登録日:2019/10/31 Thu 11:32:50
更新日:2024/05/13 Mon 10:47:38NEW!
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「天国と地獄(原題:Heavenly puss。天国の猫?)」とは、アニメ『トムとジェリー』のエピソードの1つ。1949年初公開。
トムの身に起きる、普段の話ではまず「あり得ない」出来事や、数々の恐怖を煽る演出が印象に残る一作である。
【ストーリー】
いつもとは違う、少し切ないバイオリン風のメロディのオープニングから始まる。
いつものように、トムが寝ている隙を狙って食料を盗もうとしたジェリー。
しかし、トムは実は起きており、ナイフでジェリーを切りつけようとする。
そのままジェリーが階段の上へ逃げたため、トムは階段に敷かれていたカーペットを引っ張ってジェリーを落とそうとするのだが…。
何と、上の階にあったピアノがカーペットを滑って落下。
ジェリーは何とかピアノを躱すことができたが、トムは壁際に追い詰められた挙句、ピアノに潰されてしまう。
(なぜそこにピアノを置いたのか?は家主のみぞ知ることだろう…)
倒れたトムの体から、半透明のトムが現れ、傍に出現した黄金のエスカレーターを登っていく…。
延々と続くと思われるほど長いエスカレーターを登りきると、そこは雲の上、すなわち天国だった*1。
そう、何とこの話では、トムが死んでしまうのである。
(他にもオチの時点でトムが死亡したと思われる回はあり、そもそもトムとジェリーというアニメは「普通にやればまず人死にが避けられない」出来事のオンパレードなのだが、「トムの死」そのものを根幹に据えた話はこれが唯一である。)
「Heavenly Express(天国特急)」と書かれたそこは、これまた黄金の列車が停まっており、駅員の聴取を受けた猫たちが乗り込んでいた。
以下、駅員が聴取していた猫たち
- ブッチ
ブルドッグとの喧嘩で死亡。尻尾に入れ歯(なぜ?)が噛みついている。
- フランキー
路地裏で歌っていたところ、アイロンが頭上に落ちてきた。帽子の下に大きなたん瘤がある。
- アロイシウス
ローラー車に気づかずそのまま轢かれた。体は肥満体型だが横から見ると体全体が薄ぺらくなっている。*2
- フラフ、マフ、パフ
3匹の子猫。川に袋詰めにされて投げ捨てられた。(濡れて口を縛られた袋に入っていたため。またあまりに幼いせいか、恐らく自分たちの身に起こったことに気が付いていないのか...)
駅員の猫「人であれば、こんなことはできないはずなのに...」*3
トムは駅員の目をかいくぐろうとするが呼び止められ、聴取を受けることになる。
「君の一生のほとんどは、罪のないネズミを追うことで費やされてきた。これでは天国に行けないね」「罪のない」…?
しかし次の列車が出るまでの1時間の間に、契約書に「すべて許します」というサインを(ジェリーから)貰えれば、天国行きの列車に乗れるということだった。
「それができなきゃ、こっちだ」
駅員がテレビのボタンを押すと、画面には地獄の映像が。
そこではブルおじさんスパイクが真っ赤になったような姿の悪魔が、煮えたぎる釜の前で待ち構えていた…。
「そいつをよこせ、煮て食ってやる!今すぐ下へよこすんだ!」
…ともかく、「残された時間は1時間」と駅員に念を押され、トムは現世へ戻って来た。
夢かと安心したのも束の間、トムの手には先ほどの契約書が…。
「急ぎなさい、早く…」
トムは手始めに、ジェリーに大きなケーキをごちそうするが、ジェリーはこれをあっという間に完食。
慌てたトムはジェリーにペンを握らせ契約書を指差すが、逆にペンのインクを顔にぶちまけられてしまう。
事情を知らないジェリーは、いつものようにトムをからかうだけで全くサインに応じようとしない。
次にトムは、自分でジェリーの名前を書く練習をし、自筆で契約書を書こうとする。
しかし、天から見ているも同然の駅員にそんなことが通用するはずもなく…。
「トム、ズルはいかんよ…」
今度は大きなチーズを持ってジェリーに会うトム。
しかし、契約書の文面に目を通し、「そこにサインしてくれたらこのチーズをやるよ」と言いたげなトムを一瞥したジェリーは、何と契約書をビリビリに破ってしまうのだった。
いくら好物のチーズとはいえ、報酬をエサに今までの出来事をチャラにしようと考えるトムの浅はかさに憤慨したのだろうか?
