登録日:2018/10/19 Fri 21:57:34
更新日:2024/03/26 Tue 11:21:37NEW!
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SCP-2406「The Colossus」とは、SCP財団本部が収容しているSCPオブジェクトである。
概要
SCP-2406は、材質は主に75~80%の銅と15~20%の亜鉛、若干量のニッケル、鉄、鉛などの合金で出来た高さ93m・重量およそ210t、操縦に6名必要な搭乗型のオートマトン…
まあ、わかりやすくいうと巨大ロボットである。
現状、財団が確認しているのは胴体外部に鎚と鑕の紋章が刻まれた本機のみだが、機体にはエーゲ海の数字で「9」と刻印されているので、同型機があったのだろう。
しかし鎚と鑕ねぇ………あっ(察し
SCP-2406の脱落していたらしい左腕は未だ見つかっていないが、ノズルが接続された右腕の容量の20800Lタンクを検査したところ、どうやらギリシア火薬*1みたいな液体が入った火炎放射器らしいことが判明。
コクピット内部から発見された6名の「パイロット」のミケーネ風のヘルメットもとい兜は顔全体を覆う構造で、視界は緑色のガラスで出来たバイザーで確保しているらしい。着込んでいた鎧は鉛と銅の合金にアスベストの裏打ちをしたものだったが当時に存在するものですらなく、ヤギの腸でできたチューブが酸素や水分をパイロットに供給していたこともわかっている。
遺骨を放射性炭素年代測定で年代を調べたところ、どうやら紀元前1200~1000年辺りの人間らしいことが判明した。
……タンクに仕込まれていたギリシア火薬って、確か紀元前600年チョイにデビューしたはずじゃ?
その動力源は何と原子炉。
AIらしきものは搭載されていないので、合計160個ものバルブとレバーで空気圧・油圧、そして時計じかけ、つまり歯車などを介して動かす非常に忙しいアナログな仕様なこれは、我々が作るような沸騰水型やら加圧水型ではなく、どうやら天然原子炉*2を参考にしたと思わしき原始的なものであったようだ。原子炉だけに。
因みにSCP-2406から脱落した原子炉は1200度以上の熱を保ちながら地中に沈み、現在は地下820mに埋まっているのではないかと推測されている。
収容までの経緯
1985年8月7日にアラルクム砂漠*3で検出した異常な放射線源を追い回していたら、何らかの大規模戦闘で損傷したハイテクなんだかローテクなんだかわからんこの巨大ロボット…………SCP-2406にたどり着いた。
原子力エンジンを落下させてしまったことで機能停止に追い込まれたと推測されるSCP-2406を当初はGRU"P"部局が管理していたが、ソ連崩壊後は財団が管理している。
一応財団の技術で修理することは可能らしいが、その「損傷」が色々とヤバイことを物語っているので、はいそうですかと修理するわけにもいかないのだ。
胴体には何者かに締め付けられたと思わしき跡や、何らかの酸によって腐食させられたと思わしき跡も確認された。
このようだ。さらに頭部、胴体、左脚に突き刺さっている有機的な巨大なトゲの外見はキチン質に近いが構造はサンゴのそれに酷似している。しかも内部から見つかったDNAにはヒトのものが入っていたことが判明。
キチン質、異形の人間、肉質の触手と、この時点でこのロボットの戦った相手は大体察しが付くだろう。
さらにこの機体からはパイロットのほかに防水シリンダーに入ったMEKHANEの信奉者に関係しているらしい巻物が見つかっている。
コレは内容がかなり古く、かつ特殊な文字と文法で書かれており、加えて宗教的な抽象的な表現も多々あったが、財団の解読班が読み解くのを頑張った結果、10年の年月をかけて翻訳に成功した。
以下がその内容である。
巻物Iを閲覧する
目覚めて私は言った、「私はこれらの[理由/デザイン]が、金属の[技巧/技術]の液体を懸念している事を良く理解しております」。
