登録日:2018/06/14 (木) 14:10:17
更新日:2024/02/26 Mon 13:44:57NEW!
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鉄道唱歌 替え歌 鉄道 地理 黒磯 大和田建樹 唱歌 旅情
汽笛一声新橋を 早我が汽車は離れたり 愛宕の山に入り残る 月を旅路の共として
『鉄道唱歌』とは、明治時代に子供たちの地理教育のため作られた曲。
七五調統一の詞の中に沿線の地理や歴史、民話や伝説、名産品の紹介が織り込まれているのが特徴で、冒頭にもある第1集の出だしは特に有名。
教育を目的とした歌ということで、日本国各地の当時の名所や名物がいろいろ織り込まれているが、その選定には作詞者の意向が存分に反映されているほか、時折歌に登場する路線から寄り道することも。
更に鉄道の開通で旅にかかる時間が大幅に短縮され、交通の近代化に関する礼讃も歌詞に織り込まれている。
一方で時代の流れと共にルートや風景等が変わるためその都度歌詞の改訂が行われており、歌詞が大きく異なるところや現在の駅の位置と全く異なっている箇所も多い。
各番は短い(冒頭の文言は第1集1番の歌詞の全文である)……が、フルバージョンは全5集・334番まである。な阪関。第1集全部歌うと15分かかる。全5集全て歌うと1時間は余裕でかかる。
このため、長らく日本一歌詞の長い曲として君臨していたものの、2022年現在は2番目となっている。1987年にリリースされた石坂まさをのカセット『一人旅して─全国我が町音頭』なる曲がダントツで長く、県別編・市町村編合わせて3355番あるため。
『鉄道唱歌』を全5集フルコーラスでも『我が町音頭』のフルコーラスが1回終わるまでの間に10回ループする計算。キドブラザーズ版の399番で数えても8回半かかる。
CD化もされており、ボニージャックスが全334番を歌ったものが、キドブラザーズが北海道唱歌と伊予鉄道唱歌を含めた全399番を歌ったものがそれぞれリリースされている。
現在よく歌われるメロディは多梅稚(おおのうめわか)が作で、たもの。このバージョンが有名なのは、彼の曲が覚えやすいメロディーだった上、テンポもよく旅情を誘ったというのが理由である。
最初は大阪府にあった出版社が書籍として出版する形で発表されたもので、読者に好きな曲を歌ってもらおうという意図で複数の作曲家に作曲を依頼した結果、多梅稚・上眞行(うえさねみち)・田村虎蔵・納所辨次郎(弁次郎)・吉田信太の5人が作曲を手がけた。ちなみに作詞は全編とも大和田建樹(たけき)という人が務めた。
特に多は5編中4編(第4集以外)に携わっており、第5集に至っては彼が単独で担当。唯一関わっていない第4集は納所と吉田が担当し、第1集と第2集が多&上、第3集が多&田村という内訳である。
ちなみに彼らはいずれも江戸末期~明治初期の生まれで、吉田以外の5人は大正~昭和初期頃に他界。唯一戦後まで生きた吉田も1954年に死去した。*1
なお2018年に著作権法が改正、同年12月30日をもって従来の「死後50年」が「死語70年」に延長されたが、これが適用されるのは「作者の没年が1968年以降」であること(そのため2017年末までに保護期間が過ぎたものは「遡って延長」とはならない。第1・2集は1987年、第3集は1993年、第4集でも2004年、第5集に至っては1970年に切れている事になり、どのみち既に期間が過ぎている)。
なのでこの曲は完全にパブリックドメインとなっているものの、フリーなのは「原曲(譜面・1950年以前の音源など)」と「歌詞」であるため、ボニージャックスやキドブラザーズなど「カバー曲」の権利は有効である点に注意。歌詞は大和田が作詞したものを流用しているだけ(原曲の譜面もそれ自体はフリー)だが、曲は彼らが演奏したものなので彼らに権利があるのだ。
もちろん諸君が演奏・歌唱して録音や録画しておけば、その音源の権利者は諸君である。
鉄道の旅を象徴する曲として古くから車内放送前に流れるチャイムにこの曲が使われており、オルゴールアレンジから電子音アレンジまで多彩なバリエーションが存在する。更に品川駅の東海道本線ホームの発車メロディーには、SLの汽笛が最後に流れるアレンジが使われている。
七五調で歌詞が統一されているため、替え歌も多く作られている。有名なものにNHKの『ゆうがたクインテット』で放送されていた鉄道唱歌 山手線がある他、キリスト教の聖書の順番を覚える歌『そうしゅつレビみん』がある。
