登録日:2016/07/15 (金) 11:08:15
更新日:2024/01/25 Thu 13:52:43NEW!
所要時間:約 6 分で読めます
▽タグ一覧
くまみこ 獣害 ヒグマ 人災 秋田県 鹿角市 クマ 牧場 除雪 事件 熊 秋田八幡平クマ牧場事件 クマ牧場
※この項目では実際に起こった凄惨な獣害事件を明記しています。閲覧には注意してください。
2012年4月20日、秋田県鹿角市の八幡平クマ牧場で発生したヒグマによる襲撃事件。
飼育員2名が死亡し、国内に於けるクマ牧場での獣害事件としては最大被害となった。
原因は人災であり、適切な対応が取られていればこれらの被害は発生しなかったであろう。
【背景】
4月20日の午前8時頃、冬期閉鎖中の八幡平クマ牧場では、春の営業再開に向けて、3名の従業員が作業中だった。
男性従業員は除雪作業を行い、女性従業員は餌場に餌を置き、クマを運動場に放つべく冬眠房を開放していた。
運動場は地下に掘られる形で高さ4.5メートルのコンクリートで囲まれた構造になっている。
この時、2日前の除雪作業で雪を運動場へと投棄していたために、壁際の一角には雪山ができていたが、その事態に従業員達は気付いていなかった。
【脱走】
午前9時頃、運動場に放たれたヒグマの内の6頭が、高く積み上がった雪山を利用して堀外へと脱走。
餌場で作業中だった女性従業員・館花タケさん(75歳)はヒグマの脱走に気付き、急いで外通路に飛び出し、
「クマが逃げ出した!」と、付近で雪を水で洗い落とす作業をしていた男性従業員に叫び知らせた。
男性従業員は、タケさんの叫び声に気付き、瞬時に事態を把握したが、その叫び声に気付いたのは男性従業員だけではなかった。
男性従業員が目を向けた先では、逃げ走るタケさんにヒグマが襲いかかり、噛み付いていた。
また、奥通路で作業中のはずである、もう一名の女性従業員・館花タチさん(69歳)からは何の応答も無く、最悪の事態も想定された。
男性従業員は、急いでクマ牧場経営者に電話連絡し、その足で近隣の鹿角市猟友会会員の青澤さん宅にも事態を知らせに向かった。
【射殺】
午前10時頃、牧場経営者から緊急要請を受けた警察、及び救急隊が牧場出入口に到着。
暫く後、男性従業員と青澤さんも現地に到着。
国道側から牧場を見下ろせるため、青澤さんが上に上がってみると、牧場内での凄惨な光景が目に飛び込んできた。
タケさんなのか、タチさんなのが判別が付かないが、横たわっている人物がおり、更に2頭のヒグマがその人物を餌でも奪い合うかのように引っ張りあっていたのだ。
青澤さんは警察からの緊急召集要請が猟友会に掛けられる事を予測し、自宅に戻って銃器の準備に取り掛かった。
その後、まもなく警察隊は自分達だけでは手に負えないと判断し、猟友会に緊急救助要請を発令し、関連施設に於けるヒグマの射殺許可要請を発令する事となった。
午前11時半頃、猟友会のツキノワグマ撃ちの名人・斉藤良悦さん(57歳)も要請を受け、現地に到着。
正午頃には、射殺許可も発令され、斉藤さんを含む猟友会の会員は、次々とヒグマを射殺していく事になる。
1頭目は、脱走原因になったとされる雪山近くの外通路におり、体長は約1.5メートル、体重は約250キロ程の大きさだった。
ヒグマを撃った経験が無かっただけに不安な部分もあったが、見事に頭部を撃ち抜き、射殺した。
最初に発見したヒグマを射殺後、「こっちにもいるぞ!」との猟友会の他会員の声を耳にし、声元の方に移動すると、
1頭目よりも明らかに大きく、体長約2メートル、体重約300キロ近くと見られるヒグマが2頭いたので、付近の手摺で銃身を支えながら銃弾を放ち、その片方の射殺に成功する。
すると、もう片方のヒグマが突如立ち上り、仁王立ちの態勢で威嚇してきた。
急いて斉藤さんは弾を装弾し、頭部を一撃の下、3頭目の射殺の成功。