真意は謎のままだが、トムの態度がとても許しを乞う立場に見えないのは確かであり、許す・許さない以前に誠意が感じられない彼の姿にジェリーも思うところがあったのは間違いないだろう。
契約書を破かれて怒ったトムは、塵取りでジェリーの頭を叩こうとするのだが…。
「いいぞトム!早くそいつをぶっ叩け!ほら早く!」
悪魔に追い詰められたトムはすぐにジェリーを解放。破られた契約書をガムテープで修復し、必死のジェスチャーで自分の状況をジェリーに伝える。
その時、無情にも聞こえる、「発車します」のアナウンス。
ジェリーは必死なトムの姿を見て、ついに契約書にサインをした*4。
トムは急いで天国へ行こうとするが、直前でエスカレーターが消えてしまい、哀れ地獄へ真っ逆さま。トムは地獄で出迎えた悪魔に捕まり釜茹でにされてしまうのだった…。
「アーハッハッハッハッハ!」
「アーハッハッハッハ……!」
追記・修正?俺から逃げられたら許す!まあ、できっこないがな!アーハッハッハッハ…!
[#include(name=テンプレ2)]
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…悪魔から逃れようと必死でもがくトムは、どこからか飛び跳ねてきた石の熱さで飛び起きる。
そこは、暖炉が暖かく灯る見慣れたリビング。地獄でも天国でもない、いつもの風景だった。
そう、今までのことは全て夢に過ぎなかったのである。
夢であることに改めて安堵したトムはジェリーを呼び、(夢と同じように)何度もキスをして抱きしめる。
そんなトムの喜びなど知るはずもないジェリーは、「訳が分からない」とばかりに首を傾げるのだった…。
【余談】
トムとジェリーでは珍しく、夢オチで終わるというエピソードである。
また、トムの悪友であるブッチの死(これも夢だと解釈できるが)や、生まれてすぐに捨てられた子猫など、大人から見るとゾっとする社会風刺も盛り込まれている。(このエピソード発表からおよそ70年、残念ながら身勝手な理由で犬や猫を捨てる人間は、今も後を絶たないのである...)
現実に生きる我々も、ジェリーに対する優しさが芽生えたトムのように、弱いものを気遣う気持ちを持てればいいのであるが...。
もっとも、普段のトムに対する過激な仕返しを見ると、一概にジェリー=悪者ではない・弱者とも言えないが...。
また、優しさ以前に、猫はネズミを追いかけるのが習性であり、トムが飼い主からネズミ退治を命令されている場面も数多くあることは書き加えておく。
ともすれば過激だと批判されがち(特にトム側)な「トムとジェリー」という作品での追いかけっこにおいて、ある種の「許し」を与えるエピソードなのかもしれない。
追記、修正は天国特急に乗車された方がお願いします。
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▷ コメント欄
- このEpとは直接関係はないけどトムも割とジェリーから理不尽な目にあわされてるよね… -- 名無しさん (2019-10-31 14:57:32)
- 「罪のないネズミを追う」・・・ん? -- 名無しさん (2019-10-31 17:05:07)
- 子供「わあ子猫が3匹もいる可愛い!」大人「こんな小さな猫が袋詰めにされて・・・」 -- 名無しさん (2019-10-31 17:17:04)
- ↑3割とじゃなくていつもなのでは・・・ -- 名無しさん (2019-10-31 17:54:39)
- VHSソフトではこれが最終巻のラストに収録されていたから小さい頃は本当に最終回として作られたものだと思ってた -- 名無しさん (2019-10-31 20:45:33)
- ルーニー・テューンズのシルベスター&トゥイーティーに「悪魔の呼び声」という話がある。地獄に落ちた猫のシルベスターが悪魔に「鳥を捕まえろ」と脅かされ、結局最後は死んで地獄に行く・・・ 見事に真逆やなこれとw -- 名無しさん (2019-11-01 22:10:09)
- そういえば今、ACの広告で、「『優しい飼い主に拾ってもらってね』と言っても、それは犯罪者の台詞です」ってCMやってるよね……。 -- 名無しさん (2020-09-20 14:39:04)
- ↑×3だが調べてみたら全20巻あるうちの13巻収録で全然最終巻じゃなかったわ…今更だが -- 名無しさん (2021-05-21 02:06:39)
- ↑×3 残機1になって金庫で生活→銀行強盗のダイナマイトで死亡(銀行強盗も一緒に死亡)はひどいと思った。 -- 名無しさん (2021-08-21 20:13:14)
- 胸糞の悪くなる話かもしれんが子犬や子猫を袋に詰めて溺死させるというのは東西どちらでもよく行われていた処分方法らしい。心優しい奥様や子供なんかが「下手に放置すると悪意ある人間に嬲り殺しにされるからこっちの方がまだ楽」と泣く泣くやる事例も多かったそうな… -- 名無しさん (2021-08-22 17:14:55)
- ↑4 22年前のACでも『私の人生、人任せです』として全く同じ内容やってるよなあ。無責任に捨てるくらいなら最初から飼わないか、ぬいぐるみで我慢しろよっていう話 -- 名無しさん (2022-11-20 22:07:54)
- 原題は「すてきなにゃんこ」そこからの筋は正に天国と地獄、か -- 名無しさん (2023-08-30 17:55:32)
#comment
*2 スターキャット版(原語版)では「汽車に轢かれた」と記している。
*3 「水死か、可哀想に…」と訳すこともあった
*4 運悪くペンのインクが出にくい状態で、必死にペンを振るうトムの姿が一層緊迫感を引き立たせている。
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