の組織 伊達と酔狂 ヤン・ウェンリーと、その他少し イゼルローン革命軍 第13艦隊 アットホーム ヤン・ウェンリー大好き集団 ヤン・ウェンリーファンクラブ 寡兵 少数戦力 ヤン・イレギュラーズ ヤン・ファミリー 奇策 精鋭揃い 歓送の歌 くたばれカイザー


えーと……つまり、祖国のためとか、命を懸けてとかじゃなくて、その……


美味い紅茶を飲めるのは生きている間だけだから……


みんな、死なないように戦い抜こう!



ヤン艦隊は銀河英雄伝説に登場するヤン・ウェンリーが総司令官を務める艦隊の通称である。
劇中世界の公式な通称であり、その名前が登場するのは帝国領侵攻作戦の敗戦処理でヤンが大将に昇進してからである。




概要


かつての帝国軍人であり後の銀河帝国の皇帝になるラインハルト・フォン・ローエングラムをも戦慄させるヤン艦隊の始まりは、自由惑星同盟軍に「第13艦隊」が創設されたことから始まる。


これはアスターテ会戦で「辛うじて全滅は免れた」ほどに損耗の激しかった第4・第6艦隊を一旦解体併合した上で新兵を加えることで編成されたものである。
当初は半個艦隊に相当する6400隻しか持たない「敗残兵と新兵の寄せ集め」だったが、艦隊結成後の初任務で要塞無血攻略に成功し、この功績を見てアスターテに参戦したヤンの古巣である第2艦隊の残存戦力を編入することで一個艦隊に昇格した。


だがイゼルローン無血占領という大きな戦果に気を良くした同盟が無謀な侵攻作戦を発動。
8個艦隊が全滅もしくは大損害を受けるなか、3割損失という遠征軍の中では比較的軽微な被害で済んだ第13艦隊は約半数を失った第10艦隊を吸収合併した上でイゼルローン要塞の駐留艦隊に任命される。


ここから正式に「ヤン艦隊」と呼ばれるようになり、ヤン・ウェンリーの活躍と名声も相まって自由惑星同盟軍の中でも最強と評されるようになる。


最初の任務が同盟軍内のクーデター鎮圧というヤンとしては不本意な内容になるも、クーデター派の第11艦隊に圧勝し、強力な防衛システムアルテミスの首飾りも無血で全滅させた上で解決したことで、改めてヤンとその部隊の実力の高さを知らしめた。


しかし民衆に人気があり過ぎるヤンは軍閥化を半ば危険視する政府中枢から政治的に追い込まれていく。
嫌がらせの査問会によってヤン不在の中で別の帝国要塞をワープさせてイゼルローンにぶつけるという窮地もあったが、
部下の奮闘とヤンの帰還が間に合ったことでどうにか凌ぎきる。


ラグナロック作戦でイゼルローン要塞を放棄するも、ヤン艦隊としては健在であり以降も同盟軍の部隊として戦い続けた。
しかしヤンとラインハルトの事実上の決闘であるバーミリオン星域会戦の最中、ヒルダが提案した帝国の双璧率いる別働隊がハイネセンに迫ると、無責任政治家のヨブ・トリューニヒトが会議を武力制圧した上で降伏を宣言。
戦後にヤンは退役し、ここに同盟軍公称としての「ヤン艦隊」は終わりを迎えることになる。



ヤン艦隊の幹部たち

艦隊の人員は適材適所に得意とする職務に合わせて配置。スペシャリストが能力を最大限に発揮できる体制を作ることで組織を極めて高度に維持していた。
反面、個々の能力の高さで陣容の厚い帝国軍とどうにかギリギリ渡り合えていた状態であり、幹部一人が欠けることの影響はより大きい。
軍隊ではあるものの、総司令官ヤン・ウェンリーやその関係者の人柄などもあってか非常にアットホームで仲間意識や団結心も強く、内外からの評判や信頼も高い。
一方でその親密さが軍閥化を警戒される一因になったりと、長所と短所が見事に表裏一体。



ヤン・ウェンリー
ヤン艦隊の総司令官にしてヤン・ファミリーの若きリーダー。
ヤン艦隊随一の頭脳にして用兵のスペシャリストで、敵が予想だにしない奇策や戦術を考えつくことから「魔術師ヤン(ヤン・ザ・マジシャン)」「ペテン師」の異名を持ち、帝国軍からも恐れられる自由惑星同盟最高の智将である。
反面、直接的な戦闘やその他の事務的な仕事などはてんで不向き。首から下が不要。



◆フレデリカ・グリーンヒル
ヤンの副官にして後に妻となる女性。
几帳面な性格もあって料理は下手で、特に挟むもの以外が非常に苦手。情報処理のスペシャリストで、驚異的な記憶力でヤンをサポートする。




◆ユリアン・ミンツ
ヤンの養子にして魔術師の後継者。
ヤン・シェーンコップ・ポプランらを師匠にそれぞれの得意分野で高い才能を有する。
白兵戦や空戦もこなし、ヤンの英才教育の結果、敵の策をヤンとは別の視点から先に見抜くなど秀才ぶりを誇る。女性付き合いがヤンに似る形でよかった



◆ダスティ・アッテンボロー
ヤンの士官学校時代の後輩にして相棒の一人。伊達と酔狂で革命を遂行する。
ゲリラ戦術のスペシャリストで、特に「逃げる演技」にかけては右に出る者はおらず、それによる陽動・囮作戦では屈指の実力を発揮する。



アレックス・キャゼルヌ
事務処理・後方支援・兵站のスペシャリストで、ヤン艦隊の縁の下の力持ち。ヤンの6歳上の先輩であり家族ぐるみの付き合いもある。
ヤンに階級を追い越されたがイゼルローン赴任の際に部下に招かれ、以前と同様のタメ口でやり取りをしつつも彼なりに後輩を気にかけ続けていた。



◆オリビエ・ポプラン
空戦のスペシャリストで、戦闘艇スパルタニアンのエースパイロット。さらには白兵戦もそこそここなせる。
「イゼルローンの諸星あたる」とファンから評されるほどの女好き。おかげで旧OVAのCVが諸星あたると同じになった。



ワルター・フォン・シェーンコップ
同盟軍最強の白兵戦部隊、薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊の第13代連隊長、後にイゼルローン要塞防御指揮官。
白兵戦闘・陸戦のスペシャリストで、直接的な戦闘であれば石器時代の勇者を除けば作中最強の実力を誇る。
艦隊戦では直接出番こそ無いが、戦闘全体を見渡す戦略眼は持っている。



ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ
リップシュタット戦役で貴族連合の形ばかりの総指揮官を務め、敗戦直前に亡命してきた帝国軍の宿将。
小型戦闘挺部隊を駆使した近接戦闘での強襲を得意とし、ポプランらの能力を最大限に発揮させていた。
戦闘前にウイスキーをラッパ飲みで煽るなどヤン艦隊の自由な気風に染まりつつ、帝国軍の軍服を着続け時間にも正確とムライとは違う形の規律の象徴でもあった。