餌場付近に4頭目のヒグマが彷徨いている事を確認し、目眩などが発生するリスクを考慮し、合図と共に、数人が一拍置きに銃弾をヒグマの体に浴びせて射殺。
その後、5頭目のヒグマも発見したので、4頭目を射殺した時と同じく、合図と共に一拍置きに銃弾を浴びせたが、
ヒグマはくるりと後ろを向き、近くの餌場内にもう1匹のヒグマと共に隠れた。
そこで、斉藤さん含め皆で餌場を包囲したが、ヒグマが出て来ない為、斉藤さんがショベルカーに乗込み、
餌場のトタンの外壁を強引に剥がして中の様子を確認すると、5頭目のヒグマは既に絶命していた。
その亡骸の近くに、6頭目のヒグマがおり、斉藤さんとの距離は5メートル程だった。
ヒグマは斉藤さん目掛けて、飛び掛かろうとする仕草を見せたが、斉藤さんが目を見開き睨み付けると、後ずさりを始めたので、
直ぐに飛び掛かっては来ないと判断し、斉藤さんは急いでショベルカーに乗込み、半身を車外から出す姿勢でライフルの照準をヒグマの頭部に定め一撃で射殺。
脱走した6頭全てを射殺した頃には、午後4時近くとなっていた。
【被害と解剖】
襲われた2名の女性従業員は既に絶命しており、亡骸は病院に搬送された。
射殺されたヒグマらは22日に解体解剖され、胃内からは握り拳程度のくすんだ赤色の肉片、毛髪、捲れた皮膚、胃液で黄色に変色したタイツなどが発見された。
【原因】
運動場に除雪した雪をそのまま投棄した事が原因と判断された。
また、クマ牧場は経営難で施設の老朽化が目立っていた点を以前から問題視されていた事も後に分かった。
【結果】
クマ牧場の経営者と除雪を担当していた従業員1名がオリなどの安全管理を怠ったとして、業務上過失致死容疑で6月9日に逮捕され、罰金50万の略式命令が下された。
このクマ牧場は赤字経営となっており、もともと2012年秋には廃園する予定であったが、死亡事故に伴い休園、そのまま6月に閉鎖された。閉鎖に伴い行政処分は見送られた。
【その後】
閉園に伴い、残された27頭のクマ達は、与える餌の量を減らして熊同士の抗争による自然淘汰で個体数を減らし、最終的には餓死させる計画であった。*1
しかし、観光に影響する事を嫌った秋田県は、県主導による殺処分決定を引き伸ばした。
その後、日本熊森協会、地球生物会議ALIVEなどからの支援金及び支援物資があり、県から非常勤職員も派遣され、クマの飼育を続けることになった。
現在は、北秋田市立阿仁クマ牧場「くまくま園」で終生保護飼育されている。
動物福祉に配慮して繁殖は一切行われていないが、同じ理由で去勢手術も行われていない。
2014年7月19日にオープンした「くまくま園」であるが、1年目は黒字経営だった。
入場料は大人700円、中学生以下300円。
【余談】
クマ牧場の観光客のみでの黒字経営はなかなか難しく、熊肉や熊の胆(くまのい)目当ての運営も世間には多い。
追記・修正の前に、除雪は正しく行いましょう。
[#include(name=テンプレ2)]
この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,8)
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- 害獣事件の充実かいいゾ~射殺するの可哀そうという連中は最近でもこういう事件が起きてるってことを自覚してくれよ… -- 名無しさん (2016-07-15 14:01:31)
- ここに行った事あるだけに悲しかったな・・・・ -- 名無しさん (2016-07-15 14:04:07)
- とりあえず、運動場に雪を捨てるということをしなければ、犠牲者が食われることも、熊が射殺されることもなかったろうに……。とりあえず、除雪業者と熊牧場のお偉いさんは、犠牲者と熊さんに土下座しろ(--; -- 名無しさん (2016-07-15 14:12:15)
- なるべく射殺したくない気持ちも分かるけどこうでもしなかったらさらに犠牲者が増えたからな・・・ -- 名無しさん (2016-07-15 16:11:13)