剣を携えた者は言った、「お前は7段の降下を終えた」。
他方の者は、全ての液体から鉛を[追放/流血]しながら同時に言った、「仕掛けは[完了した/全体である]」。
そして、彼は口を開いて言った、「私は鉛の男であり、耐え難き力に[抵抗して/苦しんで]いる」。
そして私は恐怖と共に目覚め、この事実の原因を己の中に探した。再び私は熟考して己に語った、「私は、此れ故に鉛を[追放/流血]せねばならぬ事を良く理解しております ― 全く以てあの夢は、液体の組み合わせを懸念しているのです」。
そして再び、私は神の顕現を知り、祭壇へ戻り、白い衣を纏った一人の司祭を見た。例の同じ恐るべき謎の儀式を行う司祭を見て私は言った、「これは何だ?」
彼は答えた、「これはアディトゥムの崇高なるカルキストである。彼は、体に血液を入れ、目を澄んだものにし、死者を立ち上がらせることを望んでいるのだ」
巻物IIを閲覧する
巨像らは彼女の図式によって構築されたものである。
巨像らは[防衛/確保/収容?]するために構築されたものである。
敵は崇高なるカルキスト・イオン。人類を裏切りし者。進歩の破壊者。アディトゥムの魔術師王である。
荒涼とした領土、そこは失敗と堕落の創造物、死せる神々の[身体/肉]で作られた場である。
黒き野望の玉座の上で、敵は策謀する。敵は祭司に非ず。彼らは商人、[世界/全体/完全性]を売り飛ばす者どもである。
巨像らは彼女の図式によって構築されたものである。
不敬なる工具は[破壊/”未作成”]されねばならぬ。
MEKHANEの銀の血を大いに飲むが良い。
彼女の犠牲を[無駄に?]してはならぬ。
巻物IIIを閲覧する
これは、レガーテ・フェイスフルの一員にしてMEKHANEの僕である、家母長ユーフラクシアの最後の証しです。
私は戦士ではありません。
しかし、全ての戦士は死んでしまいました。敵軍に押し負けて。
敵は計画を実行に移しています。魔術師王は死体で己を取り囲んでいます。戦うほどに、彼の軍勢は[成長して/数を増やして]いる。
エジプトは[世界/私たち/私たちとの接触]から身を退いています。
ヒッタイトは[カオス/紛争]に陥っています。
[クレタ]の陰謀は、彼ら自身の民を犠牲にしています。
エーゲは暴虐の中へと堕ちました。
[千柱の街]は永遠に失われました。常に失われていました。
あのダエーワの民さえもが、国境に迫る敵との戦いに必死です。
中心の崩壊 ― 王国の崩落。損害は加えられてしまいました。
理性の光は[瞬いて/衰えて]います。
しかし、MEKHANEは彼女自身を犠牲にして、私たちを自由の身にしました。
私たちは暗闇に戻るつもりはありません。それよりはむしろ死を選びます。
しかし、ギャロス島の包囲は成されました。金属は熱いうちに打たねばなりません。
そして、それ故に、私たちはキティラ島のために進軍します ― 全てを終わらせるために。
葡萄酒のように暗い海を、私たちは渡ってきました。
紅き死によって荒廃した村々を、私たちは見てきました。死者を、瀕死の者を、不死者を見てきました。私たちは聖なる炎に呪わしき者を投げ込んできました。
私たちは、彼の者の荒涼たる領地に踏み込みます。
そして左手には、答えがあります。
起きてしまった事を取り返すことはできません ― しかし、肉の夜明けを遅らせることはできるのです。
巻物の内容から見るに、パイロットたちの生きた紀元前1200年頃は、サーキック・カルトの大本「アディウム帝国」が世界征服のために異形の力によって魔手を伸ばしたとされる全盛期時代の真っただ中。
古代メカニトと各文明たちはアディウム帝国に対抗する連合を組んでいたのだが、悪の帝国の代名詞でアディトゥム*4誕生の元凶であるのダエーバイト文明ですら、国境ギリギリで死に物狂いの抵抗をするのがやっと。
この巻物を書いたであろう国々は疲弊し、自らの兵士達は蠢く異形の不死者たちに呑み込まれ、敵は死した兵士の死体をも取り込み更に肥大化してより大きな肉の波となり絶えず襲い来る…
