間久部緑郎(ブラック・ジャック)

ページ名:間久部緑郎_ブラック_ジャック_

登録日:2019/02/12 Tue 10:14:47
更新日:2024/03/28 Thu 13:42:45NEW!
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手塚治虫 スターシステム ブラック・ジャック 幼馴染 多指症 刻印 ロック 大人の事情 マフィア 博徒 サングラス アンチヒーロー 封印作品 犯罪者 盲目 神奈延年 漫画業界の闇 間久部緑郎 ロック・ホーム 暗黒街の皇太子 遮断機 つのがいのお気に入り



ブラック・ジャック』の登場人物。


ここではまず、手塚作品における「ロック・ホーム」について説明するべきだろう。
初出は『少年探偵ロック・ホーム』という漫画の主人公、ロック・ホームであった。言うまでもなく、シャーロック・ホームズのもじりである。
ロックは当時の水準から見ても明らかにイケメンであり、正統派少年だったケン一やアトムとも何度も共演しているが、
その風貌故に独自の存在感を発揮していた。
完結後、ロックはスターシステムに起用され、『ロック冒険記』等初期は少年の姿であったが、中期以降には青年の姿で描かれることが多くなった。
モンテ・クリスト伯』+異世界モノとでもいうべき『新世界ルルー』からはサングラスをかけた怪しげな姿も見せるようになり、
中でもターニングポイントと思われるのが、1966年『週刊少年サンデー』掲載の『バンパイヤ』であった。
本作ではシェイクスピア四大悲劇の一つ「マクベス」をもじった間久部緑郎のフルネームが与えられ、
宇宙人のように頭がよく、ネコのように執念深く、ヘビのように残忍な心のもちぬし(以下原文ママ)として悪の限りを尽くしていた。
以降も1968年の『火の鳥 未来編』では人類滅亡の引き金を引く歪んだエリートとして登場するなど、
彼の果たす役割も様々で、悪党、警察関係、御曹司、ナルシスト、はたまた普通のイケメン等々、書き出せば枚挙に暇がない。
おそらく手塚治虫作品に最もハデに出演した人物の一人と言っても過言ではないだろう。


『ブラック・ジャック』でも「ロック」という名で出ており、様々な役柄を演じている。
代表例としては第1話の患者のバカ息子「アクド」、桑田このみ/ブラッククイーンの彼氏の「鈴木」などが印象的だ。
手塚本人がシナリオを描いた『鉄腕アトム』アニメ第2期27話「ブラックジャックの大作戦」ではタイムパトロール役で登場し、
BJと一緒に歴史改変を目論むゴアと戦うという設定で登場したこともあった。
しかし「間久部緑郎」という名前は、『ブラック・ジャック』においては固有の人物であり、あるエピソードでのみ使われている。
そのエピソードでは、BJとは中学時代の親友であった。
以下、「間久部緑郎」を「間久部」と呼称する。





大まかな容姿は『バンパイヤ』に出てくる同名の人物と同じで、基本的には黒髪で黒いスーツ、サングラスをかけている。
しかし、間久部にはある身体的な特徴があった。


[[間久部は多指症であった。小指が人より1本多かったのだ。>指の数]]


そのせいで中学時代はクラスからは化け物扱いされ、のけ者にされていた。(本人によれば、自分の名前さえ六本指の「ロク」から取られたのだという)
そんな時に出会ったのが、まだ体が不自由で、車いすに乗っていたころのBJであった。*1
二人はお互いの身に同情し、親友となり助け合っていた。
二人はクラスでもダントツの成績を修めており、その後も互いに協力していた。


BJが医科大学に進んだ後のある日のこと、間久部はBJに、余分な指を切ってくれるように頼んだ。
間久部は5本の指でアメリカに行き、再出発をしたかったのだ。
BJは了承し、手術を行い、大成功に終わった。間久部は望み通り、5本指で再出発することになったのだ。
しかしアメリカの大学を退学させられ、その後は裏社会に入った。
そして殺人や密輸、売春、立ち小便に至るまであらゆる悪事に手を染め、現在では裏社会では知らない人はいないほどの地位についている。


その間久部がBJにする依頼は、指紋を変えてもらうことだった。
周囲には間久部の部下もいるため、断れる状況ではなく、BJは了承する。
指紋を変えるには指ごと変えなくてはならないため、そのへんにいた部下一人を指名し、指を交換した。
施術中に喫煙を申し出る非常識さにBJは呆れつつも言われたとおりにしてやり、手術は成功に終わる。
BJは森で降ろされ、報酬を受け取り、立ち去ろうとした…


が、しばらくすると爆発が起きた。
その様子を見送った部下はアジトに帰り、間久部に報告した。
実はカバンの中には時限爆弾が仕掛けられていた。そしてそれは、間久部が証拠隠滅のために仕組んだものであったのだ。
報告を聞いた間久部はアジトを出ることにする。
その際、自分の指を持つ部下を残して、同じく証拠隠滅のためにアジトごと焼き払った。