- ↑とはいえ、そもそも雪の捨て方を考えるなり、しっかり脱走対策をしていれば、脱走することはなかったろうし、それによって犠牲者が殺されることも、熊が撃ち殺されることもなかった。この事件は、熊と人間、両者が犠牲者である人災なのだ。 -- 名無しさん (2016-07-15 17:25:16)
- 単独行動を好むクマを大量に同じ場所で飼育していたり餌不足が慢性化したり、一方で牧場側も従業員の高齢化が進んだり…事件が起きる以前から双方とも酷い状況だったんだよな… -- 名無しさん (2016-07-15 19:15:30)
- ↑やっぱり人災だ(汗 本当に牧場のお偉いさん、犠牲者と熊さんに土下座(ry -- 名無しさん (2016-07-15 19:26:44)
- 結局、無理が有るのに放置して最悪の事態に…ってのが多すぎるよ。ただでさえ動物関連は予測しづらいのに。 -- 名無しさん (2016-07-15 22:50:14)
- 警察官は緊急時にクマに発砲しても問題になるのかな そもそも犬に13発も撃ち込んでようやく仕留めた例も最近有ったから、ハンドガンでは足止めにもならんのかもしれんけど -- 名無しさん (2016-07-15 23:39:40)
- 飢え死に寸前に追い込んだ上で殺し合わせるとか外道にも程があるな。県もクソみたいな考え方をしてるな -- 名無しさん (2016-07-16 01:21:27)
- ↑×2日本の警察が携帯してる拳銃は人間用だから熊は殺せないよ、逆に熊殺せる弾ってのは人間に使うにはオーバーキルだからね -- 名無しさん (2016-07-16 02:07:59)
- とりあえず、県とか施設の上の方々にはこの言葉を つ「人類が傲慢なのは、自然は人間の支配下にあり、その逆ではないと考えている点だ」 -- 名無しさん (2016-07-16 06:49:08)
- この件は行政も悪いんだよなぁ。 -- 名無しさん (2016-07-16 10:58:24)
- 斉藤良悦さんつええ。技術もあるし頭もいい -- 名無しさん (2016-07-21 16:58:21)
- 人間の見せ物になんかせずに山で静かに暮らさせてあげた方がいいんだよ -- 名無しさん (2017-10-09 17:29:05)
- 19日のアンビリーバボーでこの事件が出てたがもう六年も前なのね -- 名無しさん (2018-07-20 00:23:00)
- ここの経営者は知人に既に赤字だった施設の経営を無理やり押し付けられていたって話を事件当時聞いたけど本当なんだろうか。 -- 名無しさん (2018-07-20 03:52:52)
- 違反コメントを削除しました -- 名無しさん (2018-07-22 11:19:48)
- しょうがないとはいえ、ここの園長は監視され続けてるのは可哀想だわ落ち着いてきたのにアンビリバボーでやったせいでまた話題になっちまったし -- 名無しさん (2020-04-03 09:15:59)
- くまくま園は見物に行ったことはあるし事件の名前は知ってたけどあそこの熊達はのんきに生きてるようで修羅場をくぐってたんだな -- 名無しさん (2020-04-03 13:37:12)
- 事件が起きた当時の園長は他人から赤字のこの牧場の経営を無理やり押し付けられていた人だって話を聞いたけど本当かな。 -- 名無しさん (2021-07-26 02:52:23)
- 斉藤さん強すぎる -- 名無しさん (2021-07-26 08:54:00)
- 熊を睨みつけて後退りさせるのは確かに強すぎる -- 名無しさん (2023-05-29 00:15:27)
#comment
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