◆ムライ
ヤン艦隊の参謀長。
常識と秩序のスペシャリスト(?)で「歩く小言」。
第13艦隊結成当初から招集されているが、当初は常識外れな編成と初任務に、そしてそれを常識外れな作戦で成功されるヤンの姿に自らの必要性に疑問を感じていた。
やがて「自分があえて常識論をぶつけ、ヤンがそれに答えることで作戦の説得力が強化される」という一種の叩き台憎まれ役であるという結論に至り、その役割に徹した。
フリーダムなヤン艦隊の面々からは苦手意識を持たれつつも決して嫌われてはおらず、一線を保つために必要不可欠な人であると理解されていた。



◆エドウィン・フィッシャー
ヤンと同じくアスターテ会戦を生き残った人物。
神がかり的な艦隊運用術を誇る艦隊運用のスペシャリストで、機動力の要。
ヤン艦隊の「生きる航路図」がいてこそヤン艦隊は抜群のコンビネーションを発揮できる。



◆バグダッシュ
元は救国軍事会議が送り込んできたスパイだったが寝返った。
情報戦のスペシャリストで、敵を攪乱する情報操作からハッキングまで色々とこなす。



◆フョードル・パトリチェフ
副参謀長。士気向上のスペシャリスト。
ヤンとは惑星エコニアでの騒動からの付き合い。



◆ルイ・マシュンゴ
ローゼンリッターに匹敵する白兵戦能力を誇るシェーンコップもお墨付き。後にユリアンの専属的なボディガード兼相棒。



◆スーン・スール
元はビュコックの副官。士官学校次席。ちなみに主席はあのアンドリュー・フォークである}
スールズカリッターというのが本来の姓だが、ビュコックにスールと愛称で呼ばれるようになるとそれを気に入って改名したほど。



◆マリノ
戦艦ヒューベリオンの初代艦長。後に分艦隊の司令官となる。
主に囮や伏兵による奇襲を担当することが多く、グエンが戦死した後は突撃戦もこなす。



◆グエン・バン・ヒュー
同盟では珍しい猛将タイプの軍人。
突撃戦のスペシャリストで、帝国のビッテンフェルトにも匹敵する艦隊の突進力・攻撃力はヤン艦隊では随一。
ブレーキ役の副官に恵まれなかったために早い段階で戦死してしまい、活躍には恵まれなかったとても惜しい逸材。



◆イワン・コーネフ
ポプランと並ぶ空戦のスペシャリスト。
女好きで陽気なポプランとは対照的に、趣味はクロスワードパズルという実直な性格だが、ポプランとはウマが合い空戦隊のツートップで活躍する。
バーミリオン星域会戦で戦死する。実は直前に思いっきり死亡フラグを立ててしまっている。



◆ウォーレン・ヒューズ、サレ・アジズ・ジェイクリ
ポプラン、コーネフと並ぶ空戦隊の撃墜王。
帝国領侵攻作戦で戦死する。


◆ニルソン
幸運の不沈艦にしてヤン艦隊の総旗艦の1つである戦艦ユリシーズの艦長。
ヤンとは第四次ティアマト会戦からの付き合いで以来、陽気な部下ともども最後までヤン艦隊を支え続けた。


◆ベルンハルト・フォン・シュナイダー
帝国時代以来のメルカッツの副官。メルカッツに自由惑星同盟亡命を勧めた張本人でもある。
メルカッツ個人への忠誠心で動く。


◆カーテローゼ・フォン・クロイツェル
空戦部隊の女性パイロット。ユリアンとはお似合いのツンデレ美少女。
シェーンコップの娘だが、本人は娘がいることは当初知らないどころか母親の顔さえ覚えていなかった。



ヤン艦隊の主な戦艦・戦力


◆ヒューベリオン
第13艦隊結成時に旗艦となった戦艦。ヤン艦隊の総旗艦として帝国にも名を知られるほど。ある意味、ヤン艦隊の象徴ともされる。
後にメルカッツ提督の分艦隊旗艦となる。



◆ユリシーズ
同盟軍の戦艦としては標準の戦艦で、本来は特別な戦艦ではないのだが幾多の死闘や危機的状況から軽傷で悉く生き残ることから「幸運の艦」と呼ばれるようになり、ヒューベリオンに代わってヤン艦隊の総旗艦として出世した。


何かと逸話が残る珍妙な面もあり、「トイレに被弾して汚水まみれになった」*1「偵察に出る度に敵を引き連れてくる」「600人の赤子とその母親を乗せた」*2*3という伝説を残している。



◆レダⅡ
最新鋭の高速巡航艦で、シャープな船体が特徴。主砲の数は従来の艦より少なくする代わりに威力や精度などを上げることで総合能力を高めている。
ハイネセン脱出の際やラインハルトとの会談の際の足としてこの艦を選んだりとヤンのお気に入りであるらしい。
…が、後に悲劇の現場にもなってしまう。



◆トリグラフ
ヤン艦隊がイゼルローン駐留軍となった際に与えられた最新鋭の戦艦。
三つ叉に分かれている特徴的な艦首砲のデザインがお気に召さず、アッテンボロー分艦隊の旗艦として与えられた。
バーラトの和約に伴って破棄されてしまい、ヤン艦隊に少なからず痛手を与えた。



◆マサソイト
トリグラフが破棄された後のアッテンボローの旗艦。ヒューベリオンとよく似たデザインをしている。



◆アガートラム
フィッシャー提督の分艦隊の旗艦。
トリグラフと共にバーラトの和約によって破棄された。



◆シヴァ
特殊工作戦艦で、ハリネズミを思わせるように無数のアンテナやクレーンが突き出ている。トリグラフ同様、主砲の火力が驚異的。
アガートラムが破棄された後のフィッシャー提督の旗艦となる。


◆マナナン・マクリル
新アニメ版におけるフィッシャーの旗艦で、アガートラムの代わりに登場。



◆ムフウエセ
マリノ分艦隊の旗艦。艦首がシュモクザメの頭のような特徴的な形をしている。



◆マウリヤ
グエン分艦隊の旗艦。当初はヒューベリオンのようなカラーリングだったが虎のような個性的なカラーリングに塗装される。



◆パトロクロス
ヤン艦隊の戦艦ではないが一応記載。
第二艦隊に所属していた際に乗っていた大型の総旗艦。
アスターテ会戦で負傷した司令官のパエッタに指揮を託されたヤンは初めて艦隊の指揮を行い、見事帝国軍に一泡を吹かせた。



魔術師ヤンの戦法・奇策

ヤン艦隊は最盛期であっても艦隊の総数は3万弱と大兵力の帝国軍に対して常に少数の戦力で戦うことを余儀なくされていた。
これは帝国領侵攻作戦等で同盟軍が大幅に戦力を消耗してしまったためにもはや大規模な艦隊を編成できなくなったためである。