その後、警察(演:丸首ブーン)に捕まり、取り調べを受けるが、指紋が変わってしまっているため、決定的な証拠をつかめないでいた。
学生時代は多指症であったことはつかめたのだが、その6本目の指を持っていないために、取り調べは難航していた。
間久部が帰ろうとしたとき、日本から小包が届く。
アルコール漬けの標本にされており、そのラベルにはこう書かれていた。


『間久部 緑郎の 6本目の指 医師ブラックジャック』


BJは生きていた。そしてひそかに保存しておいた間久部の6本目の指を、警察に送ったのだった。
間久部はただただ、驚くしかなかった。
これが決定的な証拠となり、間久部が犯罪を自白するのは、時間の問題となったのだ。


一方のBJ。手紙を持って、川に向かって立っていた。


「友達か………」


親友だと思っていた人に裏切られたBJは、手紙を川に破り捨て、立ち去るのだった…





追記・修正は友達と思っていた人に裏切られたことのある人にお願いします。



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   *   *  *   + うそではないです   n ∧_∧ n + (ヨ(*´∀`)E)   Y   Y  *

上記の話を聞いて、「自分の知ってる話と違うぞ」と思った人もいるだろう。
それもそのはず、上記は「指」というエピソードで、単行本等には収録されておらず
代わりにストーリーを大幅に改変した227話「刻印」(単行本20巻、文庫版5巻、講談社漫画全集20巻掲載)が収録された。
TVアニメでは放送されなかったが、Flash版では第9話として製作された(間久部の声は神奈延年が演じている)。


間久部が裏社会では知らない人はいない地位にいることと、指紋を変えるところから、
BJが爆発に巻き込まれるところまでの流れは大体同じだが、その他はかなり異なっている。
以下は「刻印」のあらすじである。


まず多指症ではなくなっている。そして中学校時代ではなく、小学校時代に変更。
クラスからのけ者扱いされている理由も、間久部が嘘をついたり、人を騙してばかりいて、誰も近寄りたくなかったからに変更されている。
BJと親友であることは変わらないのだが、その理由も「なぜか気が合った」に変更されている。(BJが肢体不自由を理由に周囲から疎まれていた、といった発言も無い)
嘘や騙しも、BJに対しては1度もしていなかった。


BJが大学の医学部に入ったころ、間久部はふとしたチャンスをつかみ、フランスに旅立っていった。
その際、間久部は「いつか医師ブラック・ジャックの手術を受けに来る」と言い残した。


その後、パリで博打に手を出し、あるシンジケートの一員となった。
そこからどんどんのし上がり、「暗黒街の皇太子」とまで呼ばれるようになったのだ。
しかし、追われる過程で姿を変えるために、瞳の色を変えてしまったのが失敗で、今ではほとんど見えなかった。


指紋を変えるように頼むところから、警察に捕まるまでは大体同じなので省略。
ただし指を挿げ替えられた部下(ピエール)は間久部が最初から指名しており、
アジトを放火した際に「アイツはおれをICPOにタレ込むつもりだったからな」と憎々しげに選んだ理由を語っている。


そして、「指」では間久部が報告を受けた際に発したBJを罠に嵌めたというセリフは改変され、無くなっている。


かくして間久部は逮捕されるも警察の取り調べは難航し、間久部が帰ろうとしたところ、警察はある情報を入手する。
それは、BJが手術の際、間久部との友情を記念して、間久部の指の骨に「B・J」のサインを入れていたというのだ。
タレコミ主はもちろんBJである。


その後、病院でそれが確認されて決定的な証拠となり、間久部は死刑が確定した。
BJは間久部のいる刑務所を訪れ、「おれを爆弾で殺そうとしたのはお前の仕組んだことか」と問いただした。
しかし間久部は自分の指示ではなく、部下が勝手にやったことだと主張する。
本当かどうかを聞くと、間久部は自分がBJに一度も嘘をついたことはないと言い、「おれを信じてくれ」とサングラスを外してBJの方を見る。
その顔を見たBJは間久部を信用することにし、気の毒を伝えた後、刑務所を去っていくのだった。





「指」が大幅に改変しなければならなかった理由としては、やはり多指症が原因だろう。
多指症自体は作中で間久部が発言しているように珍しい現象ではなく、あの豊臣秀吉も多指だったという伝承がある。
発生しても、大抵は幼いうちに5本にしてしまうため、今の日本では多指症のまま育つこと自体がまずないと言っていい。
作中でその多指症を差別する描写や、「1ダースという単位は昔の偉い人が6本指だった」などという俗説に関する記載があったため、改変されたのだろうと推測する。