次に勝てなかったらもう終わりというところまで追い詰められた古代メカニトの陣営は「彼女」*5と称して崇める「壊れたる神」が残した最後の希望を、彼らは組み上げ、そして悍ましい腐肉の軍勢に立ち向かっていったのだろう。
世界に肉の夜明けを迎えさせない為に。
恐怖に満ちた暗闇に人類を呑み込ませない為に。
…そう、財団が掲げるそれと同じものを
それでも単体でKeterクラスがゴロゴロいるようなカルキストの総本山に勝てたかどうかは実際怪しい。
しかし、過去の大戦の証人でもある巨像がボロボロになって発見された『現在』が存在するという事は、彼らは暗闇を晴らしたのだ。
特別収容プロトコル
SCP-2406の周囲に「カザフスタン軍施設」を構築し、不正アクセスを防ぐために警備員を配置するが、動かそうにも動かないので、オブジェクトクラスはSafe。
ただし、SCP-2406-「1」との接触を行う場合はサイト司令の許可が必要になる。
この巨大ロボットは壊れていて近寄らなければどうということはないとはいえ放射線バリバリのブツなので、SCP-2406と直接関わるスタッフはタイプAのHAZMATスーツ、つまり防護服を着用し、作業終了時には除染も行う。
追記・修正はSCP-2406に搭乗してサーキック・カルトを消毒してからお願いします。
CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-2406 - The Colossus
by Metaphysician
http://www.scp-wiki.net/scp-2406
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補遺
それ故に、巨像には切り札があった。
SCP-2406が無くした左腕は1998年に本体から32km程離れた地点で発見されたこれは曲がりなりにも「原子力を動力とし、機械仕掛けで動き、バルブとレバーで操作する」という"常識的"な本体と比べて、謎の機構と技術で作られた兵器と思わしき特殊な代物。
毎度おなじみカント計測器で測定したところ、あの自称Safeのめんどくさい神に迫る70というヒューム値にもかかわらず、「周囲の時空を歪める」以外の影響はない。(それ、どこのディバイディングドライバー?)
このあまりに異質な機器は損傷のためか周囲の時空を歪めていたため、別個にSCP-2406-1として指定された。
時代を考えればギリシア火薬もオーバーテクノロジーだが、異常なヒューム値を「制御している」SCP-2406-1はどう考えても超兵器であり、「起動」が周囲の現実性に破滅的な結果をもたらすのは明らかなので、職員はサイト司令の承認がない限り、「起動」させてはならないことになっている。
恐らくだが、本拠地であるアディトゥムの異形の帝国の制圧に成功し、一斉に空間と現実性を湾曲させるこの力を発動して基準世界の現実から消し飛ばし、別次元へと追放したのではないだろうか。
MEKHANEの強力な現実改変兵器の暴発で丸ごと王朝を消し飛ばした例もあるので、ありえない話ではない。(なお、近年のサーキック作品における主流なヘッドカノンでは、アルコーンの支配を回避できないと悟ったイオンが、自ら帝都アディトゥムごと自身を異次元に閉じ込めたとしているものも多い)
他の巨像たちの機体が見つかっていないというのも、自分たちもろとも現実から消し飛ぶことを覚悟の上で発動させた他の同胞たちは無事に任務を成功させたのだろう。
今後もし再びこの兵器を使うような機会が…………、再び肉と機械による人類の命運を決める時が来たらとしたら
――――財団はどう決断するのだろうか。
追記・修正は右手に火炎放射器を、左手に現実改変機器を持ってお願いします。
SCP-2406 - The Colossus
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▷ コメント欄