数の不利をヤンの智謀(地理的に、大軍を活用できないところに敵をおびき寄せる、艦隊の形態を柔軟に変える)や奇策(隕石を引っ張ってくる、ゲリラ戦術を活用する、旗艦を囮に歩兵を突撃させる)、などで全面的にカバーしており、複数の分艦隊を編成していることもあってか指令の伝達や陣形の編成・艦隊の連携が素早く行える上、ヤン艦隊そのもののチームワークも抜群で一個艦隊で帝国軍を悉く翻弄していた。


反面、戦力が少数である以上、大艦隊による正面からのぶつかり合いや物量戦、消耗戦には非常に弱いのが欠点。




◆艦隊運用術
艦隊運用を一任されたフィッシャー提督の名人芸はまさに神懸かり的で、ヤンの作戦を迅速かつ正確に実行するのはもちろんのこと、
その場の状況に合わせて臨機応変に陣形を組み直したりすることで縦横無尽な艦隊運動で帝国軍を悉く翻弄していた。


ヤンが直接艦隊を運用する場合は事前に敵の行動などを予測した上でいくつものフォーメーションを用意しておき、
アスターテ会戦や対ガイエスブルグ戦などでは潰走寸前や寄せ集めの艦隊であっても敵を翻弄することができていた。



◆一点集中放火
ヤン艦隊が得意とする戦術の一つで、基本的に数個の艦でひとつの敵艦を砲撃させてる各個撃破で相手を削り、敵艦隊が大きな隙を見せたりウィークポイントとなるような状況になれば一気に全艦隊の集中攻撃を加えて大損害を与える。
アニメ版ではビームが合体し巨大な波動砲となって敵艦隊を葬っていた。



◆ゲリラ戦術
ゲリラ戦を得意とするアッテンボローの偽装退却で敵艦隊を誘い込んだり、無人艦隊を囮にした陽動や自爆攻撃を行わせたりと敵を罠に嵌める戦法もよく使う。
(これは勝手に自爆させられてキャゼルヌはブチギレたが…)


◆各個撃破
数で勝る敵を相手に正面からは戦わず、ゲリラ戦術を駆使して敵が独立行動をしている所を狙って、あるいは何らかの策で分断して自軍より少なくなったところを叩く。
ラインハルトも戦力に劣る状況で同じ戦術を使い大勝したことがあるが、ヤンのそれは戦略レベルであった。


◆情報の攪乱
ヤンが初めて名声を得るきっかけとなった「エル・ファシルの奇跡」のようにレーダーの索敵では捕捉した敵影の詳細などはその時点では艦船なのか隕石群なのか判断できないため、目視できない遠距離ではこれを利用して敵を攪乱させる戦法も用いる。


バーミリオン会戦では囮として小惑星群を艦隊に偽装して敵を攪乱させ、敵旗艦を守る本陣の艦隊を殲滅できるように誘導した。


また、情報戦のスペシャリストであるバグダッシュの能力を活かし、イゼルローンに駐留する帝国軍を情報操作によって混乱に陥らせたりもする。



◆地の利の活用
ヤンの奇策は広大な宇宙空間に存在する様々な障害物なども最大限に活用される。
隕石群や巨大な氷塊を質量兵器にすることで敵艦隊にぶつけたり、恒星に融合弾を落としてそれによって発生した爆風を利用した高速突進を仕掛けたりと使えるものは何でも使う。


ヤン艦隊の拠点となったイゼルローン回廊の外縁は航行や索敵が不能なエネルギー流が荒れ狂っており、この地形をも武器として用いて大兵力で思うように動けない帝国軍を翻弄した。


時にはブラックホールを使って敵を罠に誘い込み、後退を不可能にさせた上での殲滅も行うというえげつない戦術も見せたりした。



◆陸戦部隊‘薔薇の騎士’連隊
帝国からの亡命者とその子弟を中心に結成された陸戦隊。
新兵多数の半個艦隊でイゼルローンを攻略する無茶ぶりに応えるべく、ヤンが要請し結成当初の第13艦隊に加えられた白兵戦部隊。
普通は一週間はかかるとされる拠点の制圧を僅か三日で完了したり、敵旗艦へ強襲を仕掛けたりと陸戦では圧倒的な強さを誇る。


総指揮官のシェーンコップを含めてヤン・ウェンリーへの忠誠心は非常に高く、彼が窮地に陥った際には政府を敵に回してでも反逆するほど。
事実上、ヤン・ウェンリーの私兵集団と化しており、最盛期には1000人以上もの隊員が所属していた。



ヤン艦隊の協力者

◆ジェシカ・エドワーズ
ヤンの学生時代からの友人の一人。同じく友人だったジャン・ロベール・ラップの婚約者。
アスターテ会戦においてラップが戦死してからは反戦運動に身を投じるようになり、帝国領侵攻作戦後の補選で当選し政治家となる。
その強い意思でクーデター政権が支配するハイネセンで言論による反戦集会を開催したが、鎮圧のために派遣されたクリスチアン大佐の暴走によって虐殺されてしまう。



◆ホアン・ルイ
自由惑星同盟政府の人的資源委員長。腐敗した同盟政府の中にあって数少ない良識な政治家。
ヤン・ウェンリーが査問会で政治的リンチにかけられる中で唯一味方をし、旧知の友であるジョアン・レベロがヤンが独裁者になるのではと内心危険視したりする中でも客観的な視点からそうはならないと説得したり、バーラトの和約後に帝国の策略でヤンが不当に逮捕されようとされる中で擁護したりした。
しかし心労でノイローゼになってしまったレベロを止めることはできなかった。



◆ボリス・コーネフ
ヤンの幼馴染の悪友のフェザーンの商人。上記のイワン・コーネフとは顔を合わせたことのない従兄弟。
同盟政府から離脱して第三勢力となったヤンに情報を提供したり、彼の人脈を使ってフェザーン商人から出資をしてもらったりとサポートを行う。


ちなみに彼が所有する商船は一度、ユリアンの作戦で破壊されるが後に弁償として新しい輸送船をもらった。



◆シドニー・シトレ
物語開始時の同盟軍統合作品本部長。ヤンの士官学校在籍時にはその校長を務めており、その後に彼の幕僚としてイゼルローン攻略戦に参加したこともあった。
ヤンにとっては最大の理解者の一人であり、彼もヤンの才能を早くから見抜いていた。
帝国領侵攻作戦の結果として軍を引退するが、救国軍事会議のクーデターの際はヤンの行動を支持し救国軍事会議を批判する表明を各惑星に呼びかけて彼を支援した。



◆クブルスリー
辞任したシトレ元帥の後任となった統合作戦本部長。
シトレ同様に良識的な軍人でヤンを高く評価しており、彼を統合作戦本部の幕僚総監に就任することを望んでいたが、最前線を任せられる人材が他にいないということで実現しなかった。
救国軍事会議のクーデターが発生する直前、不正に現役復帰を直訴してきたアンドリュー・フォークにぐうの音も出ない正論を叩きつけるも、キチガイである彼は逆ギレして銃撃し負傷させる。
療養生活が終わった後に復帰するも、軍の高官はビュコックなど少数を除いて政治家にすりよる人物ばかりになっており、孤立感を深めて引退を選んでしまった。