なお「指」では間久部のセリフからBJは手術を受けて歩けるようになった、ということが語られているが、
第54話『アリの足』では這って歩けるようになった*2あと、中学時代に地獄のハイキングを乗り越えて遂に歩けるようになった、と語られており、
どうも本間先生のオペで歩けるようになったという設定は「指」同様無かったことにされたらしい*3



なおつのがいによる手塚プロ公認ギャグパロディ漫画『こんなブラック・ジャックはイヤだ』ではなぜかレギュラーになっている。
しかもチャラ男役で。



追記・修正は友達に対し、一度も嘘をついたことがない人にお願いします。


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  • 多指症について調べたが以外とそうだった有名人多いんだな -- 名無しさん (2019-02-12 10:36:33)
  • 変な言い方だけど、この話をわざわざ改変する必要ある感じしないんだよな 快楽の座と違って倫理的にアレなわけでもないし、これで差別扱いなら他の話もなりかねないし -- 名無しさん (2019-02-12 10:48:05)
  • でもストーリー的には改変後の方が好きだな。サングラスを外すシーンがいい -- 名無しさん (2019-02-12 11:49:46)
  • ドラマ「アンナチュラル」の登場人物、久部六郎の名前の由来という説がある。 -- 名無しさん (2019-02-12 12:46:48)
  • 元々別のエピソードとして描く予定のアイデアを入れたのかもしれないが、どっちにしても心に残る作品にするのはやはりとんでもないお方 -- 名無しさん (2019-02-12 13:25:16)
  • 単行本(「刻印」)しか読んでないが、小学生時代の頃か、最初読んだときに「ロックが爆弾仕掛けた?BJに最初で最後の嘘ついた?」って勘違いして読んでたんだけど、あながち間違いでもなかったのか -- 名無しさん (2019-02-12 13:35:10)
  • ロックといえば、火の鳥に出てきた奴も印象深かったな。コンピュータに依存しまくって、コンピュータの暴走で戦争不可避になってはじめて、そのコンピュータと決別したという。しかしあまりに遅すぎた。 -- 名無しさん (2019-02-12 14:21:40)
  • こんなブラックジャックはイヤだの中ではキャラ崩壊が一番激しい -- 名無しさん (2019-02-12 14:38:38)
  • ↑×2 作中かなりの悪人なのに、戦争だけは嫌だと泣き叫ぶんだよな -- 名無しさん (2019-02-12 21:37:35)
  • BJの友達とかいう肩書の奴はなんで死んでしまうのん。なんだかんだでBJの孤独を忘れさせてくれた貴重な友人だからな、悲しいなぁ -- 名無しさん (2019-02-13 03:04:44)
  • BJに出てくるロックは他にもブラッククイーンの婚約者であわや脚切断かという大事故に巻き込まれたり、弟分として育ててきた鹿を自分の研究の結果射殺しないといけなくなったり、ロクな目に遭ってないな… -- 名無しさん (2019-02-13 09:13:12)
  • あとは「地下水道」に出てきた、敵アジト爆破に失敗してがれきの下敷きになった挙句ネズミに顔齧られた活動家もロックか。やっぱり悲惨な扱いだな…。 -- 名無しさん (2019-02-13 12:17:47)
  • 『こんなブラック・ジャックはイヤだ』のパリピロックけっこうすき -- 名無しさん (2019-06-13 18:16:01)
  • 間久部の真実がどっちであれ、ブラック・ジャックが間久部を疑ったのは事実だから、そこら辺でちょっとモヤモヤしちゃうって感想もあるみたいだね(当然といえば当然だけど)。 -- 名無しさん (2020-09-13 15:43:16)
  • 「指」版で、間久部が五本指になったのはアメリカに行く前で、裏社会に入った時点で五本指なんだから、六本指は証拠としてあんまり関係ないように思う -- 名無しさん (2021-06-20 01:27:46)
  • っというか証拠品が指の骨に“マジックで”サインとか改変が雑すぎる(苦笑)しかしBJのせいで死刑台に立たされたのに恨み言を一切吐かず死を受け入れる間久部のキャラは良改変。 -- 名無しさん (2022-05-03 13:06:44)
  • 膨大な犯罪のうち立ち小便だけは認めるところ笑った -- 名無しさん (2022-05-24 06:18:15)
  • ↑×3 今でこそ、DNA鑑定とかで本人特定できるんだろうけどねえ -- 名無しさん (2022-05-30 00:36:03)

#comment

*1 幼少期のBJが歩けなかったことは第5話『人間鳥』の時点で明かされているが、爆発事故の設定が出てくるのは、くしくも次の29話『ときには真珠のように』である。
*2 この辺に関しては213話『密室の少年』でBJが苦しみを吐露している
*3 ただし、この「地獄のハイキング」の事を本間は『ある障害者の記録』という本にしてまとめている。

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