- なんだか言葉遣いが妙だけど項目の筆者はDクラス職員かなにか? -- 名無しさん (2018-10-20 10:26:55)
- ↑分かる。Di Molte Vociのような報告書が無いオブジェクトでもないのに妙に口語調な部分が多いと感じた。 -- 名無しさん (2018-10-20 11:18:03)
- 別に問題はないと思うが -- 名無しさん (2018-10-20 12:07:39)
- 言われてみれば確かに他のSCP記事よりは少し乱暴な口調が多いかも。個人的には気になる程ではないけど -- 名無しさん (2018-10-20 20:02:57)
- ↑3↑4気にしすぎ -- 名無しさん (2018-10-21 01:59:08)
- いやなんか読んでて内容が頭に入りにくくなる程度には気になるよこの口調 -- 名無しさん (2018-10-21 17:29:52)
- 同感。財団エージェントが喋ってる体でやってるならともかく、そうじゃないから読んでてちょっと違和感を覚える -- 名無しさん (2018-10-21 18:11:54)
- この記事は追記・修正は右手に火炎放射器を、左手に現実改変機器を持ってお願いします。の言葉通り、編集する権利がある。違和感があってどうしても受け付けないなら編集すればいいだろう -- 名無しさん (2018-10-22 03:57:06)
- 全長93m、体重210t…。マジンガーZ(18m、20t)が中身スカスカらしいがその身長5倍に比較して体重10倍で大丈夫なのか?同じヒト型なら体重は身長の3乗に比例して大きくなるからマジンガーZ並みの密度維持するだけでも20*125=2500t必要なはずだけど -- 名無しさん (2018-10-22 09:43:55)
- ↑ 片や天才科学者の手によるスーパーロボットとは言え人類科学の産物、片や特別収容プロトコルが必要な異常存在だからな。あるいは単に物凄いヒョロヒョロなのかもw -- 名無しさん (2018-10-22 10:06:11)
- とりあえず全体的に口調が乱暴っぽい部分は直して戦争当時に状況とか追記してみました -- 名無しさん (2018-10-25 00:37:27)
- ↑2 コンバトラーVが身長57m体重550tだから、メカニトの巨像は身長が1.6倍くらいあるのに体重半分未満なのか… -- 名無しさん (2019-09-24 22:59:53)
- ロボットじゃなくて本当に像みたいな構造になってて中身がスカスカなのかもしれん… -- 名無しさん (2019-09-25 06:16:23)
- 補遺の三塊目のketerの文字がおかしいため修正お願いします -- 名無しさん (2019-11-14 09:56:32)
- ↑↑中に動かす機構がないとかホワイトドールか何か? -- 名無しさん (2019-11-26 19:16:58)
- 本家の記事を見たら巻物の内容が変わってるな。こっちも更新したらどうかな -- 名無しさん (2020-04-11 07:06:43)
#comment
*2 「ウラン鉱脈が地下水に浸される→その地下水が減速材となってちょうどいい感じに核反応が続く」という代表格が『オクロの天然原子炉]』
要するに「ウラン鉱の塊を水に漬けて核反応を起こす」ものでちょっと不謹慎な話になるが、東海村で起こった「バケツで核反応」の事件が近いといやあ近い。
*3 アラル海が当時のソ連の灌漑プロジェクトで陸地化した
*4 帝国の名前がアディウムでその首都の名がアディトゥム
*5 同じ古代メカニトの文明である夏王朝ではMEKHANEは「父なる伏義」という男神として扱っているが、それ以外のメカニトの文献ではむしろMEKHANEを女神、ヤルダバオートを男神とする解釈の方が多い。単純に中国神話での伏義と女媧の役割に当てはめての認識と思われる
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