◆ウランフ
同盟軍第10艦隊の司令官。アッテンボローの上司。
当時の同盟ではビュコックとツートップを張るほどの有能な軍人でヤンへの信頼も高く、無謀な帝国領侵攻作戦でも積極的にヤンと協力し合って撤退準備を進める。
ビッテンフェルト率いる黒色槍騎兵艦隊と交戦し、不利な状況ながら互角に渡り合い奮戦するがアッテンボローに後を託すも脱出しきれず戦死してしまう。
彼が生きていればヤンも大いに楽ができたと惜しまれる。



◆ウォルター・アイランズ
同盟末期の国防委員長。
就任当初はトリューニヒトの子分で腐敗し切った利権政治家に過ぎず、ヤンやビュコックの足を引っ張るだけの存在だった。
しかし帝国軍がフェザーン回廊を通過して侵攻してくるという予想外の事態になると突如、真の政治家として覚醒する。
無責任にも職務を放棄して雲隠れしたトリューニヒトに代わって最高評議会を主導し、ヤンやビュコックに謝罪して全面的な協力を申し出る。


しかし、最終的には保身のために祖国を売り渡したトリューニヒトに裏切られて絶望し、廃人となってしまった。



◆フランチェシク・ロムスキー
エル・ファシル独立政府の主席。本業は医師で、エル・ファシルの奇跡の際には脱出計画を遂行するヤンに協力していた。
自由惑星同盟から同じく離脱したヤンを迎え入れ、イゼルローン要塞再奪取作戦の拠点と一宿一飯を提供する。
ヤンを帝国に売り渡すことを提案した部下を諌めるなど本質的には善良な人物であるものの、政治家としては凡人で所々でヤンの足を引っ張ったり意見が合わなかったりしており、最期の地球教徒の襲撃でも結果的には足手纏いとなってしまった。



ヤン艦隊に惜しくも加われなかった同盟軍人


◆ジャン・ロベール・ラップ
ヤンの士官学校時代の友人。
極めて有能で良識的な参謀であったが無能で自己中心的な指揮官に振り回されてしまい、アスターテ会戦で戦死してしまった。


アスターテ会戦を生き残ることができさえすれば、間違いなくヤンの腹心の一人としてヤン艦隊に迎え入れられたであろうことから最初期に死亡したことが惜しまれる人物の一人。



◆アレクサンドル・ビュコック
第5艦隊の司令官で70歳を超えても現役で活躍する叩き上げの老将。ヤンの最大の理解者の一人。
バーラトの和約を破棄して再侵攻してくる帝国軍を迎え撃つため、数少ない戦力をヤンに託して同盟軍人の最後の意地を示して戦場に散った。


ヤンは彼の訃報を聞いた際に「誘拐してでも連れてくるべきだった」と深く後悔していた。


◆チュン・ウー・チェン
通称、パン屋の二代目とあだ名される男。ランテマリオ会戦の直前にビュコックの参謀としてコンビを組む。
ヤンに近い柔軟な思考と知略を発揮する有能な人物で、ランテマリオ会戦では敵艦隊の一部をも盾にして防御陣を築くという奇策を見せた。


30歳以下の者は参加できない最後の出陣にビュコックと共に最期まで運命を共にしたが、ビュコックは当初彼もスーン・スールらと共にヤンの元へ送ろうと考えていた。



◆パエッタ
ヤンが第2艦隊の幕僚として所属していた際の司令官。
有能な指揮官ではあるもののワンマン気質な性格もあって当初はヤンの進言を聞き入れなかったために度々窮地に陥ってしまう。
しかし、ヤンのことは内心ではちゃんと認めており、アスターテ会戦で負傷した際には指揮権を彼に託したことがヤン艦隊の誕生のきっかけにもなる。


ヤンが査問会に呼び出されていた対ガイエスブルグ戦では当初、新たに所属していた第1艦隊を率いて増援に向かうことになっており、パエッタも借りを返そうと意気込んでいたが、国防委員長に就任した直後のアイランズが戦力を出し渋ったために再びヤンと共に肩を並べて戦う機会が失われてしまった。


ただし描写こそないが、もしかしたらバーミリオン会戦に参加していた可能性もある。



一時的にヤン艦隊に加わった同盟軍人

◆ラルフ・カールセン
第一次ラグナロック作戦時に新設された第15艦隊の司令官。
ビュコックと同じく老いながらも勇猛果敢な軍人で、帝国のビッテンフェルトに匹敵する攻撃力と鉄壁ミュラーに匹敵する粘り強さを併せ持つ同盟末期の勇者の一人。
モートンと共にヤン艦隊に合流してバーミリオン会戦に参加し、後にマル・アデッタ会戦にて戦死する。



◆ライオネル・モートン
元第9艦隊の副司令官。アムリッツァ会戦を生き残り、対ガイエスブルグ戦でヤンに与えられた寄せ集めの増援艦隊の分艦隊司令官を務める。
後に新設された第14艦隊の司令官として就任し、カールセンと共にヤン艦隊にも合流。
共にバーミリオン会戦で奮戦し、ラインハルトを追い詰めるも参戦したミュラーに押し返されて戦死してしまった。



◆サンドラ・アラルコン
対ガイエスブルグ戦でヤンに与えられた寄せ集めの増援艦隊の分艦隊司令の一人。
艦隊指揮官としては申し分のない人物だが、過激な軍国主義の持ち主で民間人虐待の疑いも持つ。
救国軍事会議のクーデターに参加しなかったのは幹部の一人と仲が悪かったかららしい。
最終的にグエン同様、調子に乗り過ぎてヤンの命令も無視して敵を深追いし、戦死してしまった。



◆マリネッティ & ザーニアル
アラルコンと同じく対ガイエスブルグ戦でヤンに与えられた増援艦隊の分艦隊司令たち。
モートンやアラルコンと比べるとやや経験不足な様子で、後にランテマリオ会戦ではミッターマイヤーの威嚇攻撃に驚き見境なく攻撃して混乱してしまう。



ヤン艦隊にしてやられた or よしみのある帝国軍将帥

正面対決などは大兵力の差や優秀な能力を持つ人材の宝庫であることもあって非常に強いラインハルト陣営ではあるものの、ヤン・ウェンリーの智謀と奇策の前に度々苦汁を舐めさせられており、歴戦の将帥でさえ彼のトリックに嵌められることを恐れて警戒して全面攻撃を控えたり、深読みし過ぎて失策する者さえいるほどである。
一対一の艦隊戦ではまずヤンに勝つことは不可能とされる。


しかし、同時に敵ながらに名将であるヤンはローエングラム元帥府の幹部勢の多くからは尊敬の念も抱かれており、
直接面会した者は軍人らしくない彼の意外な姿に驚きつつも敬意を払ったりもする。
元帥府の長であり帝国皇帝となるラインハルトに至っては自陣営に加えることも望んでおり、
劇中唯一の会談の場面で「元帥として迎えたい」と直接スカウトした他、その後にヤンが同盟政府に追われた際も帝国に迎え入れようと声明を発したほど彼を評価している。