その他『クレヨンしんちゃん』の黒磯というキャラクターがカラオケの十八番にしており、アニメでは第1集全66番を歌うシーンが描かれている。
更にRyu☆によるトランスミックス版もあり、途中には『線路は続くよどこまでも』のメロディーが混ざっている。
第1集に登場する主な名所・名物・歴史
- 愛宕山(出世の石段)
- 泉岳寺(赤穂浪士四十七士の墓)
- 大森(梅の名所、後に貝塚で有名に)、川崎大師
- 鶴岡八幡宮
- 江ノ島
- 鎌倉
- 大磯(海水浴発祥の地)
- 箱根八里
- 御殿場高原(丹那トンネル開通前のため現在の御殿場線)
- 三島大社
- 富士川の戦い
- 興津の鯛、清見寺、久能山
- 三保の松原
- 田子の浦
- 宇津ノ谷(明治~平成まで各時代のトンネルがある他、平安時代の峠越えルートもあるなど文化遺産となっている)
- 草薙剣の謂れと焼津の由来
- 大井川の川越人足
- 琴引く風(現在のヤマハ音楽)
- 浜名湖
- 豊川稲荷
- 桶狭間古戦場
- 熱田神宮
- 名古屋城
- 濃尾地震
- 長良川鵜飼
- 養老の滝
- 関ヶ原の戦い
- 伊吹おろし
- 琵琶湖
- 彦根城
- 姥が餅
- 近江八景(瀬田夕照、石山秋月、粟津晴嵐、比良暮雪、矢橋帰帆、堅田落雁、三井晩鐘、唐崎夜雨)
- 逢坂山
- 伏見稲荷大社
- 東寺
- 嵐山
- 賀茂川
- 桂川
- 祇園
- 清水
- 銀閣寺
- 高雄山
- 琵琶湖疏水
- 南禅寺
- 大阪城
- 有馬山
- 楠木正成と湊川の戦い
第1集は新橋から神戸まで、第2集は神戸から熊本を経て長崎まで、第3集は上野から日光・仙台・松島を経て青森まで、第4集は上野から碓氷峠を経て滋賀へ出て東京へ、第5集は関西・参宮・南海編として関西と伊勢を巡る内容となっている。
第3集と第4集は上野から大宮までが重複するが、両方で紹介する名所を変えてある。が、飛鳥山については両方で出る。
第3集の上野から大宮で登場した名所
- 飛鳥山
- 荒川鉄橋
- 大宮公園(見沼の入江)
第4集の上野から大宮で登場した名所
- 諏訪の台
- 道灌山
- 王子製紙場
- 武蔵一宮氷川神社
名所・名跡・歴史を歌いながら覚えられるとあってこの曲は全国的な流行を見せ、現在の伊豆箱根鉄道駿豆線にあたる豆相鉄道の光景を描いた『豆相鉄道唱歌』、『沖縄県鉄道唱歌』、東京市電の数え歌の『東京地理教育電車唱歌』などが発表された。
更に元の詩を書いた大和田建樹は、『鉄道唱歌』の他にも伊予鉄道を歌った『伊予鉄道唱歌』、大阪市電を歌った『大阪市街電車唱歌』、大韓帝国の鉄道と南満州鉄道を歌った『満韓鉄道唱歌』なども発表している。
詩人の谷川俊太郎は東海道新幹線の開通直前に新幹線を皮肉った内容の『新・鉄道唱歌』を発表しているが、こちらは全3番とコンパクト。
ちなみに中黒のない『新鉄道唱歌』もある。こちらは鉄道省編と日本放送協会編の2つが存在し、何れも発表は中黒のあるものより先。
戦後、国鉄の職員によって新たな鉄道唱歌が生まれている。やはりメロディーは多梅稚の手がけたもので、調べた範囲では飯田線を歌ったものが確認されている。
またTOKIOの『AMBITIOUS JAPAN!』は、当時のJR東海社長だった葛西敬之が「新しい鉄道唱歌を作って欲しい」と、作詞・プロデュースを担当したなかにし礼に依頼した結果生まれたというエピソードがある。
ところで太平洋戦争前の日本は朝鮮半島や満州も統治していたわけだが、やはりこれらの地域にもこの曲は伝わった。
とはいえ現地では曲だけ流用して独自の歌詞をつけたものになり、例えば韓国では学生啓蒙の曲になり、モンゴルでは女性解放の曲になり、北朝鮮では朝鮮独立運動を賛美する曲になった。
これも広義の替え歌かもしれない。
追記・修正は第1集全66番を歌いきった後にお願いします。
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*1 彼らの生没年は次のとおり。多梅稚:1869~1920、納所辯次郎:1865~1936、吉田信太:1870~1954、田村虎蔵:1873~1943、上眞行:1851~1937、大和田建樹:1857~1910。
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