ラインハルト・フォン・ローエングラム
ヤンの最大の宿敵であり、好敵手でもある人物。後にローエングラム王朝を創始し、初代皇帝となる。
第四次ティアマト会戦やアスターテ会戦などでヤンと直接相まみえてからライバル視するようになり、
完全に勝利することに拘るラインハルトは度々完全勝利を邪魔されることを腹立たしく思いつつも、彼と戦うことが半ば生き甲斐にもなっていた。
一方でヤンを自らの麾下とすることも望んでおり、直接対談した際には「帝国元帥にする」と言う最大の栄誉をちらつかせている。


バーミリオン会戦で同戦力の死闘を繰り広げた際はラインハルトの策を見破ったヤンの奇策に逆に嵌められて乗艦を撃沈される寸前にまで追い詰められてしまう。
部下が独断で同盟首都を降伏させたことで辛うじて戦死は免れたが直接対決で勝利したのではなく、勝利を盗む形になった事を後悔し、彼に勝つ事に固執する様になってイゼルローン要塞を攻撃する。
逆に、ヤンの訃報に接した際には虚脱状態に陥り、イゼルローン共和政府を放置するようになった。(政略的に見れば、本来の職務に立ち返っただけなのだが…)
ヤンに勝利することに固執する様について、オーベルシュタインは面と向かってではないとは言え、「皇帝が個人的な誇りのために、将兵を無為に死なせた」と激烈な非難をしている。


◆ジークフリード・キルヒアイス
ラインハルトの幼馴染でローエングラム元帥府の最高幹部を務める。
アスターテ会戦ではラインハルトの副官として傍にいたものの、彼同様にヤンの策を見抜けず逆襲されてしまった。
後にアムリッツァ会戦で直接戦っており、兵力差に加えてヤンが連戦していたことと物資も消耗していたこともあって終始彼を苦戦させた。


イゼルローン要塞での捕虜交換式でヤンと直接顔を合わせ、彼の人柄などを深く洞察して恐ろしい敵であることを認めると同時に「友にすることができれば」という期待も抱いていた。


ヤン本人もキルヒアイスには好印象を抱いており、彼が亡くなったことを悔やんでいた。
もしもキルヒアイスが生きていれば、ヤンとは様々な面で上手くやれたであろうと言われている。



パウル・フォン・オーベルシュタイン
「絶対零度の剃刀」とも称される義眼の大幹部。
第七次イゼルローン要塞攻防戦ではヤンの策を見抜いていたものの、上官のゼークト提督が彼の進言を聞き入れなかった為イゼルローン要塞を奪われる結果となった。
その後、上官を見限って自分だけすたこらさっさと逃げ出した為敵前逃亡の罪に問われるも、ラインハルトに自分を売り込んで配下に取り立てて貰い、彼の参謀役を務める。
参謀長として参加したバーミリオン会戦ではラインハルトと同じくヤンの策を見抜けず、あわや彼と運命を共にする所であった。


ヤンのことは非常に危険視しており、独断で彼を排除するべく策謀を巡らせたりした。
ヤン死後もイゼルローン共和政府への警戒は解いておらず、旧同盟政府の要人を軒並み捕えて人質にする方法でイゼルローン革命軍に出頭を命じるという非情な策に出る。


◆ウォルフガング・ミッターマイヤー
帝国の双璧にして疾風ウォルフの異名を持つローエングラム元帥府の大幹部。
回廊決戦では得意とする高速の艦隊運用術が大兵力による弊害や地形の複雑さから
思う様にいかず度々失策をしてしまい、あわや自分の旗艦が撃沈されかかってしまう。


また、シヴァ星域会戦では総大将のラインハルトが病に倒れるという不測の状況で焦っていたこともあり、ユリアン達の策を見抜けず罠に嵌まって大きな隙を見せてしまう。



オスカー・フォン・ロイエンタール
ミッターマイヤーと並ぶ帝国の双璧と称される大幹部。
第9次イゼルローン攻防戦では本隊の動きを隠す囮としてイゼルローン要塞への攻撃を行うが、ヤン艦隊の旗艦ヒューベリオンが出撃するという挑発に乗ってしまい、
ローゼンリッターによる旗艦侵入を許し、あわやシェーンコップに討ち取られかける。
また、ヤンがイゼルローン要塞のシステムに仕掛けた置き土産を見抜くことができず、後にそれが再奪取される要因となってしまった。


回廊決戦でもミッターマイヤーと同じくせっかく立てた包囲作戦が艦隊を思うように動かせず失敗し、ヤン艦隊が巧みな艦隊運動から総旗艦ブリュンヒルトに強襲を仕掛ける大きな隙を作ってしまう。


ヤン死後、帝国に叛逆を起こした際に、「イゼルローン回廊を通行しようとする帝国軍を阻止したら、旧同盟領の統治権とトリューニヒトの身柄を渡す」とムライを派遣してイゼルローン共和政府に水を向けたが、ユリアンはこれを拒否している。


フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト
破壊力と突進力に優れた黒色槍騎兵艦隊司令官を務める元帥府の幹部。
短気な性分に加え、優勢になっていると調子に乗りやすい猪突猛進気味な性質もあってかアッテンボローの挑発にブチギレて手玉に取られたり、
アムリッツァ会戦ではヤン艦隊が反撃態勢を整えているのに無謀にも敵前回頭したために全滅寸前に追い詰められてしまう。


しかし同時にヤン艦隊に致命的ダメージを与えているのも事実で、フィッシャー提督やメルカッツ提督を戦死させている。



◆カール・グスタフ・ケンプ
戦闘機パイロットから将官に伸し上がった古参幹部。
アムリッツァ会戦の前哨戦で焦土作戦によって消耗させた同盟軍を壊滅させるために出撃した中、ヤン艦隊と当たったがヤンの作戦とフィッシャーの艦隊運用によって悉く翻弄されてしまう。
元戦闘機乗りの指揮で第13艦隊空戦隊のエースであったヒューズとジェイクリを戦死させるも、優勢から突然撤退し始めたのを罠と見て逃亡を許してしまう。
他の提督達が同盟軍艦隊に大きな損害を与えたのに対し、ほとんど損害も出せずに終わってしまった。


対ガイエスブルグ戦では増援に現れたヤンを迎撃するためにイゼルローン要塞の駐留軍を要塞に封じ込めて挟み撃ちにされないように策を練ったものの、ユリアンに見抜かれて逆に完全な挟み撃ちにされてしまい、壊滅的な打撃を受けてしまう。
その後、ガイエスブルグ要塞をイゼルローン要塞にぶつけようとしたがこちらも事前にヤンが策を見抜いていたため、阻止された挙句にそのまま要塞を破壊されて戦死してしまった。



◆ナイトハルト・ミュラー
守勢での戦闘に秀で、「鉄壁」と称される元帥府の幹部。
ケンプと共に加わった対ガイエスブルグ戦では策を見抜いたヤン達の挟み撃ちに加えてガイエスブルグ要塞が破壊された際の余波で重傷を負う。
復讐戦を誓うミュラーはその後、バーミリオン会戦にて窮地に陥っていたラインハルトの増援に真っ先に駆けつけ、何度も撃沈されつつも自分の旗艦を乗り換えては生き残った。


終戦後、ヤンと直接面会すると復讐心は消え「あなたが帝国側にいたなら用兵を学びに伺ったのに」と尊敬の言葉を口にし、
それを受けたヤンも「あなたが同盟側にいたら私は昼寝をしていられた」と返し、お互いに笑いあった。


ヤンと直接面会を果たし(かつ生存している)高級将官ということで、ヤンが暗殺された際には体調不良を起こしたラインハルトに代わって使者として遣わされた。
その際、ヤンの死に際してイゼルローン要塞を離れ、ハイネセンに向かう人々の帰途を守っている。


◆アウグスト・ザムエル・ワーレン
元帥府の幹部の一人。ワッツともルーレンとも呼ばれる。
バーミリオン会戦の直前では補給基地から物資の強奪を行おうと作戦を遂行していたが、ゲリラ活動を行っていたヤンの策にまんまと嵌まり、
ヘリウムと自動砲撃装置を積んでいた物資コンテナからの攻撃に加え、破壊によって起きた爆発に巻き込まれて混乱した艦隊を追撃されて大きな損害を被る。


また、ユリアンらとは地球教団を討伐するため、本部へ侵攻した際に協力してくれたことでよしみが生まれ、当人達からも恩義を得ていた。(この時、原作ではユリアンの素性をワーレンは知らなかったが、藤崎版でのみ察知している)
第11次イゼルローン要塞攻防戦では帝国軍指揮官としてイゼルローン革命軍と対峙するが、ユリアンの作戦の前に敗退している。



◆エルネスト・メックリンガー
芸術家提督の異名を持つ紳士。
メックリンガー本人はヤンと帝国軍によしみが結ばれることを期待しており、彼が同盟政府に追われた際には擁護していた。


回廊決戦の直前、イゼルローン回廊の反対側からビッテンフェルト、ファーレンハイト艦隊と挟撃しようとした所、ヤン艦隊が戦力を全て投入して迎撃に現れたハッタリによってヤン艦隊の総戦力を過大に誤認してしまい、戦うのは危険と判断して撤退し、挟撃の機会が失われてしまう。


ヤン死後、ロイエンタール叛逆の際には、ミッターマイヤー率いる本隊とは別働隊を率いてイゼルローン回廊を通過し、その際に共和政府軍に対して「今後の関係正常化を期待させていただく」と丁重な挨拶をした。
メックリンガーとしてもトールハンマーを発射されれば蒸発しかねない不安と隣り合わせであったが、ユリアンはそれをせず、その通過を許容している。


アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト
かつて帝国を二分する内乱でラインハルトに敵対し、降伏後帰参を許された若手将官。
回廊決戦ではラインハルト本隊が到着する前に挑発によって攻勢を始めたビッテンフェルトと共に並行して進撃するが、
ビッテンフェルトほどではないにせよ攻撃寄りな性格が災いしてビッテンフェルト共々ヤン艦隊の包囲網に嵌まって集中砲火を浴びて窮地に陥ってしまう。
回廊を脱出するべく殿を務めたが、最終的には撃沈されて戦死。二個艦隊を一個艦隊に半減させてしまった。



◆コルネリアス・ルッツ
元帥府の幹部の一人。ルーレンともワッツとも呼ばれる
第9次イゼルローン攻防戦にロイエンタールの元で参戦しており、要塞を放棄するヤンの置き土産として爆発物を想定し先行部隊の編成を進言。解除に成功した。
ヤン艦隊によるイゼルローン要塞再奪取作戦の際、要塞司令官として駐留していたルッツはバグダッシュの情報操作による攪乱で混乱し、それが要塞を奪おうと潜んでいるヤンの罠であると見抜いた。
…が、ヤン艦隊を誘い込んで自分の艦隊と要塞で挟撃する作戦を実行したものの、上記のようにヤンがイゼルローン要塞を放棄する際にシステムに仕込んでいた置き土産により要塞機能を無力化・掌握されてしまい、逆に自分の艦隊を要塞主砲トールハンマーで砲撃されて大損害を受けつつ撤退することになってしまう。



◆エルンスト・フォン・アイゼナッハ
沈黙提督の異名を持つ無口な男。
回廊決戦の終盤、帝国軍による波状攻撃の第2陣を張り、ヤン艦隊とアッテンボロー分艦隊を分断したが逆に挟み撃ちに遭って窮地に陥る。
本人は顔色一つ変えず冷静的確に指揮を行い、大きな損害を出しつつも辛うじて全滅は免れ艦隊の離脱には成功した。



◆カール・ロベルト・シュタインメッツ
帝国軍総旗艦ブリュンヒルトの初代艦長。
ライガール、トリプラ両星系間の戦いにおいてブラックホールを背後に控えたヤン艦隊を半包囲しようと陣を広げた途端、一点集中突破で背後に回り込まれて逆に自分達がブラックホールに追い込まれる窮地に陥ってしまい、ブラックホールを利用した巧みな艦隊運用で辛うじて窮地は脱することには成功した。


回廊決戦では伏兵のマリノ分艦隊を迎撃しようとしたが、ヤン艦隊の本隊からの同時攻撃により旗艦を撃沈されて戦死する。


ヤン本人を目にする機会があり、第一印象こそ軍人には見えない風貌から憮然としたものの、すぐに外見で相手を図ることを反省したため、レンネンカンプのような暴挙に出ることはなかった。



◆ヘルムート・レンネンカンプ
第9次イゼルローン攻防戦ではロイエンタール、ルッツと共に出陣する。
アッテンボローの仕組んだ囮の無人輸送船による自爆攻撃で苦杯を飲まされ、後にライガール、トリプラ両星系間の戦いでシュタインメッツの増援に訪れた際にも先の戦いの失敗でヤンの計略を疑いすぎて先制できず逆激を受けて逃げられてしまい、またも苦汁を飲まされてしまう。


バーラトの和約後はハイネセン駐在の高等弁務官となるが、先の戦いでヤンにしてやられたことを根に持っていたこととヤンを排除することを目論んでいたオーベルシュタインの扇動もあって退役していた彼を同盟政府に不当に逮捕させる暴挙に出てしまう。


最終的にはローゼンリッターの反撃によって逆に自分が捕虜となったことに絶望し、自殺してしまった。


一方で部下のラッツェル大佐は彼とは逆にヤンに対して好意的であり、疑心暗鬼に陥って暴走するレンネンカンプに付いていけなくなり、旧知のミュラーにレンネンカンプの暴挙が報告されてしまった。



◆ウルリッヒ・ケスラー
帝国軍憲兵総監兼、帝都防衛司令官を務める。
艦隊を指揮して戦線に赴く立場ではない(作中艦隊を率いたのもリップシュタット戦役時のみ)ので直接ヤン艦隊と戦うことはなかったものの、万が一ヤン艦隊が帝国領に侵攻してきた場合についてはメックリンガーと共に強い不安を覚えていた。


ケスラー本人は祖国を売り渡して帝国に亡命してきたトリューニヒトを監視する中でヤンが彼を毛嫌いしていたことを知り、同じく嫌う本人も好感を抱いたほど。





ヤン艦隊のその後

劇中公称としてのヤン艦隊は消滅したが、その後もヤンたちの行動は続いていった。


エル・ファシル独立政府革命予備軍の成立

退役していたヤンだが、オーベルシュタインの差し金を受けた駐在弁務官レンネンカンプの勧告に同盟議長レベロが従いヤンが逮捕されてしまう。
さらには統合参謀本部長のロックウェルがヤンの暗殺に動いたが、これはシェーンコップとアッテンボロー、フレデリカの奮闘で阻止される。
この事件を機にヤンはハイネセンを脱出。エル・ファシル独立政府を頼り、「エル・ファシル独立政府革命予備軍」として再びヤン艦隊の面々が集うことに。
手始めにイゼルローン要塞の奪取に成功するが、その最中に第2次ラグナロック作戦が発動され、自由惑星同盟は滅亡してしまった。
自由惑星同盟を併呑した帝国はイゼルローンに侵攻するが、回廊の戦いで損害を被りながらも、彼らは銀河帝国の撃退に成功する。
しかし、艦隊運用の要であったフィッシャー提督が戦死し、ヤンはその神算鬼謀を支えていた手足を失う。
更に、地球教の策謀によってヤンが暗殺されてしまう。
(パトリチェフなども同時に殺害されてしまった)


ヤンの死後ーイゼルローン革命軍の戦い

ヤンと独立政府主席ロムスキーの死により、エル・ファシル独立政府は解散となった。
それでもイゼルローン要塞に住む人口94万人余りが今度はフレデリカを主席、ユリアンを軍事司令官とした「イゼルローン共和政府」を樹立。
これまでの戦いでかつてのヤン艦隊幹部も数を減らしていた上、ヤンの死によって戦意喪失し離脱を選ぶ者も少なくなかった。
ムライもそうした離脱者のまとめ役となって汚れ役を引き受ける形で退出したが、「イゼルローン革命軍」として帝国への抵抗を続けることを選ぶ。


結果的にではあるがここでヤンの家族が自治政府トップになった事で、かつて自由惑星同盟政府が危惧したヤン艦隊軍閥化も実現してしまった感はあるが…。


その後第11次イゼルローン要塞攻防戦で帝国に勝利を収め、共和主義者たちのシンボルとして健在であることを示したが、帝国との事実上最後の戦いとなったシヴァ星域会戦においてメルカッツやシェーンコップを失いながらも帝国との講和にこぎつける。
帝国はイゼルローン共和政府によるバーラト星系(旧同盟の首都星ハイネセンを擁する星系)の内政自治権を認め、代わってイゼルローン共和政府からイゼルローン要塞は返還される約定がかわされた。



物語はここで終幕したが、その前提でイゼルローン共和政府のメンバーも動いているため、約定は守られただろう。
フェザーンに滞留して自由の道を歩く者。
自らの上官の死を報告するため出身地である帝国に帰る者。
帝国と戦いつつもいつか歴史家への道を志す者。
ハイネセンでの民主共和制に参画するであろう者。


個々のメンバーごとに、長い長い建設と守勢の時代への途を、彼らは歩んでいくこととなるだろう。



巨大なアニヲタwikiも、内部に充満する人的エネルギーによって飽和状態に達するようで、この生死をかけた追記・修正をユリアン・ミンツは後に細部まで思い出す事が出来た。


どのような別れが、またどれほどの流血が彼らを待つのか、それらを承知してはいてもアニヲタwikiはヤン艦隊にとって祭りの広場だった。


せいぜい陽気に賑やかに、彼らにしか成し得ない項目を楽しもうではないか。


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  • ヤン・ウェンリーのガバガバシビリアンコントロール論が生み出した愚連隊と言っても過言じゃない気がする -- 名無しさん (2019-11-04 04:29:26)
  • グエン・バン・ヒュー… -- 名無しさん (2019-11-04 08:29:44)
  • サボりやセクハラには寛容だがパワハラにだけは厳しいある意味理想の職場。部下に暴力をふるった士官をヤンが速攻でクビにした逸話はヤンの人柄を表してる -- 名無しさん (2019-11-04 09:06:11)
  • 自由惑星同盟の上層部の疑念も満更的外れって訳でもないんだよな。実際末期には同盟自体が死にたいだったとはいえ実質軍閥化したようなもんだし。そもそも致し方なかったとはいえ一個人に国の軍事権を集中させるのは危険通り越して無謀だし。特に同盟の末期の政治家たちはそのせいでゴールデンバウム王朝がラインハルトに乗っ取られるのを直接見てる訳だからな -- 名無しさん (2019-11-04 15:33:39)
  • 「ヤン・ウェンリーと、その他少し」の評好き -- 名無しさん (2019-11-04 19:27:19)
  • 文庫版の解説で「ヤン一人が極端に優秀すぎる」って書かれてたけど、当たり前というか仕方ないんだよな。アムリッツァで同盟の軍人殺し過ぎて残りもクーデターでほぼヤン艦隊のみが戦力になってしまった。他の幕僚たちも優秀とはいえやはりヤンがいてこそだし -- 名無しさん (2019-11-04 20:35:42)
  • 民主主義を守ろうとすろうとした最後の砦?ヤン艦隊の後裔が実質民主主義を踏み躙るユリアンを頭にしたセクト・愚連隊と化して終幕したのは草も生えないんだよなあ -- 名無しさん (2019-11-04 21:11:28)
  • そもそもヤン自身が民主主義者というよりアンチ独裁主義者・反ルドルフ主義者つった方が正確だしな。 -- 名無しさん (2019-11-04 21:28:08)
  • それでもヤン艦隊は「崇高な目的のために始めて最悪の結果になった」ラグラングループや救国軍事会議なんかよりはずっとマシなところに落ち着いてる。何百年も先を見据えて、民主主義の種を残すという目的は達成できてるし、ベストよりベターを求めるヤンからすればユリアンの功績は上々だろう -- 名無しさん (2019-11-04 21:46:16)
  • グエンの項目が無い…ヤン艦隊では貴重な突撃戦担当で、同盟軍でも珍しいパーソナルカラーの旗艦持ちだっりするのに -- 名無しさん (2019-11-04 23:25:32)
  • ↑4確か作者の田中芳樹先生は元学生運動家上がりだったらしいからそこら辺の色が出ちゃったのかもね -- 名無しさん (2019-11-04 23:52:54)
  • ラグラングループや救国軍事会議は、共通点として「目的のためならあらゆる手段を使っていい」と思い込んだところだな。反対にヤンは「手段を気にし過ぎて目的を達成する機会を自分から捨てた」男だと思う。栄光も理想も達成させられる才も機会も持っておきながら、自分の理念を固持し続けた。理想に殉じたと言えば聞こえはいいが、そんな生き方普通の奴には出来ないよ -- 名無しさん (2019-11-05 23:54:52)
  • 「伊達と酔狂で革命ごっこしてるんだ」ってアッテンボローが断言するとこがこのファミリーを表してるよな -- 名無しさん (2019-12-11 14:27:03)
  • ↑13 それは作者の問題だと思ったけどな。で、ひいては日本人のシビリアンコントロールに対する認識が浅いと感じた俺がいる -- 名無しさん (2019-12-15 16:19:49)
  • ぶっちゃけ自由惑星同盟滅亡した後のヤン艦隊ってジオン公国滅亡後のネオ・ジオンやデラーズ・フリートの同類だから -- 名無しさん (2020-02-04 21:18:51)
  • ヤン艦隊どころか、ヤン軍と言っても過言じゃないくらいヤン個人に権威が集まってるしね -- 名無しさん (2020-02-10 21:51:48)
  • 自由惑星同盟の項目もお願いします -- 名無しさん (2020-04-19 07:10:52)
  • ↑11 それは仕方ないよ。あの状況で、ユリアンたちに肩入れして、イゼルローン軍の政権になってくれる星系なんてなかっただろうし、かといってそのまま解散していたら、そのまま民主主義の火は立ち消えていたかもしれんし。ユリアンたちも、そうした面(民主主義とは反する軍閥化)は意識しながらも、民主主義の火を守り続けるためにあの道を選んだんじゃないかな。 -- 名無しさん (2020-04-19 09:22:07)
  • そもそも銀英伝世界では「民主主義」が失伝してる可能性もあるな。自由惑星同盟の建国が帝国歴218年ということは、人類は200年以上民主主義を実践してこなかったことになる。ひとつの政治体制が忘れ去られるには充分な時間ではないだろうか。(つまり同盟で行なわれているのは断片的な資料からどうにか再現した「民主主義っぽい何か」。しかも戦時下で歪になったやつ) -- 名無しさん (2020-04-21 20:31:24)
  • ビッテンフェルトはアムリッツァで敵前回頭ではなく、射程の切り替えで敗れてる。 -- 名無しさん (2020-05-15 00:23:11)
  • 「リーダーであるヤンに対してもタメ口を聞いたりする者」ってあるけどそんなのいたっけ? -- 名無しさん (2020-07-09 04:56:48)
  • ↑キャゼルヌ -- 名無しさん (2020-07-09 05:32:22)
  • ヤン側もラインハルト側も死んでほしくない人ばかりだった ED3見てるとスーっと涙が出てくる -- 名無しさん (2020-09-02 00:38:03)
  • ヤンはファーストネームなのにヤン・ファミリーって呼び方はおかしくない?ウェンリー・ファミリーになるはずでは?あと確か「ユリアンがヤン家に〜」みたく書かれてるところもあって変に思ってた。ウェンリー家だよね? -- 名無しさん (2020-09-02 00:59:38)
  • ↑ヤンの父がヤン・タイロン。嫁がフレデリカ・グリーンヒル・ヤンって名乗ることから、ヤンはファミリーネームで、ウェンリーがファーストネーム。ヤン自身の回顧で、父親からウェンリーって呼ばれてるしな。 -- 名無しさん (2020-09-02 02:09:25)
  • ↑2 つE式 -- 名無しさん (2022-04-30 17:00:21)
  • エルファシルとヤン他の主戦派星系があっさり見捨てたのには笑った。クーデターの時といいヤンを使いこなしてやがる -- 名無しさん (2022-08-05 14:30:11)
  • グエン・バン・ヒューが「同盟では珍しい猛将」?むしろ同盟って猛将(猪武者)ばっかりだと思っていたが。 -- 名無しさん (2022-08-08 17:57:30)
  • ↑10何せゴールデンバーム王朝と国家革新同盟の目的が民主主義の駆逐だからな -- 名無しさん (2022-08-10 10:49:02)
  • 自由惑星同盟の項目を立てたいんだけと内容が結構この項目と被るんだよね。この項目を自由惑星同盟の項目に編集するのと項目の分割どちらの方が良いかな? -- 名無しさん (2024-04-27 19:35:52)
  • 内容の一部を他の項目に移しこの項目は自由惑星同盟の項目に編集しようと思っているんだけと反対の人はいますか? -- 名無しさん (2024-05-04 01:41:02)
  • 個人的にはこのヤン艦隊のページを維持した上で自由惑星同盟の項目新設に一票。ビュコックとかラップとかの「ヤン艦隊に所属しなかった・できなかった人たち」をそっちに移す形で。 -- 名無しさん (2024-05-04 02:15:13)
  • ↑自分も分割とどっちの方が良いか迷ったんだけどそうすると自由惑星同盟とヤン艦隊で内容やキャラクターが被るんだよね。なのでヤンの戦術とかよしみのある帝国将官の部分はヤン・ウェンリーの項目に移してこの項目は自由惑星同盟に編集した方が良いと思ったんだけど -- 名無しさん (2024-05-04 02:39:33)
  • ↑ 新設の自由惑星同盟の項目にヤン艦隊の紹介も数行でざっと入れて「自由惑星同盟の軍人の内、ヤン艦隊に所属した者はそちらを参照」でいいのではと。 -- 名無しさん (2024-05-04 03:00:25)
  • 艦隊戦術や帝国将官からの評価についてヤン本人の項目に移すのは賛成。 -- 名無しさん (2024-05-04 03:03:15)
  • ↑じゃあ分割にするか。あとよしみのある帝国将官の部分はどうしよう?個人的にはまるで木に竹を接いであるような違和感があるのでヤン・ウェンリーの項目かもしくは銀河英雄伝説の項目に移したいんだけど -- 名無しさん (2024-05-04 03:14:53)
  • この項目から自由惑星同盟の項目の分割を提案します -- 名無しさん (2024-05-04 03:16:04)

#comment

*1 実際に被弾したのは「汚水処理システム」なので実情とは異なる。もっとも、作中で「人は散文的な事実より、彼ごのみの化粧をほどこされた虚構を、はるかに好ましく思うものだ。」と言われている通り、作内外問わず「トイレを壊された」方が広まっちゃってるが。
*2 第9次イゼルローン要塞攻防戦において補給管理のキャゼルヌに無断で輸送艦を自爆作戦に使ったため、軍艦にも民間人を多数乗せて脱出するしなければならなくなり「幸運の艦」ということで最大限の安全を有する赤子と母親を乗せる艦として選ばれた。
*3 なおこのキャゼルヌからの通告には「かつて汚物まみれになった艦が今度はオムツまみれになるのか」「赤子の鳴き声で艦が賑やかになるな…」と乗組員は苦い顔をする者が多かった。一方で「産後直後の女性が一番美しいんだ」と変態的な励まし方をする航宙士官もいたという。

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